
子どもの孤立と学びの居場所
不登校支援と地域コミュニティ再構築の方法を解説
近年、学校に通えなくなる子どもや、孤立感を抱えて学びから遠ざかる子どもが増えています。
「居場所がない」「友達とつながれない」という状況は、学力の問題だけでなく、自己肯定感や将来の生き方にも大きな影響を与えます。
では、子どもたちが孤立せず安心して学べる環境をつくるにはどうすればよいのでしょうか?
本記事では、子どもの孤立と学びの現状、居場所づくりの重要性、地域や学校外の学びのコミュニティの可能性、そして保護者や地域ができる実践的な支援方法について詳しく解説します。最後に、横浜で活動するMOANAVIの取り組みも紹介します。
子どもの孤立とは?【不登校・孤独感と学びへの影響】
子どもの孤立が増えている背景
文部科学省の調査では、不登校の小中学生が過去最多を更新しています。背景には次のような要因があります。
- 学校の人間関係(いじめ・不適応)
- 学習のつまずきによる自信喪失
- コロナ禍による交流機会の減少
- 家庭環境の変化(共働きや核家族化)
学校に通えていても「友達がいない」「安心できる人がいない」子どもは少なくなく、“見えない孤立” が広がっています。
不登校と孤立の違いと共通点
- 不登校=学校に行かない(物理的に不在)
- 孤立=学校に通っていても人間関係から切り離されている状態
共通するのは「学びの意欲が削がれる」ことです。どちらも放置すれば学習遅れや心の問題を深めるリスクがあります。
孤立が学習意欲・メンタルに与える影響
- 勉強への意欲が低下し、学力格差が広がる
- 自己肯定感が下がり「自分はダメだ」と感じやすくなる
- 孤独感が強まると、うつ傾向や不安障害につながる可能性もある
👉 子どもの学びを守るには、まず 孤立を早期に察知し、居場所を確保すること が重要です。
子どもに必要な「居場所」【安心感と学びの関係】
安心できる居場所が学習意欲を高める理由
心理学では「安全基地(secure base)」の存在が挑戦や学習を支えるとされています。
- 家でも地域でも「自分を受け入れてくれる場所」がある子は挑戦できる
- 安心感があるからこそ、失敗を恐れず新しいことに取り組める
居場所を持たない子どもが直面する課題
- 孤独感の増加
- 相談できる相手がいない
- 勉強が「意味のないもの」に感じられる
居場所がなければ、学びそのものが成立しにくくなります。
居場所のある子とない子で変わる学びの成果
- 居場所がある子:授業や活動に前向き、挑戦意欲が高い
- 居場所がない子:消極的になり、学習意欲も低下
👉 学力以前に「居場所の有無」が子どもの学びを左右します。
学びのコミュニティ再構築とは?【地域・学校外・オンラインの可能性】
地域で子どもを支える学びのコミュニティ
地域には「第三の居場所」として子どもを支える役割があります。
- 公民館・地域活動拠点での学習サポート
- 地域の大人や高齢者が「先生役」となって教える場
- 異年齢交流を通じた学び
学校外での居場所づくり(フリースクール・オルタナティブスクール)
- フリースクール:不登校の子どもが安心して学べる空間
- オルタナティブスクール:一斉授業にとらわれず、子ども中心の学びを展開
- 学校に戻れなくても「学びを続けられる場」として重要
オンライン学習コミュニティの可能性
- インターネットを通じて同じ悩みを持つ仲間とつながれる
- 地理的制約を超えて「安心できるコミュニティ」に参加できる
- ただし「孤独の延長」にならないよう、大人の伴走が必要
👉 オフラインとオンラインを組み合わせた「ハイブリッド型コミュニティ」がこれからのスタンダードになると考えられます。
保護者・地域ができること【子どもの孤立を防ぐ支援と実践例】
家庭でできる「居場所づくり」と親の関わり方
家庭は子どもにとって最初の、そしてもっとも基本的な「居場所」です。安心できる家庭環境は、孤立を防ぐ最大の基盤になります。
- 子どもの話を否定せずに聞く
子どもが学校や友達について話したとき、「気にしすぎじゃない?」「そんなの大したことないよ」と否定すると、気持ちを閉ざしてしまいます。心理学では「傾聴」が信頼関係を育てる第一歩とされています。 - 「成果」より「努力や気持ち」を認める
「100点を取った」より「一生懸命頑張ったね」と伝えることで、子どもは「結果に関わらず受け入れられている」と感じます。これが安心感につながります。 - 家に「安心できる雰囲気」をつくる
常に正論で説教するのではなく、「失敗しても大丈夫」と思える雰囲気を整えることが大切です。安心できる家庭は、挑戦と成長の土台になります。
👉 家庭が「逃げ帰れる場所」ではなく「心から安心できる居場所」になれば、子どもは外での挑戦も前向きに受け止められるようになります。
地域活動・習い事・ボランティア参加による居場所の拡大
学校以外の「小さなコミュニティ」に参加することは、子どもの孤立を防ぐ強力な手段です。
- 習い事やクラブ活動で学校以外の仲間を持つ
スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、学校の評価基準とは異なる世界で活躍できることは、自己肯定感を高めます。 - 地域イベントやボランティアで異年齢の人と関わる
地域清掃やお祭りの運営などは、子どもに「自分も役に立っている」という感覚を与えます。これは孤立感を解消する大切な経験です。 - 「学校以外のコミュニティ」が孤立を防ぐ
学校だけに居場所が依存していると、そこが合わなかったとき孤立してしまいます。地域や習い事という複数の居場所を持つことは、リスク分散でもあり、安心の保険になります。
👉 大人が「学校以外のつながり」を意識的に作ることが、子どもを孤立から守る有効な手段です。
大人ができる声かけと「子どもとのつながり」サポート
子どもは言葉以上に「大人が自分を気にかけているかどうか」を敏感に感じ取ります。孤立を防ぐには、日常的な声かけと関わり方が重要です。
- 「あなたのことを気にかけているよ」というメッセージを伝える
たとえば「今日はどうだった?」と一言かけるだけでも、子どもは「見守られている」と感じます。 - 無理にアドバイスするより、共感的に耳を傾ける
子どもが悩みを話すときは、解決策を押し付けるよりも「それはつらかったね」と気持ちを受け止めることが大切です。心理学でいう「共感的理解」が信頼関係を強化します。 - 子どもにとって「安心できる大人」が1人でもいれば孤立は和らぐ
親でなくても、祖父母・地域の先生・習い事の指導者でも構いません。子どもが「この人には話せる」と思える存在が1人いるだけで、孤独感は大きく軽減されます。
👉 大人ができるのは「居場所を与える」ことではなく「安心してつながれる環境を整える」ことです。
MOANAVIの実践例【横浜での居場所づくりと学びのコミュニティ】
「まなびのあそび場」や「お祭りプロジェクト」の取り組み
MOANAVIでは、地域の子どもが安心して参加できる遊び・学びの場を定期的に開いています。
- まなびのあそび場:放課後に安心して過ごせるフリースペース
- お祭りプロジェクト:子ども自身が企画・運営し、仲間と協働する学び
遊びと学びを組み合わせた居場所の価値
遊びは「楽しさ」だけでなく、コミュニケーションや協働の練習になります。
学びと遊びを融合させることで「無理のない学習意欲」が自然に育まれます。
不登校や孤立の子どもにも開かれた学びの形
- 点数や出欠席で評価されない
- 「できること」に注目し自信を取り戻せる
- 子どもが自分のペースで学べる
👉 MOANAVIは、学校に馴染めない子どもも「自分には居場所がある」と感じられるコミュニティを目指しています。
まとめ|子どもの孤立を防ぐ「居場所」と「学びのコミュニティ」再構築
- 子どもの孤立は学びや心に深刻な影響を与える
- 居場所があることで学習意欲や自己肯定感が高まる
- 地域・学校外・オンラインを活用したコミュニティ再構築が重要
- 保護者や地域の大人の関わりが、子どもの孤立を和らげる力になる
MOANAVIは「学びでつながる、学びがつながる」を理念に、横浜を拠点に子どもの居場所づくりと学びのコミュニティ形成に取り組んでいます。孤立しがちな子どもたちにとって、安心して成長できる場を広げていくことが、これからの教育に欠かせません。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説