
「百人一首(ひゃくにんいっしゅ)」は、千年以上も昔の人びとが詠んだ和歌を、
100人分集めた日本のことばの宝箱です。
恋の歌、自然の歌、人生を見つめる歌――
たった31文字の中に、人の思いや季節のうつろいがぎゅっと詰まっています。
お正月の「かるた取り」で遊んだことがある人もいるかもしれませんね。
でも、百人一首はただの遊びではありません。
そこには、日本語の美しさ・心の動き・歴史の流れが生きています。
この記事では、
- 百人一首のはじまりと意味
- 歌にこめられた想い
- カルタでの楽しみ方や「決まり字」
- 自由研究につかえるアイデア
などを、やさしく・楽しく・深く紹介していきます。
最後には、百人一首100首のリストと意味つき一覧表もあります!
読むだけで、ことばの力と日本の心を感じられる――
そんな“百人一首の旅”に出かけましょう。🌸
百人一首とは?|100人の歌人が詠んだ和歌のコレクション
「百人一首(ひゃくにんいっしゅ)」とは、
**100人の歌人(かじん)**がそれぞれ詠んだ和歌を、ひとつの集まりにまとめたものです。
つまり、「百人の心を一首ずつ集めた日本のことばの宝箱」なんです。
この百人の歌をまとめたのは、鎌倉時代の歌人・藤原定家(ふじわらのていか)。
定家は平安時代から鎌倉時代にかけて活やくした、とても有名な和歌の名人です。
彼は京都の小倉山(おぐらやま)にある別荘で、過去の名歌を選び、
「小倉百人一首」としてまとめました。
のちにこれが広まり、日本中の人々が親しむ文化へと発展していきました。
百人一首は、ただの“詩の集まり”ではありません。
恋・自然・季節・人生など、さまざまなテーマの歌が並び、
日本人の感情や自然観が100通りのかたちで表現されています。
春の花、夏の夜、秋の紅葉、冬の雪――。
千年も前に生きた人たちの思いが、短い31文字にぎゅっと詰まっているのです。
🏯 百人一首の成り立ちと文化的な意味
「なぜ百人一首が作られたの?」という疑問を持つ人も多いでしょう。
藤原定家は当時、貴族の教養として重んじられていた「和歌」を、
後の時代に伝えるために名作を選びました。
つまり、百人一首は“和歌の教科書”のような存在でもあったのです。
それがやがて、「かるた」として遊ばれるようになります。
江戸時代には庶民のあいだでも大流行し、
お正月や学校で行う行事として今も受けつがれています。
つまり百人一首は、文学・教育・遊びの3つの顔を持つ文化遺産なんですね。
🧩 上の句と下の句の関係
百人一首の歌は、すべて「五・七・五・七・七」のリズムで作られています。
前半を「上の句(かみのく)」、後半を「下の句(しものく)」と呼びます。
たとえば、有名な小野小町の歌――
花の色は うつりにけりな いたづらに(上の句)
わが身世にふる ながめせしまに(下の句)
このように、上と下の句がセットで一つの意味を作ります。
かるたでは「上の句」を聞いて「下の句」の札を取るので、
ことばのつながりを覚えるのがとても大切です。
クイズ①
百人一首をまとめた藤原定家は、どんな目的でこの歌集を作ったといわれているでしょう?
- 自分の好きな歌を集めた遊びのため
- 名作の和歌を後の時代に伝えるため
- 外国に日本語を広めるため
正解は 2 です。👉
藤原定家は、先人たちの美しい和歌を後世に伝えるために百人一首をまとめました。
それが今では、遊びや学びの文化としても親しまれています。
百人一首の歴史と作者たち|貴族から武士まで100人の歌人の物語
百人一首の歌が作られた時代は、今からおよそ千年以上も前。
そのころ日本では、和歌(わか)が人びとの間でとても大切にされていました。
メールもSNSもない時代――。
恋の気持ちを伝えるときも、自然の美しさを語るときも、
人びとは和歌という短い詩で心を伝えていたのです。
和歌は貴族のたしなみとして始まりましたが、
やがて武士や僧侶、女性たちにも広がり、
「ことばで感じを伝える文化」として定着しました。
百人一首には、そのような人びとの歌が100首、時代をこえて集められています。
🏯 平安時代から鎌倉時代へ ― 文化のバトン
百人一首の多くの歌は**平安時代(794〜1185年)**に作られたものです。
その時代、日本では貴族たちが宮中で優雅な文化を楽しんでいました。
たとえば『源氏物語』や『枕草子』のような文学も、このころ生まれたものです。
そして鎌倉時代になると、武士の時代が始まります。
藤原定家はその文化の転換期に生き、
「古い時代の美しい心を後の世に伝えよう」と考えました。
そこで、平安の貴族の歌から鎌倉の武士の歌まで、
時代をこえて100人の歌を選び、「小倉百人一首」をまとめたのです。
👘 さまざまな身分の歌人たち
百人一首の作者たちは、身分も職業もさまざま。
天皇や貴族だけでなく、僧侶、女性、武士もいます。
たとえば――
- 天智天皇(てんじてんのう):1番目の歌の作者。秋の稲刈りを詠んだ歌。
- 小野小町(おののこまち):美しい女性歌人として有名。恋の儚さを詠んだ歌。
- 在原業平(ありわらのなりひら):プレイボーイとして知られ、恋の歌が多い。
- 西行法師(さいぎょうほうし):自然と心の静けさを詠んだ僧侶。
- 源実朝(みなもとのさねとも):鎌倉幕府の将軍でありながら歌人としても活躍。
このように、身分や立場のちがう人々が詠んだ歌が、
ひとつの作品集として並んでいるのが百人一首の魅力です。
💫 歌の背景にある“人の物語”
たとえば、小野小町の恋の歌には、美しくも切ない思いがこめられています。
また、僧侶・西行法師の歌には、自然とともに生きる心がにじんでいます。
百人一首を読むと、100人の人生が見えてくるのです。
まるで千年前の人たちと心で会話しているような不思議な感覚――。
それが、今も多くの人が百人一首に魅了される理由なのです。
クイズ②
百人一首をまとめた藤原定家が生きた時代は、どんな時代だったでしょう?
- 弥生時代で、まだ文字が使われていなかったころ
- 平安時代から鎌倉時代へと変わるころ
- 江戸時代で、すでにかるたが流行していたころ
正解は 2 です。👉
藤原定家は、貴族文化が終わり武士の時代が始まるころに生きた人物です。
そのため、百人一首には古い時代の美しさと新しい時代の息吹の両方が込められています。
歌の意味とテーマを知ろう|恋・四季・自然・人生の和歌
百人一首の魅力は、なんといっても歌にこめられた人の思いです。
同じ「自然」や「恋」を詠んでいても、感じ方や表現のしかたがまったくちがいます。
その一つひとつに、歌人たちの心の動きや生き方が見えてきます。
🌸 四季を詠む ― 自然と心がつながる歌
百人一首の中には、季節の移り変わりを詠んだ歌がたくさんあります。
春の花、夏の月、秋の紅葉、冬の雪……自然の変化の中に、
人の心のうつろいを重ねて表現しているのです。
たとえば、春の歌では「出会い」や「希望」を、
秋の歌では「別れ」や「さびしさ」を感じることが多いです。
有名な歌を見てみましょう。
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ(山辺赤人)
富士山の美しい雪を見て、自然の雄大さを感じる歌です。
「白妙(しろたえ)」ということばで、雪の白さの清らかさを表しています。
このように、自然を通して人の心を映すのが、和歌の大きな特徴です。
💌 恋の歌 ― 千年前のラブレター
百人一首の中には、恋の歌がなんと40首以上もあります。
昔の人にとって、恋は人生の大きなテーマでした。
会えない切なさ、気持ちを伝えられないもどかしさ、
そして一瞬の喜び――それらをわずか31文字に込めたのです。
たとえば、小野小町の有名な歌。
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
花の色があせていくように、自分の美しさも時とともに失われていく――。
美しいけれど、どこか切ない恋の歌です。
百人一首の恋の歌には、「恋する心の美しさ」と「うつろう時の悲しさ」の両方が感じられます。
🕊 人生を見つめる ― 哲学のような和歌
百人一首の中には、恋や自然だけでなく、人生を見つめる歌もあります。
たとえば、旅の途中で見た風景を通して「生きる意味」を感じたり、
別れや老いを静かに受け入れたりする歌もあるのです。
たとえば、西行法師の歌。
嘆けとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな
悲しみを語りかけるような月と涙の情景。
自然と心が一体になるような深い感情が伝わってきます。
クイズ③
百人一首に多く見られるテーマとして、正しい組み合わせはどれでしょう?
- 動物の観察と冒険の歌
- 四季や恋、人の心や人生を詠んだ歌
- 数字や計算を使った歌
正解は 2 です。👉
百人一首には、四季のうつろいや恋、人生の喜びや悲しみなど、
人の心を美しく表現した歌がたくさんあります。
百人一首かるたの楽しみ方|ルール・決まり字・札の取り方
百人一首は、読むだけでなく「かるた」として遊ぶことでも有名です。
お正月や学校の授業で遊んだことがある人もいるかもしれませんね。
ルールを知ると、百人一首がぐっと楽しくなります!
🎴 かるたの基本ルールを知ろう
百人一首かるたでは、**100枚の「取り札」と100枚の「読み札」**を使います。
それぞれの札には「上の句」と「下の句」が書かれています。
読み手が「上の句」を読むと、プレイヤーたちはその続きを思い出して、
正しい「下の句」の札をすばやく取ります。
たとえば――
「秋の田の〜」と読まれたら、「わが衣手は〜」の札を探して取る、という流れです。
一番早く正しい札を取れた人がポイントを得ます。
💡 競技かるたと家庭用かるたのちがい
学校や家庭で遊ぶ百人一首かるたは、楽しく遊ぶためのルールです。
一方で、映画『ちはやふる』などでも知られる「競技かるた」は、
日本全国で大会が行われるスポーツのような真剣勝負です。
競技かるたでは、札の配置を覚え、読み手の声のリズムや「決まり字」で反応します。
瞬間的な集中力と記憶力が試されるため、まさに“頭脳と反射神経の戦い”です。
🪶 「決まり字」ってなに?
百人一首では、上の句の最初の何文字かを聞くだけで、
下の句がどれかわかるようになっています。
この「札を特定できる最初の文字」を**決まり字(きまりじ)**といいます。
たとえば、
- 「ちはやぶる」で始まる歌は1首しかないので、**「ち」**を聞いた瞬間に取れます。
- 「あさぼらけ」では3首あるので、最初の3文字くらいまで聞かないとわかりません。
この決まり字を覚えることが、上級者への第一歩です。
🏆 取り方のコツと楽しい遊び方
札を取るコツは、耳で聞いて、手で覚えること。
何度も読むうちにリズムが体にしみ込み、「あ、この歌だ!」と自然に反応できるようになります。
家族や友だちと遊ぶときは、「好きな歌を選んで自分のエリアを作る」など、
オリジナルルールを加えるのもおすすめです。
また、アプリや音声読み上げを使えば、一人でも練習ができます。
耳から覚えると、和歌のリズムの美しさも感じられますよ。
クイズ④
百人一首のかるたで使われる「決まり字(きまりじ)」とは、どんなもの?
- 歌の最後の文字のこと
- 作者の名前を略した記号のこと
- その歌の札が特定できる最初の文字のこと
正解は 3 です。👉
「決まり字」とは、上の句の最初の何文字かを聞くだけで札を特定できるキーワードのこと。
競技かるたでは、この決まり字を早く覚えることが勝負のカギになります。
百人一首の覚え方と練習法|決まり字でスラスラ暗記!
百人一首を覚えるコツは、「むずかしい暗記」ではなく、
リズムとイメージで楽しむことです。
百人一首の歌はすべて「五・七・五・七・七」のリズムでできていて、
音の流れがとても心地よく、声に出すと自然に頭に残ります。
🎵 音で覚える ― 声に出してリズムを感じよう
最初におすすめなのは「音読(おんどく)」。
何度も声に出して読むうちに、メロディのように覚えられます。
とくに、好きな歌を選んで何度も読むと記憶に残りやすいです。
たとえば「ちはやぶる神代も聞かず竜田川…」のように、
テンポよく声に出すことで、五七調のリズムが体にしみ込みます。
友だちや家族と交代で「上の句」「下の句」を読む練習もおすすめです。
✋ 手で覚える ― 決まり字を使って練習!
百人一首の上達に欠かせないのが決まり字の暗記です。
最初の一文字を聞いただけで札が特定できる歌もあれば、
三文字目や五文字目まで聞かないとわからない歌もあります。
決まり字をノートに書いて、同じグループごとに色分けしてみましょう。
「ち」ではじまる歌、「あ」で始まる歌…と整理すると、覚えやすくなります。
家族でクイズ形式にして出し合うのも効果的です。
📱 アプリや音声で一人練習!
最近では、スマホやタブレットを使って「読み上げ練習アプリ」もあります。
これを使えば、一人でもかるたの練習ができます。
読み上げのスピードを変えたり、お気に入りの歌だけを再生したりできるので、
自分のペースで練習できます。
また、音楽のようにBGM感覚で聞くと、
知らないうちにリズムや言葉を覚えられることもあります。
🧠 暗記のコツ ― 少しずつ、くり返す!
百人一首は100首もあるので、全部をいきなり覚えるのはむずかしいです。
でも、1日1首ずつなら、100日でコンプリートできます!
「今日の一首」を決めて、
- 朝に読む
- 学校の帰りに口ずさむ
- 寝る前にもう一度読む
このように“くり返し”を積み重ねるのがポイントです。
クイズ⑤
百人一首を覚えるときに、いちばん効果的な方法はどれでしょう?
- 声に出してリズムを感じながらくり返し読む
- 歌を見ないで適当に想像する
- 一晩で100首を無理やり覚える
正解は 1 です。👉
百人一首の暗記は、リズムと音を大切にするのがコツ。
声に出してくり返すことで、自然にことばの流れが身につきます。
有名な百人一首ベスト10|人気の歌とその意味をやさしく紹介
百人一首の中には、今も多くの人に愛されている名歌がたくさんあります。
恋の歌、自然の歌、そして人生を見つめる歌――。
千年以上の時をこえても、ことばの美しさと人の心は変わりません。
ここでは、特に人気のある代表的な10首を紹介します。
🌸 第1位 小野小町「花の色はうつりにけりな…」
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
花の色があせるように、自分の美しさも時とともに衰えていく――。
恋と人生の儚さをうたった名歌です。
「ながめ(眺め/長雨)」という言葉に、時間の流れと心の憂いを重ねています。
🍁 第2位 在原業平「ちはやぶる神代も聞かず竜田川…」
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
秋の紅葉が川を真っ赤に染める様子を、神話のようにたとえた歌。
自然の美しさとスケールの大きさに感動します。
“ちはやぶる”という力強い言葉が印象的で、競技かるたでも人気の札です。
💌 第3位 壬生忠見「恋すてふ我が名はまだき立ちにけり…」
恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか
こっそり恋をしていたのに、うわさが広まってしまった――。
恋のはじまりのドキドキと、知られた恥ずかしさが伝わる歌です。
昔の人も、恋バナには敏感だったようですね。
🕊 第4位 紀貫之「人はいさ心も知らず古里は…」
人はいさ 心も知らず 古里は
花ぞ昔の 香ににほひける
人の心は変わってしまうかもしれないけれど、
古里の花の香りは昔のまま――という、やさしい思いをうたっています。
変わらない自然と、うつろう人の心を対比した名歌です。
🌙 第5位 清原深養父「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを…」
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
短い夏の夜、あっという間に明けてしまった――。
去っていく時間の早さと、名残惜しさを詠んでいます。
夜空に月を探す静かな情景が浮かびます。
💫 第6位 大江千里「月見れば千々にものこそ悲しけれ…」
月見れば 千々にものこそ 悲しけれ
我が身ひとつの 秋にはあらねど
月を見ると、いろいろな思いがこみ上げて悲しくなる。
秋は自分だけでなく、誰の心にもさびしさを呼び起こす季節なんですね。
💐 第7位 天智天皇「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ…」
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
素朴な農民の生活を詠んだように見えますが、
実は天皇が民のくらしに思いを寄せた歌とも言われています。
秋の夜のしっとりとした雰囲気が伝わります。
🌊 第8位 中納言行平「立ち別れいなばの山の峰に生ふる…」
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む
「待っている」と聞いたら、すぐにでも帰るよ――。
旅立ちの歌でありながら、あたたかい愛情と約束が感じられます。
“まつ”と“松”の掛けことばもおしゃれです。
🌅 第9位 素性法師「今来むと言ひしばかりに長月の…」
今来むと 言ひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな
「今行くよ」と言われて、ずっと待っていたのに来ない……。
恋の切なさと、夜明けまで待つ気持ちを描いた一首です。
千年前も“待ちぼうけ”の気持ちは同じだったのですね。
🌸 第10位 清少納言「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも…」
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも
よに逢坂の 関はゆるさじ
夜明けを偽って鳥の声をまねしても、あなたと逢うことはできない――。
強い意志と恋の禁じられた想いが伝わる、情熱的な歌です。
クイズ⑥
「ちはやぶる神代も聞かず竜田川…」の歌にこめられた気持ちとして、最も近いものはどれでしょう?
- 夏の暑さにうんざりしている
- 紅葉の美しさに感動している
- 雨の日に家で退屈している
正解は 2 です。👉
「竜田川を紅葉が真っ赤に染める」という壮大な秋の美をたたえた歌です。
自然の力強さを神話のように描いた、ロマンあふれる一首です。
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百人一首を自由研究にしよう!|歴史・文化・遊びを探究するアイデア
百人一首は、国語・歴史・文化を横断して学べる、とても魅力的な自由研究テーマです。
千年前の人びとがどんな思いで歌を詠み、
そのことばがどのように現代まで伝わってきたのかを調べることで、
「ことばの力」や「文化を受けつぐ意味」を深く考えることができます。
🏯 ① 歴史と人物を調べるテーマ
百人一首は、時代をこえて選ばれた100人の歌人の作品です。
それぞれが生きた時代や身分、背景を調べることで、
歌の意味がぐっと深まります。
たとえば、
- 藤原定家がなぜこの100首を選んだのか?
- 小野小町や在原業平など有名歌人の人生を年表にまとめる
- 平安時代の貴族たちのくらしを図やイラストで紹介する
「歌」と「人」と「時代」の関係を調べると、
社会科や歴史の勉強にもつながります。
🌸 ② テーマ別に歌を分類してみよう
百人一首には、「春」「恋」「自然」「人生」などのテーマがあります。
それぞれの歌を分類して表やグラフにまとめると、
どんなテーマが多いのかが一目でわかります。
たとえば――
- 春・夏・秋・冬の歌の数を円グラフに
- 恋の歌をさらに「片思い」「両思い」「失恋」などに分類
- 作者の性別ごとに歌の傾向を比較
こうした分析を通して、百人一首の“人間らしさ”を見つけることができます。
🪶 ③ 決まり字・反応時間の実験をしてみよう
競技かるたの世界では、「決まり字」をどれだけ早く聞き分けられるかが勝負です。
これを自由研究で実験してみるのも面白いです。
たとえば――
- 「あ」で始まる札を何首覚えたら反応が速くなる?
- 家族や友だちで記録を比べてグラフにまとめる
- 読み上げ速度を変えて、反応のちがいを調べる
理科の実験のようにデータを取ることで、
「記憶と反射神経の関係」を探る探究型の研究にもなります。
🧩 ④ オリジナル百人一首を作ろう!
百人一首をまねて、自分だけの「ミニ百人一首」を作るのもおすすめです。
テーマを「学校生活」「季節」「家族」「夢」などにして、
五・七・五・七・七のリズムで詠んでみましょう。
例:
朝の光 ランドセルには 夢ひとつ
今日の一歩が 明日を照らす
このように、身近な出来事を短く表現すると、
「ことばを選ぶ力」や「感情を伝える力」が育ちます。
💬 ⑤ 百人一首を通して文化を感じる発表に
自由研究の最後は、「自分が感じたこと」を発表してみましょう。
- どんな歌が心に残ったか
- 昔の人の気持ちにどんな共感を覚えたか
- 日本語の美しさとは何か
スライドや模造紙にまとめたり、朗読動画を作るのもおすすめです。
百人一首は、調べるだけでなく「自分の感じたことば」を表現する学びへとつながります。
このように百人一首は、
歴史・文学・心理・芸術のすべてを含んだ「総合的な学びのテーマ」。
調べる・考える・作る・伝える――。
この4つのステップで、あなただけの“百人一首研究”を完成させてみましょう。
🎴 おさらいクイズ|百人一首の世界をもう一度ふりかえろう!
ここまで学んだ「百人一首の基礎・歴史・ことば・かるた・覚え方」。
クイズで楽しくふりかえってみましょう!🧠✨
クイズ①
百人一首をまとめた藤原定家が、この歌集を作った主な理由はどれ?
- 外国の詩と比べてみたかったから
- 名作の和歌を後の時代に伝えるため
- 友だちと遊ぶために作った
正解は 2 です。👉
藤原定家は、先人たちのすばらしい和歌を後の世代へ残すために百人一首をまとめました。
クイズ②
百人一首が作られたのはどんな時代?
- 江戸時代の終わりごろ
- 平安時代の初めごろ
- 平安時代から鎌倉時代にかけて
正解は 3 です。👉
藤原定家は貴族の時代が終わり、武士の時代が始まるころに生きました。
そのため、百人一首には古い文化と新しい価値観の両方が表れています。
クイズ③
百人一首に多く見られるテーマとして、正しいものはどれ?
- 科学や発明をテーマにした歌
- 四季や恋、人生を詠んだ歌
- 戦いの勝ち負けを競う歌
正解は 2 です。👉
百人一首の多くは、自然や季節、人の心を題材にしています。
千年前も今も、人の思いは変わらないことがわかりますね。
クイズ④
「決まり字(きまりじ)」とは何のこと?
- 歌の最後の5文字のこと
- 作者の名前の最初の文字
- 札を特定できる最初の文字のこと
正解は 3 です。👉
「決まり字」は、上の句の最初の何文字かを聞いただけで下の句の札がわかる手がかり。
競技かるたでは、この早取りが勝負の決め手になります。
クイズ⑤
百人一首を覚えるときのコツとして、最も効果的なのはどれ?
- 声に出してリズムを感じながらくり返す
- 一晩で100首を全部覚える
- 歌を見ないで想像するだけにする
正解は 1 です。👉
百人一首の暗記は、音読とくり返しが基本。
リズムを感じながら楽しく覚えるのが上達の近道です。
💡 ふりかえりポイント
- 百人一首は「100人の心を集めた日本語の宝箱」
- 四季や恋、人生をテーマにした和歌が多い
- 「決まり字」で札を覚えると、かるたがもっと楽しくなる!
- 声に出して読むと、ことばのリズムと美しさがわかる
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まとめ|百人一首は千年をこえて心をつなぐ“ことばの文化”
百人一首は、千年以上前の人びとの心が今に伝わる、日本の大切な文化です。
季節のうつろいに心を寄せたり、恋のよろこびや悲しみを詠んだり――。
昔の人も、私たちと同じように感じ、悩み、笑って生きていたことがわかります。
かるたとして遊ぶときも、声に出して読むときも、
そこにあるのは「ことばを通して人と心をつなぐ」楽しさです。
たった三十一文字の中に、思いをこめる日本人の感性。
それこそが、百人一首が千年たっても愛されつづける理由です。
あなたもお気に入りの一首を見つけてみましょう。
その歌はきっと、遠い昔の誰かと、今のあなたをつないでくれます。
資料|百人一首ときまり字、意味一覧
📜 百人一首リスト(1〜20)
No | 上の句(かみのく) | 下の句(しものく) | 決まり字 | 意味(やさしい現代語訳) |
---|---|---|---|---|
1 | 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ | わが衣手は 露にぬれつつ | あきの | 秋の田の稲刈り小屋の屋根が粗く、夜露で袖がぬれてしまう。素朴な農村の情景。 |
2 | 春すぎて 夏来にけらし 白妙の | 衣ほすてふ 天の香具山 | はるす | 春が過ぎて夏が来たようだ。白い衣が香具山に干されている。季節のうつろいの歌。 |
3 | あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の | ながながし夜を ひとりかも寝む | あし | 山鳥の長い尾のように、長い夜をひとりで過ごすのか。孤独を詠んだ歌。 |
4 | 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の | 富士の高嶺に 雪は降りつつ | たごの | 田子の浦に出て見ると、富士の高嶺に雪が降っている。雄大な自然美を描く。 |
5 | 奥山に もみじふみわけ 鳴く鹿の | 声聞く時ぞ 秋は悲しき | おく | 奥山で紅葉を踏み分けながら鳴く鹿の声に、秋の寂しさを感じる。 |
6 | かささぎの 渡せる橋に おく霜の | 白きを見れば 夜ぞ更けにける | かさ | 天の川にかかる橋のように、霜が白く光る。夜が更けていくのを感じる冬の歌。 |
7 | 天の原 ふりさけ見れば 春日なる | 三笠の山に 出でし月かも | あまの | 天を仰ぎ見ると、春日の三笠山に出た月。都を懐かしむ望郷の歌。 |
8 | わが庵は 都のたつみ しかぞ住む | 世をうぢ山と 人はいふなり | わがい | 私の庵は都の南東、宇治にある。人々は「世を憂いて山に住む」とうわさする。 |
9 | 花の色は うつりにけりな いたづらに | わが身世にふる ながめせしまに | はなの | 花の色があせてしまったように、私の美しさも時とともに衰えた。儚い恋の歌。 |
10 | これやこの 行くも帰るも 別れては | 知るも知らぬも 逢坂の関 | これ | 行く人も帰る人も出会い別れる逢坂の関。人の世の交わりを描く。 |
11 | わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと | 人には告げよ 海人の釣舟 | わたのはらや | 広い海に船出したと、人に伝えておくれ、釣り舟よ。旅立ちの歌。 |
12 | 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ | をとめの姿 しばしとどめむ | あまつ | 天の風よ、雲の道を閉じておくれ。天女の姿をもう少し見ていたい。 |
13 | 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 | 恋ぞつもりて 淵となりぬる | つく | 筑波山から流れる川のように、恋心が積もって深くなった。情熱の恋の歌。 |
14 | 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに | 乱れそめにし 我ならなくに | みち | 陸奥の模様布のように心が乱れる。誰のせいでもなく恋してしまった。 |
15 | 君がため 春の野に出でて 若菜つむ | わが衣手に 雪は降りつつ | きみがためは | あなたのために若菜を摘む春の日、袖に雪が降る。誠実な愛を詠む。 |
16 | 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる | まつとし聞かば 今帰り来む | たち | 旅立つけれど、「待っている」と聞けばすぐ帰る。約束の歌。 |
17 | 千早ぶる 神代も聞かず 竜田川 | からくれなゐに 水くくるとは | ちは | 神代にも聞かない、竜田川が紅葉で真っ赤に染まる美しい光景。 |
18 | 住の江の 岸による波 よるさへや | 夢の通ひ路 人目よくらむ | す | 住の江の波のように、夢でも逢いたいのに、あなたは避けているのだろうか。 |
19 | 難波潟 みじかき葦の ふしの間も | 逢はでこの世を 過ぐしてよとや | なにわが | 難波の葦の節のような短い間でも逢えないのなら、生きる意味がない。 |
20 | わびぬれば 今はた同じ 難波なる | 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ | わび | つらくても、命をかけても逢いたい。激しい恋心の歌。 |
🪶 決まり字メモ
- 「わたのはらや」「きみがためは」などは、似た歌と区別するための 6字決まり。
- 「す」「ちは」などは有名な 1字・2字決まり。
- 最初の20首には、恋・自然・人生のテーマがバランスよく配置されています。
📜 百人一首リスト(21〜40)
No | 上の句(かみのく) | 下の句(しものく) | 決まり字 | 意味(やさしい現代語訳) |
---|---|---|---|---|
21 | 今来むと 言ひしばかりに 長月の | 有明の月を 待ち出でつるかな | いまこ | 「今行く」と言った言葉を信じて待っていたのに、夜が明けてしまった。切ない恋の歌。 |
22 | 吹くからに 秋の草木の しをるれば | むべ山風を 嵐といふらむ | ふくか | 風が吹くと草木がしおれる。だから「山風を嵐」というのだろう。自然の観察の歌。 |
23 | 月見れば 千々にものこそ 悲しけれ | わが身ひとつの 秋にはあらねど | つきみ | 月を見ると、いろいろな思いがあふれて悲しくなる。秋は誰にとっても物悲しい季節。 |
24 | このたびは 幣も取りあへず 手向山 | もみぢのにしき 神のまにまに | このた | 今回の旅では供え物も用意できなかったが、紅葉を神へのお供えにしよう。信仰の歌。 |
25 | 名にし負はば 逢坂山の さねかづら | 人に知られで 来るよしもがな | なにし | 「逢う」と名のつく逢坂山のかずらのように、人に知られず逢いたい。密かな恋心。 |
26 | 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば | 今ひとたびの みゆき待たなむ | をぐら | 小倉山の紅葉よ、もし心があるなら、もう一度の行幸を待って散らずにいてほしい。 |
27 | みかの原 わきて流るる 泉川 | いつ見きとてか 恋しかるらむ | みかの | 泉川のようにあふれる恋心。いつ会ったというのに、なぜこんなに恋しいのだろう。 |
28 | 山里は 冬ぞさびしさ まさりける | 人目も草も かれぬと思へば | やまざ | 山里の冬は本当に寂しい。人も訪れず、草も枯れてしまうから。 |
29 | 心あてに 折らばや折らむ 初霜の | おきまどはせる 白菊の花 | こころ | 朝露か霜かわからない白菊。そっと摘もうとするが迷ってしまう。 |
30 | 有明の つれなく見えし 別れより | 暁ばかり 憂きものはなし | ありあ | 有明の月のように冷たく去ったあの日から、夜明けほどつらい時間はない。 |
31 | 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに | 吉野の里に 降れる白雪 | あさぼらけあ | 夜明けの月が見える吉野の里に、白い雪が降り積もっている。冬の静けさの歌。 |
32 | 山川に 風のかけたる しがらみは | 流れもあへぬ 紅葉なりけり | やまか | 山の川に風が作った“しがらみ”のように、紅葉が水に流れきれずたまっている。自然の美。 |
33 | 久方の 光のどけき 春の日に | しづ心なく 花の散るらむ | ひさか | のどかな春の日に、どうして桜はそんなに急いで散ってしまうのだろう。無常の歌。 |
34 | 誰をかも 知る人にせむ 高砂の | 松も昔の 友ならなくに | たれを | 誰を友と呼ぼうか。高砂の松のように、昔の友ももういない。老いの寂しさ。 |
35 | 人はいさ 心も知らず 古里は | 花ぞ昔の 香ににほひける | ひとは | 人の心は変わるけれど、故郷の花の香りは昔のまま。変わらぬ自然への安心。 |
36 | 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを | 雲のいづこに 月宿るらむ | なつの | 短い夏の夜がすぐ明けてしまった。月はどこに泊まるのだろう。儚さを詠んだ歌。 |
37 | 白露に 風の吹きしく 秋の野は | つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける | しらつ | 秋の野に風が吹きつけ、露が真珠のように散る。自然の美しさを描く。 |
38 | 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし | 人の命の 惜しくもあるかな | わすら | 自分が忘れられてもいい。でも「忘れない」と誓ったあなたの命が心配でならない。 |
39 | 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに | あらはれわたる 瀬々の網代木 | あさぼらけう | 宇治川の霧が切れ間から見える。冬の朝の静けさの風景。 |
40 | しのぶれど 色に出でにけり わが恋は | ものや思ふと 人の問ふまで | しの | 隠していた恋心が顔に出て、人から「恋してるの?」と聞かれてしまった。恥じらいの歌。 |
🪶 決まり字メモ
- 「あさぼらけあ」「あさぼらけう」のように似た歌は、6文字まで必要な“長決まり”。
- 「す(18首)」のようなものは1字決まり(「むすめふさほせ」グループ)。
- 「ちは」「たち」などは2字決まり。
- 「ひとは」「たれを」などは3〜4字決まりの中間型。
📜 百人一首リスト(41〜60)
No | 上の句(かみのく) | 下の句(しものく) | 決まり字 | 意味(やさしい現代語訳) |
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41 | 恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり | 人知れずこそ 思ひそめしか | こいす | こっそり恋をしていたのに、うわさが広まってしまった。恥ずかしくも切ない恋の歌。 |
42 | 契りきな かたみに袖を しぼりつつ | 末の松山 波越さじとは | ちぎりき | あのとき誓い合ったのに、波のように約束は破られてしまった。悲しい愛の歌。 |
43 | あひ見ての のちの心に くらぶれば | 昔はものを 思はざりけり | あひみ | あなたと会ってからの恋しさに比べたら、昔の思いなど浅かったと気づく。恋の深まり。 |
44 | あふことの 絶えてしなくは なかなかに | 人をも身をも 恨みざらまし | あふこ | 会えないくらいなら、いっそ出会わなければよかった。苦しい恋の嘆き。 |
45 | あはれとも いふべき人は 思ほえで | 身のいたづらに なりぬべきかな | あはれ | 「かわいそう」と言ってくれる人もいない。私はこのまま消えてしまいそうだ。孤独の歌。 |
46 | 由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え | 行方も知らぬ 恋の道かな | ゆらの | 船のかじを失ったように、恋の行方もわからない。迷いと不安の恋の歌。 |
47 | 八重むぐら しげれる宿の さびしきに | 人こそ見えね 秋は来にけり | やえむ | 草に覆われた寂しい家にも、季節はめぐり秋が来た。孤独と時の流れを詠む。 |
48 | 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ | くだけて物を 思ふころかな | かぜを | 岩にぶつかる波のように、自分の心だけが砕けて悲しい。激しい恋心の歌。 |
49 | みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ | 昼は消えつつ 物をこそ思へ | みかき | 宮中の火のように、夜は燃え昼は消える。恋の思いもそれと同じだ。情熱の歌。 |
50 | 君がため 惜しからざりし 命さへ | 長くもがなと 思ひけるかな | きみがためお | あなたのためなら命さえ惜しくないと思っていたのに、今は長く生きたいと思う。 |
51 | かくとだに えやはいぶきの さしも草 | さしも知らじな 燃ゆる思ひを | かくと | 「恋している」と言えないまま、胸の中で恋心が燃えている。言葉にできない思い。 |
52 | 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら | なほうらめしき 朝ぼらけかな | あけぬ | 朝が来れば夜が明けるとわかっていても、別れの朝はやっぱり恨めしい。 |
53 | 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は | いかに久しき ものとかは知る | なげき | 嘆きながら一人で過ごす夜。夜明けまでがどんなに長く感じられることか。 |
54 | 忘れじの 行く末までは かたければ | 今日を限りの 命ともがな | わすれ | 「忘れない」と言ってくれたけど、人の心は変わる。だから今日を最後でも悔いはない。 |
55 | 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど | 名こそ流れて なほ聞こえけれ | たきの | 滝の音は消えても、その名は今も伝わっている。名声の永続をたとえた歌。 |
56 | あらざらむ この世のほかの 思ひ出に | 今ひとたびの 逢ふこともがな | あらざ | もうすぐ命が尽きそう。でも、最後にもう一度だけあなたに会いたい。切ない恋の歌。 |
57 | めぐりあひて 見しやそれとも 分かぬ間に | 雲がくれにし 夜半の月かな | めぐり | 久しぶりに会えたのに、すぐに別れてしまった。まるで雲に隠れた月のよう。 |
58 | 有馬山 猪名の笹原 風吹けば | いでそよ人を 忘れやはする | ありま | 有馬山に風が吹くたびに、あなたを思い出す。忘れるわけがない。遠くからの恋。 |
59 | やすらはで 寝なましものを 小夜更けて | かたぶくまでの 月を見しかな | やすら | 会えない夜に眠れず、月が沈むまで見つめていた。切ない夜の歌。 |
60 | 大江山 いく野の道の 遠ければ | まだふみも見ず 天の橋立 | おおえ | 大江山から天の橋立までは遠く、まだ手紙(文)も来ない。遠距離の恋の歌。 |
🪶 決まり字メモ
- 「きみがためお」「きみがためは」など、同じ始まりの歌があるため、5〜6字の長決まり。
- 「あひみ」「あふこ」「あはれ」などは、同じ「あ」始まりの中で2〜3字決まり。
- 「たきの」「ありま」など自然系の歌は比較的短い決まり字です。
📜 百人一首リスト(61〜80)
No | 上の句(かみのく) | 下の句(しものく) | 決まり字 | 意味(やさしい現代語訳) |
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61 | いにしへの 奈良の都の 八重桜 | けふ九重に 匂ひぬるかな | いにし | 昔の奈良の八重桜が、今日は都の宮中で美しく咲いている。伝統と誇りの歌。 |
62 | 夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも | よに逢坂の 関は許さじ | よをこ | 鶏の鳴きまねで夜明けをごまかしても、逢坂の関は通れない。忠義の心を詠む。 |
63 | 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを | 人づてならで 言ふよしもがな | いまは | もうあなたをあきらめようと思う。その気持ちを直接伝えたいのにできない。 |
64 | 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに | あらはれわたる 瀬々の網代木 | あさぼらけう | 宇治川の霧が少しずつ晴れて、網代木が見えてくる。冬の朝の静けさを描く。 |
65 | 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを | 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ | うらみ | 恋に泣きすぎて乾かない袖。このまま恋に朽ちても、せめて名だけは汚したくない。 |
66 | もろともに あはれと思へ 山桜 | 花よりほかに 知る人もなし | もろと | 山桜よ、どうか私を哀れんでくれ。今はお前しか心を通わせる相手がいない。 |
67 | 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に | かひなく立たむ 名こそ惜しけれ | はるの | 春の夜の夢のように儚い恋の名を、無駄に広めたくない。 |
68 | 心にも あらで憂き世に 長らへば | 恋しかるべき 夜半の月かな | こころに | 心から生きたいと思わなくても、この世に生きるなら、あの夜の月を恋しく思うだろう。 |
69 | あらし吹く 三室の山の もみぢ葉は | 竜田の川の 錦なりけり | あらし | 嵐に散る紅葉が、竜田川を錦のように彩っている。自然の美をたたえる歌。 |
70 | さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば | いづこも同じ 秋の夕暮れ | さび | どこへ行っても秋の夕暮れは同じように寂しい。静かな共感の歌。 |
71 | 夕されば 門田の稲葉 おとづれて | 芦のまろやに 秋風ぞ吹く | ゆふさ | 夕方になると、田の稲葉を鳴らしながら秋風が吹く。田舎の情景を描く。 |
72 | 音に聞く 高師の浜の あだ波は | かけじや袖の ぬれもこそすれ | おとに | うわさに聞く高師の浜の波のように、浮気な人とは関わりたくない。恋の警戒心。 |
73 | 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり | 外山の霞 立たずもあらなむ | たかさ | 高砂の桜が咲いた。どうか霞よ、まだ立たないで、花をもう少し見せておくれ。 |
74 | 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ | はげしかれとは 祈らぬものを | うかり | つれないあの人を思って祈った初瀬の風が、こんなに激しいなんて。恋の痛み。 |
75 | 契りおきし させもが露を 命にて | あはれ今年の 秋もいぬめり | ちぎりお | 「忘れない」と言ってくれた言葉(させも草の露)を頼みに生きてきたが、また秋が過ぎる。 |
76 | わたの原 こぎいでて見れば 久方の | 雲居にまがふ 沖つ白波 | わたのはらこ | 広い海へこぎ出して見ると、沖の白波が雲とまぎれて見える。壮大な海の景色。 |
77 | 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の | われても末に あはむとぞ思ふ | せをは | 滝川の流れのように、今は別れてもいずれまた会いたい。強い恋の誓い。 |
78 | 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に | いく夜寝覚めぬ 須磨の関守 | あわじ | 淡路島の千鳥の声に、須磨の関守は何度も夜中に目を覚ます。寂しさを詠む。 |
79 | 秋風に たなびく雲の 絶え間より | もれ出づる月の 影のさやけさ | あきか | 秋風にたなびく雲のすき間からもれる月の光の美しさ。自然賛歌。 |
80 | 長かれと 思ひしものを 夏の夜の | 短き夢の はかなくもあるかな | ながか | 長く会えると思ったのに、夏の夜の夢のように短かった。儚い恋の歌。 |
🪶 決まり字メモ
- 「わたのはらや」「わたのはらこ」は、ともに「6字決まり」。
- 「あさぼらけあ」「あさぼらけう」と同じく、似た歌を区別するために長決まりが必要。
- 「あらし」「さび」「たかさ」など自然系は短く覚えやすい決まり字です。
📜 百人一首リスト(81〜100)
No | 上の句(かみのく) | 下の句(しものく) | 決まり字 | 意味(やさしい現代語訳) |
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81 | ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば | ただ有明の 月ぞ残れる | ほとと | ほととぎすの声のした方を見ると、夜明けの月だけが残っている。静かな余韻の歌。 |
82 | 思ひわび さても命は あるものを | 憂きに堪へぬは 涙なりけり | おもひ | つらい恋にも命は続く。でもこらえきれないのは涙だった。悲しみを詠む。 |
83 | 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る | 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる | よのな | この世に逃げ道はない。山奥に入っても鹿の鳴き声が寂しさを伝える。無常の歌。 |
84 | 長らへば またこのごろや しのばれむ | 憂しと見し世ぞ 今は恋しき | ながら | 生きていれば、今のつらさもいつか懐かしく思える日が来るだろう。時の流れの歌。 |
85 | 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで | 閨のひまさへ つれなかりけり | よもす | 一晩中思い悩んでいると、夜がなかなか明けない。恋の苦しみを詠む。 |
86 | 嘆けとて 月やはものを 思はする | かこち顔なる わが涙かな | なげけ | 月が「嘆け」と言うわけではないのに、涙が止まらない。心の共鳴を描く。 |
87 | 村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に | 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ | むらさ | 村雨が通ったあと、露がまだ乾かぬ槙の葉から霧が立ちのぼる。静かな秋の情景。 |
88 | 難波江の 芦のかりねの 一夜ゆゑ | 身をつくしてや 恋ひわたるべき | なには | 難波の葦のように短い逢瀬でも、心を尽くして一生恋し続ける。切ない愛の歌。 |
89 | 玉の緒よ 絶えなば絶えね 長らへば | 忍ぶることの 弱りもぞする | たまの | 命よ、もう絶えてしまってもいい。これ以上恋を隠して生きるのはつらすぎる。 |
90 | 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも | 濡れにぞ濡れし 色は変はらず | みせば | 雄島の漁師の袖のように、涙でぬれても心は変わらない。誠実な愛を詠む。 |
91 | きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに | 衣かたしき ひとりかも寝む | きりき | 霜の夜、こおろぎが鳴く中、衣を片方に敷いて一人で寝る寂しさ。冬の孤独の歌。 |
92 | わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の | 人こそ知らね かわく間もなし | わがそ | 私の袖は潮の満ち引きでも見えない沖の石のよう。涙で乾くことがない。 |
93 | 世の中は 常にもがもな 渚こぐ | あまの小舟の 綱手かなしも | よのなか | 世の中がずっと穏やかならいいのに。波間の小舟の綱手が美しくも切ない。 |
94 | み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて | ふるさと寒く 衣うつなり | みよし | 吉野の山に秋風が吹き、夜更けに衣を打つ音が聞こえる。懐かしさを詠む。 |
95 | おほけなく うき世の民に おほふかな | わが立つ杣に すみぞめの袖 | おほけ | 僧となり俗世を離れても、人々のために祈る。その慈悲の心を詠む。 |
96 | 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで | ふりゆくものは 我が身なりけり | はなさ | 花を散らす嵐の中、降り積もるのは雪ではなく我が身の老い。無常を詠む。 |
97 | 来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに | 焼くや藻塩の 身もこがれつつ | こぬひ | 来ない人を思いながら、藻塩を焼くように自分も恋に焦がれる。 |
98 | 風そよぐ 楢の小川の 夕暮は | みそぎぞ夏の しるしなりける | かぜそ | 風がそよぐ楢の小川の夕暮れ。禊の行事が夏の終わりを告げている。 |
99 | 人もをし 人もうらめし あぢきなく | 世を思ふゆゑに もの思ふ身は | ひとも | 人を好きになり、人を恨み、すべてがむなしく感じる。人生のあきらめの歌。 |
100 | 百敷や 古き軒端の しのぶにも | なほあまりある 昔なりけり | ももし | 古い宮殿の軒に茂るしのぶ草を見て、昔の栄華を思い出す。懐古の歌。 |
🌸 決まり字まとめポイント
- 「なにわが」「なには」など、似た歌があるため字数が長くなる。
- 「わたのはらや」「わたのはらこ」「きみがためは」「きみがためお」なども区別のため6字決まり。
- 「むすめふさほせ」…“1字決まり”の代表群:「む」「す」「め」「ふ」「さ」「ほ」「せ」。
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この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。