
みなさんは「バイオマスエネルギー」という言葉を聞いたことがありますか?
ちょっとむずかしく感じるかもしれませんが、実はとても身近なんです。
たとえば、昨日の晩ごはんで残ったごはんや野菜の皮。ふつうなら「ごみ」として捨ててしまうものですよね。
でも、それがなんと電気や燃料に変わるとしたら、びっくりしませんか?
バイオマスエネルギーは、木や草、食べ物の残り、家畜のふんなど「生き物に由来する資源」を使って作られる新しいエネルギーです。
この記事では──
- バイオマスエネルギーの意味と仕組み
- 種類や活用例
- メリットとデメリット
- 自由研究に使えるアイデア
を小学生・中学生にもわかりやすく紹介します。途中にはクイズもあるので、楽しみながら学べますよ!
バイオマスエネルギーとは?小学生・中学生にもわかる意味と基本解説
みなさんは「バイオマスエネルギー」という言葉を聞いたことがありますか?
ちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はみんなの生活の中にも深く関係しているエネルギーです。
バイオマスってなに?
「バイオマス(biomass)」は、英語で 「生きもの(bio)」+「量(mass)」 を意味する言葉です。
つまり、生き物に由来する資源のことを指します。
たとえば、こんなものが「バイオマス」にあたります。
- 木材(木の枝、木のくず、木材チップ)
- 農作物や野菜の皮、食べ残し
- 家畜のふんやおしっこ
- 落ち葉や草
- 紙くず
普段「ごみ」として捨てているものの多くが、実はバイオマスなのです。
バイオマスエネルギーとは?
では、バイオマスエネルギーとはなんでしょうか?
これは バイオマスを燃やしたり分解したりして、電気や熱、ガス、燃料を作るエネルギー のことです。
たとえば──
- 生ごみ発電:家庭から出た生ごみを集め、発電所で燃やして電気をつくる
- 木質バイオマス:木のチップを燃料にして、学校や施設の暖房に利用する
- バイオガス:牛や豚など家畜のふんを分解して、メタンガスを取り出して電気をつくる
つまり、「一見ただのごみ」が、新しいエネルギーの材料になるということです。
実は昔から使われていた!
バイオマスエネルギーは、新しい技術に見えるかもしれませんが、実は昔から人間が使ってきたエネルギーでもあります。
- かまどで木を燃やして料理をする
- まきを燃やして部屋をあたためる
- 牛のふんを乾かして燃料にする(今もアジアやアフリカの国で行われています)
これらも立派な「バイオマスエネルギー」です。
昔の知恵と、現代の科学技術が組み合わさって、いまのバイオマス発電が生まれているのです。
他のエネルギーとどうちがう?
化石燃料(石油や石炭)は、一度燃やすとなくなってしまい、CO₂がたくさん出ます。
一方、バイオマスは植物や食べ物の残りなどを利用するので、また育てれば新しい資源になるという特徴があります。
さらに、燃やして出たCO₂は、もともと植物が成長する時に吸収したもの。だから「カーボンニュートラル(CO₂の出入りがプラスマイナスゼロ)」と考えられるのです。
クイズ①
バイオマスエネルギーの説明として正しいものはどれでしょう?
- 石油や石炭を燃やして電気をつくる方法
- 生ごみや木のくずなど、自然に由来するものを利用して電気や熱をつくる方法
- 太陽の光を集めて電気をつくる方法
正解は 2 です。
👉 バイオマスエネルギーは、植物や食べ物の残り、家畜のふんなどを利用して、電気や熱を生み出す方法です。人類は昔から木や草を燃やして生活に利用してきましたが、今は発電など大規模に活用されています。
バイオマスエネルギーの種類と仕組み|木材・食べ物・生ごみから発電する方法
バイオマスエネルギーと一口に言っても、その利用の仕方はいくつもあります。
ここでは代表的な種類と仕組みを、小学生・中学生でもわかるように整理してみましょう。
① 木材や農作物を利用する「木質バイオマス」
森の間伐材(かんばつざい:木を切ったあとに残る枝や木くず)、木工場で出る木のチップや木材くずなどを燃やして電気や熱を生み出します。
日本は山が多く、林業も盛んなので、木質バイオマスはとても重要な資源です。
👉 ポイント:森の手入れで出た木を利用できるので、森を健康に保つことにもつながります。
② 食べ物の残りや家庭の生ごみを利用する「ごみ発電」
家庭から出る生ごみや食品工場で出た残りものを集めて燃やすと、ゴミ処理と同時に電気をつくることができます。
日本の都市では「ごみ焼却場」が多く、この仕組みを活用しているところも少なくありません。
👉 ポイント:「ただ捨てるごみ」が「新しいエネルギー」に変わる、まさに一石二鳥の方法です。
③ 家畜のふんや食品残さを利用する「バイオガス」
牛や豚、鶏などのふんを発酵させると、メタンガスという気体が出ます。
このメタンガスを燃やして発電したり、燃料にしたりするのが「バイオガス発電」です。
ヨーロッパでは農場と発電所を組み合わせて、村全体の電気をまかなっている例もあります。
👉 ポイント:ふん尿をそのまま放置すると悪臭や環境汚染の原因になりますが、バイオガスとして利用すれば資源に変わります。
④ 農作物や油から作る「バイオ燃料」
トウモロコシやサトウキビから作るエタノールや、大豆油などから作るバイオディーゼル燃料は、自動車や飛行機の燃料にも使われています。
ガソリンの代わりに使うことで、化石燃料の使用を減らすことができます。
👉 ポイント:将来の「次世代エネルギー」として注目されており、飛行機の燃料に使う実験も始まっています。
バイオマス利用の仕組みの共通点
- もとになるのは「自然に由来する資源」
- 燃やしたり発酵させたりして、電気や熱、燃料を生み出す
- ごみを減らしながらエネルギーを生み出せる
つまり、バイオマスエネルギーは「ごみを宝物に変える仕組み」 といえるのです。
クイズ②
次のうち、バイオマスエネルギーの利用方法として正しいものはどれでしょう?
- 家畜のふんを発酵させてメタンガスを取り出す
- 石炭を掘り出して燃やす
- 太陽の光をパネルで集める
正解は 1 です。
👉 牛や豚などのふんを分解して発生するメタンガスを利用するのは、代表的なバイオマスエネルギーの方法です。石炭や太陽光は別のエネルギーに分類されます。
バイオマスエネルギーのメリットとデメリット|なぜ大切で環境にやさしいのか?
バイオマスエネルギーは「ごみをエネルギーに変える」すばらしい仕組みですが、良い点(メリット)と課題(デメリット)の両方があります。ここでは、その両面をくわしく見てみましょう。
メリット① ごみを減らせる
生ごみや木くずなど、これまでは「ただのごみ」として処理していたものを、エネルギーとして活用できます。
ごみを減らすことができ、環境への負担も小さくなります。
メリット② CO₂を増やさない(カーボンニュートラル)
バイオマスを燃やすとCO₂は出ますが、もともと植物が成長するときに吸収したCO₂なので、トータルで見ればプラスマイナスゼロと考えられます。これを カーボンニュートラル といいます。
メリット③ 地域の資源を有効利用できる
日本では農業や林業から出る木くずやわらなどが大量に出ます。これをそのまま捨てるのではなく、エネルギーとして使えば「地域の資源」を有効活用できます。農家や林業の人たちの新しい収入にもつながります。
デメリット① 集めるのに手間がかかる
バイオマスは自然に由来するので広い場所に分散しています。木くずや生ごみを集めて運ぶには時間もコストもかかります。
デメリット② たくさん必要になる
バイオマス発電で同じ量の電気を作るには、石油や石炭よりも多くの燃料が必要です。そのため、大規模な発電をするときには大量の資源を確保しなければなりません。
デメリット③ 使いすぎると逆効果になることも
本来食べるはずの農作物をエネルギー用に回すと、食料不足や価格の高騰につながることもあります。バランスを考えて利用することが大切です。
まとめると…
バイオマスエネルギーは
- ごみを減らし
- CO₂を増やさず
- 地域の資源を活かせる
という大きなメリットがありますが、集め方や使い方に工夫が必要という課題もあるのです。
クイズ③
バイオマスエネルギーのメリットとして正しいものはどれでしょう?
- ごみを減らしながら電気を作れる
- 石油よりも必ず安く作れる
- CO₂を全く出さない
正解は 1 です。
👉 バイオマスエネルギーは「ごみを利用できる」という大きなメリットがあります。CO₂は出ますが、植物が成長するときに吸収しているので全体では増えません。
日本や世界のバイオマスエネルギー活用例|ごみ発電や地域の取り組み
バイオマスエネルギーは「ただのごみを宝物に変える」しくみとして、日本でも世界でも注目されています。ここでは具体的な活用例を見てみましょう。
日本の活用例
① ごみ焼却場での発電
日本はごみを焼却する施設が多くあります。その中には、ごみを燃やすときに発生する熱を利用して電気をつくる「ごみ発電」を行っているところがあります。
👉 家庭から出る生ごみや紙くずが、実は電気に変わっているのです。
② 木質バイオマスの利用
林業の盛んな地域では、間伐材(森を健康に保つために切った木)や木材チップを燃料にして、学校や公共施設の暖房に利用する取り組みがあります。
👉 森を守る活動とエネルギーづくりがつながっているのです。
③ 下水処理場でのバイオガス発電
都市の下水処理場では、し尿や汚泥を発酵させてメタンガスを取り出し、発電に利用する取り組みも進んでいます。
👉 ふだん見えない場所でも、エネルギーは作られています。
世界の活用例
① ドイツのバイオガス村
ドイツでは農家が中心となり、牛のふんやトウモロコシなどを使って「バイオガス」を生み出し、村全体の電気や暖房をまかなっている地域があります。
👉 地域でエネルギーを作り、地域で使う「エネルギーの地産地消」が実現しています。
② ブラジルのバイオエタノール
ブラジルではサトウキビから作るエタノールをガソリンの代わりに利用しています。自動車の燃料として広く使われており、石油への依存を減らすことに成功しています。
③ アフリカやアジアでのバイオ燃料利用
農村部では、昔ながらに牛や家畜のふんを乾かして燃料にする方法が今も使われています。近年は、それを改良して小さな発電機に使うなど、新しい技術が組み合わさっています。
日本と世界の共通点
- 「ごみやふん」をただ捨てずに資源として使う
- 「地域にあるもの」を利用して電気や熱を生み出す
- 「環境にやさしい社会」を目指す
バイオマスエネルギーは、国や地域の事情に合わせて工夫されているのが特徴です。
クイズ④
次のうち、バイオマスエネルギーの活用例として正しいものはどれでしょう?
- ごみ焼却場で発電を行う
- 石炭を掘り出して火力発電する
- 太陽光パネルで発電する
正解は 1 です。
👉 日本のごみ焼却場では、ごみを燃やすときの熱を利用して電気を生み出す「ごみ発電」が行われています。石炭や太陽光は別のエネルギー方法です。
自由研究で挑戦!バイオマスエネルギーをテーマにするアイデア
バイオマスエネルギーは「ごみをエネルギーに変える」という発想がとてもユニークなので、自由研究のテーマにもぴったりです。実験や調べ学習を組み合わせると、発表でも目立ちやすく、先生や友だちからも「おもしろい!」と言われる内容にできます。ここでは小学生・中学生でもできるアイデアを紹介します。
① 家庭で出る生ごみを調べてグラフにする
毎日、家でどれくらい生ごみが出ているかを記録してみましょう。野菜の皮やごはんの残りなどを量って、1週間や1か月分をまとめると、「家庭からどれくらいの資源が出ているのか」がわかります。
👉 さらに「もしこれをエネルギーに変えられたら?」と考えて、どれくらいの電気に変わるのかを調べてみると研究の深みが出ます。
② 木や落ち葉を燃やしたときの観察
キャンプや焚き火で木や落ち葉を燃やすと、炎の強さや煙の量がちがいます。
「乾いた木と湿った木では燃え方がどう違う?」「落ち葉と枝では火の強さはちがう?」などを比較して観察すれば、燃料としての特徴を調べることができます。
👉 注意点:必ず大人と一緒に、安全な場所で行うこと。
③ バイオガスの仕組みを小さく再現してみる
牛や豚のふんを使うのはむずかしいですが、野菜くずを密閉容器に入れて発酵させると、気体が出て袋がふくらむことがあります。これはバイオガスの原理と同じです。
👉 実際の発電は難しいですが、「発酵でガスが生まれる」というしくみを体験することができます。
④ 地域や世界のバイオマス利用を調べてまとめる
新聞やインターネットを使って「日本のごみ発電の例」や「ドイツのバイオガス村」「ブラジルのエタノール利用」などを調べ、比較してまとめましょう。
👉 実験ができなくても、調べ学習として十分に自由研究になります。
⑤ 実験+調べ学習の組み合わせ
- 「家庭の生ごみを量る(実験)」
- 「日本や世界のバイオマス利用を調べる(調べ学習)」
この2つをセットで行うと、オリジナリティの高い研究になります。発表で「自分の家と世界を比べてみた」という切り口にすれば、聞いている人にもわかりやすく伝わります。
このように、バイオマスエネルギーをテーマにした自由研究は、身近な生活と環境問題の両方を考えられるのが魅力です。
実験や調べ学習の工夫次第で、夏休みの自由研究や学校の発表会にぴったりの内容になりますよ。
おさらいクイズ|バイオマスエネルギーの意味・種類・活用を確認しよう
ここまでで「バイオマスエネルギーとは何か」「種類と仕組み」「メリットとデメリット」「日本や世界での活用例」「自由研究のアイデア」を学んできました。
最後にクイズでふり返り、しっかり理解できているか確認してみましょう!
クイズ①
バイオマスエネルギーとは何を利用したエネルギーでしょう?
- 石油や石炭などの化石燃料
- 太陽や風などの自然現象
- 木や食べ物の残り、生ごみや家畜のふんなど、生き物に由来する資源
正解は 3 です。
👉 バイオマスエネルギーは、木材・生ごみ・家畜のふんなど「生き物に由来する資源」を利用して電気や熱を生み出す方法です。
クイズ②
次のうち、バイオマスエネルギーの利用方法として正しいものはどれでしょう?
- 家畜のふんを発酵させてメタンガスを取り出す
- 石炭を掘り出して燃やす
- 太陽光パネルで発電する
正解は 1 です。
👉 牛や豚などのふんを分解してガスを取り出し発電するのは、代表的なバイオマスエネルギーの方法です。石炭や太陽光は別のエネルギー方法です。
クイズ③
バイオマスエネルギーのメリットとして正しいものはどれでしょう?
- ごみを減らしながら電気を作れる
- CO₂をまったく出さない
- 石油よりも必ず安く作れる
正解は 1 です。
👉 バイオマスエネルギーは「ごみを資源として活用できる」点が大きなメリットです。燃やすとCO₂は出ますが、植物が育つときに吸収しているので全体では増えません。
クイズ④
日本や世界で行われているバイオマスエネルギーの活用例はどれでしょう?
- ごみ焼却場で発電する
- 太陽光パネルを設置する
- 石油を精製して燃料にする
正解は 1 です。
👉 日本ではごみ焼却場の熱を使った発電、世界ではバイオガス村やエタノール燃料などが活用例として知られています。
まとめ|小学生・中学生から学ぶバイオマスエネルギーと未来のエコ社会
バイオマスエネルギーは、木や食べ物の残り、家畜のふんなど、生き物に由来する資源を使って電気や熱を生み出すエネルギーです。
「ただのごみ」が「未来を支える資源」に変わるなんて、とてもワクワクする仕組みですよね。
今日学んだポイントをふり返ろう
- バイオマスエネルギーとは?
生ごみや木材などを利用して電気や熱を作る方法。 - 種類と仕組み
木質バイオマス、ごみ発電、バイオガス、バイオ燃料など、いろいろな方法がある。 - メリットとデメリット
ごみを減らせる、CO₂を増やさない、地域の資源を活用できるメリットがある一方、集める手間や大量の資源が必要といった課題もある。 - 日本と世界の活用例
日本のごみ発電、下水処理場でのバイオガス利用、ドイツのバイオガス村、ブラジルのエタノール燃料など。 - 自由研究の可能性
家庭の生ごみ調査や燃え方の観察、バイオガスの小実験、地域や世界の取り組みの調査など、子どもでも挑戦できるテーマが多い。
バイオマスエネルギーと未来の社会
これからの社会では「持続可能(サステナブル)」がキーワードです。
石油や石炭に頼るのではなく、自然のサイクルの中でエネルギーを作り出すことが大切になります。
バイオマスエネルギーはその一つの答えであり、環境を守りながら人間の生活を支える可能性を持ったエネルギーです。
🌱 小学生・中学生のみなさんへ
今日学んだことをきっかけに、家のごみや身近な自然に目を向けてみてください。
「これはただのごみかな? それとも未来のエネルギーかな?」と考えるだけでも、新しい発見があります。
👉 小さな気づきが、未来のエコ社会をつくる第一歩になるのです。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。