
「憲法(けんぽう)」って聞いたことありますか?
ニュースや授業で出てくるけれど、「なんとなく難しそう…」と思う人も多いかもしれません。
でも、憲法は みんなの生活を守るための「国の基本ルール」 なんです。
学校の校則やクラスのきまりがあるように、国にも一番大事なルールがある。それが憲法です。
この記事では、小中学生にもわかりやすく 憲法の意味・日本国憲法の三大原則・憲法と法律のちがい・改正のしくみ を紹介します。
最後にはおさらいクイズや自由研究のヒントもあるので、授業のまとめや調べ学習にも役立ちますよ。
憲法とはなに?【小中学生向けにわかりやすく解説】
憲法は、国の中で一番大切な「ルールブック」です。
ほかのどんな法律やきまりよりも上にあって、すべてのルールは憲法に反してはいけません。
たとえば、サッカーの試合を思い出してください。
「ボールを手で持ってはいけない」「オフサイドがある」といったルールは細かい決まりごとですが、もし「点を入れなくても勝ちにしていい」なんて決まりが急にできたらどうでしょう?
それはサッカーそのものが成り立たなくなってしまいます。
国でも同じで、憲法は「サッカーのルール全体」にあたる大もと。
その下に「学校の校則のような」法律や条例があります。
憲法があると守られること
- どんな人も平等に扱われること
- 自分の意見を言ったり、信じることを大事にできること
- 平和に安心してくらせること
もし憲法がなければ、国のえらい人が好き勝手に法律を作ってしまい、国民の自由がなくなる危険があります。
👉 憲法は「国のルールの王様」であり、国民のくらしを守る盾のような存在なのです。
日本国憲法の三大原則とは?【国民主権・基本的人権・平和主義】
日本国憲法には、とくに大切にされている「三つの柱」があります。
これを 三大原則(さんだいげんそく) と呼びます。
国民主権|国の主人公は国民
「国の力を持っているのは国民」という考え方です。
つまり、国のリーダーを決めるのは国民。選挙で総理大臣や国会議員を選ぶのも、この国民主権の仕組みです。
👉 学校でたとえると
クラスの係を先生が一方的に決めるのではなく、みんなで話し合ったり投票して決めるのと同じ。
「みんなのことはみんなで決める」──それが国民主権です。
基本的人権の尊重|自由や平等を守るしくみ
すべての人は生まれながらにして大切にされる存在であり、差別されたり、不当に扱われたりしてはいけません。
例えば…
- 学校に通って勉強できる
- 自分の意見を発表できる
- 将来の夢を自由に選べる
これらはぜんぶ「人権」によって守られています。
👉 スポーツでたとえると
サッカーや野球の試合で「背が高い人だけ出ていい」「女子は参加できない」と言われたら不公平ですよね。
憲法の人権は「みんなが平等に試合に参加できるルール」と同じなのです。
平和主義|戦争をしないという約束(憲法9条)
日本国憲法の大きな特徴の一つが「戦争をしない」という約束。
とくに第9条には「国は戦争をしない」「軍隊を持たない」とはっきり書かれています。
👉 学校でたとえると
クラスの中で「けんかはしない」「暴力は使わない」とみんなで決めることと似ています。
平和にくらすためには、まず「争いごとはしない」と約束することが大切なのです。
この三つの柱があるから、日本の憲法は「みんなで決める」「みんなを守る」「平和にくらす」ことを基本にしているんです。
👉 クイズ①
日本国憲法の三大原則にふくまれないのはどれでしょう?
- 国民主権
- 平和主義
- 天皇が国を治めること
正解は 3. 天皇が国を治めること です。
憲法と法律の違いをわかりやすく解説【なぜ憲法が一番大切?】
憲法と法律は、どちらも「ルール」という点では同じです。
でも、大きなちがいがあります。
- 憲法 … 国の一番上にある「基本のルール」
- 法律 … 憲法をもとにつくられる「細かいルール」
ピラミッドで考えるとわかりやすい
ルールの関係をピラミッドで表すと、
- 一番上 … 憲法(国の基本)
- 中くらい … 法律(国会でつくられるルール)
- 下 … 条例や校則(地域や学校のルール)
すべてのルールは「憲法の上に立つことはできない」んです。
学校生活でのたとえ
学校でも同じことが言えます。
- 憲法 → 「この学校はみんなで楽しく安全に学ぶ場にする」という教育方針
- 法律 → 「授業は45分」「制服を着る」などの校則
- 校内ルール → 「廊下は走らない」「掃除は分担する」などの細かい決まり
もし校則が「女子は給食を食べてはいけない」なんて内容だったらどうでしょう?
それは「みんな平等に教育を受ける権利」を守る憲法に反するので、無効です。
👉 つまり、憲法は「校則を超える校則」、いちばん強いルールなのです。
もし憲法がなかったら?
憲法がなかったら、国のえらい人が「今日から気に入らない人は学校に行けません」とか「ある人だけ税金を10倍払え」といった法律を勝手につくれてしまいます。
それはとても危険なことです。
憲法があるからこそ、国民の自由や権利が守られているのです。
👉 クイズ②
憲法と法律の違いについて正しいのはどれでしょう?
- 憲法は国の基本ルールで、法律はその下にある細かいルール
- 法律の方が憲法より強い
- 憲法はなくても国は困らない
正解は 1. 憲法は国の基本ルールで、法律はその下にある細かいルール です。
日本国憲法の条文の例を小学生向けに紹介【前文・9条・教育】
憲法は全部で103条もあります。
でも全部を覚える必要はありません。小学生・中学生にとって特に大事なのは「平和」「人権」「教育」にかかわる部分です。
ここでは代表的な条文を3つ紹介します。
前文|平和を大切にする気持ち
憲法のはじめに書かれている「前文」には、日本がどんな国をめざすのかが書かれています。
「日本国民は、恒久の平和を念願し…」
つまり、「日本は平和を大切にし、世界の国々と仲良くしていきますよ」という約束です。
👉 学校にたとえると
「この学校はみんなで助け合い、楽しく安全にすごせる場にします」と校長先生がはじめに宣言するようなものです。
第9条|戦争をしない約束
憲法の中でも有名なのが「第9条」です。
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する。」
むずかしい言葉ですが、要するに「日本は戦争をしない」とはっきり書いてあるんです。
👉 クラスでたとえると
「けんかをしない」「暴力は使わない」とクラス全員で決めるのと同じ。
争いごとをしない約束を国として決めているのは、世界でもとてもめずらしいことです。
教育に関する条文|学ぶ権利と義務
憲法26条には、教育についてこう書かれています。
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
つまり、「すべての子どもが学校に通って勉強する権利を持っている」ということ。
同時に「親は子どもに教育を受けさせる義務がある」とも書かれています。
👉 ポイント
- 学校に行けるのは当たり前じゃなく、憲法で守られている権利
- 世界には「学校に行けない子ども」もまだたくさんいる
- 日本では憲法のおかげで、みんなが安心して学べる
👉 クイズ③
憲法第9条に書かれている内容はどれでしょう?
- 学ぶ権利
- 戦争をしない約束
- 税金を払う義務
正解は 2. 戦争をしない約束 です。
憲法改正とは?【変えるときの手続きとルール】
憲法はとても大切な「国の基本ルール」です。
だから、ふつうの法律のように国会で多数決をとってすぐ変えることはできません。
なぜ簡単に変えられないの?
もし憲法が簡単に変えられるなら、どうでしょう?
たとえば国のえらい人が「明日から平和主義をやめます」「子どもは勉強しなくていい」と勝手に決められるとしたら…。
それでは国民の権利が守られません。
👉 憲法は「国民の自由と平和を守るための最後の砦」なので、特別に厳しいルールでしか変えられないようにしてあるのです。
憲法改正の手順
憲法を変えるには、次の3つのステップが必要です。
- 国会で提案
衆議院と参議院の両方で「変えよう」という意見が出されます。 - 国会での投票
それぞれの議院で「3分の2以上」が賛成しないと先に進めません。
(ここがとてもハードルが高い!) - 国民投票
最後は、全国の国民が投票して「過半数(半分以上)」が賛成したら成立です。
👉 つまり、国会議員だけでなく「国民みんなの賛成」が必要になるのです。
世界の憲法と日本国憲法のちがい
世界にはいろいろな憲法がありますが、日本国憲法はとくに「平和主義」をはっきり書いている点が特徴です。
アメリカやドイツの憲法には「国を守るための軍隊」を規定しているのに対して、日本は「戦争をしない」と書いてあるのです。
👉 クイズ④
憲法を変えるときに最後に必要なのは何でしょう?
- 総理大臣の許可
- 国民投票
- 天皇の命令
正解は 2. 国民投票 です。
憲法とSDGsのつながり【人権・平和・教育を守る】
憲法は70年以上前に作られたルールですが、じつは今の世界で大切にされている SDGs(持続可能な開発目標) と深くつながっています。
人権を守る → SDGs目標10「不平等をなくそう」
憲法には「すべての人は平等で、自由に生きる権利がある」と書かれています。
これは、世界中で進められている「人や国の不平等をなくそう」というSDGsの目標と同じ考え方です。
👉 例:女の子も男の子も同じように教育を受けられる/障害のある人も安心して暮らせる社会づくり
平和を守る → SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」
憲法第9条には「戦争をしない」とはっきり書かれています。
これは世界の平和をめざすSDGs目標16とつながっています。
👉 例:国と国がけんかをしないこと/みんなが安心して暮らせる町づくり
教育を守る → SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」
憲法26条には「すべての子どもは教育を受ける権利がある」と書かれています。
これはそのままSDGs目標4と同じです。
👉 例:貧しい国の子どもも学校に通えるようにする/だれでも学び続けられる社会をつくる
憲法は「先取り」していた?
日本国憲法ができたのは1947年。
でもSDGsが国連で決められたのは2015年。
つまり、憲法は70年も前に「人権」「平和」「教育」の大切さをすでに示していたんです。
👉 だから憲法を学ぶことは、世界の未来の目標を学ぶことにもなるんです。
👉 クイズ⑤
憲法とSDGsがつながっている例として正しいのはどれでしょう?
- 憲法の平和主義 → SDGsの「平和と公正をすべての人に」
- 憲法の教育の権利 → SDGsの「質の高い教育をみんなに」
- 憲法の人権尊重 → SDGsの「不平等をなくそう」
正解は 1・2・3 すべて です。
憲法のおさらいクイズ【授業や自由研究におすすめ】
クイズ① 憲法は国のどんなルールでしょう?
- とても細かい法律
- 国の基本のルール
- 地域のきまり
正解は 2. 国の基本のルール です。
👉 憲法はすべての法律や条例の上にある「ルールの王様」。だからこそ、国民の自由や生活を守る役割があります。
クイズ② 日本国憲法の三大原則にふくまれるのはどれ?
- 国民主権
- 平和主義
- 天皇が国を治めること
正解は 1と2(国民主権と平和主義) です。
👉 日本国憲法の三大原則は「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」。天皇が治める国ではなく、「国民が主人公」なんです。
クイズ③ 憲法と法律の関係を正しく表しているのは?
- 法律の方が憲法より強い
- 憲法は国の基本ルールで、法律はその下にある細かいルール
- 憲法はなくても国は困らない
正解は 2. 憲法は国の基本ルールで、法律はその下にある細かいルール です。
👉 学校でいえば「憲法=学校の教育方針」「法律=校則」「細かい決まり=掃除の分担」と考えるとわかりやすいですね。
クイズ④ 憲法を変えるときに最後に必要なのは何でしょう?
- 総理大臣の許可
- 国民投票
- 天皇の命令
正解は 2. 国民投票 です。
👉 憲法改正は国会で議決されたあと、国民の過半数の賛成がなければ成立しません。国民一人ひとりが主人公だからです。
クイズ⑤ 憲法とSDGsのつながりとして正しいのはどれ?
- 憲法の平和主義 → SDGs「平和と公正をすべての人に」
- 憲法の教育の権利 → SDGs「質の高い教育をみんなに」
- 憲法の人権尊重 → SDGs「不平等をなくそう」
正解は 1・2・3 すべて です。
👉 日本国憲法が示した考え方は、世界の未来目標=SDGsにもつながっています。
自由研究・調べ学習のヒント【憲法をテーマに考えよう】
憲法は社会科の授業だけでなく、自由研究のテーマとしてもぴったりです。
ここでは小中学生でも取り組みやすいアイデアを紹介します。
① 三大原則をまとめたポスターを作ろう
「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを図やイラストでまとめるとわかりやすいです。
👉 例:自分を主人公にしたイラストで「国民が主人公(国民主権)」を表現する/「平和=ハトや地球」を描く。
完成したポスターはクラスに貼ったり、発表のときに使えます。
② 憲法と身近な生活を比べてみよう
憲法の内容を学校や家庭のルールと比べてみると面白いです。
- 憲法 → 「みんな平等」
- 学校のルール → 「クラス全員が給食を食べられる」
- 家庭のルール → 「家族みんなが同じ時間にごはんを食べる」
👉 「国の憲法」も「学校のきまり」も、みんなが安心して生活できるようにあると気づけます。
③ 世界の憲法と日本国憲法を比べてみよう
アメリカやドイツの憲法には「軍隊を持つ」ことが書かれているのに、日本国憲法は「戦争をしない」と書いてあります。
これを表にまとめると、世界で日本がどんな特徴を持っているのかが見えてきます。
👉 調べ方:インターネットや図書館で「アメリカ憲法」「ドイツ憲法」と検索。比べやすいように項目ごとに整理。
④ 憲法とSDGsを結びつけて考えよう
憲法の人権・平和・教育の条文を、SDGsの目標とつなげて調べるのもおすすめです。
👉 例:「憲法26条=教育を受ける権利」と「SDGs目標4=質の高い教育をみんなに」をポスターでセットにしてまとめる。
これは「社会科+総合学習+道徳」のクロステーマ研究になります。
⑤ 新聞やニュースとつなげてみよう
最近のニュースを見て「憲法に関係していることはあるかな?」と調べてみましょう。
👉 例:選挙 → 国民主権、国会の働き方 → 憲法の仕組み、平和に関する国際会議 → 憲法9条
まとめ|憲法はみんなの未来を守るルール
憲法は「国の基本のルール」であり、私たちの生活や未来を守る大切な決まりです。
日本国憲法の三大原則(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)は、日々の生活にもつながっていて、SDGsとも共通しています。
自由研究や授業で憲法を調べることは、「国のルールを知る」だけでなく、「自分や友達の生活をどう守るか」を考えるきっかけになります。
👉 憲法はむずかしい本ではなく、みんなの幸せを守るためのルールブック。
今日の生活から未来の世界までをつなげる、大切な学びのテーマなのです。
📑 参考資料:日本国憲法 前文
出典:日本国憲法(1946年公布、1947年施行)
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。