
ふくらむ風船、へこむペットボトル、
なかなか開かないびんのフタ、
夏の線路にあるすき間――。
これらは一見、
バラバラの出来事に見えるかもしれません。
でも実は、すべて
空気・水・金属の性質 と深く関係しています。
空気は押し縮められ、
水は形を変え、
金属は目に見えないほど少しだけのびちぢみします。
温度が変わると、
それぞれのふるまいは大きく変化します。
ここでは、空気・水・金属を比べながら、
- なぜペットボトルはへこむのか
- なぜピンポン玉は元にもどるのか
- なぜ線路にはすき間があるのか
といった 身近な「なぜ?」 を、
実験や具体例を使ってやさしく解き明かします。
理科は、
覚える教科ではなく、
身の回りを理解するための教科 です。
空気・水・金属のひみつを知ることで、
いつもの景色が、
少しちがって見えてくるかもしれません。
- 空気・水・金属をくらべてみよう
- 物質の三つの状態とは何か
- 空気は押し縮められるが、水は押し縮められない
- 空気の弾性とは何か
- 空気の弾性が生かされている身近な例
- ペットボトルがへこむ・元に戻る理由
- ペットボトルロケットはなぜ飛ぶのか
- あたためると体積はどう変わる?
- ピンポン玉が元に戻る理由
- 熱気球はなぜ空に浮かぶのか
- 空気・水・金属の温まり方のちがい
- 水の状態変化と温度の関係
- 湯気・水蒸気・結露のちがい
- 雲と雨はどうやってできるのか
- 状態変化に必要なエネルギー
- 金属も温度でのびちぢみする
- 線路のつなぎめはなぜ必要?
- びんのフタが開かないときにお湯をかける理由
- バイメタルとサーモスタットの仕組み
- 気体係数と体積変化(発展)
- 自由研究に使えるアイデア
- おさらいクイズ
- まとめ
空気・水・金属をくらべてみよう
私たちのまわりには、さまざまな「もの」があります。
その中でも、理科でとくに大切に学ぶのが 空気・水・金属 です。
空気は目に見えず、手でつかむこともできません。
水は流れ、形を変えます。
金属はかたく、形がしっかりしています。
一見すると、まったくちがうもののようですが、
理科ではこの3つを 「比べる」 ことで、大切な性質が見えてきます。
なぜ「くらべる」ことが大切なの?
理科では、
「これはこうです」と一つだけ覚えるよりも、
- 何が同じで
- 何がちがうのか
を比べながら考えることが、とても大切です。
たとえば、
- 空気はふくらむ
- 水はあまりふくらまない
- 金属はほんの少ししか変わらない
というちがいを比べることで、
なぜ空気はタイヤやボールに使われるのか、
なぜ線路にはすき間があるのか といった理由が説明できるようになります。
空気・水・金属はどんな仲間?
理科では、ものの性質を考えるときに、
気体・液体・固体 という分け方をします。
- 空気 → 気体
- 水 → 液体
- 金属 → 固体
この分け方は、
「名前を覚えるため」ではなく、
性質のちがいを理解するためのものです。
これからの記事では、
- あたためたとき
- 冷やしたとき
- 押したとき
に、空気・水・金属が どう変わるのか を、
実験や身近な例を使いながら見ていきます。
見えない空気は、本当に「何もない」の?
空気は目に見えませんが、
決して「何もない」わけではありません。
空気には、
- 重さがある
- 場所をとる(体積がある)
- 押すと縮み、はなすと元にもどる
といった性質があります。
このあと学ぶ 体積変化 や 弾性 という考え方は、
すべて「空気がそこにある」という事実から始まります。
水や金属と比べると何がわかる?
水や金属は、
空気と同じように温度の影響を受けますが、
その変わり方は大きくちがいます。
- 空気は、少しの変化でも大きくふるまいが変わる
- 水は、たくさんの熱を加えても、ゆっくり変わる
- 金属は、変化は小さいが、生活や安全に大きく関係する
このちがいを理解すると、
- ピンポン玉が元に戻る理由
- ペットボトルロケットが飛ぶ仕組み
- 線路のつなぎめが必要な理由
が、すべて 一本の線でつながって 理解できるようになります。
これから何を学んでいくのか
この先の章では、次のようなことを順番に学んでいきます。
- 空気・水・金属は、どんな状態の仲間なのか
- 空気はなぜ押し縮められるのか
- 温度が変わると、体積はどう変わるのか
- その性質が、生活や技術でどう生かされているのか
理科は、
知ると世界の見え方が変わる教科 です。
まずは、
空気・水・金属という身近なものから、
「ちがい」に目を向けていきましょう。
物質の三つの状態とは何か
理科では、身の回りのものをそのまま覚えるのではなく、
性質の共通点で仲間分けして考えます。
そのときに使う大切な考え方が、物質の三つの状態です。
三つの状態とは、
気体・液体・固体 のことです。
気体・液体・固体のちがい
この三つの状態は、
「名前」よりも ふるまいのちがい に注目すると理解しやすくなります。
気体の特徴(例:空気)
- 形が決まっていない
- 容器いっぱいに広がる
- 押すと体積が小さくなる
- 粒と粒の間に大きなすき間がある
空気は、見えませんが、
場所をとり、動き回る粒の集まり です。
液体の特徴(例:水)
- 形は容器に合わせて変わる
- 体積はほぼ一定
- 押してもほとんど縮まらない
- 粒どうしが近く、動ける
水は、
「形は自由だが、量は変わらない」
という性質をもっています。
固体の特徴(例:金属)
- 形も体積も決まっている
- 押してもほとんど変わらない
- 粒がしっかり並び、動きにくい
金属は、
かたく、安定した形を保つ ため、
建物や道具に多く使われます。
粒(分子)の並び方で考える
三つの状態のちがいは、
粒の並び方と動き方 で説明できます。
- 気体:粒が遠く、自由に動き回る
- 液体:粒が近く、すべりながら動く
- 固体:粒が規則正しく並び、ほとんど動かない
このちがいが、
- 押せるかどうか
- 体積が変わるかどうか
- 形が保たれるかどうか
といった性質の差につながっています。
空気・水・金属はどの状態?
ここで、身近な三つを整理してみましょう。
- 空気 → 気体
- 水 → 液体
- 金属 → 固体
この分類をもとに考えると、
- なぜ空気はタイヤやボールに使えるのか
- なぜ水は形を保てないのか
- なぜ金属は少ししか変形しないのか
といった疑問を、
同じ考え方で説明できる ようになります。
状態は変わることもある
物質の状態は、
いつも同じとは限りません。
水を例にすると、
- 氷 → 固体
- 水 → 液体
- 水蒸気 → 気体
のように、
温度やエネルギー によって状態が変わります。
このような変化を
状態変化 といいます。
三つの状態を知る意味
物質の三つの状態を理解すると、
- 空気だけが押し縮められる理由
- 温度で体積が変わる理由
- 生活や技術での使い分け
が、すっきり説明できるようになります。
理科では、
見た目ではなく、性質で考える
という姿勢がとても大切です。
クイズ①
次のうち、気体の特徴として正しいものはどれでしょう?
- 形も体積も決まっている
- 押しても体積がほとんど変わらない
- 押すと体積が小さくなる
正解は 3 です。
👉 気体は粒と粒の間にすき間があり、押すと体積が小さくなります。
空気は押し縮められるが、水は押し縮められない
空気と水は、どちらも身の回りにある物質ですが、
「押したときの反応」 には大きなちがいがあります。
このちがいを理解することは、
空気の性質を考えるうえでとても重要です。
空気はなぜ押し縮められるのか
空気は 気体 です。
気体の粒(分子)は、粒どうしの間に 大きなすき間 をもっています。
そのため、
- 外から押す
- 粒どうしのすき間が小さくなる
- 全体の体積が小さくなる
という変化が起こります。
注射器の先をふさいでピストンを押すと、
中の空気が縮んで、押し返してくる感じがします。
これは、空気が 押し縮められた状態 になっている証拠です。
水はなぜ押し縮められないのか
水は 液体 です。
液体の粒は、すでに ぎゅっと近く に並んでいます。
そのため、
- 強く押しても
- 粒どうしのすき間がほとんどなく
- 体積がほぼ変わらない
という性質があります。
注射器に水を入れて押してみると、
ほとんど動かず、強い力が必要になります。
小中学生の学習では、
「水は押し縮められない」
と考えて問題ありません。
金属はどうなるのか
金属は 固体 です。
固体の粒は、
- 規則正しく並び
- しっかり結びついている
ため、空気や水よりもさらに押し縮めにくい性質があります。
金属を押して体積を変えるには、
とても大きな力が必要になります。
三つを比べて整理しよう
空気・水・金属を、
「押したときの変化」 で比べると、次のようになります。
- 空気:押すと体積が小さくなる
- 水:押しても体積はほとんど変わらない
- 金属:ほとんど変わらない
このちがいは、
粒の並び方とすき間の大きさのちがい
によって生まれています。
この性質はどんなところで重要?
空気が押し縮められる性質は、
- クッション
- 動力
- エネルギーのたくわえ
など、さまざまな場面で利用されています。
一方、水や金属は、
形や体積が変わりにくいからこそ、
別の役割で使われています。
クイズ②
次のうち、空気が押し縮められる理由として正しいものはどれでしょう?
- 空気には重さがないから
- 空気の粒どうしの間にすき間があるから
- 空気は水より冷たいから
正解は 2 です。
👉 気体の粒どうしにはすき間があり、押すとそのすき間が小さくなります。
空気の弾性とは何か
空気には、押し縮められるだけでなく、
もとにもどろうとする性質 があります。
この性質を 弾性(だんせい) といいます。
弾性とは、
押すと縮み、
はなすともとの大きさにもどろうとする性質
のことです。
空気は「見えないばね」
ばねを手で押すと、短くなります。
手をはなすと、ばねは元の長さに戻ります。
空気も、これとよく似ています。
- 押す → 体積が小さくなる
- はなす → 元の体積にもどろうとする
空気は、形は見えませんが、
中では強く押し返す力 が生まれています。
このため、空気は
「見えないばね」
と考えることができます。
なぜ空気には弾性があるのか
空気の粒(分子)は、
- 自由に動き回っている
- 粒どうしの間にすき間がある
という特徴をもっています。
空気を押し縮めると、
- 粒どうしの間隔がせまくなる
- 粒が元の広がった状態にもどろうとする
このときに生まれる力が、
空気の弾性 です。
水や金属と比べるとどうなる?
水や金属にも、わずかな弾性はあります。
しかし、
- 水はほとんど押し縮められない
- 金属は非常にかたい
ため、空気ほど
はっきりとした弾性のはたらき は見られません。
そのため、
- クッション
- 衝撃をやわらげる道具
には、
空気がとてもよく使われます。
弾性はエネルギーをたくわえられる
空気を押し縮めるとき、
外から力を加えています。
この力は、
- 空気の中に
- 元にもどろうとする力として
たくわえられます。
このように、
弾性によってたくわえられた力を
弾性エネルギー といいます。
このエネルギーは、
あとで物を動かす力として使うことができます。
空気の弾性が重要な理由
空気の弾性があるからこそ、
- 衝撃をやわらげる
- はね返る
- 物を動かす
といったはたらきが可能になります。
空気は、
ただそこにあるだけでなく、
力を生み出す性質をもった物質 なのです。
クイズ③
次のうち、空気の弾性を正しく説明しているものはどれでしょう?
- 空気は重くなると下に落ちる性質
- 空気は冷えると水になる性質
- 空気は押すと縮み、はなすともとにもどろうとする性質
正解は 3 です。
👉 空気は押し縮められるだけでなく、元の状態にもどろうとする弾性をもっています。
空気の弾性が生かされている身近な例
空気の弾性は、
教科書の中だけの話ではありません。
私たちの生活の中では、安全・快適・便利 のために、
空気の弾性がたくさん利用されています。
タイヤに空気が入っている理由
自転車や自動車のタイヤの中には、
たくさんの空気が入っています。
道の上には、
- 小さなでこぼこ
- 石
- 段差
がありますが、
タイヤの中の空気が一時的に縮むことで、
その衝撃をやわらげています。
もしタイヤの中が空気ではなく水だったら、
- 押しても縮まない
- 衝撃がそのまま伝わる
ため、乗り心地はとても悪くなります。
ボールがはねる理由
サッカーボールやバスケットボールも、
中に空気が入っています。
ボールが地面にぶつかると、
- 中の空気が押し縮められる
- 空気が元にもどろうとする
- その力でボールがはね返る
このときに働いているのが、
空気の弾性 です。
よくはねるボールほど、
中の空気がしっかり入っています。
空気はクッションの役目をする
空気は、
- 押されると縮み
- 力が弱まる
- すぐにもとにもどる
という性質をもつため、
クッション材 としてとても優れています。
この性質は、
- エアバッグ
- 体育館のマット
- 空気入りの靴底
など、
人の体を守る道具にも使われています。
なぜ水ではだめなのか
「水でも同じでは?」
と思うかもしれません。
しかし、水は、
- 押してもほとんど縮まらない
- 弾性がとても小さい
ため、
- 衝撃を吸収できない
- はね返る力が生まれにくい
という欠点があります。
このため、
弾性を必要とする場面では、空気が選ばれる
のです。
空気の弾性は目に見えないが強い
空気は目に見えませんが、
- 体を支える
- 衝撃をやわらげる
- 物をはね返す
といった、
はっきりとした力 を生み出します。
この力を理解することが、
次に学ぶ実験や現象を考える手がかりになります。
クイズ④
次のうち、空気の弾性が利用されているものはどれでしょう?
- ガラスのコップ
- 自転車のタイヤ
- 金属のスプーン
正解は 2 です。
👉 タイヤの中の空気は、押し縮められて元にもどろうとする弾性を利用しています。
ペットボトルがへこむ・元に戻る理由
ペットボトルは、
冷やしたり温めたりすると、
へこんだり、元にもどったり することがあります。
この現象は、
空気の 体積・圧力・周りから受ける力 を考えると説明できます。
冷やすと中の空気はどうなる?
ペットボトルの中には、
飲み物だけでなく 空気 も入っています。
この空気を冷やすと、
- 空気の温度が下がる
- 空気の動きが弱くなる
- 空気の体積が小さくなる
という変化が起こります。
つまり、
中の空気が縮む のです。
体積が小さくなると何が起こる?
中の空気の体積が小さくなると、
- ペットボトルの中から
- 外に向かって押す力が弱くなります
このとき、
ボトルの外側には 外の空気 があります。
外の空気は、
目に見えませんが、
常に周りを 強く押しています。
外の空気に押されるという考え方
中の空気の力が弱くなると、
- 外の空気の方が強くなる
- ペットボトルが外から押される
- ボトルがへこむ
という変化が起こります。
ペットボトルがへこむのは、
外の空気に押されているから です。
元に戻るのはなぜ?
へこんだペットボトルを温めると、
- 中の空気が温まる
- 空気の体積が大きくなる
- 内側から外に向かう力が強くなる
その結果、
ペットボトルは 元の形にもどります。
空気は「周りからも力を受けている」
この実験からわかる大切なことは、
- 空気は、内側から押すだけでなく
- 外側からも、常に押されている
ということです。
空気は、
- 見えない
- 触れない
けれど、
はっきりと力をもった存在 なのです。
クイズ⑤
冷やしたペットボトルがへこむ一番の理由はどれでしょう?
- ペットボトルのプラスチックが縮むから
- 中の空気の体積が小さくなり、外の空気に押されるから
- 水が重くなるから
正解は 2 です。
👉 中の空気が冷えて縮むと、外の空気の方が強くなり、ボトルがへこみます。
ペットボトルロケットはなぜ飛ぶのか
ペットボトルロケットは、
特別な燃料を使わなくても、
空気の力 で空高く飛びます。
このしくみの中心にあるのが、
押し縮められた空気 です。
押し縮められた空気にたまるエネルギー
ペットボトルロケットでは、
- ボトルに少量の水を入れる
- 空気をポンプで押し込む
ことで、
中の空気が 強く押し縮められた状態 になります。
このとき、
- 空気には
- 元にもどろうとする力
がたくわえられています。
これを
弾性エネルギー といいます。
空気が元に戻ろうとする力
発射の瞬間、
- ふたが外れる
- 押し縮められていた空気が
- 一気に元にもどろうとします
その力で、
中の水が 勢いよく下に押し出されます。
水の役割は何?
水は、
ロケットを飛ばす「燃料」ではありません。
水の役割は、
- 空気の力を受け止める
- 重さをもって外に飛び出す
ことです。
水が勢いよく下に出ることで、
強い反動 が生まれます。
作用・反作用の法則とのつながり
水が下に押し出されるとき、
- 下向きの力(作用)がはたらく
- 同じ大きさの力が、反対向き(上向き)にはたらく
この考え方を
作用・反作用の法則 といいます。
その反作用によって、
ペットボトルロケットは 上に飛ぶ のです。
ペットボトルロケットで重要なこと
- 空気は押し縮められる
- 押し縮められた空気は、大きな力を生む
- 空気の弾性エネルギーが運動に変わる
ペットボトルロケットは、
空気の性質を まとめて体感できる実験 です。
クイズ⑥
ペットボトルロケットが飛ぶ一番の理由はどれでしょう?
- 水が軽いから
- 太陽の熱で温まるから
- 押し縮められた空気が元にもどろうとする力がはたらくから
正解は 3 です。
👉 押し縮められた空気の弾性エネルギーが、水を押し出し、その反動でロケットが飛びます。
あたためると体積はどう変わる?
物質は、あたためたり冷やしたりすると、
大きさ(体積) が変わることがあります。
これを 体積変化 といいます。
体積変化は目に見えにくいこともありますが、
空気・水・金属では、その大きさに大きなちがいがあります。
体積変化とは何か
体積とは、
ものがしめている空間の大きさ のことです。
体積変化とは、
- あたためる → 体積が大きくなる
- 冷やす → 体積が小さくなる
という変化を表します。
すべての物質が同じように変わるわけではなく、
状態によって変化の大きさがちがう のが重要なポイントです。
空気・水・金属の体積変化を比べる
空気(気体)
- あたためると、はっきりと体積が大きくなる
- 冷やすと、体積が小さくなる
- 変化がとても大きい
空気は、
体積変化が いちばん分かりやすい物質 です。
水(液体)
- あたためると、少し体積が大きくなる
- 冷やすと、少し体積が小さくなる
- 変化は空気よりずっと小さい
水は体積変化が小さいため、
ふだんの生活では気づきにくいことが多いです。
金属(固体)
- あたためると、ごくわずかに体積が大きくなる
- 冷やすと、ごくわずかに体積が小さくなる
金属の変化はとても小さいですが、
長さが長くなると影響が大きくなる ことがあります。
なぜ気体の体積変化がいちばん大きいのか
気体の粒は、
- 粒どうしの間に大きなすき間があり
- 自由に動き回っている
という特徴をもっています。
あたためると、
- 粒の動きが激しくなる
- すき間がさらに広がる
その結果、
全体の体積が大きくなる のです。
温度と体積の基本的な関係
空気などの気体は、
- 温度が上がる → 体積が大きくなる
- 温度が下がる → 体積が小さくなる
という関係があります。
この関係は、
あとで学ぶ実験や現象を理解するための
とても大切な土台 になります。
クイズ⑦
次のうち、あたためたときに体積の変化が最も大きいものはどれでしょう?
- 水
- 金属
- 空気
正解は 3 です。
👉 気体である空気は、粒どうしのすき間が大きいため、体積変化が最も大きくなります。
ピンポン玉が元に戻る理由
へこんだピンポン玉をお湯に入れると、
元の形にもどる ことがあります。
この不思議な現象は、
空気の 体積変化 をとても分かりやすく示しています。
凹んだピンポン玉の中で起きていること
ピンポン玉の中には、
空気 が入っています。
へこんでいるとき、
- 外から力が加わり
- 中の空気の体積が小さくなっている
状態です。
温められた空気の体積変化
ピンポン玉をお湯に入れると、
- 中の空気が温められる
- 空気の粒の動きが激しくなる
- 空気の体積が大きくなる
という変化が起こります。
内側から押し返す空気の力
体積が大きくなろうとする空気は、
- ピンポン玉の内側から
- 外に向かって押す力
を生み出します。
この力によって、
へこんでいた部分が 内側から押し戻され、
ピンポン玉は元の形にもどります。
体積変化を「目で見る」実験
この実験のよい点は、
- 空気は見えない
- でも、体積が変わると
- 形が変わることで確認できる
というところです。
ピンポン玉は、
空気の体積変化を 目で確かめられる教材 といえます。
クイズ⑧
へこんだピンポン玉が元に戻る一番の理由はどれでしょう?
- プラスチックがとけるから
- 中の空気が温められて体積が大きくなり、内側から押すから
- 水が中にしみこむから
正解は 2 です。
👉 温められた空気が体積を大きくし、内側から押し返す力を生み出します。
熱気球はなぜ空に浮かぶのか
大きな袋に火を入れると、
人を乗せた気球が空に浮かび上がります。
この仕組みも、これまで学んできた
空気の温度と体積の関係 で説明できます。
空気をあたためると何が起こる?
熱気球の中では、
バーナーで空気をあたためています。
空気をあたためると、
- 空気の粒の動きが激しくなる
- 粒どうしの間が広がる
- 空気の体積が大きくなる
という変化が起こります。
体積が大きくなった空気は、
同じ体積の冷たい空気より
軽く なります。
「軽くなる」とはどういうこと?
ここで大切なのは、
空気の重さそのものが消えるわけではない
という点です。
あたためられた空気は、
- 同じ体積の中に
- 入っている粒の数が少なくなる
ため、
- 1m³あたりの重さ
- つまり「密度」が小さくなります
このため、
熱気球の中の空気は、
周りの冷たい空気より軽くなります。
周りの空気との重さ比べ
空気は、
軽いものは上へ、
重いものは下へ動く性質があります。
熱気球では、
- 中の空気:あたためられて軽い
- 外の空気:冷たくて重い
という状態になります。
すると、
- 周りの重い空気が下から押し上げる
- 軽い空気が上へ動く
結果として、
気球全体が空に浮かび上がる のです。
空気の体積変化が「動き」を生む
熱気球が浮かぶのは、
- 空気をあたためたから
- 体積が大きくなったから
だけではありません。
- 体積が大きくなる
- 同じ体積あたりの重さが小さくなる
- 周りの空気とのちがいが生まれる
という一連の変化が、
上に向かう動き を生み出しています。
空気を冷やすとどうなる?
バーナーを弱めると、
- 中の空気が冷える
- 空気の体積が小さくなる
- 重さが増える
その結果、
熱気球はゆっくりと
地面に下りてきます。
熱気球から学べること
熱気球は、
- 空気は温度で体積が変わる
- 体積が変わると、重さの感じ方が変わる
- 周りとのちがいが、動きを生む
ということを、
とても分かりやすく示しています。
目に見えない空気でも、
性質を理解すれば、
人を空に運ぶ力を生み出せるのです。
クイズ⑨
熱気球が空に浮かぶ一番の理由はどれでしょう?
- 火で空気が燃えてなくなるから
- あたためられた空気の体積が大きくなり、周りの空気より軽くなるから
- 太陽の光をたくさん集めているから
正解は 2 です。
👉 空気をあたためると体積が大きくなり、同じ体積あたりの重さが小さくなるため、周りの空気に押し上げられます。
空気・水・金属の温まり方のちがい
― 対流と伝導で考えよう ―
同じようにあたためても、
空気・水・金属では 温まり方の様子 が大きくちがいます。
その理由は、
熱の伝わり方 がちがうからです。
理科では、ここで
対流 と 伝導 という考え方を使います。
熱はどのように伝わるのか
熱の伝わり方には、いくつかの種類がありますが、
ここでは次の2つを考えます。
- 対流:あたたまった部分が動いて、熱が伝わる
- 伝導:物質の中を、順番に熱が伝わる
空気・水・金属は、
この どちらが起こりやすいか がちがいます。
空気は「対流」で温まる
空気は 気体 です。
気体は自由に動けるため、
あたためると 対流 が起こります。
空気をあたためると、
- あたたまった空気は軽くなる
- 上へ動く
- 冷たい空気が下から入ってくる
この動きがくり返されることで、
空気全体に熱が広がります。
部屋で暖房をつけると、
- 天井付近が先に暖かくなる
のは、
空気の対流 が起きているからです。
水も「対流」で温まる
水は 液体 ですが、
空気と同じように 対流 が起こります。
なべで水をあたためると、
- 底の水が先に温まる
- 温まった水が上に動く
- 冷たい水が下に下がる
という動きが起こります。
このように、水も
- あたたまった部分が動くことで
- 全体が温まっていく
という性質をもっています。
金属は「伝導」で温まる
金属は 固体 です。
固体は、粒がしっかり並んでいるため、
全体が動くことはできません。
その代わり、金属では
伝導 という方法で熱が伝わります。
金属をあたためると、
- あたためられた部分の粒がふるえる
- そのふるえが、となりの粒に伝わる
- 順番に熱が伝わっていく
このため、金属は
- さわるとすぐに熱く感じる
- フライパンの取っ手まで熱くなる
といった性質を示します。
なぜ金属はすぐに熱くなるのか
金属は、
- 粒どうしが近く
- 熱を伝えやすい
という特徴をもっています。
このため、
金属は 熱の伝導がとても速い物質 なのです。
一方、空気や水は、
- 伝導はあまり得意ではなく
- 主に対流によって温まる
というちがいがあります。
温まり方のちがいを整理しよう
空気・水・金属を
熱の伝わり方 で整理すると、次のようになります。
- 空気:対流で温まる
- 水:対流で温まる
- 金属:伝導で温まる
このちがいを理解すると、
- 暖房の効き方
- なべやフライパンの使い方
- 火傷に注意が必要な理由
などが、理科的に説明できるようになります。
クイズ⑩
次のうち、金属が温まるときの主な熱の伝わり方はどれでしょう?
- 対流
- 伝導
- 蒸発
正解は 2 です。
👉 金属では、物質全体が動く対流ではなく、粒から粒へと熱が伝わる伝導が起こります。
水の状態変化と温度の関係
水は、温度によって
固体・液体・気体 へと姿を変える物質です。
この変化を 状態変化 といいます。
水は身近で観察しやすいため、
状態変化を学ぶ代表的な物質として、
理科でくり返し登場します。
氷・水・水蒸気のちがい
水には、次の三つの状態があります。
- 氷:固体
- 水:液体
- 水蒸気:気体
見た目や性質は大きくちがいますが、
どれも 同じ「水」 です。
ちがいは、
水の粒の 動き方と並び方 にあります。
0℃と100℃という大切な温度
水の状態変化には、
特に重要な温度があります。
- 0℃:
氷がとけて水になる温度 - 100℃:
水が沸騰して水蒸気になる温度
これらは、
1気圧のもとでの温度 です。
学校の理科では、
この2つの温度を基準として考えます。
氷がとけるときに起こること
氷をあたためていくと、
- 氷の温度が上がる
- 0℃になる
- そこからとけ始める
ここで大切なのは、
氷がとけている間、温度は0℃のまま
という点です。
あたため続けているのに、
温度が上がらないのは、
- 加えたエネルギーが
- 氷を水に変えるために使われている
からです。
水が沸騰するときに起こること
水をあたため続けると、
- 温度がだんだん上がる
- 100℃になる
- そこから沸騰が始まる
沸騰している間も、
- 水の温度は100℃のまま
- それ以上は上がりません
このときのエネルギーも、
水を水蒸気に変えるため に使われています。
温度が変わらない時間がある理由
状態変化の途中では、
- 温度が上がらない
- でも、エネルギーは加えられている
という不思議なことが起こります。
これは、
- 粒どうしの結びつきを切る
- 粒の動き方を変える
ために、
エネルギーが使われているからです。
この考え方は、
あとで学ぶ エネルギーの章 で、
さらにくわしく説明します。
水の状態変化を整理しよう
水の状態変化をまとめると、
- 氷 → 水:0℃でとける
- 水 → 水蒸気:100℃で沸騰する
というように、
温度と状態は深く関係 しています。
水は、
状態変化と温度の関係を学ぶうえで、
とても分かりやすい物質です。
クイズ⑪
氷がとけて水になる途中で、
温度が 0℃のまま変わらない 理由として正しいものはどれでしょう?
- 火を弱くしているから
- 加えたエネルギーが、氷を水に変えるために使われているから
- 氷が冷たい空気を出しているから
正解は 2 です。
👉 状態変化の途中では、エネルギーは温度を上げるのではなく、物質の状態を変えるために使われます。
湯気・水蒸気・結露のちがい
やかんから立ちのぼる白いものや、
冷たいコップのまわりにつく水。
これらはすべて 水に関係する現象 ですが、
同じものではありません。
ここでは、
湯気・水蒸気・結露 のちがいを、
温度と状態変化の視点から整理します。
水蒸気とは何か
水蒸気 とは、
水が 気体の状態 になったものです。
水蒸気は、
- 目に見えない
- 空気中に広がる
- 気体としてふるまう
という性質をもっています。
実は、
空気中にはいつも水蒸気がふくまれており、
完全に乾いた空気というものは、
ほとんど存在しません。
湯気の正体は何か
やかんやなべから出る
白く見えるもやもやは、
水蒸気そのものではありません。
あれは、
- 水蒸気が冷やされて
- 細かい水のつぶ(液体)になったもの
です。
つまり、
湯気は液体の水 です。
白く見えるのは、
光が細かい水のつぶに反射しているからです。
水蒸気と湯気のちがいを整理
混同しやすいので、
ここで整理しておきましょう。
- 水蒸気:
・目に見えない
・気体 - 湯気:
・白く見える
・細かい水のつぶ(液体)
やかんの口のすぐ近くでは、
実は 透明な水蒸気 が出ています。
結露とは何か
結露(けつろ) とは、
空気中の水蒸気が冷やされて、
液体の水に変わること です。
たとえば、
- 冷たいコップの表面
- 冬の窓ガラス
に水がつく現象が、結露です。
結露が起こる理由
空気中には、
温度によって
- ふくむことができる水蒸気の量
- ふくめる限界
があります。
空気が冷やされると、
- ふくめる水蒸気の量が減る
- 余った水蒸気が水になる
このときに起こるのが、
結露 です。
飽和水蒸気量という考え方
空気が、
- その温度で
- これ以上水蒸気をふくめない
限界の量を
飽和水蒸気量 といいます。
- 温度が高い → 多くの水蒸気をふくめる
- 温度が低い → 少ししかふくめない
結露は、
この限界をこえたときに起こります。
身近な例で考えてみよう
- 夏、冷たい飲み物のコップがぬれる
- 冬、窓ガラスに水がつく
これらはすべて、
- 空気中の水蒸気
- 温度の変化
- 状態変化
が関係した現象です。
クイズ⑫
次のうち、白く見える「湯気」の正体として正しいものはどれでしょう?
- 気体の水蒸気
- 煙
- 細かい水のつぶ(液体)
正解は 3 です。
👉 湯気は、水蒸気が冷やされてできた細かい水のつぶで、液体の水です。
雲と雨はどうやってできるのか
空気中の水蒸気が、
温度の変化によって水になる現象は、
雲や雨 として空の上でも起こっています。
冷たいコップに水がつく「結露」は、
雲や雨ができる仕組みを、
地上で小さく再現したもの と考えることができます。
空気中には水蒸気がふくまれている
空を見上げても、
水は見えません。
しかし空気の中には、
目に見えない水蒸気 がたくさんふくまれています。
水たまりや海、川から水が蒸発し、
- 水 → 水蒸気
となって、
空気中に広がっています。
空気が冷えると何が起こる?
空気は、
温度が高いほど
多くの水蒸気をふくむ ことができます。
しかし、
- 空気が上空へ上がる
- 夕方や夜になって冷える
などして温度が下がると、
- 空気がふくめる水蒸気の量が減る
という変化が起こります。
雲ができる仕組み
冷やされた空気の中では、
- ふくみきれなくなった水蒸気が
- 細かい水のつぶや氷のつぶ
に変わります。
この、
- とても小さな水や氷の集まり
が、雲 です。
雲は、
- 水蒸気そのものではなく
- 水や氷のつぶ
でできています。
雨はどうして降るのか
雲の中では、
- 水のつぶどうしがぶつかる
- くっついて、だんだん大きくなる
ということが起こっています。
つぶが大きくなると、
- 空気にささえきれなくなり
- 重さで落ちてくる
これが 雨 です。
雪やひょうになることもある
雲の中の温度が低いと、
- 水のつぶが凍って
- 氷のつぶ
になることがあります。
その場合、
- 雪
- みぞれ
- ひょう
として地上に降ってきます。
これもすべて、
水の状態変化 による現象です。
結露・雲・雨は同じ仲間
ここまでの内容をまとめると、
- 結露:
冷えたものの表面で水蒸気が水になる - 雲:
空気が冷えて水蒸気が水や氷になる - 雨:
水のつぶが大きくなって落ちてくる
というように、
すべて同じしくみ で説明できます。
身近なコップの水から、
空の雲や雨まで、
理科は一つの考え方でつながっています。
状態変化に必要なエネルギー
― カロリーとジュールで考える ―
物質の状態が変わるときには、
必ずエネルギー が関わっています。
水が氷から水になったり、
水から水蒸気になったりするとき、
エネルギーは 温度を上げるため ではなく、
状態を変えるため に使われます。
エネルギーの大きさを表す単位
エネルギーの大きさは、
数値と単位 で表します。
理科でよく使われる単位は次の2つです。
- カロリー(cal)
- ジュール(J)
現在、国際的には
ジュール(J) が正式な単位ですが、
水の状態変化では カロリー もよく使われます。
カロリーとは何か
1カロリー(1cal) とは、
水1gの温度を
1℃上げるのに必要なエネルギー
のことです。
たとえば、
- 水100gの温度を1℃上げる
→ 100cal のエネルギーが必要になります。
ジュールとの関係
カロリーとジュールは、
次のように変換できます。
- 1cal ≒ 4.2J
つまり、
- 100cal ≒ 420J
という関係になります。
氷がとけるときに必要なエネルギー
0℃の氷が水に変わるとき、
温度は変わりません。
しかし、このときにも
多くのエネルギー が必要です。
氷1gがとけるには、
- 約80cal
- ジュールで表すと 約336J
のエネルギーが必要です。
このエネルギーは、
- 温度を上げるためではなく
- 氷の粒どうしの結びつきを切るため
に使われています。
水が水蒸気になるときのエネルギー
100℃の水が水蒸気になるときも、
温度は100℃のまま変わりません。
しかし、このときに必要なエネルギーは、
氷がとけるときより ずっと大きく なります。
水1gが水蒸気になるには、
- 約540cal
- ジュールで表すと 約2260J
ものエネルギーが必要です。
数値から分かること
ここで数値を比べてみましょう。
- 氷1gを水にする:80cal
- 水1gを水蒸気にする:540cal
水蒸気になるときには、
- 氷がとけるときの
- 約7倍
ものエネルギーが必要です。
これは、
- 粒どうしが
- ほとんど自由に動ける状態
に変わるため、
強い結びつきを大きく引きはがす必要があるからです。
潜熱という考え方
状態変化のときに使われ、
- 温度を変えず
- 状態だけを変える
エネルギーを
潜熱(せんねつ) といいます。
- 氷がとけるときの潜熱
- 水が水蒸気になるときの潜熱
どちらも、
目に見えないが確かに存在するエネルギー です。
身近な生活とのつながり
このエネルギーの大きさは、
私たちの生活にも深く関係しています。
- 夏に汗をかくと体が冷える
→ 汗(水)が水蒸気になるとき、
体から多くのエネルギーをうばう - やけどに注意が必要
→ 水蒸気は、
大きなエネルギーをもっている
水の状態変化は、
体温調節や安全 にも関係しているのです。
クイズ⑬
水1gが 水蒸気になるとき に必要なエネルギーとして正しいものはどれでしょう?
- 約80cal
- 約100cal
- 約540cal
正解は 3 です。
👉 水が水蒸気になるときには、温度を上げる以上に大きなエネルギー(潜熱)が必要になります。
金属も温度でのびちぢみする
金属は、かたくて形が変わらないように見えますが、
実は 温度が変わると、少しだけのびたり、ちぢんだり します。
この性質を 熱膨張(ねつぼうちょう) といいます。
金属の熱膨張とは何か
金属をあたためると、
- 金属の粒が激しくふるえる
- 粒と粒の間がわずかに広がる
その結果、
金属全体の 長さや体積が少し大きく なります。
反対に、
- 冷やすと
- 粒の動きが小さくなり
- 金属は少しちぢみます
この変化はとても小さいため、
短い金属では気づきにくいことが多いです。
どれくらいのびるのか(数値で考える)
鉄を例にすると、
- 鉄は 1mあたり、1℃で約0.012mm のびます
一見すると、
とても小さな変化に見えます。
しかし、
- 長さが長い
- 温度差が大きい
と、その影響は無視できなくなります。
小さな変化が大きな問題になる理由
たとえば、
- 長さ25mの鉄のレール
- 夏と冬で30℃の温度差
があるとすると、
0.012mm × 25 × 30
→ 約9mm
つまり、
1cm近く のびちぢみする計算になります。
このように、
- 金属の変化は小さくても
- 長さが集まると
- 大きな影響になる
ことがわかります。
金属が動くことを前提にした工夫
金属の熱膨張を考えずに使うと、
- 曲がる
- 壊れる
- 事故につながる
おそれがあります。
そのため、
実際の生活や技術では、
- のびちぢみを見こして作る
- 逃げ道を用意する
といった工夫がされています。
金属は「変わらない」のではない
金属は、
- 形がしっかりしている
- かたい
という理由から、
「変わらないもの」
と思われがちです。
しかし実際には、
- 温度によって
- 確実に変化している
という点が重要です。
理科では、
変化が小さくても意味がある
という視点を大切にします。
クイズ⑭
鉄1mを 10℃あたためたとき、
のびる長さとして最も近いものはどれでしょう?
(鉄は1mあたり1℃で約0.012mmのびる)
- 約0.12mm
- 約1.2mm
- 約12mm
正解は 1 です。
👉 0.012mm × 10℃ = 0.12mm となります。
線路のつなぎめはなぜ必要?
電車が走る線路は、
一本の長い金属ではなく、
いくつものレールをつなぎ合わせて作られています。
そのとき、
レールとレールの間には
わずかなすき間 があけられています。
夏と冬で何がちがうのか
線路は、
一年中、屋外にあります。
- 夏:強い日差しで高温になる
- 冬:冷え込み、低温になる
レールは鉄でできているため、
温度の変化によって
のびたり、ちぢんだり します。
もし、すき間がなかったら
もしレールを、
- すき間をあけず
- ぴったりつないでしまう
と、夏に問題が起こります。
- レールがあたたまってのびる
- のびる場所がなくなる
- レールが押し合う
その結果、
- レールが曲がる
- 持ち上がる
といった現象が起こります。
これを
座屈(ざくつ) といいます。
座屈はなぜ危険なのか
レールが曲がると、
- 電車が安定して走れなくなる
- 脱線などの事故につながる
おそれがあります。
そのため、
金属ののびちぢみを考えた
安全のための工夫 が必要になります。
すき間はどれくらいあるのか
実際の線路では、
- レール1本(約25m)ごとに
- 数ミリから1cmほど
のすき間が設けられています。
これは、
- 金属の熱膨張の大きさ
- 夏と冬の温度差
を計算して決められています。
最近の線路の工夫
最近では、
- レールを長くつないだ
ロングレール
も多く使われています。
ロングレールでは、
- レールの固定方法
- 温度変化を見こした設計
などによって、
のびちぢみの影響を
安全にコントロールしています。
理科と社会がつながる例
線路のつなぎめは、
- 金属の性質
- 温度による体積変化
といった理科の知識が、
社会の安全を支えている 例です。
目に見えない数ミリの変化が、
人の命を守る工夫につながっています。
クイズ⑮
線路にすき間があけられている一番の理由はどれでしょう?
- 雨水を流すため
- 金属が温度でのびちぢみするから
- 電車を止めやすくするため
正解は 2 です。
👉 鉄のレールは温度でのびちぢみするため、その変化を逃がすすき間が必要です。
びんのフタが開かないときにお湯をかける理由
かたいフタのびんが開かず、
お湯をかけたら開きやすくなった、
という経験はありませんか。
これは偶然ではなく、
金属の性質と温度による体積変化 を利用した方法です。
びんとフタは何でできている?
多くのびんは、
- 本体:ガラス
- フタ:金属
でできています。
この 材料のちがい が、
フタが開きやすくなる理由と深く関係しています。
金属は温めるとどうなる?
金属は、温められると、
- 粒の動きが激しくなる
- 粒どうしの間が少し広がる
- 全体の大きさがわずかに大きくなる
という性質があります。
これを
金属の熱膨張 といいます。
お湯をかけると起きていること
フタの部分にお湯をかけると、
- 金属のフタが先に温まる
- フタの直径がごくわずかに大きくなる
一方、
ガラスのびん本体は、
- 金属ほど早く温まらず
- 体積変化も小さい
ため、
フタとびんの間に
ほんの少しのすき間 が生まれます。
ほんのわずかな変化が大きな違いに
金属のフタが広がる量は、
- 目では見えないほど
- ミリ以下の変化
です。
しかし、
- ねじのかみ合わせ
- フタとびんの密着
はとても精密なため、
ほんのわずかな変化 でも
回しやすさが大きく変わります。
中の空気の影響もある
びんの中には、
液体だけでなく 空気 も入っています。
フタを温めると、
- 中の空気も少し温まる
- 空気の体積が大きくなろうとする
その結果、
- 内側から外に向かう力
がわずかに強くなり、
フタが開きやすくなります。
なぜ水をかけるのではなく「お湯」なのか
冷たい水をかけても、
- 金属はほとんど温まらず
- 体積変化が起こらない
ため、効果はほとんどありません。
温度を上げること が、
この方法のポイントです。
生活の中の理科の知恵
びんのフタを温める方法は、
- 金属の熱膨張
- 空気の体積変化
という理科の性質を、
無意識に利用している例 です。
理科の知識は、
生活の中で自然に役立っています。
クイズ⑯
びんのフタにお湯をかけると開きやすくなる主な理由はどれでしょう?
- ガラスがやわらかくなるから
- 金属のフタが温まって少し広がるから
- 水がフタのすき間に入るから
正解は 2 です。
👉 金属は温めるとわずかに広がり、フタとびんの間にすき間ができるため開きやすくなります。
バイメタルとサーモスタットの仕組み
温度が変わると、自動で電源が切れたり入ったりする機器があります。
その中心で働いているのが、バイメタル というしくみです。
バイメタルは、
金属の温度によるのびちぢみのちがい を利用した装置です。
バイメタルとは何か
バイメタルとは、
- のび方がちがう
- 2種類の金属
を、
ぴったりと貼り合わせたものです。
この2つの金属は、
- 同じ温度でも
- のびる量がちがう
という性質をもっています。
温度が変わるとどうなる?
バイメタルをあたためると、
- よくのびる金属は大きくのびる
- あまりのびない金属は少ししかのびない
このちがいによって、
バイメタル全体が 曲がる ようになります。
冷やすと、
- 反対向きに曲がる
- または元の形にもどる
という変化が起こります。
なぜ曲がるのか
2種類の金属が、
- ばらばらにあれば
- それぞれ自由にのびちぢみできます
しかし、バイメタルでは、
- 2つの金属がくっついている
- 同じ長さでいなければならない
ため、
のび方のちがいが 曲がり として現れます。
サーモスタットとは何か
サーモスタット とは、
- 温度を感じ取り
- 自動で電気を切ったり入れたりする
装置のことです。
多くのサーモスタットでは、
バイメタルが使われています。
サーモスタットの動き
温度が上がると、
- バイメタルが曲がる
- 電気の接点がはなれる
- 電気が切れる
温度が下がると、
- バイメタルが元にもどる
- 接点がつながる
- 電気が入る
というしくみです。
どんなところで使われている?
バイメタルとサーモスタットは、
- エアコン
- 冷蔵庫
- 電気ポット
- トースター
など、
温度を一定に保つ必要のある機器に
広く使われています。
小さな変化を大きな動きに変える工夫
金属ののびちぢみは、
- とても小さな変化
です。
しかしバイメタルは、
- のび方のちがいを利用し
- 曲がりという大きな動きに変える
ことで、
温度を感じるセンサー として働いています。
理科の性質が技術になる
バイメタルは、
- 金属の熱膨張
- 温度変化
という理科の性質を、
そのまま 技術として生かした例 です。
理科の知識は、
私たちの生活を支える
しくみの中で活躍しています。
クイズ⑰
バイメタルが曲がる理由として正しいものはどれでしょう?
- 金属がとけるから
- 2種類の金属ののび方がちがうから
- 空気が入っているから
正解は 2 です。
👉 バイメタルは、温度によってのびる量がちがう2種類の金属を貼り合わせているため、曲がります。
気体係数と体積変化(発展)
これまでに、
空気は温度によって体積が大きく変わることを学びました。
この関係を、数で表して考える方法 が
気体係数 や 法則 です。
ここでは、
中学生以上向けの発展内容 として、
考え方を中心に説明します。
気体の体積は温度と深く関係している
空気などの気体は、
- 温度が上がる → 体積が大きくなる
- 温度が下がる → 体積が小さくなる
という性質があります。
この関係は、
- 偶然ではなく
- 一定のきまり
にしたがっています。
絶対温度という考え方
気体の体積を正しく考えるときには、
絶対温度 を使います。
絶対温度は、
- 単位:K(ケルビン)
- 0Kは、これ以上冷やせない温度(絶対零度)
です。
身近な温度(℃)とは、
次の関係があります。
- 絶対温度(K)= 温度(℃)+ 273
たとえば、
- 0℃ → 273K
- 27℃ → 300K
となります。
シャルルの法則
圧力が変わらないとき、
気体の体積と温度には
次の関係があります。
気体の体積は、
絶対温度に比例する
これを
シャルルの法則 といいます。
つまり、
- 温度が2倍 → 体積も約2倍
という関係です。
数で見てみよう(具体例)
たとえば、
- 0℃(273K)のとき
- 空気の体積を100とする
と、
10℃(283K)では、
100 × 283 ÷ 273 ≒ 104
つまり、
約4% 体積が大きくなります。
このように、
- 1℃あたり
- 約1/273ずつ
体積が増えると考えられます。
この
1/273 という数が、
気体係数 の考え方です。
気体係数とは何か
気体係数とは、
気体の体積が
温度1℃の変化で
どれくらい変わるか
を表した数です。
空気の場合、
- 1℃上がるごとに
- 体積が 約1/273 増える
と考えることができます。
なぜ気体だけ変化が大きいのか
気体は、
- 粒どうしの間に大きなすき間がある
- 粒が自由に動き回る
という性質があります。
温度が上がると、
- 粒の動きが激しくなり
- すき間がさらに広がる
ため、
体積の変化が大きくなります。
数式よりも意味を大切にしよう
シャルルの法則は、
数式で表すこともできます。
- V₁ / T₁ = V₂ / T₂
しかし、ここで大切なのは、
- 暗記すること
- 計算すること
ではありません。
温度が上がると、気体は大きく広がる
という考え方を理解することです。
クイズ⑱
空気の体積について、正しい考え方はどれでしょう?
- 温度が上がっても体積は変わらない
- 温度が下がると体積が大きくなる
- 圧力が同じなら、温度が上がると体積は大きくなる
正解は 3 です。
👉 圧力が一定のとき、気体の体積は温度(絶対温度)に比例して大きくなります。
自由研究に使えるアイデア
ここでは、
これまで学んできた 空気・水・金属の性質 を使って、
実際に試せる自由研究のアイデアを紹介します。
どれも、
- 特別な道具がいらない
- 家や学校で安全にできる
- 「なぜ?」を考えやすい
ことを大切にしています。
① 空気は押し縮められる?水はどうだろう?
テーマ例
空気と水は、どちらが押し縮められるのか
方法
- 注射器を2本用意する
- 1本には空気、もう1本には水を入れる
- 先をふさいで、ピストンを押す
観察ポイント
- どちらが押しやすいか
- 押したあと、元にもどるか
まとめの視点
- 空気にはすき間がある
- 水はほとんど縮まらない
👉 気体と液体の決定的なちがいが分かります。
② ペットボトルはなぜへこむ?
テーマ例
冷やすとペットボトルがへこむ理由
方法
- 少量のお湯を入れたペットボトルを振って温める
- フタをしっかり閉める
- 冷水につける
観察ポイント
- へこむタイミング
- どれくらいへこむか
まとめの視点
- 中の空気が冷えて体積が小さくなる
- 外の空気に押されてへこむ
👉 「空気は周りからも力を受けている」ことが分かります。
③ ピンポン玉はどうして元にもどる?
テーマ例
空気の体積変化を目で見てみよう
方法
- へこんだピンポン玉を用意
- お湯(60〜80℃程度)に入れる
※ やけどに注意
観察ポイント
- どのくらいで元にもどるか
- 完全にもどるか
まとめの視点
- 中の空気が温められて体積が大きくなる
- 内側から押す力が生まれる
👉 空気の体積変化を「形」で確認できます。
④ ペットボトルロケットを飛ばしてみよう
テーマ例
押し縮められた空気のエネルギー
方法
- ペットボトルに少量の水を入れる
- 空気をポンプで押し込む
- 安全な場所で発射
観察ポイント
- 水の量を変えるとどうなるか
- 空気を多く入れるとどうなるか
まとめの視点
- 空気の弾性エネルギー
- 作用・反作用の法則
👉 物質・エネルギー・力がつながります。
⑤ 水の状態変化と温度を調べよう
テーマ例
氷がとけるとき、温度はどうなる?
方法
- 氷をビーカーやコップに入れる
- 温度計で温度をはかりながら観察
観察ポイント
- 氷がとけている間の温度
- 水になった後の温度変化
まとめの視点
- 状態変化中は温度が変わらない
- エネルギーは状態を変えるために使われる
👉 潜熱の考え方につながります。
⑥ 結露はいつ起こりやすい?
テーマ例
結露と温度の関係を調べよう
方法
- 冷たい水を入れたコップを用意
- 部屋の温度を変えて観察
観察ポイント
- 水がつき始める時間
- 温度によるちがい
まとめの視点
- 空気中の水蒸気
- 飽和水蒸気量
👉 天気や生活とのつながりが見えます。
⑦ 金属はどれくらいのびるのか
テーマ例
金属の熱膨張を確かめてみよう(発展)
方法(例)
- 金属の定規を温める(手やぬるま湯)
- 目印をつけて変化を見る
※ 実験が難しい場合は
計算による調査研究 でもOK
まとめの視点
- 変化は小さくても意味がある
- 線路やびんのフタにつながる
自由研究をまとめるときのコツ
- 「何を調べたか」をはっきり書く
- 予想 → 実験 → 結果 → 考察 の順にまとめる
- うまくいかなかったことも書く
理科の自由研究は、
正解を出すことより、考えたことが大切 です。
おさらいクイズ
クイズ①
次のうち、押し縮めることができる物質はどれでしょう?
- 金属
- 水
- 空気
正解は 3 です。
👉 空気は気体で、粒どうしの間にすき間があるため、押すと体積が小さくなります。
クイズ②
冷やしたペットボトルがへこむ主な理由はどれでしょう?
- ペットボトルの材料がとけるから
- 中の空気が冷えて体積が小さくなり、外の空気に押されるから
- 水が重くなるから
正解は 2 です。
👉 中の空気の力が弱くなり、外の空気の圧力でへこみます。
クイズ③
金属が温まるときの 主な熱の伝わり方 はどれでしょう?
- 対流
- 蒸発
- 伝導
正解は 3 です。
👉 金属では、粒から粒へと熱が伝わる「伝導」が起こります。
クイズ④
水1gが 水蒸気になるとき に必要なエネルギーとして正しいものはどれでしょう?
- 約540cal
- 約80cal
- 約10cal
正解は 1 です。
👉 水が水蒸気になるときには、非常に大きなエネルギー(潜熱)が必要です。
クイズ⑤
線路にすき間があけられている一番の理由はどれでしょう?
- 雨水を流すため
- 金属が温度でのびちぢみするから
- 電車の音を小さくするため
正解は 2 です。
👉 金属は温度によってのびちぢみするため、その変化を逃がす必要があります。
まとめ
空気・水・金属は、
見た目も手ざわりも大きくちがいますが、
理科では 性質を比べることで共通点とちがい が見えてきます。
空気は、
押し縮めることができ、
温度によって体積が大きく変わる 気体 です。
この性質が、
タイヤやボール、ペットボトルロケットなどに
生かされています。
水は、
形は変わっても体積はほとんど変わらない 液体 です。
0℃や100℃といった温度で状態が変わり、
そのときには温度を上げるのではなく、
状態を変えるためにエネルギーが使われます。
金属は、
かたくて変わらないように見えますが、
実は温度によって わずかにのびちぢみ します。
その小さな変化を考えて、
線路のつなぎめやバイメタルなどの工夫が
生活や安全を支えています。
また、
熱の伝わり方には 対流 と 伝導 があり、
空気や水、金属では
温まり方がちがうことも分かりました。
身の回りのふしぎは、
理科の考え方で説明できます。
空気・水・金属の性質を知ることで、
毎日の生活や自然の見え方が、
少しちがって見えてくるはずです。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。


