
春になると、くしゃみが止まらなかったり、
鼻水が出たり、目がかゆくなったりする人がいます。
これが 花粉症 です。
でも、花粉症は
「花粉が悪いから起こる病気」
「体が弱い人だけがなるもの」
ではありません。
実は、花粉症は
体を守るはずのしくみが、がんばりすぎて起きている状態なのです。
この記事では、
- 花粉が体に入ると、体の中で何が起きているのか
- くしゃみや鼻水には、どんな意味があるのか
- 春・夏・秋・冬で、花粉の正体がどう変わるのか
- 薬や舌下免疫療法は、体のどこに働いているのか
を、小学生にも分かる言葉で、順番に解説していきます。
「なんとなくつらい」から
「なるほど、そういうことか」へ。
花粉症を、
体のしくみを知るチャンスとして、いっしょに見ていきましょう。
- 花粉症とは?体の中で何が起きている病気なのか
- 花粉が体に入ると何が起きる?花粉症の仕組み
- 免疫はなぜ花粉を敵だと思ってしまうのか
- くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみはなぜ起こる?
- 花粉症は季節でちがう?季節ごとに変わる花粉と植物
- 春の花粉症|スギ・ヒノキ花粉はいつ飛ぶ?何月がピーク?
- 夏の花粉症はなぜ起こる?イネ科花粉の仕組み
- 秋の花粉症|ブタクサ・ヨモギの花粉が原因?
- 冬にも花粉症がある?ハンノキ・シラカンバの花粉
- 天気と花粉量の関係|雨・風・気温でどう変わる?
- 花粉症の薬はどう働く?体の中で何をしている?
- 舌下免疫療法(シダキュアなど)はなぜ効くのか
- 自由研究に使える花粉症の調べ学習アイデア
- おさらいクイズ
- まとめ
花粉症とは?体の中で何が起きている病気なのか
春になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらなくなる人がいます。
これが花粉症です。
花粉症という名前から、「花粉が悪い病気」「空気が汚れているから起こる病気」と思われがちですが、実は少しちがいます。
花粉症は、
👉 体を守るはずのしくみ(免疫)が、花粉に強く反応しすぎてしまう状態
のことです。
花粉症は「うつる病気」ではない
花粉症は、かぜやインフルエンザのように人から人へうつる病気ではありません。
花粉という植物の粉が体に入ったとき、自分の体の中で起きている反応が原因です。
同じ場所にいても、
- 花粉症になる人
- まったく平気な人
がいるのは、体の反応のしかたが人によってちがうからです。
花粉そのものが「悪者」なの?
ここがとても大事なポイントです。
花粉は、本来
- 木や草が子孫を残すために作る
- 自然の中ではごく普通のもの
です。
つまり、花粉は毒でもバイ菌でもありません。
それなのに、なぜ体は大さわぎするのでしょうか?
カギは「免疫」という体の見張り番
私たちの体には、**免疫(めんえき)**というしくみがあります。
免疫の仕事は、
- ウイルス
- 細菌(ばい菌)
など、体にとって本当に危険なものを見つけて、追い出すことです。
免疫は、体の中の「見張り番」のような存在だと考えると分かりやすいでしょう。
花粉症は「守りすぎ」で起きている
花粉症では、この見張り番が
「これは危険だ!早く追い出さなきゃ!」
と、花粉を敵だと勘違いしてしまいます。
その結果、
- くしゃみで外に出そうとする
- 鼻水で洗い流そうとする
- 目をかゆくしてこすらせようとする
といった反応が起こります。
👉 つまり花粉症は、
体が弱いから起きるのではなく、体を守ろうとする力が強く働きすぎている状態なのです。
クイズ①
花粉症で本当に問題になっているのは、次のうちどれでしょう?
- 花粉そのもの
- 空気のよごれ
- 免疫の反応
正解は 3 です。
👉 花粉は自然のものですが、免疫が花粉を敵だと勘違いして強く反応することで、くしゃみや鼻水などの症状が起こります。
花粉が体に入ると何が起きる?花粉症の仕組み
では、花粉が体の中に入った瞬間、免疫は何をしているのでしょうか。
ここからは、花粉症が始まる「体の中の流れ」を順番に見ていきます。
花粉はどこから体に入るの?
花粉はとても小さく、空気中をただよっています。
そのため、知らないうちに次の場所から体に入ってきます。
- 鼻(息を吸ったとき)
- 目(目の表面につく)
- 口(口で呼吸したとき)
特に鼻の中は、空気が必ず通る道なので、花粉が入りやすい場所です。
体はどうやって花粉に気づくの?
鼻や目の中には、免疫細胞と呼ばれる小さな見張り番がいます。
この見張り番の仕事は、
- 「これは体にとって安全かな?」
- 「それとも危険かな?」
と、入ってきたものをチェックすることです。
花粉が入ってくると、免疫細胞はまず
「正体不明のものが来たぞ」
と気づきます。
花粉症の人の体で起きる「勘違い」
本来、花粉は体に害を与えるものではありません。
しかし、花粉症の人の体では、
「これは危険な敵かもしれない!」
と、まちがった判断をしてしまいます。
このとき、免疫は
- 花粉の情報を記憶し
- 次に入ってきたとき、すばやく反応できるよう準備します
この「覚えてしまう」ことが、花粉症が毎年くり返される理由の一つです。
免疫が出す「合図」が症状を引き起こす
免疫が花粉を敵だと思いこむと、体の中で
「花粉が来たぞ!」という合図が出されます。
その合図によって、
- 鼻の中の血管が広がる
- 水分がたくさん出る
- 神経が刺激される
といった変化が起こります。
これが、
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・かゆみ
につながっていくのです。
花粉症は「反応が速すぎる」状態
ここで大事なのは、
👉 花粉症の体は
反応がまちがっているだけでなく、反応が速すぎる
という点です。
花粉が少し入っただけでも、
「大変だ!追い出せ!」
と、体が一気に動き出してしまいます。
クイズ②
花粉が体に入ったとき、花粉症の人の体で最初に起きていることはどれでしょう?
- 免疫が花粉を危険なものだと判断する
- すぐにくしゃみが出る
- 鼻水が大量に出る
正解は 1 です。
👉 くしゃみや鼻水はそのあとに起こる反応で、最初は免疫が花粉を「敵かもしれない」と判断するところから始まります。
免疫はなぜ花粉を敵だと思ってしまうのか
ここまでで、
花粉症は 花粉が悪いのではなく、免疫の反応が強すぎること が原因だと分かってきました。
では、なぜ免疫は、
本当は危険ではない花粉を 敵だと勘違い してしまうのでしょうか。
免疫の本当の役割を思い出そう
免疫の仕事は、とても大切です。
- ウイルス
- 細菌(ばい菌)
といった、体に害を与えるものから
命を守ることが免疫の役割です。
そのため免疫は、
「少しでもあやしいものは、先に追い出しておこう」
という 慎重すぎる性格 をしています。
花粉は「正体が分かりにくい」
花粉は、
- とても小さい
- 毎年同じ時期に大量に入ってくる
- 空気といっしょに体の奥まで入りやすい
という特徴があります。
このため免疫は、
「毎年くるし、数も多い。
もしかして危険なものかもしれない…」
と、あやしい相手として覚えてしまうことがあります。
免疫は「覚える」しくみをもっている
免疫には、
一度出会った相手を記憶する力があります。
これは本来、
- 一度かかった病気に、次はかかりにくくする
という、とても便利なしくみです。
しかし花粉症では、この記憶が
まちがった形で使われてしまいます。
- 初めて花粉に出会ったとき
- 免疫が「敵かもしれない」と判断
- 次の年から、すぐに強く反応する
これが、
毎年同じ時期に症状が出る理由です。
子どもと大人でちがいが出るのはなぜ?
花粉症は、
- 子どものころは平気だった
- 大人になってから急に出た
という人も多いです。
これは、
- 成長とともに免疫の経験が増える
- 体が多くの情報を記憶する
ことで、反応のしかたが変わるためです。
👉 花粉症は
「生まれつき決まっているもの」
だけではありません。
花粉症は「免疫が働きすぎている状態」
ここまでをまとめると、
- 免疫は本来、体を守る存在
- 花粉を何度も経験するうちに
- 「危険だ」と思いこみ
- 強く反応するようになる
これが花粉症の正体です。
👉 免疫が弱いから起きるのではなく、
免疫がまじめすぎるから起きる
とも言えます。
クイズ③
免疫が花粉を敵だと勘違いしてしまう理由として、もっとも近いものはどれでしょう?
- 花粉が毒を出しているから
- 免疫が花粉を危険なものとして覚えてしまうから
- 空気がよごれているから
正解は 2 です。
👉 免疫は一度「危険かもしれない」と判断した相手を記憶し、次からすぐ反応する性質があります。それが花粉症につながります。
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみはなぜ起こる?
花粉症のつらい症状は、
体が花粉と戦おうとして起こしている反応です。
ここでは、それぞれの症状が
体の中で何が起きているサインなのかを見ていきましょう。
くしゃみが出るのはなぜ?
くしゃみは、体の**反射(はんしゃ)**の一つです。
鼻の中に花粉が入ると、
- 神経が刺激され
- 「異物が入った!」という信号が脳に送られ
- 一気に息をはき出す
これがくしゃみです。
👉 くしゃみは、
花粉を外に吹き飛ばそうとする動きなのです。
鼻水が止まらなくなる理由
鼻水がたくさん出るのも、意味のある反応です。
免疫が花粉に反応すると、
- 鼻の中の血管が広がる
- 水分がしみ出しやすくなる
その結果、鼻水が出ます。
👉 鼻水は、
花粉を洗い流そうとする役割をもっています。
鼻づまりは何が起きている?
鼻づまりの正体は、
鼻の中がふくらんでしまうことです。
花粉に反応すると、
- 鼻の中の血管が広がり
- 内側の壁がむくんだ状態になります
すると空気の通り道がせまくなり、
息がしにくくなります。
👉 鼻づまりは
**鼻の中で起きている炎症(えんしょう)**のサインです。
目がかゆくなる・涙が出るのはなぜ?
目の表面にも、免疫の見張り番がいます。
花粉が目につくと、
- かゆみを起こす物質が出る
- 涙を出して花粉を流そうとする
という反応が起こります。
👉 目のかゆみや涙も、
目を守るための反応なのです。
ヒスタミンが症状を強くする
これらの症状の裏で活躍しているのが、
ヒスタミンという物質です。
ヒスタミンは、
- 血管を広げる
- 神経を刺激する
働きをもち、
くしゃみ・鼻水・かゆみを強くします。
👉 花粉症の症状は、
ヒスタミンによって目立つ形で表れていると考えると分かりやすいです。
クイズ④
くしゃみ・鼻水・目のかゆみが起こる一番の目的はどれでしょう?
- 花粉を体の外に出すため
- 体を弱らせるため
- 眠くさせるため
正解は 1 です。
👉 これらの症状は、花粉を追い出したり洗い流したりするための、防御反応として起こっています。
花粉症は季節でちがう?季節ごとに変わる花粉と植物
「花粉症=春」というイメージをもっている人は多いですが、
花粉は一年中、ちがう植物から飛んでいます。
そのため、
- 春は大丈夫なのに、秋になるとつらい
- 夏だけくしゃみが出る
という人もいます。
ここでは、なぜ季節によって花粉症が変わるのかを見ていきましょう。
そもそも、植物はなぜ花粉を飛ばすの?
花粉は、植物が
- 子孫を残す
- 別の花に自分の情報を届ける
ために作るものです。
特に、
風で花粉を運ぶ植物は、
たくさんの花粉を空気中に飛ばします。
👉 花粉症を起こしやすいのは、
この「風まかせの植物」です。
花粉は一年中、同じではない
植物は、
一年中同じ活動をしているわけではありません。
- 春に花をつける植物
- 夏に花をつける植物
- 秋から冬にかけて花粉を出す植物
それぞれ、花粉を飛ばす時期が決まっています。
そのため、
季節が変わると、
空気中の花粉の種類も入れ替わるのです。
春・夏・秋・冬で花粉が変わる理由
季節ごとに花粉が変わるのは、
- 気温
- 日の長さ
- 植物の成長のリズム
が関係しています。
植物は、
「今が花粉を飛ばす時期だ」
という合図を、自然の変化から読み取っています。
👉 つまり花粉症は、
自然のリズムと深くつながった症状でもあるのです。
同じ人でも、季節で症状が変わるわけ
ある人が、
- 春はスギ花粉に反応し
- 秋はブタクサ花粉に反応する
ということもあります。
これは、
- 体が反応する花粉の種類がちがう
- 複数の花粉を覚えてしまっている
ためです。
👉 花粉症は
「一種類だけの問題」とは限らない
という点も大切なポイントです。
クイズ⑤
花粉症の症状が、季節によって変わる一番の理由はどれでしょう?
- 季節ごとに空気のよごれが変わるから
- 季節ごとに花粉を飛ばす植物がちがうから
- 季節ごとに体が弱くなるから
正解は 2 です。
👉 植物には花粉を飛ばす時期があり、季節によって空気中に飛んでいる花粉の種類が変わるため、症状も変わります。
春の花粉症|スギ・ヒノキ花粉はいつ飛ぶ?何月がピーク?
花粉症と聞いて、いちばん多くの人が思い浮かべるのが
春のスギ・ヒノキ花粉症です。
日本では、花粉症の原因として
スギとヒノキの花粉がとても大きな割合を占めています。
スギ花粉症とはどんなもの?
スギは、日本の山にたくさん植えられている木です。
春になると、スギの木は 黄色っぽい花粉 を大量に飛ばします。
このスギ花粉に免疫が反応して起こるのが、
スギ花粉症です。
スギ花粉はいつ飛ぶ?何月ごろが多い?
スギ花粉が飛び始める時期の目安は、
- 2月ごろから飛び始め
- 3月がピーク
- 4月ごろまで続く
とされています。
特に、
- 晴れている日
- 風が強い日
- 気温が高い日
には、花粉がたくさん空気中に舞いやすくなります。
ヒノキ花粉はスギのあとに続く
ヒノキ花粉症も、春に多い花粉症の一つです。
ヒノキの花粉は、
- 3月の終わりごろから増え
- 4月〜5月に多くなる
という特徴があります。
👉
「スギのピークが終わったのに、まだつらい…」
という人は、ヒノキ花粉に反応している可能性があります。
なぜ日本はスギ花粉がこんなに多いの?
日本でスギ花粉が多い理由には、
社会や歴史も関係しています。
- 昔、木材をたくさん作るため
- 成長の早いスギが多く植えられた
- その木が今、大きく育っている
その結果、
春になると 大量の花粉が一気に飛ぶ環境 になっています。
👉 ここは、理科だけでなく
社会科ともつながるポイントです。
春に症状が重くなりやすい理由
春は、
- スギ花粉とヒノキ花粉が続けて飛ぶ
- 花粉の量がとても多い
- 新学期や生活の変化で疲れやすい
といった条件が重なります。
そのため、体の反応が強くなり、
症状が重く感じやすい季節でもあります。
クイズ⑥
春の花粉症で、スギ花粉とヒノキ花粉について正しいものはどれでしょう?
- スギ花粉もヒノキ花粉も同じ時期に同じ量が飛ぶ
- ヒノキ花粉は冬に多く飛ぶ
- スギ花粉のあとにヒノキ花粉が増える
正解は 3 です。
👉 スギ花粉は2〜3月ごろに多く、ヒノキ花粉はそのあと3〜5月ごろに増えるため、春の後半まで症状が続く人がいます。
夏の花粉症はなぜ起こる?イネ科花粉の仕組み
「花粉症は春だけ」と思っている人は多いですが、
夏にも花粉症は起こります。
春が終わって少し楽になったのに、
- 初夏からまたくしゃみが出る
- 草むらに行くと鼻がムズムズする
という場合、イネ科の花粉が原因かもしれません。
イネ科の植物ってどんなもの?
イネ科と聞くと、「お米」を思い浮かべるかもしれませんね。
実はイネ科には、
- カモガヤ
- オオアワガエリ
- スズメノカタビラ
など、身近な草がたくさん含まれています。
これらは、
- 河川敷
- 校庭
- 公園
- 道ばた
など、私たちの生活のすぐ近くで育っています。
イネ科花粉はいつ飛ぶの?
イネ科の花粉が多く飛ぶ時期の目安は、
- 5月ごろから飛び始め
- 6〜7月に多く
- 夏の終わりごろまで続く
という特徴があります。
👉 春のスギ・ヒノキが終わったあとに、
バトンタッチするように飛び始めるのがイネ科花粉です。
夏の花粉症はなぜ気づきにくい?
夏の花粉症は、
- かぜとまちがえやすい
- 暑さや汗のせいだと思われやすい
という理由で、
花粉症だと気づかれにくいことがあります。
しかし、
- 熱はない
- 毎年同じ時期に起こる
- 草の多い場所で悪化する
という場合は、花粉が関係している可能性があります。
イネ科花粉と体の反応
イネ科花粉でも、
体の中で起きていることは春と同じです。
- 花粉が体に入る
- 免疫が反応する
- ヒスタミンが出る
- くしゃみ・鼻水が起こる
👉 花粉の種類が変わっても、体の反応のしくみは同じ
という点が大切です。
夏は「近さ」がポイント
スギやヒノキの花粉は、
山から遠くまで運ばれます。
一方、イネ科花粉は、
- 背が低い
- 遠くまで飛びにくい
という特徴があります。
そのため、
👉 草むらに近づいたときに症状が出やすい
という違いがあります。
クイズ⑦
夏の花粉症でイネ科花粉について正しいものはどれでしょう?
- 冬に多く飛ぶ花粉である
- 草地や公園の近くで症状が出やすい
- 山の奥からしか飛んでこない
正解は 2 です。
👉 イネ科の植物は身近な場所に多く、草むらや公園の近くで花粉を吸いこみやすくなります。
秋の花粉症|ブタクサ・ヨモギの花粉が原因?
「春は大丈夫だったのに、
秋になるとくしゃみや鼻水が出る」
そんな人は、秋の花粉症かもしれません。
秋にも、花粉をたくさん飛ばす植物があり、
それが体に入ることで花粉症が起こります。
秋の花粉症の主な原因植物
秋の花粉症でよく知られているのは、
- ブタクサ
- ヨモギ
といった植物です。
これらは木ではなく、
草の仲間にあたります。
ブタクサ・ヨモギはどこに生えている?
ブタクサやヨモギは、
- 河川敷
- 空き地
- 道ばた
- 校庭のすみ
など、人の生活圏のすぐ近くに生えています。
そのため、
👉 知らないうちに花粉を吸いこみやすい
という特徴があります。
秋の花粉はいつ飛ぶの?
ブタクサ・ヨモギの花粉が多く飛ぶ時期の目安は、
- 8月ごろから飛び始め
- 9〜10月に多く
- 11月ごろまで続くこともある
とされています。
👉 夏の終わりから秋にかけて、
長い期間、少しずつ花粉が飛ぶのが特徴です。
秋の花粉症が見逃されやすい理由
秋の花粉症は、
- 季節の変わり目
- 気温差が大きい
- かぜをひきやすい時期
と重なるため、
👉 「かぜかな?」と勘違いされやすい
という特徴があります。
しかし、
- 熱が出ない
- 毎年同じ時期に起こる
- 草の多い場所で悪化する
場合は、花粉が関係している可能性があります。
秋でも、体の反応のしくみは同じ
秋の花粉症でも、
- 花粉が体に入る
- 免疫が敵だと勘違いする
- ヒスタミンが出る
- くしゃみ・鼻水・かゆみが起こる
という流れは、春や夏と変わりません。
👉 季節が変わっても、体の中の仕組みは同じ
という点を押さえておくと、理解が深まります。
クイズ⑧
秋の花粉症について正しいものはどれでしょう?
- ブタクサやヨモギの花粉が原因になることがある
- 秋には花粉はほとんど飛ばない
- 秋の症状はすべてかぜが原因である
正解は 1 です。
👉 秋にはブタクサやヨモギなどの草の花粉が飛び、花粉症の原因になることがあります。
冬にも花粉症がある?ハンノキ・シラカンバの花粉
「冬なのに、くしゃみや鼻水が出る」
「春にはまだ早いのに、目がかゆい」
そんなときに考えられるのが、
冬〜早春に飛ぶ花粉による花粉症です。
花粉症は、春や秋だけのものではありません。
冬に花粉を飛ばす植物がある
冬に花粉を飛ばす代表的な植物には、
- ハンノキ
- シラカンバ
などがあります。
これらは、
春を待たずに、冬の終わりごろから活動を始める木です。
ハンノキ・シラカンバはどんな木?
ハンノキやシラカンバは、
- 川の近く
- 公園
- 山や林
などに生えている木です。
特にハンノキは、
- まだ寒い時期
- 葉が出る前
から花粉を飛ばすという特徴があります。
花粉はいつ飛ぶの?
ハンノキ・シラカンバの花粉が飛ぶ時期の目安は、
- 1月ごろから飛び始め
- 2〜3月に多く
- 春のスギ花粉と重なることもある
とされています。
👉
「まだ冬なのに、もう花粉症?」
と感じる人は、
これらの花粉に反応している可能性があります。
なぜ「一年中花粉症」になる人がいるの?
人によっては、
- 春:スギ・ヒノキ
- 夏:イネ科
- 秋:ブタクサ・ヨモギ
- 冬:ハンノキ
と、いくつもの花粉に反応することがあります。
その場合、
👉 季節が変わっても、
次の花粉がすぐにやってくる
という状態になります。
これが、
「一年中、花粉症のような症状がある」
と感じる理由です。
冬の症状は、かぜと間違えやすい
冬は、
- かぜ
- インフルエンザ
- 空気の乾燥
などもあるため、
花粉症の症状が見分けにくい季節です。
しかし、
- 熱が出ない
- 毎年同じ時期に起こる
- 外に出ると悪化する
といった特徴がある場合、
花粉が関係していることもあります。
クイズ⑨
冬から早春に花粉を飛ばす植物として正しいものはどれでしょう?
- ブタクサ
- カモガヤ
- ハンノキ
正解は 3 です。
👉 ハンノキは冬の終わりごろから花粉を飛ばし、早春の花粉症の原因になることがあります。
天気と花粉量の関係|雨・風・気温でどう変わる?
「今日は花粉が多い」「今日は少なそう」
このちがいは、天気と深く関係しています。
同じ季節でも、
天気によって空気中の花粉の量は大きく変わるのです。
晴れた日は、なぜ花粉が多いの?
晴れた日は、
- 空気が乾いている
- 気温が上がりやすい
- 風が吹きやすい
という条件がそろいます。
このような日は、植物にとって
花粉を飛ばしやすい日になります。
👉 花粉は乾いた空気の中で、
軽くなって遠くまで運ばれやすくなるのです。
風が強い日は要注意
風が強いと、
- 花粉が木や草から飛び出しやすくなる
- 地面に落ちていた花粉が舞い上がる
ということが起こります。
特に、
- 春のスギ・ヒノキ花粉
- 河川敷や草地のイネ科花粉
は、風の影響を受けやすいです。
👉 風=花粉を運ぶ力
と覚えておくと分かりやすいですね。
雨の日に症状が楽になる理由
雨の日に
「今日は少し楽だな」と感じる人も多いでしょう。
それは、
- 雨が空気中の花粉を地面に落とす
- 花粉が舞い上がりにくくなる
からです。
👉 雨は、
空気中の花粉をおそうじしてくれる役割
をしています。
ただし、
- 雨がやんだ直後
- 次の日に晴れて気温が上がる
と、まとめて花粉が飛ぶこともあります。
気温が上がると花粉が増えやすい
多くの植物は、
- 気温が上がる
- 日差しが強くなる
ことで、活動が活発になります。
そのため、
- 朝より昼
- 寒い日より暖かい日
のほうが、
花粉が飛びやすい傾向があります。
天気と花粉症の関係を知る意味
天気と花粉の関係を知っていると、
- 外に出る時間を考える
- マスクやメガネを使う場面を選ぶ
など、自分で対策を考えやすくなります。
👉 しくみを知ることは、
自分の体を守るヒントにもなるのです。
クイズ⑩
雨の日に花粉症の症状が楽になる理由として、もっとも正しいものはどれでしょう?
- 雨が花粉を地面に落とすから
- 免疫が休むから
- 鼻の力が強くなるから
正解は 1 です。
👉 雨は空気中の花粉を地面に落とし、吸いこむ量を減らしてくれます。
花粉症の薬はどう働く?体の中で何をしている?
花粉症の薬と聞くと、
「花粉を消している」「花粉を止めている」
と思う人もいるかもしれません。
でも実は、
多くの花粉症の薬は、花粉そのものには触れていません。
薬が働きかけているのは、
👉 花粉に反応している体の中の動きです。
薬は「反応を止める手助け」をしている
花粉症では、
- 花粉が体に入る
- 免疫が反応する
- ヒスタミンなどが出る
- くしゃみ・鼻水・かゆみが起こる
という流れがありましたね。
多くの薬は、
この中の 「ヒスタミンが働く部分」や「炎症が起きる部分」
をおだやかにします。
👉 つまり薬は、
体が大さわぎしすぎないようにブレーキをかけている
と考えると分かりやすいです。
抗ヒスタミン薬の考え方
抗ヒスタミン薬は、
花粉症でよく使われる薬の一つです。
この薬は、
- ヒスタミンが
- 体の細胞に合図を送るのを
- じゃまする
という働きをします。
その結果、
- くしゃみが出にくくなる
- 鼻水が減る
- かゆみがやわらぐ
といった変化が起こります。
👉 ヒスタミンを出させないのではなく、
ヒスタミンが強く働かないようにしている
という点がポイントです。
点鼻薬・目薬は「その場所」で働く
点鼻薬や目薬は、
- 鼻
- 目
といった、症状が出ている場所に直接使う薬です。
これらは、
- 炎症をしずめる
- 腫れをおさえる
ことで、
その場所のつらさを軽くします。
👉 体全体ではなく、
ピンポイントで助ける薬だと考えるとよいでしょう。
薬を使っても、免疫の考え方は変わらない
ここで大事なのは、
👉 これらの薬は、免疫の「考え方」そのものを変えているわけではない
という点です。
- 反応が起きたあとを助ける
- 今つらい症状を軽くする
のが、これらの薬の役割です。
そのため、薬をやめると
また症状が出ることがあります。
「対症」と「しくみ理解」のちがい
- 抗ヒスタミン薬・点鼻薬・目薬
→ 今起きている反応をやわらげる - 舌下免疫療法(次の章)
→ 反応の起こり方そのものを変える
👉 どちらが良い悪いではなく、
役割がちがうという理解が大切です。
クイズ⑪
抗ヒスタミン薬について、正しい説明はどれでしょう?
- 花粉を体の中から消している
- ヒスタミンの働きを弱めて症状を軽くしている
- 免疫を完全に止めている
正解は 2 です。
👉 抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが強く働くのをおさえ、くしゃみやかゆみなどの症状をやわらげます。
舌下免疫療法(シダキュアなど)はなぜ効くのか
ここまでで、花粉症は
免疫が花粉を敵だと勘違いして、反応しすぎている状態
だと分かってきました。
では、**舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)**は、
体の中で何をしているのでしょうか。
舌下免疫療法とは何?
舌下免疫療法は、
- スギ花粉などの成分を
- とても少量ずつ
- 毎日つづけて体に入れる
という方法です。
「花粉症なのに、花粉を入れるの?」
と不思議に思うかもしれませんね。
でも、ここに大切な意味があります。
舌の下は「特別な場所」
舌の下には、
体の中でも 少し変わった性格の免疫 が集まっています。
この場所の免疫は、
- すぐに攻撃しにくい
- よく観察してから判断する
という特徴があります。
👉 つまり、
いきなり戦いになりにくい入口なのです。
少しずつ入れる理由
舌下免疫療法では、
- たくさんの花粉を一気に入れない
- ごく少量を、何度も見せる
というやり方をします。
すると免疫は、
「あれ?
何度も見ているけど、
体に悪さはしていないな…」
と、考え直し始めます。
免疫が「学び直す」ってどういうこと?
舌下免疫療法で起きているのは、
- 花粉を攻撃する反応が弱まる
- 免疫を落ち着かせるはたらきが強くなる
という変化です。
これは、
👉 免疫が花粉に対する考え方を学び直している
と表現できます。
テスト前に一夜漬けするのではなく、
毎日コツコツ勉強して理解し直すようなイメージです。
すぐに効かないのはなぜ?
舌下免疫療法は、
- 数日で効く
- すぐ症状がなくなる
という方法ではありません。
それは、
- 免疫の反応のしかた
- 体の記憶
を、ゆっくり変えているからです。
👉 体の「考え方」を変えるには、
時間が必要なのです。
ほかの薬とのちがいを整理しよう
ここで、これまでの薬と比べてみましょう。
- 抗ヒスタミン薬・点鼻薬
→ すでに起きている反応をおさえる - 舌下免疫療法
→ 反応が起きにくい状態を目指す
👉 働く場所と目的がちがう
という点を押さえておくと、理解が深まります。
クイズ⑫
舌下免疫療法で体の中に起きている変化として、もっとも近いものはどれでしょう?
- 花粉を体から完全に消している
- 鼻や目を強くしている
- 免疫が花粉に対する反応のしかたを学び直している
正解は 3 です。
👉 舌下免疫療法は、免疫が花粉を敵だと勘違いしにくくなるよう、反応のしかたを少しずつ変えていく方法です。
自由研究に使える花粉症の調べ学習アイデア
花粉症は、
身近で・毎年くり返し・データを集めやすい
という点で、自由研究にとても向いています。
ここでは、
小学校高学年〜中学生が実際に取り組めるテーマを紹介します。
① 花粉の多い日と少ない日のちがいを調べる
まずは、
「今日は花粉が多そう?少なそう?」
という視点から始めてみましょう。
やり方の例:
- 天気(晴れ・雨・くもり)
- 気温
- 風の強さ
- その日の体調(くしゃみ・鼻水など)
を、1週間〜2週間ほど記録します。
👉
「晴れて風がある日は症状が出やすい」
など、天気と体の反応の関係が見えてきます。
② 季節ごとの植物を観察する
花粉症は、
どんな植物が近くにあるかとも関係しています。
やり方の例:
- 通学路や公園で植物を観察
- 木なのか、草なのか
- どの季節に花をつけているか
を調べます。
春ならスギ・ヒノキ、
夏ならイネ科の草、
秋ならブタクサやヨモギなど、
👉 季節と植物を結びつけて考える
のがポイントです。
③ 花粉情報と自分の体調を比べる
インターネットや天気予報では、
花粉の量の予想が発表されています。
それを使って、
- 花粉が「多い」と予想された日
- 花粉が「少ない」と予想された日
と、自分の体調を比べてみましょう。
👉
「必ずしも予想どおりではない」
という発見も、立派な研究結果です。
④ マスクやメガネの効果を考える(考察中心)
実験として、
- マスクをした日
- しなかった日
を比べるのではなく、
👉
「なぜマスクは花粉を防げるのか」
を、これまで学んだ体のしくみと結びつけて考えます。
- 花粉の大きさ
- 鼻や口の入口
- 体に入る量が変わると、免疫の反応はどうなるか
という視点でまとめると、
理科らしい自由研究になります。
⑤ 「体の反応」に注目したまとめ方
花粉症の自由研究では、
- 症状の強さ
- つらさの感想
だけで終わらせず、
👉
「体の中で何が起きているのか」
を自分の言葉で説明することが大切です。
例:
- なぜくしゃみが出たのか
- なぜその日は楽だったのか
- 天気や植物とどうつながるのか
ここまで書けると、
とてもレベルの高い自由研究になります。
おさらいクイズ
クイズ①
花粉症の一番の原因として正しいものはどれでしょう?
- 花粉が毒だから
- 免疫が花粉に反応しすぎているから
- 空気がよごれているから
正解は 2 です。
👉 花粉症は、花粉そのものではなく、免疫が花粉を敵だと勘違いして強く反応することで起こります。
クイズ②
花粉が体に入ったとき、いちばん最初に起こることはどれでしょう?
- すぐに鼻水が出る
- 免疫が花粉を危険かもしれないと判断する
- 目がかゆくなる
正解は 2 です。
👉 くしゃみや鼻水はそのあとに起こる反応で、最初は免疫の判断から始まります。
クイズ③
くしゃみや鼻水が起こる目的として正しいものはどれでしょう?
- 花粉を体の外に出すため
- 体を弱らせるため
- 眠くさせるため
正解は 1 です。
👉 くしゃみや鼻水は、花粉を外に追い出したり洗い流したりするための防御反応です。
クイズ④
春の花粉症で、スギ花粉とヒノキ花粉について正しいものはどれでしょう?
- スギとヒノキは同じ時期に同じ量が飛ぶ
- ヒノキ花粉は冬に多く飛ぶ
- スギ花粉のあとにヒノキ花粉が増える
正解は 3 です。
👉 スギ花粉は2〜3月ごろ、ヒノキ花粉はそのあと3〜5月ごろに多く飛びます。
クイズ⑤
夏の花粉症の原因として考えられる植物はどれでしょう?
- スギ
- イネ科の植物
- ハンノキ
正解は 2 です。
👉 夏には、カモガヤなどのイネ科の植物が花粉を飛ばし、花粉症の原因になることがあります。
クイズ⑥
秋の花粉症でよく原因になる植物として正しいものはどれでしょう?
- ブタクサやヨモギ
- スギやヒノキ
- シラカンバ
正解は 1 です。
👉 ブタクサやヨモギは秋に花粉を飛ばし、秋の花粉症の原因になります。
クイズ⑦
雨の日に花粉症の症状が楽になる理由として正しいものはどれでしょう?
- 免疫が休むから
- 花粉が雨で地面に落ちるから
- 鼻の力が強くなるから
正解は 2 です。
👉 雨は空気中の花粉を地面に落とし、吸いこむ量を減らします。
クイズ⑧
抗ヒスタミン薬について正しい説明はどれでしょう?
- 花粉を体の中から消している
- ヒスタミンの働きを弱めて症状を軽くしている
- 免疫を完全に止めている
正解は 2 です。
👉 抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの働きを弱めて、くしゃみやかゆみをやわらげます。
クイズ⑨
舌下免疫療法(シダキュアなど)で起きていることとして正しいものはどれでしょう?
- 花粉を体から完全に消している
- 免疫が花粉に対する反応のしかたを学び直している
- 鼻や目を強くしている
正解は 2 です。
👉 舌下免疫療法は、免疫が花粉を敵だと勘違いしにくくなるよう、反応のしかたを少しずつ変えていきます。
まとめ
花粉症は、
花粉が悪いから起きる病気ではありません。
体を守るためのしくみである免疫が、
花粉を「危険な敵」だと勘違いして反応しすぎてしまうことで起こります。
- くしゃみや鼻水は、花粉を外に出そうとする反応
- 鼻づまりや目のかゆみも、体を守ろうとするサイン
- 症状は、体が弱いからではなく、守る力が強く働いている証拠
花粉症は、
体のまじめさが引き起こす状態だと言えます。
また、花粉症は季節によって原因が変わります。
- 春:スギ・ヒノキ
- 夏:イネ科の草
- 秋:ブタクサ・ヨモギ
- 冬〜早春:ハンノキなど
植物ごとに花粉を飛ばす時期がちがうため、
一年を通して症状が出る人もいます。
薬についても、役割を正しく知ることが大切です。
- 抗ヒスタミン薬や点鼻薬は、今の症状をやわらげる
- 舌下免疫療法は、免疫の反応のしかたを少しずつ学び直す
どちらも、
体の中で起きていることを助ける方法です。
花粉症のしくみを知ると、
- なぜ症状が出るのか
- なぜ季節で変わるのか
- なぜ薬が効くのか
が、つながって理解できるようになります。
👉 花粉症は「つらいだけのもの」ではなく、
体のしくみを知る入口でもあります。
しくみを知ることで、
自分の体と、自然とのつながりを
少しちがった目で見られるようになるでしょう。
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この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。

