
毎日、何気なく使っているお札や硬貨。
そこに描かれている人物や建物、風景や植物を、じっくり見たことはありますか?
実は、日本のお金のデザインには、
その時代の考え方や、国が大切にしてきた価値が、たくさん込められています。
なぜ、この人が選ばれたのか。
なぜ、人物ではなく花や道具が描かれているのか。
なぜ、ある時代でデザインが変わったのか。
お札や硬貨は、ただの「支払いの道具」ではなく、
日本の歴史・文化・社会を映す、小さな教科書です。
この記事では、
お札や硬貨に描かれてきた
人・場所・建物・物・植物を、
年号や額面とともに、やさしく、でもしっかり解説していきます。
読み終わるころには、
きっとお金を見る目が、少し変わっているはずです。
お札や硬貨には何が描かれている?日本のお金のデザインをやさしく解説
お金のデザインは何を伝えているの?
私たちが毎日使うお札や硬貨には、数字や文字だけでなく、人物・建物・風景・植物などが描かれています。これらは、ただの飾りではありません。お金のデザインは、その国が「何を大切にしてきたか」「どんな社会を目指しているか」を伝えるメッセージです。
たとえば、お札に描かれる人物は、その時代に「国の顔」としてふさわしいと考えられた人です。学問、文化、科学、社会への貢献など、時代ごとに重視される価値が変わると、選ばれる人物も変わってきました。
一方で、硬貨には人物がほとんど登場しません。これは、毎日たくさん使われ、すり減りやすい硬貨には、だれもが分かりやすく、長く使えるデザインが求められてきたからです。ここからも、「使い方」に合わせてデザインが考えられていることが分かります。
なぜ人物・建物・植物・風景が選ばれるの?
お金に描かれるものには、大きく分けて意味があります。
人物は、その時代の理想像や、社会を支えた力を表します。
建物や風景は、日本の歴史や文化、自然の豊かさを伝えます。
植物や道具は、成長、産業、くらしといった、生活に身近な価値を象徴します。
たとえば、建物が描かれる場合は、「長い歴史の中で守られてきた文化」や「多くの人に知られている場所」であることが重要になります。植物は、国の自然や、人々のくらしとの結びつきが強いものが選ばれてきました。
このように、お金のデザインは見た目の美しさだけでなく、意味が通るかどうかがとても大切にされています。
紙幣と硬貨で役割が違う
紙幣(お札)は、高い金額を表し、国の信用を示す存在です。そのため、「この国を代表する人物」や「文化を象徴するもの」が使われやすくなります。
硬貨は、毎日の買い物で何度も手に取られます。だからこそ、だれにとっても分かりやすく、偏りのないデザインが選ばれてきました。
ここまでを見ると、お札と硬貨は同じ「お金」でも、役割に合わせてデザインの考え方が違うことが分かります。次の章からは、実際にどんな人物や場所が描かれてきたのかを、時代順に見ていきます。
クイズ① お金のデザインについて正しい考え方はどれ?
お札や硬貨のデザインについて、正しいものはどれでしょうか?
お金のデザインは、見た目がかっこよければ何でもよい
お金のデザインには、その国の考えや大切にしてきたことが表れている
お金のデザインは、時代が変わっても一度決めたら変わらない
正解は 2 です。
👉 お金のデザインには、国の歴史や価値観がこめられていて、時代に合わせて変わってきました。
日本のお札に描かれた人物一覧【時代順・年号・券種つき】
日本で最初にお札になった人物はだれ?(明治時代)
神功皇后(じんぐうこうごう)
- 券種:一円券
- 発行期間:1881年(明治14年)〜1888年(明治21年)
神功皇后は、日本の紙幣史で初めて肖像が使われた人物です。
重要なのは、神功皇后が「どんな功績を残したか」よりも、なぜ明治政府がこの人物を選んだのかです。
明治政府は、それまでの幕藩体制を終わらせ、西洋諸国と肩を並べる「近代国家」を名乗ろうとしていました。しかし、新しい国には「歴史の厚み」と「正統性」が必要です。そこで選ばれたのが、日本の古代史を象徴する存在だった神功皇后でした。
当時は神功皇后を実在の人物と考える説が広く受け入れられており、
お札は「日本には古くから続く国家の物語がある」ということを示す道具でもあったのです。
その後、歴史研究が進むと、神功皇后は伝説的な存在と位置づけられるようになります。
この変化は、お札に描く人物が「物語性」よりも「学問的な確かさ」を重視する方向へ移ったことを示しています。
和気清麻呂(わけのきよまろ)
- 券種:十円券
- 発行期間:1944年(昭和19年)〜1946年(昭和21年)
和気清麻呂が登場したのは、第二次世界大戦の末期です。
和気清麻呂は、皇位を私物化しようとする動きを止め、「正しい筋道を守った人物」として知られています。
この人物が選ばれた背景には、戦争によって社会が不安定になる中で、
「秩序とは何か」「正しさとは何か」を改めて示そうとする意図がありました。
つまり、この十円券は単なるお金ではなく、
国が国民に向けて発した価値観のメッセージでもあったのです。
昔のお札に長く使われた人物はだれ?(戦前〜戦後)
聖徳太子(しょうとくたいし)
- 百円券:1930年(昭和5年)〜1946年(昭和21年)
- 千円券:1950年(昭和25年)〜1965年(昭和40年)
- 五千円券:1957年(昭和32年)〜1986年(昭和61年)
- 一万円券:1958年(昭和33年)〜1986年(昭和61年)
聖徳太子は、日本で最も多くの券種に使われた人物です。
この事実だけでも、国にとってどれほど重要な象徴だったかが分かります。
政治の仕組みを整え、学びや仏教文化を取り入れた存在として、
聖徳太子は「理想の指導者像」「国の原点」を一人で背負うことができる人物でした。
戦前・戦後という不安定な時代に、
「日本とはどんな国か」を一目で示せる存在が必要だったことが、
長期にわたる採用につながったと考えられます。
一方で、1986年を最後に姿を消したことは、
特定の人物に国の理想を集中させないという、戦後民主主義の考え方が定着したことを意味しています。
近代日本をつくった政治家たち(昭和)
伊藤博文(いとうひろぶみ)
- 券種:千円券
- 発行期間:1963年(昭和38年)〜1986年(昭和61年)
伊藤博文は、日本初の内閣総理大臣であり、憲法づくりにも深く関わりました。
彼が選ばれた理由は、「強いリーダー」だったからではありません。
近代日本が必要としていたのは、
人に頼る政治ではなく、仕組みで動く国家でした。
伊藤博文は、その仕組みを形にした人物だったのです。
板垣退助(いたがきたいすけ)
- 券種:百円券
- 発行期間:1953年(昭和28年)〜1974年(昭和49年)
板垣退助は、自由民権運動を通して「国民が政治に参加する社会」を訴えました。
戦後の日本が最も大切にした価値の一つが、民主主義です。
百円券という、日常でよく使われるお札に描かれたことは、
民主主義が「特別な考え」ではなく、生活の中にある当たり前の価値であることを示しています。
岩倉具視(いわくらともみ)
- 券種:五百円券
- 発行期間:1951年(昭和26年)〜1971年(昭和46年)
岩倉具視は、明治維新を進め、日本を大きく方向転換させた改革者です。
戦後復興期の日本では、「変わる勇気」「古い仕組みを見直す力」が求められていました。
岩倉具視の肖像は、
国を立て直すための決断力を象徴していたといえます。
学び・文化・教育を大切にする時代(平成)
夏目漱石(なつめそうせき)
- 券種:千円券
- 発行期間:1984年(昭和59年)〜2007年(平成19年)
夏目漱石の採用は、日本の紙幣史における大きな転換点です。
政治家ではなく、文学者が国の顔になったからです。
経済成長が一段落した日本では、「物の豊かさ」だけでなく、
人の心や考える力が重視されるようになりました。
漱石の作品が問い続けた「人間とは何か」というテーマは、
その時代の空気と強く重なっていました。
新渡戸稲造(にとべいなぞう)
- 券種:五千円券
- 発行期間:1984年(昭和59年)〜2007年(平成19年)
新渡戸稲造は、教育者であり、国際社会で活躍した人物です。
日本が世界と関わりながら生きていく中で、
「相手を理解する力」「学びを通した対話」が重要になっていました。
五千円札は、
日本が内向きではなく、世界に開かれた国である
というメッセージを伝えていました。
福沢諭吉(ふくざわゆきち)
- 券種:一万円券
- 発行期間:1984年(昭和59年)〜2024年(令和6年)
福沢諭吉は、「学問によって人は自由になれる」と説いた思想家です。
一万円札という最高額面に長く使われたことは、
日本社会が学びと努力を最も重い価値として置いてきたことを示しています。
重要なのは、福沢諭吉が「成功者」だったから選ばれたのではない点です。
「学ぶことそのものが社会を支える」という考え方が、
戦後日本の中心にあったからこそ、40年近く使われ続けたのです。
科学・多様性・社会貢献を表す現代のお札(平成後期〜令和)
野口英世(のぐちひでよ)
- 券種:千円券
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
野口英世は、感染症研究を通して命を守ろうとした科学者です。
千円札に選ばれた背景には、
科学や医療が社会の土台を支えているという認識の広がりがあります。
樋口一葉(ひぐちいちよう)
- 券種:五千円券
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
樋口一葉は、社会の中で見えにくかった人々の暮らしや心を描きました。
五千円札の肖像になったことは、
文化や言葉の力、そして多様な視点を大切にする社会への転換を示しています。
渋沢栄一(しぶさわえいいち)
- 券種:一万円券
- 発行開始:2024年(令和6年)〜
渋沢栄一は、多くの企業を育てながら、
「利益だけでなく、社会のためになるか」を問い続けました。
現代社会が直面する課題に正面から向き合う人物として選ばれています。
津田梅子(つだうめこ)
- 券種:五千円券
- 発行開始:2024年(令和6年)〜
津田梅子は、学ぶ機会を広げることに人生を捧げた教育者です。
教育が未来をつくるという考えが、
お札の人物選びにもはっきりと表れています。
北里柴三郎(きたさとしばさぶろう)
- 券種:千円券
- 発行開始:2024年(令和6年)〜
北里柴三郎は、感染症と向き合い、人の命を守る科学を発展させました。
現代のお札は、
経済・教育・医療という社会の基盤を並べて示しています。
クイズ② お札の人物について正しいものはどれ?
お札に描かれた人物について、正しいものはどれでしょうか?
お札の人物は、時代が変わっても同じ価値を示し続けるため変わらない
お札の人物は、有名であれば分野に関係なく選ばれる
お札の人物は、その時代に国が大切にした考え方や社会の課題を映している
正解は 3 です。
👉 お札の人物は、時代ごとの価値観や社会の状況を反映して選ばれてきました。
お札の裏には何が描かれている?人物・物語・意味
表だけじゃない?お札の「裏面」に注目する理由
お札というと、どうしても表面の人物に目が向きがちです。しかし、日本のお札は裏面のデザインにも、はっきりとした意図があります。
裏面は、人物の「顔」を前に出す場所ではありません。その代わりに、物語・文化・自然・美意識といった、少し広い視点で日本を伝える役割を担っています。
ここで大切なのは、
「裏面は表の説明」ではない、という点です。
表と裏は、別のメッセージを分担していると考えると理解しやすくなります。
顔ではなく「作品」で描かれた人物
日本のお札の裏面には、人物が“肖像”として描かれることはほとんどありません。
その中で例外的に、人物がはっきり分かる形で登場するのが、二千円札の裏面です。
紫式部 と源氏物語絵巻
- 券種:二千円札
- 発行開始:2000年(平成12年)
- 描かれているもの:源氏物語絵巻(部分)
ここで描かれているのは、紫式部そのものの肖像ではありません。
平安時代に書かれた『源氏物語』をもとにした絵巻物です。
これは、「一人の人物」よりも、
その人が生み出した文化や物語そのものを伝えたい
という意図によるものです。
つまり、紫式部は
「有名な人物だから選ばれた」のではなく、
日本の文学・物語文化を代表する存在として選ばれたのです。
なぜ源氏物語が選ばれたのか
『源氏物語』は、世界でも最古級の長編小説といわれています。
登場人物の心の動きや人間関係が細かく描かれ、「人の気持ちを言葉で表す文化」を日本が早くから育ててきたことを示しています。
二千円札は、2000年という節目の年に発行されました。
新しい時代のはじまりに、
「日本はどんな文化を持つ国なのか」を伝えるため、
物語・文学・感性を象徴するデザインが選ばれたのです。
お札の裏に描かれた風景と美術作品
裏面には、人物の代わりに風景や美術作品がよく使われています。
ここにも、はっきりした理由があります。
富士山(千円札・裏)
- 券種:千円札
- 発行開始:2024年(令和6年)
- 描写:富士山(風景)
富士山は、特定の地域や人物に偏らず、
多くの人が「日本らしい」と感じられる存在です。
自然の美しさや、長い時間をかけて守られてきた景観を通して、
日本の自然観・価値観を伝えています。
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
- 使用券種:千円札(裏・旧)
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
この浮世絵は、世界的にも知られる日本美術の代表作です。
ここで描かれているのは、単なる風景ではなく、
自然の力と人の営みの関係です。
裏面に美術作品を使うことで、
「日本は、芸術や表現を大切にしてきた国だ」というメッセージが、
静かに、しかし確実に伝えられています。
なぜ裏面には政治的な人物がいないのか
表面に描かれる人物は、
「その時代に国が大切にした価値」をはっきり示す存在です。
一方、裏面は、
時代を超えて共有できる文化や自然を伝える役割を持ちます。
政治的な評価が分かれやすい人物や、
特定の考え方に結びつきやすいものは、
裏面には向いていません。
だからこそ、
- 物語
- 芸術
- 自然
- 風景
といった、多くの人が共通して受け取れるものが選ばれてきたのです。
クイズ③ お札の裏面について正しいものはどれ?
お札の裏面のデザインについて、正しいものはどれでしょうか?
裏面は、表の人物をくわしく説明するためだけに使われている
裏面には、時代や立場によって評価が分かれやすい人物が多く描かれている
裏面は、文化・自然・物語など、時代をこえて共有できる価値を伝えている
正解は 3 です。
👉 お札の裏面は、だれにとっても受け取りやすい文化や自然を通して、日本の価値観を伝える役割を持っています。
お札に描かれた建物・場所・風景一覧【券種・年号つき】
なぜ「建物」や「場所」がお札に選ばれるのか
お札の表は人物、裏は文化や自然――この役割分担の中で、建物・場所・風景はとても重要な存在です。
理由は大きく三つあります。
1つ目は、特定の個人に偏らず、多くの人が共有できる象徴であること。
2つ目は、長い時間を生き残ってきた価値を示せること。
3つ目は、「日本らしさ」を一目で伝えられることです。
以下では、実際にお札に使われた建物・場所・風景を、券種・年号とともに見ていきます。
沖縄の歴史を伝える建物
守礼門
- 券種:二千円札(表)
- 発行開始:2000年(平成12年)
守礼門は、かつての琉球王国の城(首里城)にあった門で、沖縄の歴史と文化を象徴する建造物です。
二千円札が発行された2000年は、新しい千年紀(ミレニアム)の始まりでした。
この節目に、東京や京都ではなく沖縄の建物が選ばれたことには、はっきりした意味があります。
それは、日本が「一つの文化だけでできた国ではない」という事実を、国のお金を通して示すことでした。
守礼門は、
- 日本の中の多様な歴史
- 本土とは異なる文化をもつ地域
を象徴する存在として、あえて選ばれたのです。
日本を代表する自然の風景
富士山
- 券種:千円札(裏)
- 発行開始:2024年(令和6年)
富士山は、日本で最も知られた自然の風景です。
しかし、お札に選ばれた理由は「有名だから」だけではありません。
富士山は、
- 特定の人物や思想に結びつかない
- 地域をこえて共有されてきた
- 長い時間、人々の信仰や文化と結びついてきた
という特徴を持っています。
つまり、だれにとっても受け取りやすい日本の象徴なのです。
現代の千円札に富士山が使われたことは、
人物中心から一歩引き、自然や環境そのものを大切にする視点が強まったことも表しています。
日本文化を象徴する建築
平等院鳳凰堂
- 券種:十円硬貨(表)
- ※紙幣ではないが、お金のデザインとして重要
平等院鳳凰堂は、平安時代につくられた仏教建築で、
「極楽浄土」をこの世に表そうとした建物です。
紙幣ではなく硬貨に使われていますが、
お金のデザイン全体を考えるうえで欠かせない存在です。
平等院鳳凰堂が選ばれた理由は、
- 千年近く守られてきた建築
- 日本独自の美意識
- 宗教と文化が結びついた歴史
を一つの形で表せるからです。
美術作品として描かれた風景
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
- 券種:千円札(裏・旧)
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
この作品は、富士山そのものではなく、
人と自然の関係を描いた浮世絵です。
大きな波と小さな船の対比は、
自然の力の大きさと、人間の営みのはかなさを表しています。
それでも人は海に出て、生活を続ける――
この視点は、日本の自然観をよく表しています。
お札の裏にこの作品が使われたことは、
「日本は自然と対話しながら生きてきた国だ」というメッセージを、
世界に向けて発信する意味も持っていました。
建物や風景は「答え」を押しつけない
人物は、その人の生き方や考え方がはっきりしています。
一方、建物や風景は、見る人が意味を考える余地を残します。
だからこそ、
- 国として強く主張したい価値は表に
- 静かに共有したい文化や自然は裏に
という使い分けが行われてきたのです。
クイズ④ 建物や風景がお札に使われる理由として正しいものはどれ?
お札に建物や風景が描かれる理由として、正しいものはどれでしょうか?
人物よりも印刷がかんたんだから
多くの人が立場のちがいをこえて共有できる象徴だから
外国のお札をまねしたデザインだから
正解は 2 です。
👉 建物や風景は、特定の考え方に偏らず、多くの人が共通して受け取れる価値を表すために選ばれています。
お札に使われた日本の美術作品・文化財【券種・年号つき】
なぜ「美術作品」がお札に選ばれるのか
お札に描かれる美術作品や文化財は、人物や建物とは少し役割が違います。
人物は「だれが、何をしたか」をはっきり示しますが、美術作品は、その国が長い時間をかけて育ててきた感性や考え方を伝えます。
美術作品が選ばれるときに重視されるポイントは、主に次の三つです。
- 時代をこえて評価されてきたこと
- 海外から見ても「日本らしさ」が伝わること
- 特定の思想や立場に偏らないこと
この条件を満たすものとして、日本では絵画や工芸、物語と結びついた文化財が選ばれてきました。
世界に知られる日本の浮世絵
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
- 券種:千円札(裏)
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
この作品は、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎によって描かれました。
大きな波と、その向こうに小さく見える富士山が印象的です。
ここで注目したいのは、富士山が主役のようでいて、実は人の営みと自然の関係が描かれている点です。
荒れた海に出る人々の姿は、自然の力の前で人がどれほど小さな存在かを示しています。それでも人は海に出て、生活を続けます。
この絵が千円札の裏に使われたことは、
「日本は自然と対立するのではなく、向き合いながら生きてきた」
という価値観を伝える意味を持っていました。
日本美術の美意識を表す作品
燕子花図
- 券種:五千円札(裏・旧)
- 発行期間:2004年(平成16年)〜2024年(令和6年)
燕子花図は、江戸時代の画家・尾形光琳による作品です。
金地の背景に、くり返し描かれたカキツバタ(燕子花)が特徴です。
この作品のすごさは、「写実的に描く」ことではなく、
形・色・配置を整理して、美しさを生み出している点にあります。
これは、日本美術に多く見られる「引き算の美」「整える美意識」をよく表しています。
五千円札の裏にこの作品が使われたのは、
日本が大切にしてきた静かな美しさ、調和の感覚を、
日常の中で感じてもらうためだったと考えられます。
物語と結びついた文化財
源氏物語絵巻
- 券種:二千円札(裏)
- 発行開始:2000年(平成12年)
源氏物語絵巻は、平安時代の物語『源氏物語』を絵で表した作品です。
ここで重要なのは、「きれいな絵が描かれている」ことだけではありません。
この絵巻は、登場人物の表情やしぐさ、部屋の配置などから、
人の心の動きや人間関係を読み取れるようにつくられています。
つまり、日本では早い時代から、
「人の気持ちを表現する文化」が育っていたことを示しています。
2000年という区切りの年に、この絵巻が二千円札に使われたことは、
新しい時代に向けて、
日本は物語や感性を大切にしてきた国だ
というメッセージを伝える意味を持っていました。
なぜ写真ではなく「絵」なのか
ここで一つ、考えてみましょう。
なぜ、お札には写真ではなく、絵や図案が使われるのでしょうか。
それは、写真が「一つの見方」を強く固定してしまうのに対し、
絵は、見る人が意味を考える余地を残してくれるからです。
お札は、毎日使われ、長い時間、多くの人の手を渡ります。
だからこそ、
- 見るたびに新しい発見がある
- 立場がちがっても受け取り方が広がる
そんなデザインが選ばれてきたのです。
クイズ⑤ 美術作品がお札に使われる理由として正しいものはどれ?
お札に美術作品が使われる理由として、正しいものはどれでしょうか?
昔の有名な絵をそのまま使えば説明がいらないから
特定の考えに偏らず、日本の文化や感性を伝えられるから
人物の絵を描くのがむずかしいから
正解は 2 です。
👉 美術作品は、時代や立場をこえて、日本が大切にしてきた文化や感性を伝える役割を持っています。
硬貨に描かれた植物・物・模様の意味【額面・年号つき】
なぜ硬貨には「人物」ではなく植物や物が多いのか
硬貨は、お札よりも使用回数が多く、長いあいだ使われ続けるお金です。
毎日の買い物で何度も手に取られ、落としたり、ぶつけたりもします。
そのため硬貨のデザインには、次のような条件が強く求められてきました。
- すり減っても分かりやすい
- だれが見ても意味を受け取りやすい
- 特定の人物や考え方に偏らない
こうした理由から、日本の硬貨には植物・自然・道具・象徴的な模様が多く使われています。
それぞれのデザインには、日本のくらしや産業、国の考え方が込められています。
一円硬貨に描かれた「若木」
若木(わかぎ)
- 額面:一円硬貨
- 発行開始:1955年(昭和30年)
一円硬貨に描かれているのは、まだ成長途中の若木です。
これは、「これから成長していく日本」を表すデザインです。
戦後の日本は、焼け野原からの再出発でした。
経済も社会も、まだ小さく、これから伸びていく段階。
その状況を、これから大きくなる若木に重ねて表しました。
一円という最も小さな額面に、未来への希望を込めた点も、大きな意味を持っています。
五円硬貨に描かれた「稲穂・歯車・水」
稲穂・歯車・水
- 額面:五円硬貨
- 発行開始:1949年(昭和24年)
五円硬貨には、三つのモチーフが組み合わされています。
- 稲穂:農業
- 歯車:工業
- 水(波線):水産業
これは、日本の産業が
農業・工業・水産業によって支えられていることを示しています。
また、五円は「ごえん」と読み、「ご縁」に通じることから、
縁起のよい硬貨としても親しまれてきました。
くらし・仕事・人とのつながりを大切にするという、日本らしい感覚が表れています。
五十円硬貨に描かれた「菊」
菊
- 額面:五十円硬貨
- 発行開始:1967年(昭和42年)
菊は、日本で古くから使われてきた花で、
落ち着きや品のよさ、長く続く安定を表します。
また、菊は日本の公的な場面でもよく使われる花で、
国としてのまとまりや信頼感を象徴する存在です。
五十円硬貨は、日常でもよく使われる額面です。
そこに菊を描くことで、
「安定した社会」「落ち着いたくらし」への願いが込められていると考えられます。
百円硬貨に描かれた「桜」
桜
- 額面:百円硬貨
- 発行開始:1967年(昭和42年)
桜は、日本を代表する花です。
毎年必ず咲き、短い期間で散る姿は、
自然の美しさや、季節の移り変わりを感じさせます。
百円硬貨は、子どもから大人まで、最もよく使う硬貨の一つです。
そこに桜が描かれていることで、
日本の自然や季節感が、日常の中に溶け込むようになっています。
五百円硬貨に描かれた「桐・竹・橘」
桐・竹・橘
- 額面:五百円硬貨
- 発行開始:2000年(平成12年)〈現行デザイン〉
桐・竹・橘は、日本の伝統的な組み合わせで、
「日本の国」を象徴する植物とされています。
- 桐:高貴さ・品格
- 竹:しなやかさ・強さ
- 橘:永く続くこと
五百円硬貨は、硬貨の中で最も高い額面です。
そのため、国としての象徴性がより強いデザインが選ばれました。
硬貨のデザインから見える共通点
ここまでをまとめると、日本の硬貨には次の共通点があります。
- 人物ではなく、成長・くらし・産業・自然を表す
- 毎日使われることを前提に、分かりやすさを重視
- 時代が変わっても意味が通じるモチーフを選ぶ
硬貨は、静かですが、とても多くのことを語っています。
クイズ⑥ 硬貨のデザインについて正しいものはどれ?
日本の硬貨のデザインについて、正しいものはどれでしょうか?
硬貨は長く使われるため、特定の人物よりも植物や象徴的な物が選ばれている
硬貨には、できるだけ新しい流行のデザインが取り入れられている
硬貨のデザインには、産業やくらしとの関係は考えられていない
正解は 1 です。
👉 硬貨は長く、だれもが使うお金なので、人物ではなく植物や象徴的な物が選ばれてきました。
なぜ日本の硬貨には人物が描かれないのか
硬貨は「毎日使われる道具」
日本の硬貨に人物が描かれていないことは、実はとても意識的な選択です。
その理由を考えるとき、まず大切なのは、硬貨がどのように使われているかです。
硬貨は、お札よりも
- 使う回数が多い
- 長い期間、同じものが流通する
- 落としたり、こすれたりしやすい
という特徴を持っています。
つまり、硬貨は「鑑賞するもの」ではなく、毎日の生活で使われる道具なのです。
人物は「評価が分かれやすい」
人物には、必ず評価の違いがあります。
ある人にとっては尊敬できる存在でも、別の立場から見ると、考え方が合わない場合もあります。
お札は国の信用を示す役割が強いため、
「その時代に国が大切にした価値」をはっきり示す人物が選ばれてきました。
一方、硬貨は、
だれもが、毎日、無意識に使うお金です。
そこに人物を描くと、
- 好き嫌い
- 政治的な評価
- 歴史の解釈の違い
といった問題が生まれやすくなります。
だから日本では、
人物ではなく、植物や象徴的な物が選ばれてきたのです。
すり減っても意味が伝わる必要がある
硬貨は、何年、何十年と使われます。
そのあいだに、表面は少しずつすり減っていきます。
人物の顔は、
- 表情
- 目や口の形
など、細かい部分が失われると、誰なのか分かりにくくなります。
一方で、
- 稲穂
- 桜
- 若木
- 歯車
といった形は、多少すり減っても、
「何が描かれているか」が分かりやすいという利点があります。
硬貨のデザインには、
「何十年後でも意味が通じるか」
という視点が欠かせません。
植物や物は「みんなで共有しやすい」
植物や道具には、特定の思想や立場がありません。
だからこそ、
- 子ども
- 大人
- 立場のちがう人
だれが見ても、受け取りやすいのです。
たとえば、
若木は「成長」、
稲穂は「くらし」、
桜は「季節と自然」、
歯車は「仕事や産業」
といったように、意味を押しつけずに伝えることができます。
これは、
「お金は国民みんなのもの」
という考え方にもつながっています。
他の国と比べるとどう違う?
外国の硬貨を見ると、人物が描かれている国もあります。
それでも、日本があえて人物を使わないのは、
合意を重んじる文化が強く影響していると考えられます。
日本では、
「だれか一人を前に出すより、みんなで支える」
という感覚が、社会の中に根づいてきました。
硬貨のデザインは、
その感覚をとてもよく表しています。
硬貨は「静かに価値を伝えるメディア」
硬貨は、主張の強いメッセージを出しません。
けれど、
- 成長
- くらし
- 産業
- 自然
といった、社会の土台になる価値を、
毎日の生活の中で、静かに伝え続けています。
ここまで見てくると、
「硬貨に人物がいない」のは、
偶然ではなく、しっかり考えられた結果だということが分かります。
クイズ⑦ 硬貨に人物が描かれない理由として正しいものはどれ?
日本の硬貨に人物が描かれない理由として、正しいものはどれでしょうか?
人物を描く技術が昔はなかったから
すり減っても意味が伝わり、みんなが使いやすいデザインが求められたから
人物はお札にしか描いてはいけない法律があるから
正解は 2 です。
👉 硬貨は長く、だれもが使うお金なので、分かりやすく共有しやすいデザインが選ばれてきました。
日本のお札や硬貨はいつ・なぜ変わってきたのか【年号つき】
お金のデザインは「ずっと同じ」ではない
お札や硬貨のデザインは、一度決めたら永遠に使われるわけではありません。
日本では、時代の節目ごとに、お金のデザインが見直されてきました。
その理由は大きく分けて三つあります。
- 偽造(にせもの)を防ぐため
- 社会の価値観が変わったため
- 国として伝えたいメッセージが変わったため
つまり、お金のデザインの変化は、
日本社会の変化そのものだといえます。
明治時代|近代国家としての「信用」をつくる
明治時代、日本は江戸時代までのしくみを終わらせ、
近代国家として世界に仲間入りしようとしていました。
そのとき最も重要だったのが、国の信用です。
- お札に肖像を入れる
- 精密な模様を使う
- 国が責任をもって発行する
こうした工夫は、
「このお金は信じて使ってよい」という合図でもありました。
この時代のお札は、
国を成り立たせることそのものが目的だったといえます。
戦前〜戦後|不安定な社会と「国の象徴」
戦争や敗戦をはさんだ時代、日本社会は大きく揺れました。
この時期のお札には、強い象徴性をもつ人物が多く使われています。
たとえば、
長く多くの券種に使われた人物がいるのは、
「国としての軸をはっきり示す必要があった」からです。
一方で、戦後になると、
- 軍事的な考え
- 一部の価値観を強く押し出す表現
は、少しずつ避けられるようになります。
お札のデザインにも、
民主主義や平和を重視する姿勢が表れ始めました。
高度経済成長期|安定としくみの時代
1950年代後半から1970年代にかけて、日本は急速に成長しました。
この時代に重視されたのは、
個人のカリスマよりも、社会のしくみです。
そのため、お札には
- 国の制度を整えた人物
- 社会全体を支えた考え方
が反映されました。
また、生活が安定してくると、
お金は「生きるための道具」から
「社会を回すしくみ」へと役割を広げていきます。
平成|心・文化・多様性へ
平成に入ると、日本社会は成熟期を迎えます。
この時代にお札に描かれたのは、
学び・文化・国際性・科学といった分野で活躍した人物でした。
ここから分かるのは、
「何をどれだけ生産するか」よりも、
どう生きるか、どう考えるかが重視されるようになったということです。
また、
- 女性
- 科学者
- 教育者
といった、これまで表に出にくかった存在が選ばれた点も、
社会の価値観の変化をよく表しています。
令和|これからの社会を映すお金
令和の新しいお札は、
これからの日本が何を大切にしたいかをはっきり示しています。
- 経済をどう社会に役立てるか
- 学びの機会をどう広げるか
- 命をどう守るか
お札に描かれた人物や、裏面の風景には、
「これからの社会への問い」が込められています。
お金は、過去を記録するだけでなく、
未来への方向を示す道しるべにもなっているのです。
硬貨のデザインはゆっくり変わる
お札に比べて、硬貨のデザインは大きく変わりません。
これは、硬貨が長期間使われることを前提にしているからです。
その代わり、
- 材料
- 偽造防止の工夫
- 大きさや重さ
といった点で、少しずつ改良が重ねられてきました。
見た目は同じでも、中身は進化している
――それが硬貨の特徴です。
クイズ⑧ お札や硬貨が変わる理由として正しいものはどれ?
日本のお札や硬貨のデザインが変わってきた理由として、正しいものはどれでしょうか?
気分転換のために定期的に変えている
偽造防止や、社会の価値観の変化に対応するため
外国のお金と同じにしないと使えないから
正解は 2 です。
👉 お金のデザインは、社会の変化や安全性に対応するために見直されてきました。
自由研究に使える!お札や硬貨の調べ方(小学校中学年〜中学生向け)
自由研究に使えるテーマです
このテーマは、社会・歴史・国語・図工的視点までつなげて調べられる、自由研究にとても向いている題材です。
実際のお金を見ながら進められるので、「調べた実感」を持ちやすいのも特徴です。
自由研究テーマ例①
お札に描かれた人物は、どんな理由で選ばれてきたのか
調べるポイント
- その人物が描かれていた「券種(何円札)」
- 発行されていた「年号」
- その時代、日本はどんな社会だったか
- その人物が象徴している価値(学問・政治・科学・文化 など)
まとめ方の例
- 年表にして、人物と時代を並べる
- 「この人が選ばれた理由」を自分の言葉で説明する
- 今のお札の人物と比べて、共通点・違いを書く
👉 社会(歴史)+国語(説明する力)の学びにつながります。
自由研究テーマ例②
お札の表と裏は、どんな役割分担をしているのか
調べるポイント
- 表に描かれているもの(人物)
- 裏に描かれているもの(建物・風景・美術作品)
- 表と裏で、伝えようとしている内容の違い
- なぜ裏には人物が少ないのか
まとめ方の例
- 表と裏を左右に分けた図を書く
- 「表=はっきりしたメッセージ」「裏=広く共有できる価値」と整理する
- 自分なら裏に何を描きたいか考える
👉 社会+図工的な発想力の学びにつながります。
自由研究テーマ例③
硬貨に描かれた植物や物には、どんな意味があるのか
調べるポイント
- 各硬貨に描かれているもの
- それが何を表しているか(成長・産業・自然 など)
- なぜ人物ではないのか
- すり減っても意味が伝わる理由
まとめ方の例
- 硬貨の絵を写して、意味を書き込む
- 共通点(植物が多い、自然が多い)を見つける
- 他の国の硬貨と比べてみる
👉 社会+観察力+比較の学びにつながります。
自由研究テーマ例④
お札や硬貨は、時代が変わるとどう変わってきたのか
調べるポイント
- 明治・昭和・平成・令和での違い
- 変わった理由(社会の変化・偽造防止など)
- 変わらなかった部分は何か
まとめ方の例
- 時代ごとに1枚ずつ代表的なお金を選ぶ
- 「なぜ変えたのか」「なぜ残したのか」を考える
- 未来のお金を想像して描いてみる
👉 社会+未来思考の学びにつながります。
教科をまたいだ学びの視点
お札や硬貨は、ただの「お金」ではありません。
歴史・社会・文化・考え方が一枚の中に詰まった、身近な教材です。
「なぜこのデザインなのか?」
と考えることで、
暗記ではなく、理由から理解する学びにつながります。
おさらいクイズ
クイズ①
日本で最初に人物が描かれたお札について、正しいものはどれでしょうか?
1 明治時代に発行され、神功皇后が描かれていた
2 昭和時代に発行され、聖徳太子が描かれていた
3 平成時代に発行され、福沢諭吉が描かれていた
正解は 1 です。
👉 日本で最初に肖像入りのお札となったのは、明治時代の神功皇后の一円券でした。
クイズ②
聖徳太子が長い間、さまざまな額面のお札に使われた理由として最も近いものはどれでしょうか?
1 絵として描きやすかったから
2 日本のはじまりや理想の指導者像を一人で表せたから
3 他に適した人物がいなかったから
正解は 2 です。
👉 聖徳太子は、政治・学び・文化をまとめて象徴できる存在として重視されてきました。
クイズ③
日本のお札の裏面に、人物の顔ではなく、風景や美術作品が多く描かれている理由はどれでしょうか?
1 表面よりも印刷がかんたんだから
2 時代や立場をこえて、多くの人が共有しやすい価値を伝えるため
3 裏面はあまり見られないから
正解は 2 です。
👉 裏面は、文化・自然・物語など、だれにとっても受け取りやすい価値を伝える役割があります。
クイズ④
五円硬貨に描かれている「稲穂・歯車・水」が表しているものとして正しいものはどれでしょうか?
1 日本の三つの主要な産業
2 三つの季節の変化
3 三人の有名な人物
正解は 1 です。
👉 稲穂は農業、歯車は工業、水は水産業を表し、日本の産業を象徴しています。
クイズ⑤
お札や硬貨のデザインが、時代によって変わってきた主な理由はどれでしょうか?
1 人々があきてしまうから
2 偽造を防ぐことや、社会の価値観が変わったから
3 外国のお金と同じにする必要があるから
正解は 2 です。
👉 お金のデザインは、安全性や、その時代に大切にされる考え方を反映して見直されてきました。
まとめ
お札や硬貨は、ただの「お金」ではありません。
そこには、日本が どんな歴史を歩み、何を大切にしてきたのか が、静かに刻まれています。
お札に描かれた人物は、その時代に
- 国として示したかった価値
- 社会が向き合っていた課題
- 未来に残したい考え方
を背負って選ばれてきました。
政治家、教育者、文学者、科学者へと変化してきた流れは、日本社会の関心が「力」から「学び」「文化」「命」へと広がってきたことを表しています。
一方で、硬貨に描かれているのは、人物ではなく
- 植物
- 産業を表す道具
- 自然や成長の象徴
でした。
これは、お金が だれのものでもなく、みんなのもの であるという考え方と深く結びついています。
また、お札の裏面に描かれた
風景・建物・美術作品・物語は、
立場や時代をこえて共有できる「日本らしさ」を伝えてきました。
お金のデザインは、
強く主張するためのものではなく、
毎日の生活の中で、気づかないうちに価値を伝える教材 です。
次にお札や硬貨を手に取ったときは、
「いくらか」だけでなく、
「なぜこれが描かれているのか」
にも、ぜひ目を向けてみてください。
そこには、日本の過去と、今、そして未来へのヒントが、
一枚の中に詰まっています。
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この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。

