
お正月になると、年賀状やカレンダーで目にする「干支(えと)」。
「今年は何年?」「次はどの動物?」と、毎年なんとなく使っている言葉ですが、干支や十二支には、実はとても深い意味があります。
十二支は、年を表すためだけのものではありません。
昔の人は、十二支を使って 時間を知り、方角を確かめ、くらしのリズムを整えて いました。
時計も地図もなかった時代、十二支は生活に欠かせない「知恵の道具」だったのです。
さらに、鬼門(きもん)と呼ばれる方角の考え方や、
桃太郎に出てくる 鬼・犬・猿・鳥 といった昔話の登場人物にも、
十二支の考え方がかくれています。
この教材では、
- 十二支はどこから来たのか
- なぜ動物で表したのか
- 時間や方角とどう関係しているのか
- 昔話や日本文化とどうつながっているのか
を、小学校3年生から中学生までが楽しく読めるように、
物語・クイズを交えながら、やさしく解説していきます。
知っているようで知らなかった「干支・十二支」のひみつを、
いっしょに探ってみましょう。
干支・十二支って何だろう?
お正月になると、年賀状やカレンダーでよく目にする「干支(えと)」という言葉。
「今年は○○年だね」「来年の干支は何だろう?」と、毎年なんとなく使っていますが、干支はもともと、ただ年を表すためだけのものではありません。
干支とは、昔の人が「時間」や「方角」、「年の流れ」を表すために考え出した、大切なしくみです。
今のように時計やカレンダーがなかった時代、人々は自然の変化や身の回りの出来事をもとに、生活のリズムをつくっていました。その中で生まれた知恵のひとつが、干支です。
まず、「干支」と「十二支」のちがいから見ていきましょう。
「干支」と「十二支」は同じじゃない?
ふだん私たちは「干支=十二支」だと思いがちですが、本当は少しちがいます。
- 十二支(じゅうにし)
子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)
という、12の名前のことを指します。動物の名前がついているので、覚えやすいですね。 - 干支(えと)
実は、「十干(じっかん)」と「十二支」を組み合わせたものを「干支」といいます。
十干には「甲・乙・丙・丁…」といった漢字があり、これを十二支と組み合わせることで、60通りの組み合わせが生まれます。
ただし、小学生・中学生の学習では、まずは十二支を中心に理解すれば十分です。このあと、発展として十干についても紹介します。
昔の人にとっての十二支は「生活の道具」
今の私たちは、
- 時間 → 時計
- 日付 → カレンダー
- 方角 → 地図やコンパス
を使って生活しています。
でも、これらがなかった時代、人々はどうしていたのでしょうか?
そこで使われていたのが、十二支です。
十二支は、
- 年を表す
- 時間を表す
- 方角を表す
という、生活に欠かせない役割を持っていました。
たとえば、
- 「子(ね)の刻」=今でいう真夜中ごろ
- 「午(うま)の刻」=お昼ごろ
- 「子の方角」=北
といったように、一日や空間をわかりやすく分ける目印として使われていたのです。
動物の名前が使われているのも、文字が読めない人でも覚えやすく、伝えやすかったからだと考えられています。
十二支はなぜ12こなの?
では、どうして「12」なのでしょうか。
これは、自然のリズムと深く関係しています。
- 1年はおよそ12か月
- 1日は昼と夜がくり返される
- 季節も大きく分けると12の流れとして考えられる
昔の人は、自然をよく観察し、「12」という数が生活の区切りとして使いやすいことに気づいていました。
そこで、年も時間も方角も、12に分けて考えるようになったのです。
十二支は、ただの動物の並びではなく、自然と人のくらしを結びつけるルールだったと言えます。
今のくらしにも残っている十二支
「昔の話なんだ」と思うかもしれませんが、十二支は今も私たちの身近なところに残っています。
- 年賀状に描かれる干支の動物
- 神社やお寺の方角の考え方
- 「丑三つ時(うしみつどき)」などの言葉
- 昔話や日本の文化に登場する動物たち
これらはすべて、十二支の考え方がもとになっています。
これから先の章では、
- 十二支の言い伝え
- なぜその動物が選ばれたのか
- 時間や方角との関係
- 鬼や桃太郎の物語とのつながり
を、ひとつずつ、ていねいに見ていきます。
「ただ知っているだけだった干支」が、
「なるほど、そういう意味があったんだ!」
に変わっていくはずです。
十二支はどこから生まれたの?
十二支は、日本で生まれたものだと思われがちですが、もともとは古代中国で生まれた考え方です。
とても長い歴史をもち、人々のくらしの中で少しずつ形を変えながら、日本にも伝わってきました。
この章では、十二支がどのように生まれ、どのように日本に広がっていったのかを見ていきましょう。
十二支のはじまりは古代中国
十二支が生まれたのは、今からおよそ2000年以上前の古代中国だと考えられています。
当時の人々は、
- 季節の変化
- 太陽や月の動き
- 星の位置
などを観察しながら、農業や生活の計画を立てていました。
とくに、種まきや収穫の時期を知るためには、時間や季節を正しく知ることがとても大切だったのです。
そこで考え出されたのが、年・時間・方角を一定のきまりで表す方法でした。
その中で、「12」という数はとても使いやすい数だと気づかれました。
- 月の満ち欠けはおよそ12回で1年
- 季節を区切るのにも便利
- 円(えん)を分けるときにも扱いやすい
こうした理由から、12をひとつの区切りとして考える文化が広がっていきました。
なぜ動物が使われたの?
最初から、今のような動物の名前が使われていたわけではありません。
十二支は、もともとは
「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」
という文字(漢字)そのもので表されていました。
しかし、これだけでは、
- 難しくて覚えにくい
- 子どもや文字が読めない人には伝わりにくい
という問題がありました。
そこで、それぞれの文字に動物をあてはめて説明する方法が使われるようになります。
ねずみ、牛、虎、うさぎ……といった動物を使うことで、十二支はぐっと身近で分かりやすいものになりました。
つまり、動物は**覚えやすくするための「たとえ」**として使われたのです。
日本にはいつ伝わったの?
十二支が日本に伝わったのは、**6世紀ごろ(飛鳥時代)**と考えられています。
この時代、日本は中国や朝鮮半島から、たくさんの文化や知識を学んでいました。
- 漢字
- 仏教
- 法律のしくみ
- 暦(こよみ)
こうしたものと一緒に、十二支の考え方も伝えられました。
当時の日本では、
- 年号
- 月日
- 時間
- 方角
を表すために、十二支が使われるようになります。
特に、都づくりやお寺の配置などでは、方角を重視する考え方が大切にされており、十二支はその基準として役立ちました。
暦(こよみ)と十二支の深い関係
十二支は、**暦(こよみ)**と強く結びついています。
暦とは、
- 日にち
- 月
- 年
- 季節
を知るための仕組みのことです。
昔の暦では、
- 今年はどんな年か
- 次の年はいつ始まるか
- 農作業のタイミング
を判断するために、十二支が使われていました。
たとえば、
「今年は寅の年」
といえば、それだけで年の順番や流れが分かったのです。
また、十二支はくり返し使えるという特徴があります。
亥の次は子、その次は丑……と、終わりなく続いていきます。
この「くり返し」の考え方は、
- 季節がめぐる
- 年がめぐる
- 命がつながっていく
という、自然を大切にする考え方とも結びついていました。
十二支は「覚えるための知恵」
今の私たちは、数字や記号で時間や日付を表します。
でも、昔の人にとって、十二支は数字の代わりになる便利な道具でした。
- 動物で覚えやすい
- 口で伝えやすい
- 絵にしても分かりやすい
だからこそ、十二支は長い間、くらしの中で使われ続けてきたのです。
十二支の言い伝えと物語
十二支には、ただの名前の並びではなく、**物語(言い伝え)**があります。
多くの人が一度は聞いたことがある、「神様が動物たちを集めた話」です。
この物語は、十二支を覚えやすくするだけでなく、なぜこの順番になったのかを説明する役割も果たしてきました。
神様が動物を集めたというお話
昔々、神様が動物たちに言いました。
「新しい年から、年を数えるための役目をお願いしたい。
元日の朝、早く来た順に、12番目までを選ぼう。」
この知らせを聞いた動物たちは、我先にと神様のもとへ向かいます。
この「競争」が、十二支の物語のもとになっています。
この話は、国や地域、時代によって少しずつ内容がちがいますが、
動物たちが競い合って順番を決めるという部分は、ほぼ共通しています。
なぜ競争(レース)の話になったの?
では、なぜ「競争」の物語になったのでしょうか。
それは、順番を分かりやすく伝えるためです。
ただ「子・丑・寅……」と並べるよりも、
「早く着いた順に並んだ」と考えた方が、子どもにも伝わりやすくなります。
また、動物たちが登場することで、
- どんな動物が
- どんなふうに行動したのか
を想像しやすくなり、話として記憶に残りやすくなります。
十二支の物語は、覚えるための工夫として生まれた物語だと言えるでしょう。
ねずみはなぜ一番になったの?
この物語で特に有名なのが、ねずみが一番になった理由です。
多くの言い伝えでは、ねずみは牛の背中に乗って進み、
神様の前でさっと飛び降りて一番になった、と語られます。
この話から、
「ねずみはずるい」
と思われることもありますが、ここで大切なのは、
ねずみが小さく、すばしっこい動物として描かれていることです。
昔の人は、動物の特徴を使って、
- どうしてこの順番なのか
- どんな動物なのか
を、物語の中で説明しようとしました。
なぜ猫はいないの?
十二支の物語には、猫が登場しない理由を説明する話もあります。
よく知られている話では、
ねずみがわざと日を間違えて伝えたため、
猫は競争に参加できなかった、とされています。
この話は、
- なぜ猫が十二支にいないのか
- なぜ猫とねずみは仲が悪いと言われるのか
を説明するための言い伝えです。
事実というより、理由を物語で説明したものと考えるとよいでしょう。
物語は「正しさ」より「分かりやすさ」
十二支の言い伝えは、
歴史の事実をそのまま伝えているわけではありません。
大切なのは、
- なぜこの順番なのか
- なぜこの動物なのか
- どうして十二支が大切にされてきたのか
を、だれにでも分かる形で伝えることです。
昔の人は、物語を使って、
むずかしい考えや決まりごとを、子どもたちにも伝えてきました。
十二支の物語は、
知恵を次の世代に伝えるための工夫だったのです。
なぜ「動物」で表したの?
十二支には、すべて動物の名前がついています。
ねずみ、牛、虎、うさぎ……と聞くだけで、頭の中にすぐ姿が思い浮かびますね。
でも、どうして昔の人は、年・時間・方角という大切なものを、動物で表そうとしたのでしょうか。
そこには、当時のくらしや考え方が深く関わっています。
昔の人のくらしと動物
今の私たちは、動物を動物園やテレビで見ることが多いですが、
昔の人にとって動物は、とても身近な存在でした。
- 牛や馬は、畑を耕したり、物を運んだりする大切な仲間
- 犬は、家を守ったり、狩りを手伝ったりする存在
- 鶏は、朝を知らせ、食べ物にもなる存在
動物たちは、毎日の生活の中で、人と一緒に働き、くらしを支えていました。
そのため、動物の特徴は、だれもが知っている共通の知識だったのです。
文字だけでは伝わりにくかった
十二支は、もともと
「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」
という漢字で表されていました。
しかし、
- 漢字がむずかしい
- 読み方が分かりにくい
- 子どもや文字を学んでいない人には伝えにくい
という問題がありました。
そこで、動物をあてはめることで、
「子=ねずみ」「丑=牛」というように、
見たり聞いたりするだけで分かる形にしたのです。
これは、今で言うと「イラスト付きの説明」に近い工夫だと言えます。
動物の特徴を借りた表し方
動物を使うことで、十二支にはもう一つの役割が生まれました。
それは、自然の流れや動きを表すことです。
たとえば、
- 夜に活動するねずみは、真夜中に近い「子」
- 力強く動く牛や虎は、朝に向かって活動が始まる時間帯
- 鶏は夜明けを知らせる動物
というように、動物の行動やイメージが、
時間や自然の変化と結びつけられていきました。
動物は、自然を説明するための分かりやすいサインだったのです。
架空の動物「龍」が入っている理由
十二支の中で、ひとつだけ特別な存在があります。
それが、**辰(たつ)=龍(りゅう)**です。
龍は、実際にはいない架空の動物ですが、
中国や日本では、
- 雨をもたらす
- 水をつかさどる
- 天と地を結ぶ
といった、とても大切な役割をもつ存在として考えられてきました。
農業では、雨は命にかかわるほど重要です。
そのため、自然の力を象徴する龍は、
十二支の中でも特別な意味をもつ存在として選ばれたと考えられています。
動物は「覚えるための知恵」
十二支に動物が使われているのは、
占いや性格を決めるためではありません。
- 覚えやすい
- 伝えやすい
- 絵や話にしやすい
という、学びのための工夫でした。
昔の人は、
「どうすれば次の世代に大切なことを伝えられるか」
を真剣に考え、動物という身近な存在を使ったのです。
十二支を一つずつ見てみよう(由来と意味)
ここでは、十二支を順番に見ながら、
- なぜその動物が選ばれたのか
- どんな意味や役割があったのか
を、くらしや文化とのつながりを意識して解説します。
占いや性格の話は扱わず、歴史・文化・生活の視点で整理していきましょう。
子(ね)ねずみ
ねずみは、夜でも活動し、すばしっこく動く動物です。
昔の人は、その姿を**一日のはじまり(真夜中)**と結びつけ、「子」の象徴としました。
また、ねずみは穀物の近くに集まることから、
農業と深い関わりがある動物としても知られていました。
小さくても命をつなぐ存在として、最初に置かれたと考えられています。
丑(うし)牛
牛は、畑を耕し、重い荷物を運ぶなど、
昔のくらしに欠かせない動物でした。
ゆっくりでも確実に進む牛の姿は、
朝に向かって少しずつ動き出す時間帯や、
地道な働きを表す象徴として考えられていました。
寅(とら)虎
虎は、力強く、勇ましい動物として知られています。
中国では、悪いものを追い払う存在としても大切にされてきました。
寅は、春に向かって自然が動き出す時期を表し、
新しい命のエネルギーを象徴する動物として選ばれたと考えられています。
卯(う)うさぎ
うさぎは、跳ねるように動くことから、
ものごとが広がり、進んでいく様子を表す動物です。
また、春は草木が芽を出す季節。
卯は、成長や広がりの始まりを表す存在として考えられていました。
辰(たつ)りゅう
辰は、十二支の中で唯一の架空の動物、龍です。
龍は、雨や水をつかさどる存在とされ、
農業にとってとても重要な意味をもちました。
天と地をつなぐ存在として、
自然の大きな力を表す象徴が、辰なのです。
巳(み)へび
へびは、脱皮をする動物です。
その姿から、昔の人は
生まれ変わりや、命のつながりを感じていました。
また、地面をはう動きは、
大地と深く結びついた存在として考えられていました。
午(うま)馬
馬は、人や物を運び、遠くまで行ける動物です。
そのため、**動きがもっともさかんになる時間帯(昼ごろ)**を表す存在とされました。
「午の刻」がお昼ごろを指すのも、
馬の活発な動きと関係しています。
未(ひつじ)羊
羊は、群れで行動し、穏やかな動物です。
未は、実りに向かって自然が落ち着いていく時期を表すと考えられていました。
草を食べて育つ羊は、
農業と深い関係をもつ動物でもあります。
申(さる)猿
猿は、人に近い動きをする動物として知られています。
手先が器用で、木から木へ移動する姿は、
変化や移り変わりを表す存在として考えられました。
申は、季節が次へと移っていく節目を示す役割をもちます。
酉(とり)鶏
鶏は、朝を知らせる動物です。
そのため、酉は、一日の区切りや、実りの完成を表す存在とされました。
また、「酉」という字には、
作物を入れる器という意味もあり、
収穫と深く関係しています。
戌(いぬ)犬
犬は、人のそばでくらし、家を守る動物です。
戌は、見守る・守るという役割をもつ存在として考えられていました。
一年の終わりに近づき、
次の準備をする時期を表すとも言われています。
亥(い)いのしし
いのししは、まっすぐ前に進む動物です。
亥は、物事をやりとげる力や、
次のはじまりに向かうエネルギーを表します。
一年の最後に置かれ、
次の「子」へとつながる大切な役割をもっています。
こうして見ると、十二支は
自然の流れ・くらし・季節の変化を、
動物を使って分かりやすく表したものだと分かります。
十二支は「時間」を表すためにも使われていた
今の私たちは、時計を見れば「何時何分」かすぐに分かります。
でも、時計がなかった昔の人は、一日をどのように分けていたのでしょうか。
そこで使われていたのが、十二支による時間の表し方です。
一日を十二に分ける考え方
昔の人は、一日(24時間)を、
十二支を使って12の時間帯に分けて考えていました。
つまり、
- 十二支ひとつ分 = 今の約2時間
ということになります。
たとえば、
- 子の刻
- 丑の刻
- 寅の刻
というように、順番に時間が進んでいきました。
この方法は、
- 数字を使わなくても伝えられる
- 昼と夜の流れが分かりやすい
という点で、とても便利だったのです。
子の刻・丑の刻って何時ごろ?
代表的な時間を見てみましょう。
- 子(ね)の刻:今の23時ごろ〜1時ごろ
夜のまんなかで、まわりがとても静かな時間です。 - 丑(うし)の刻:1時ごろ〜3時ごろ
夜が深く、まだ暗い時間帯です。 - 午(うま)の刻:11時ごろ〜13時ごろ
太陽が高くのぼり、お昼ごろにあたります。
「正午(しょうご)」という言葉は、
「午の刻のまんなか」 という意味から生まれました。
なぜ動物と時間が結びついたの?
十二支の時間は、動物の活動の様子とも関係しています。
- ねずみは夜に活動する → 子の刻
- 牛や虎は朝に向かって動き出す → 丑・寅
- 馬は昼に活発に動く → 午
このように、
自然や動物の様子をもとに時間を感じ取る
というのが、昔の人の時間の考え方でした。
数字がなくても伝えられる時間
「丑の刻に集まろう」
「午の刻までに戻ってきなさい」
このように言えば、
細かい数字を使わなくても、だいたいの時間が伝わります。
文字や時計がなくても生活できるように、
十二支は くらしを助ける知恵 として使われていたのです。
クイズ①
次のうち、「午の刻」 にあたる時間帯はどれでしょう?
- 夜中の0時ごろ
- 朝の6時ごろ
- 昼の12時ごろ
正解は 3 です。
👉 午の刻は、今の時間でいうと11時〜13時ごろ。ちょうどお昼にあたります。
十二支は「方角」を表すためにも使われていた
十二支は、時間だけでなく、**方角(ほうがく)**を表すためにも使われていました。
地図やコンパスがなかった時代、人々はどの方向に進めばよいのか、どうやって伝えていたのでしょうか。
その答えの一つが、十二支で方角を表す方法です。
十二支と方角の基本的な関係
まず、いちばん分かりやすい対応を見てみましょう。
- 子(ね):北
- 午(うま):南
- 卯(う):東
- 酉(とり):西
この4つは、東西南北を表す大切な目印でした。
今の地図でいうと、コンパスの上下左右にあたります。
昔の人は、
「子の方角に進む」
「午の方角を向く」
というように、十二支を使って方向を伝えていたのです。
方角も十二に分けて考えていた
十二支は、方角を12の方向に分ける考え方にも使われていました。
北を「子」とすると、
その間に、
- 丑
- 寅
- 卯
- 辰
…
というように、時計回りに十二支を配置していきます。
これにより、
- だいたいの方向
- 少し細かい向き
まで表せるようになりました。
たとえば、
- 丑寅(うしとら):北と東の間
- 未申(ひつじさる):南と西の間
といった具合です。
地図や都づくりにも使われた十二支
十二支による方角の考え方は、
- 都(みやこ)のつくり
- お寺や神社の位置
- 道の方向
などにも使われていました。
とくに、重要な建物をどの向きに建てるかは、
方角の考え方と深く結びついていたのです。
方角は、ただの「向き」ではなく、
くらしや文化に関わる大切な考えでした。
子・午・卯・酉を覚えるコツ
十二支の方角を覚えるときは、
まずこの4つをしっかり押さえるのがおすすめです。
- 北:子
- 東:卯
- 南:午
- 西:酉
この4つが分かれば、
その間にほかの十二支が並んでいると考えると、
全体のイメージがつかみやすくなります。
クイズ②
次のうち、「東」を表す十二支はどれでしょう?
- 酉(とり)
- 卯(う)
- 子(ね)
正解は 2 です。
👉 卯(う)は、太陽がのぼる東の方角を表します。
鬼門と十二支(方角と文化のつながり)
十二支で方角を表す考え方は、くらしの中でさまざまな意味をもって使われてきました。
その中でも、特に有名なのが 「鬼門(きもん)」 です。
「鬼門」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、ただこわい話ではなく、方角と十二支の考え方から生まれた文化なのです。
鬼門って何だろう?
鬼門とは、北東の方角のことを指します。
十二支で表すと、丑(うし)と寅(とら)の間の方向にあたります。
昔の人は、この北東の方角を、
- 災い(わざわい)が入りやすい
- 変化が起こりやすい
と考えていました。
これは、
- 冬(北)から春(東)へと季節が大きく変わる方向
- 寒さからあたたかさへ移り変わる境目
だったからだと考えられています。
鬼の姿と十二支の関係
日本の昔話や絵に出てくる鬼を思い出してみましょう。
- 頭に角がある
- 虎(とら)の皮のふんどしをしている
この姿には、十二支との関係が隠れています。
- 角 → 牛(丑)を表す
- 虎の皮 → 寅(とら)を表す
つまり、鬼は
「丑寅(うしとら)の方角=鬼門」から来る存在
として描かれていたのです。
これは、子どもをこわがらせるためではなく、
方角の考え方を分かりやすく伝えるための表現でした。
鬼門は「悪い方角」だったの?
「鬼が来る」と聞くと、悪い方角のように感じますが、
鬼門は、ただ「悪い」という意味ではありません。
昔の人にとって鬼門は、
- 変化が起こりやすい
- 注意が必要な方向
という意味をもっていました。
そのため、
- 神社やお寺を建てて守りとする
- 木や山を大切にする
など、災いを防ぐための工夫が生まれました。
方角に意味をもたせた昔の人の知恵
今の私たちは、方角を数字や記号で考えることが多いですが、
昔の人は、方角にも物語や意味をもたせてくらしを整えていました。
- 北東=鬼門
- 南西=裏鬼門
といった考え方も、
自然とともに生きるための知恵の一つだったのです。
桃太郎で読み解く「鬼」と「方角」
日本の昔話の中でも、とくに有名なのが 「桃太郎」 です。
桃から生まれた桃太郎が、鬼ヶ島へ行き、鬼を退治するお話ですね。
この物語は、勇気や協力をえがいた楽しいお話であると同時に、
十二支や方角の考え方がさりげなく入った物語でもあります。
鬼ヶ島はどこにあるの?
桃太郎が向かった 鬼ヶ島 は、物語の中では、
「遠い海の向こう」にある場所としてえがかれています。
はっきりとした地図があるわけではありませんが、
昔の人はこの鬼ヶ島を、
鬼門(北東の方角) と結びつけて考えていたと言われています。
鬼は、
「丑寅(うしとら)の方角から来る存在」
として考えられていたため、
鬼が住む島=鬼門の方向
というイメージが生まれたのです。
桃太郎はなぜ鬼を退治しに行ったの?
桃太郎の鬼退治は、
「こわい鬼をやっつける話」
というだけではありません。
鬼は、
- 災い
- 困りごと
- くらしをおびやかすもの
を表す存在でもありました。
つまり、桃太郎の旅は、
くらしを守るために、悪いものを遠ざける物語
として読むこともできます。
これは、
- 鬼門にお寺や神社を建てて守る
- 方角に注意して町をつくる
といった、昔の人の考え方とつながっています。
昔話は「方角の教科書」でもあった
昔は、学校も教科書も今ほど整っていませんでした。
その代わりに、人々は
昔話を通して、大切な考え方を学んでいた
と考えられています。
桃太郎の話には、
- 鬼門という方角の考え
- 協力することの大切さ
- くらしを守る知恵
が、分かりやすくつめこまれているのです。
クイズ③
次のうち、鬼の姿(角・虎の皮)と関係が深い十二支の組み合わせはどれでしょう?
- 子(ね)と卯(う)
- 丑(うし)と寅(とら)
- 午(うま)と酉(とり)
正解は 2 です。
👉 鬼の角は「丑」、虎の皮は「寅」を表し、鬼門(北東)の方角と結びついています。
桃太郎の仲間と十二支
― 申・酉・戌は鬼門の反対側にいた?
桃太郎が鬼退治に向かう途中で出会う仲間は、
犬・猿・鳥(きじ) の三匹です。
この組み合わせは、昔から
「なぜこの三匹なのだろう?」
と不思議に思われてきました。
実はこの仲間たちも、十二支と方角の考え方と結びつけて考えることができます。
犬・猿・鳥は十二支の動物
まず、それぞれを十二支に当てはめてみましょう。
- 猿 → 申(さる)
- 鳥(きじ) → 酉(とり)
- 犬 → 戌(いぬ)
つまり、桃太郎の仲間は、
申・酉・戌(さる・とり・いぬ)
という、十二支の並びになっているのです。
これは偶然ではなく、昔の人の考え方が反映されている、と考えられています。
丑寅(鬼門)の反対側にある申酉戌
前の章で見たように、
鬼門は、十二支でいうと
丑(うし)と寅(とら)の間、つまり北東の方角でした。
では、その反対側はどこでしょうか。
方角で考えると、
北東の反対は 南西。
十二支で南西にあたるのが、
申・酉・戌 の並びです。
つまり、
- 鬼が来るとされた方向 → 丑寅(鬼門)
- それに立ち向かう側 → 申酉戌
という関係が見えてきます。
桃太郎の仲間は「守る側」の象徴?
この考え方では、
桃太郎と仲間たちは、ただの動物ではなく、
鬼門に対抗する存在としてえがかれていることになります。
- 猿(申)
- 鳥(酉)
- 犬(戌)
が協力して鬼を退治する物語は、
鬼門の反対側から災いを追い払う
という意味をもった話として読むことができます。
これは、
- 神社やお寺を鬼門の反対側に建てる
- 方角のバランスを大切にする
といった、日本の文化ともつながっています。
昔話にこめられた「方角のバランス」
桃太郎の物語は、
「強いヒーローが悪者をやっつける話」
では終わりません。
そこには、
- 鬼門とその反対側
- 災いと守り
- バランスをとる考え方
といった、くらしを守るための知恵がこめられていました。
昔の人は、
方角や自然の流れを大切にしながら、
それを物語として子どもたちに伝えていたのです。
十二支はくらしや文化の中でどう使われている?
十二支は、昔の人の考えの中だけにあったものではありません。
実は、今の私たちのくらしや日本の文化の中にも、たくさん残っています。
ここでは、十二支がどんな場面で使われてきたのかを見ていきましょう。
年賀状と十二支
いちばん身近なのは、年賀状です。
お正月になると、その年の干支の動物がえがかれた年賀状を送りますね。
これは、
「新しい年がめぐってきたことを祝う」
「今年もよろしくお願いします」
という気持ちを、干支を使って伝える文化です。
干支の動物は、
- 新しい一年のはじまり
- 年の流れの節目
を表す、おめでたいしるしとして使われてきました。
お正月行事とのつながり
十二支は、お正月の行事とも深く結びついています。
たとえば、
- 神社に干支の大きな絵や置物がかざられる
- 絵馬にその年の干支がえがかれる
- 干支の置物を家にかざる
といった風景を見たことがある人も多いでしょう。
これらは、
一年の無事や健康を願う気持ちを、
干支にたくして表しているのです。
言葉の中に残る十二支
十二支は、言葉の中にも残っています。
たとえば、
- 正午(午の刻のまんなか)
- 丑三つ時(うしみつどき)(夜中の時間帯)
といった言葉です。
ふだん何気なく使っている言葉も、
もとは十二支による時間の考え方から生まれたものなのです。
神社・お寺と十二支
神社やお寺では、
- 建物の向き
- 入口の方向
- 守りの考え方
に、十二支や方角の考えが取り入れられてきました。
とくに、
- 鬼門をさける
- 鬼門を守る位置に建てる
といった考え方は、
くらしを守るための工夫として大切にされてきました。
これは、迷信ではなく、
自然や環境の変化に注意を向けるための知恵でもありました。
くらしの中で「思い出すためのしくみ」
十二支は、
- 年
- 時間
- 方角
といった、見えにくいものを、
動物や物語を使って思い出しやすくするしくみです。
だからこそ、
- 絵
- 話
- 行事
と結びつきながら、長い間使われ続けてきました。
今も生きている十二支の考え方
今は、時計やカレンダーがあり、
十二支を使わなくても生活できます。
それでも十二支が残っているのは、
人と人をつなぐ文化としての役割があるからです。
- 「今年はどんな年かな」
- 「次の干支は何だろう」
そんな会話を生み出すきっかけとして、
十二支は今も生き続けています。
十二支にまつわる「なぜ?」を考えよう
十二支について学んでいくと、
「どうしてだろう?」
「本当にそうなの?」
と、いろいろな疑問がわいてきます。
ここでは、子どもたちからもよく出る代表的な「なぜ?」を取り上げ、
事実と文化のちがいを意識しながら考えていきましょう。
なぜ猫は十二支にいないの?
多くの人が一度は不思議に思うのが、この疑問です。
これについては、前に出てきた
ねずみが猫に日にちをまちがえて教えた
という言い伝えがよく知られています。
ただし、これは事実ではなく物語です。
十二支が決められたころ、中国では、
- 牛
- 馬
- 犬
- 鶏
など、人のくらしに関わりの深い動物が重視されていました。
猫は、当時の中国では、
今ほど身近な動物ではなかったと考えられています。
そのため、
「猫がいない理由」を説明するために、
あとから物語がつくられた、
と考えるのが自然です。
なぜ国によって十二支の動物がちがうの?
実は、十二支の動物は、
国によって少しずつちがいます。
たとえば、
- ベトナムでは、うさぎの代わりに猫
- 猪の代わりに豚
が使われています。
これは、
- その国で身近な動物
- くらしや文化になじみのある動物
がえらばれたからです。
つまり、十二支は、
決まりきったものではなく、文化に合わせて変わってきた
ということが分かります。
なぜ豚ではなく「いのしし」なの?
日本の十二支では、
最後の「亥」は いのしし です。
でも、もともとの中国では、
「亥」は 豚 を表していました。
日本に伝わったとき、
当時の日本では豚よりも、
いのししの方が身近な動物だったため、
いのししが当てはめられたと考えられています。
ここからも、
十二支がその土地のくらしに合わせて変化した
ことが分かります。
なぜ動物はこの12種類なの?
十二支の動物は、
強さやかわいさでえらばれたわけではありません。
- 農業に関わる
- 人のくらしのそばにいる
- 自然の変化を感じやすい
といった点が重視されました。
また、
空想の動物である「龍」も入れることで、
自然の大きな力を表そうとしたとも考えられています。
「本当かどうか」より「どう伝えるか」
ここまで見てきたように、
十二支には、
- 事実としての歴史
- 物語としての説明
が混ざっています。
昔の人は、
「正しいかどうか」よりも、
どうすれば分かりやすく伝わるか
を大切にしていました。
だからこそ、十二支は、
長い時間をこえて、今も語りつがれているのです。
十干と組み合わさるとどうなる?(発展)
ここまで、十二支について見てきましたが、
「干支(えと)」という言葉には、実はもう一つの要素があります。
それが 十干(じっかん) です。
この章では、
- 十干とは何か
- なぜ十二支と組み合わせるのか
- 「甲子(きのえね)」や「還暦(かんれき)」の意味
を、分かりやすく解説します。
十干って何だろう?
十干とは、次の10個の名前のことです。
- 甲(こう)
- 乙(おつ)
- 丙(へい)
- 丁(てい)
- 戊(ぼ)
- 己(き)
- 庚(こう)
- 辛(しん)
- 壬(じん)
- 癸(き)
これらは、もともと
物事の順番や変化の流れを表すための記号のようなものでした。
むずかしく見えますが、
「1番目、2番目…」の代わりとして使われていた
と考えると分かりやすいでしょう。
なぜ十二支と組み合わせたの?
では、どうして十干と十二支を組み合わせたのでしょうか。
理由は、
年を長い期間にわたって区別するためです。
- 十二支だけ → 12通り
- 十干だけ → 10通り
これを組み合わせると、
10 × 12 = 60通り
になります。
つまり、
60年分の年を、すべてちがう名前で表せる
という、とても便利なしくみだったのです。
「干支」の本当の意味
私たちがふだん使っている「干支」という言葉は、
本来は、
十干+十二支の組み合わせ
を指しています。
たとえば、
- 甲子(きのえね)
- 乙丑(きのとうし)
- 丙寅(ひのえとら)
といった形です。
ただし、日常生活では、
十二支だけを指して「干支」と呼ぶことが多くなりました。
「甲子(きのえね)」ってどんな意味?
「甲子」は、
十干と十二支を組み合わせた中で、最初の組み合わせです。
- 甲 → はじまり
- 子 → 十二支の最初
つまり、
新しい流れのスタート
を表す特別な名前でした。
歴史の中では、
「甲子の年に新しいことを始める」
と考えられることもありました。
還暦はなぜ60年なの?
「還暦(かんれき)」は、
60歳のお祝いとして知られています。
これは、
生まれた年の干支に、60年後にもう一度もどる
ことから生まれた考え方です。
- 生まれた年 → ある干支
- 60年後 → 同じ干支に「還(もど)る」
つまり、還暦とは、
暦が一周して、また最初にもどること
をお祝いする行事なのです。
十干と十二支は「時間のものさし」
十干と十二支の組み合わせは、
占いのために生まれたものではありません。
- 年を正しく記録する
- 歴史を整理する
- 時間の流れを共有する
ための、知恵のしくみでした。
昔の人は、
長い時間を見わたすために、
このような工夫をしていたのです。
自由研究に使えるアイデア
ここまで学んだ十二支は、自由研究にもとても使いやすいテーマです。
調べる・まとめる・考える、の3つを意識して取り組んでみましょう。
アイデア① 十二支と時間・方角の図を作ろう
円をかいて、十二支を時計のように並べてみましょう。
- 上に「子(北)」
- 下に「午(南)」
- 右に「卯(東)」
- 左に「酉(西)」
と書くと、時間や方角の関係が一目で分かります。
アイデア② 桃太郎と方角の関係を調べよう
- 鬼門(丑寅)はどの方角?
- 申・酉・戌はどこにある?
地図や図を使って、昔話と方角のつながりをまとめてみましょう。
アイデア③ 国ごとの十二支を比べてみよう
日本・中国・ベトナムなどで、
- どの動物が同じ?
- どの動物がちがう?
なぜちがうのかを考えると、文化のちがいが見えてきます。
アイデア④ オリジナル十二支を考えてみよう
もし今のくらしに合わせて十二支を作るなら、
どんな動物をえらびますか?
理由もいっしょに書くと、立派な研究になります。
おさらいクイズ
クイズ①
十二支が、年だけでなく表していたものは次のうちどれでしょう?
- 時間や方角
- 天気の予想
- 動物の性格
正解は 1 です。
👉 十二支は、年・時間・方角を表すための大切なしくみでした。
クイズ②
鬼の姿(角と虎の皮)が表している十二支の組み合わせはどれでしょう?
- 子と卯
- 午と酉
- 丑と寅
正解は 3 です。
👉 鬼は「丑寅(北東=鬼門)」の方角から来る存在としてえがかれていました。
クイズ③
桃太郎の仲間(犬・猿・鳥)を十二支で表すと、どれにあたるでしょう?
- 申・酉・戌
- 寅・卯・辰
- 子・丑・寅
正解は 1 です。
👉 申・酉・戌は、鬼門(丑寅)の反対側に位置するという考え方があります。
まとめ
十二支は、
- 年を表すもの
- 時間を知るための道具
- 方角を伝えるしくみ
として、昔の人のくらしを支えてきました。
さらに、
- 鬼門の考え方
- 桃太郎などの昔話
- 年賀状やお正月の行事
とも深く結びついています。
十二支は、ただの動物の並びではなく、
自然とともに生きてきた人々の知恵の集まりなのです。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。


