
みなさんは、ふだん食べているごはんやパン、牛乳やお肉が「どこで作られたものか」を考えたことがありますか?
日本で作られたものもあれば、外国から船や飛行機で運ばれてきたものもあります。
そんな「食べものをどれくらい自分の国でまかなえているか」を表す数字を 食料自給率(しょくりょうじきゅうりつ) といいます。
この記事では、食料自給率の意味や日本の現状、なぜ低いのか、どんな影響があるのかをやさしく解説します。
最後にクイズや自由研究のヒントもあるので、授業や調べ学習に役立ててくださいね。
日本の食料自給率はどのくらい?【データで見る日本の現状】
日本の食料自給率は、実はあまり高くありません。
農林水産省のデータによると、カロリーベース自給率はおよそ38%(2022年度)。これは「日本人が食べるカロリーのうち、約4割しか国内で作れていない」ということを意味します。
世界と比べるとどう?
日本の38%という数字は、世界の中でもかなり低い水準です。
- アメリカ:約120%(輸出もしているので100%を超える)
- フランス:約100%
- 中国:約70%
- イギリス:約60%
- 日本:約38%
👉 日本は世界の先進国の中でも「食料を外国に頼っている割合」がとても大きい国だとわかります。
食べものごとの自給率(例)
- お米 → 約100%(ほぼ自給できている!)
- 野菜 → 約80%(季節や品目によって変動)
- 牛乳・乳製品 → 約70%
- 鶏肉 → 約65%
- 豚肉 → 約50%
- 牛肉 → 約15%
- 小麦 → 約15%(パンや麺の多くは外国産)
- 大豆 → 約7%(味噌・豆腐の原料なのに…ほとんど輸入に頼っている)
身近な影響
- パンやラーメン → 小麦がほとんど外国産だから、輸入が止まると困る。
- 豆腐や納豆 → 日本食の定番なのに、大豆のほとんどを外国から買っている。
- 牛丼やステーキ → 牛肉はほぼ外国頼り。
👉 お米はしっかり作れているけれど、パンや肉、大豆などは外国に大きく頼っていることが見えてきます。
クイズ① 日本の食料自給率はどのくらい?
- 約80%
- 約50%
- 約38%
正解は 3. 約38% です。
👉 日本は先進国の中でも特に自給率が低い国です。
なぜ日本の食料自給率は低いの?【原因をわかりやすく解説】
「どうして日本はこんなに食料を外国に頼っているの?」と思ったことはありませんか?
その理由は一つではなく、いくつかの要因が重なっているのです。
① 日本の国土と気候の特徴
- 日本は山が多く、平地が少ない国です。
→ 農業に使える土地が限られている。 - 四季があって気候も変わりやすい。
→ 台風や豪雨、猛暑の影響を受けやすい。
👉 そのため、大規模に農業を行うのが難しいのです。
② 食生活の変化
- 昔はお米中心の食事だった → 日本で作れる米は自給率ほぼ100%!
- しかし、戦後からパン・ラーメン・肉料理など「小麦や肉中心」の食事が増えた。
👉 これらは外国から輸入しないと足りない食材ばかり。
③ 農業人口の減少
- 農家の高齢化が進み、農業を続ける人が少なくなっている。
- 若い人が農業を職業に選ぶケースが減っている。
👉 作れる食料の量そのものが減っているのです。
④ 輸入の方が安い
- 大量に生産している国から輸入した方が、日本で作るより安い場合がある。
例:小麦や大豆 → アメリカやカナダなどの広大な農地で大量生産している。 - スーパーでも安く売れるため、消費者は輸入品を選びがち。
⑤ 政策の影響
- 政府は農業を守るための政策をとってきたが、自由貿易の広がりで輸入が増えた。
- 国際的なルールに合わせる必要もあり、「外国の農産物を入れない」というわけにはいかない。
👉 このように、「土地が少ない」「食生活が変わった」「農家が減った」「輸入が安い」といういくつもの理由が組み合わさって、日本の食料自給率は低い状態になっているのです。
クイズ② 日本の食料自給率が低い理由はどれ?
- 食生活が変わってパンや肉を多く食べるようになったから
- 農家の人が減って農業を続ける人が少なくなったから
- 輸入が便利で安くなったから
正解は 1・2・3すべて です。
👉 食生活の変化、農業人口の減少、輸入依存などが重なって自給率が下がっています。
食料自給率が低いとどうなる?【生活や安全への影響】
「食料自給率が低い」というのは、ただの数字の問題ではありません。
私たちの生活や未来に直接つながる、とても大事なことなのです。
① 輸入が止まると食べ物が足りなくなる
- 日本は小麦・大豆・牛肉などを外国に大きく依存しています。
- もし戦争や自然災害、感染症の流行などで「輸入ができなくなったら」どうなるでしょう?
👉 パンや麺類、大豆製品(豆腐・納豆・味噌など)がすぐに不足してしまいます。
② 価格が急に上がる
- 円安になったとき → 輸入品の値段が高くなる。
- 輸出国が「自国の食料を優先」したとき → 日本への輸出量が減り、価格が上がる。
👉 スーパーでいつもの食べ物が2倍以上の値段になるかもしれません。
③ 食の安全が守れないリスク
- 輸入品の中には、農薬の基準や安全基準が日本と違う国もあります。
- 輸入に頼りすぎると「安全性を自分でコントロールできない」リスクが増えます。
👉 「食べるものの安心感」は、自給率が高い国の方が強いのです。
④ 災害や緊急時に弱い
- 大地震や大規模災害のとき、輸入が滞る可能性があります。
- 自給率が低いと「国内だけで食料をまかなう力」がないので、復興が遅れてしまうことも。
⑤ 国の独立性にも関わる
- 食料は人間にとって欠かせない「命のもと」。
- 他国に大きく依存していると、国際交渉のときに不利になることがあります。
👉 「食料を自分の国で確保できるかどうか」は、国の安全保障ともつながっているのです。
✅ まとめると、食料自給率が低いと「食べ物が足りない・値段が上がる・安心できない・災害に弱い・国の立場が弱くなる」という多方面のリスクがあります。
クイズ③ 食料自給率が低いとどんな影響がある?
- 災害や戦争で輸入が止まると食べ物が足りなくなる
- 食べ物の値段が高くなる
- 国の安全や安心にも関わる
正解は 1・2・3すべて です。
👉 食料は「命のもと」。輸入に頼りすぎることは、生活や国の安全に直結するリスクがあります。
食料自給率を高めるにはどうしたらいい?【子どもにもできること】
「食料自給率を高める」と聞くと、むずかしい経済や農業政策の話に思えるかもしれません。
でも実は、日常生活の小さな工夫や選び方が、未来の食を守ることにつながるのです。
① 国産の食べ物を選ぶ
- スーパーやお店で「国産表示」の食材を買う。
- 例えば「国産小麦のパン」「国産大豆の豆腐」など。
👉 少しでも国産を選ぶことで、生産者を応援し、自給率アップにつながります。
② 食べ物を大切にする(食品ロスを減らす)
- 日本では、まだ食べられるのに捨てられている食べ物が年間523万トン(2021年度)。
- これは、世界で食べ物が足りない国の人々が食べられる量に相当します。
- 一人ひとりが「残さず食べる」「買いすぎない」を心がけることで、無駄を減らせます。
③ 家庭や学校で食べ物を育てる
- ベランダ菜園や学校の学習園で、野菜を育ててみる。
- 小さな体験でも「食べ物は自然や人の手で育てられている」と実感できます。
👉 将来「農業に関わりたい!」と思う子どもが増えるかもしれません。
④ 農業を応援する
- 地元の直売所や農業イベントに参加して、農家さんの話を聞く。
- 学校給食で地元の野菜を食べる「地産地消(ちさんちしょう)」も、自給率を高める大切な方法。
⑤ SDGsとのつながり
- 食料自給率を高めることは、SDGsのゴール2「飢餓をゼロに」に直結します。
- また、食品ロスを減らすことはゴール12「つくる責任 つかう責任」につながります。
👉 「日本の食を守ること」は世界の課題解決にもつながるのです。
✅ 子どもにできることは「国産を選ぶ・残さない・育ててみる・応援する」。
小さな積み重ねが、日本全体の食料自給率を支える大きな力になります。
おさらいクイズ【食料自給率】
記事の内容をふり返るクイズです。自由研究や授業のおさらいにもぴったり。3択で考えてみましょう!
クイズ① 日本の食料自給率はどのくらい?
- 約80%
- 約50%
- 約38%
正解は 3. 約38% です。
👉 日本は先進国の中でも特に自給率が低い国です。お米はほぼ自給できているけれど、小麦や大豆、牛肉などはほとんど輸入に頼っています。
クイズ② 日本の食料自給率が低い理由として正しいのはどれ?
- 山が多く農地が少ないから
- 食生活が変わって輸入品を多く食べるようになったから
- 農業人口が減っているから
正解は 1・2・3すべて です。
👉 複数の要因が重なって、日本の食料自給率は下がっています。特に「食生活の変化」と「農家の高齢化」は大きな課題です。
クイズ③ 食料自給率が低いとどんなリスクがある?
- 災害や輸入停止で食べ物が足りなくなる
- 食べ物の値段が急に上がる
- 国の安全や安心にも関わる
正解は 1・2・3すべて です。
👉 食料は「命のもと」。輸入に頼りすぎると、私たちの生活や国の安全に大きな影響があります。
クイズ④ 子どもでもできる「自給率を高める工夫」として正しいのは?
- 国産の食べ物を選ぶ
- 食べ物を残さないようにする
- 農業や地元の食を応援する
正解は 1・2・3すべて です。
👉 小さな工夫でも、積み重ねると大きな力になります。SDGsの「飢餓をゼロに」「つくる責任 つかう責任」にもつながる行動です。
クイズ⑤ 世界の国々と比べて日本の食料自給率はどう?
- 世界の中でかなり高い
- 先進国の中でもかなり低い
- 平均的で特に問題はない
正解は 2. 先進国の中でもかなり低い です。
👉 アメリカやフランスは100%を超えるほど自給できているのに対し、日本は約38%。この差はとても大きいのです。
✅ このおさらいクイズで、食料自給率の数字や意味をしっかり覚えられます。
自由研究で使うときは、このクイズを自分なりに作り直してクラスの友達に出してみるのもおすすめです。
自由研究におすすめ!【食料自給率をテーマに調べてみよう】
「食料自給率」は数字だけでなく、身近な食べ物や世界の課題とつながっているテーマです。
自由研究や調べ学習にすると、クラスのみんなも興味をもつ発表ができますよ。
アイデア① 自分の食生活を調べてみる
- 1日分の食事を書き出す(朝・昼・夜のメニュー)
- その食材が「国産」か「輸入」かを調べる
👉 「パンは外国の小麦」「豆腐は外国の大豆」「お米は国産」など発見があるはず。
表や円グラフにまとめるとわかりやすいです。
アイデア② 日本と世界の食料自給率を比べる
- 日本、アメリカ、フランス、中国などのデータを調べて表にする
- 「日本はなぜ低いのか?」を考え、原因を書き出す
👉 比較することで「日本の特徴」がよくわかります。
アイデア③ 食品ロスをテーマにする
- 家庭や学校でどんな食品ロスがあるかを観察する
- 「残さない工夫」や「保存方法の工夫」をまとめる
👉 自給率アップだけでなく、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に直結します。
アイデア④ 地産地消を調べる
- 地元で作られている野菜や食材を調べてみる
- 直売所や農業イベントを訪ねてインタビューしてもOK
👉 「自分の町の自給率」を知ることは地域学習にもつながります。
アイデア⑤ 未来の自給率を考える
- 今の日本が抱えている課題を整理する(農業人口の減少、輸入依存など)
- 自分が「農業大臣」だったらどうするかを考えて提案する
👉 未来の社会を考える力が育ちます。
まとめ【食料自給率を考えることは未来を考えること】
食料自給率は「数字」だけではなく、私たちの生活・安心・未来に直結しています。
- 日本の食料自給率は約38%と低く、外国からの輸入に大きく依存している
- 自給率が低いと「食べ物が足りない・値段が上がる・安全が守れない」リスクがある
- 解決には「国産を選ぶ・食べ物を残さない・地元の食を応援する」など小さな行動が大切
- 自給率を高めることは SDGsの目標達成 にもつながる
👉 食料自給率を調べることは、自分や家族だけでなく「日本の未来」を考えることにつながります。
このテーマを自由研究に選べば、数字を調べるだけでなく、食生活を見直したり、地域の農業を知ったりできるはずです。
「食べること」は生きること。みんなで考えることで、未来の食の安心をつくっていきましょう。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。