
教員の働き方改革と学校業務の見直し
先生と保護者に求められる役割と協力のあり方
2025年9月、文部科学省は「教員の働き方改革」を一層進めるために指針を改定しました。これにより、学校が担う業務の範囲が整理され、先生の残業削減や健康管理が明確な目標として掲げられました。今回の改革は、先生の負担を減らすだけでなく、教育の質を守るための大きな一歩です。では、学校や先生はどのように変わり、保護者はどう捉えて行動すればよいのでしょうか。本記事では、指針の改定内容をわかりやすく整理し、先生と保護者それぞれの視点から今後の関わり方を考えていきます。
教員の働き方改革とは?文科省の指針改定のポイント
今回の指針改定は、教員の長時間労働の是正を強く意識したものです。背景には、教員の多忙化や過労による健康被害、教育の質低下への懸念があります。
主な改定内容
- 残業時間の上限目標:「1か月の残業45時間超をゼロにする」「月平均30時間程度に抑える」
- 健康管理:ストレスチェックや面接指導の活用を義務化し、メンタルケアを強化
- 業務の3分類による整理
- 学校以外が担うべき業務
- 教員以外が担うべき業務
- 教員が行うが、負担軽減を促すべき業務
これにより、先生は「本来の仕事」である授業や児童生徒との関わりに集中できる環境を整えようとしています。
学校業務の見直し|3つの分類でどう変わる?
学校以外が担うべき業務
- 登下校時の通学路の見守り
- 学校徴収金の徴収・管理
- 保護者からの過剰な苦情や不当な要求への対応
これらは、教育委員会や地域、関係機関が担うべき領域とされました。学校に押しつけられがちな業務が「外部へ」明確に位置づけられたのは大きな変化です。
教員以外が担うべき業務
- 学校ホームページの作成・更新
- デジタル端末やネットワークの保守管理
- プールや体育館など施設の維持管理
これらは事務職員や支援スタッフ、民間業者が担うべきとされ、先生がパソコン修理やHP更新で時間を取られることは減っていくはずです。
教員の業務だが負担軽減を促すべき業務
- 授業用教材の印刷
- 学校行事の準備・運営
これらは教員の業務としつつも、支援員やボランティアの協力で負担を軽減する方向性が打ち出されました。
教員の視点|先生はどう受け止め、どう行動すべきか
授業と子どもに集中できる環境づくり
改革の最大の狙いは、先生が「授業と子ども」に力を注げるようにすることです。教材研究や生徒理解に時間をかけられるよう、周辺業務は任せる勇気が必要です。
「これは自分の仕事ではない」と線引きする姿勢
従来は「頼まれたら断れない」という雰囲気が強くありました。しかし今後は指針を根拠に、「その業務は学校外が担うべきです」と言えるようになることが期待されます。
残業時間のセルフマネジメント
制度的に「45時間超はゼロに」という目標が掲げられましたが、最前線でコントロールするのは先生自身です。
- 仕事を詰め込みすぎない
- 優先順位をつけて取り組む
- 勤務時間を記録する習慣を持つ
これらの意識が欠かせません。
健康を守る意識
ストレスチェックを「形式的なもの」とせず、自分の声を届ける機会として活用することが大切です。また、睡眠・休養・相談の時間を確保することは自己防衛でもあり、結果的に教育の質を守ることにつながります。
学校内外での役割分担
校内では事務職員や支援員に業務を任せ、校外では地域や教育委員会に頼る。先生一人で抱え込まない仕組みを積極的につくる姿勢が求められます。
保護者の視点|学校業務見直しで求められる関わり方
苦情や要望の伝え方を「協力型」へ
保護者の声は大切ですが、過剰な苦情や一方的な要求は「学校以外が担うべき業務」とされました。これからは、問題を一緒に解決するパートナーとして学校に関わることが求められます。
地域や家庭で担う役割
- 通学路の安全確保は地域全体の課題
- 学校行事の準備を一部サポートする
- PTA活動を「先生の手伝い」ではなく「子どもを地域で育てる仕組み」と捉える
このように、学校任せではなく「分担」へと意識を切り替えることが重要です。
先生の働き方改革を応援する姿勢
残業削減のためには、保護者が「先生も人間だ」と理解することが不可欠です。必要な連絡は適切な窓口を通し、不要な依頼や即時対応の要求は控えるよう心がけましょう。
家庭での学びと生活の支え
学校でカバーできることが明確化される分、家庭での教育力が重要になります。
- 学習習慣の定着
- 規則正しい生活リズムの維持
- 子どもの気持ちを聞き取る時間を持つ
これらは学校には任せられない部分であり、家庭でこそ果たせる役割です。
学校と保護者の協働|子どもの教育を守るためにできること
- 「学校に丸投げ」ではなく、「学校・家庭・地域の分担」へシフトする
- PTAや地域活動を、保護者の負担ではなく「子どものための投資」と捉える
- 学校と保護者が互いにリスペクトし合い、感謝を伝え合う
- 協働することで教育の質が高まり、子どもの学びが守られる
これは単なる働き方改革ではなく、教育の在り方そのものを見直す改革でもあります。
まとめ|教員の働き方改革は子どもの学びを守る改革
文科省の指針改定は、教員の残業削減や業務整理を通じて、授業と子どもに集中できる環境をつくることを目的としています。先生は「線引き」と「セルフマネジメント」を意識し、保護者は「協力と分担」に軸足を移すことが求められます。
この改革を通じて実現されるのは、先生の健康と笑顔、そして子どもの豊かな学びです。学校・保護者・地域が一体となり、未来の教育を支えていきましょう。
👉学校がどのように変わっていくのかについてはこちらも参考にしてください。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説