誰もが安心して学べる学校をつくるために──横浜市立南小学校で教員研修を行いました

「子どもが落ち着かない。」
「支援が必要な子どもへの関わり方に悩んでいる。」
「誰もが安心して学べる学級をつくりたい。」

学校現場では今、多くの先生方がこうした課題と向き合っています。

2026年7月、横浜市立南小学校の校内研修で、「誰もが安心して学べる学校をつくるために」をテーマにお話しさせていただきました。

今回の研修では、Webレジュメを活用し、先生方が講演の途中でアンケートや問いかけに回答しながら学びを深める参加型の研修を実施しました。

この記事では、研修でお伝えした内容だけでなく、先生方から寄せられたアンケート結果やご感想をもとに、学校現場でどのような気付きや変化が生まれたのかをご紹介します。

子どもたちが安心して学べる学校づくりについて、一緒に考えるきっかけとなれば幸いです。

横浜市立南小学校で教職員研修を行いました

先日、横浜市立南小学校にて、教職員の皆様を対象とした90分間の校内研修を担当させていただきました。

研修テーマは、

「だれもが安心して学べる学校をつくるために」

です。

私は現在、オルタナティブスクール「MOANAVI(モアナビ協創学園)」を運営していますが、不登校支援の専門家としてお話ししたわけではありません。

20年間の公立小学校教員としての経験、大学院で学んだ教育評価、そして現在のMOANAVIでの実践を通して、私が20年以上考え続けてきたことを先生方と共有する時間となりました。

研修の冒頭で先生方にお伝えしたことがあります。

今日のゴールは、不登校支援の専門家になっていただくことではありません。

明日、一人の子どもの見方が変わること。

学校には学校ならではの難しさがあります。

時間的な制約もあれば、学級全体を見ながら一人一人に向き合わなければならない現実もあります。

だからこそ、「こうすれば必ずうまくいく」という方法論をお伝えするのではなく、

  • 子どもをどう見取るのか
  • どのように考えるのか
  • 何を小さく試していくのか

という視点について、MOANAVIでの具体的な実践を交えながらお話ししました。

研修終了後には、多くの先生方からアンケートへのご回答や質問をいただきました。

この記事では、そのアンケートから見えてきた先生方の変化や学びを紹介しながら、今回の研修でお伝えしたかったことを振り返っていきたいと思います。

「支援方法」ではなく「子どもの見方」をテーマにした理由

今回の研修では、不登校への具体的な対応方法や、特別な支援技術についてお話ししたわけではありません。

私がお伝えしたかったのは、もっと手前にある問いです。

「私たちは、本当に同じ景色を見ているのでしょうか。」

学校で子どもたちと関わっていると、

「やる気がない」
「授業に集中できない」
「宿題をやらない」
「すぐに諦めてしまう」

そんな姿に出会うことがあります。

そのとき私たちは、つい

「なぜやらないのだろう。」

「なぜできないのだろう。」

という問いを立ててしまいます。

しかし、MOANAVIで多くの子どもたちと出会う中で、私は少し違う問いを持つようになりました。

「この子には、どんな景色が見えているのだろう。」

問題文が最後まで読めないのかもしれません。

何をすればよいのか分からないのかもしれません。

「分からない」と助けを求める方法が分からないのかもしれません。

失敗することや、周りと比べられることへの不安が大きいのかもしれません。

行動だけを見ていると、「やらない子」に見えることでも、その背景には私たちからは見えない困り感が隠れていることがあります。

だからこそ私は、「子どもを変える方法」を考える前に、「子どもをどう見るか」を考えることが大切なのではないかと考えています。

今回の研修では、大学院で学んだAssessment(見取り)の考え方や、教育実践の中で大切にしてきたOCTループ(Observe・Consider・Try)、そしてMOANAVIで子どもたちと向き合う中で得られた経験を紹介しながら、「目の前のその子を理解すること」について先生方と一緒に考えました。

そして、この考え方は先生方のアンケートにも色濃く表れていました。

次の章では、実際に先生方から寄せられたアンケートをもとに、今回の研修でどのような気付きや変化が生まれたのかをご紹介します。

アンケートから見えてきたこと

今回の研修では、終了後だけでなく、講演の途中にも先生方にアンケートや問いかけへご回答いただきながら進めました。

お手持ちのタブレットからWebレジュメへアクセスしていただき、一方的に話を聞くだけではなく、ご自身の教育実践を振り返りながら参加していただく「参加型」の研修です。

「今、思い浮かんだ子どもはいますか。」

「この場面では、どのような支援が考えられるでしょうか。」

そんな問いについて一人ひとりが考え、自分の経験と重ね合わせながら学びを深めていただきました。

そして研修の最後には、改めてアンケートへのご協力をお願いしました。

ご多用の中、多くの先生方から率直なご感想やご意見をお寄せいただき、心より感謝申し上げます。

アンケートでは、研修全体の満足度や今後の教育実践への活用度に加え、自由記述による感想や質問もご回答いただきました。

数値を見ると、多くの先生方から高い評価をいただくことができました。

もちろん、アンケートの数字だけで研修の価値が決まるわけではありません。

私が今回のアンケートを読み返していて最も印象に残ったのは、評価の高さそのものではなく、先生方の言葉の変化でした。

自由記述には、

  • 「子どもの見方が変わった」
  • 「明日から実践してみたい」
  • 「安心して学べる環境について改めて考えた」
  • 「子どもの背景をもっと理解したい」

といった声が数多く寄せられていました。

今回の研修では、「こうすればうまくいく」という答えをお伝えしたわけではありません。

先生方一人ひとりが、ご自身の学級や目の前の子どもたちを思い浮かべながら考え、その思いをアンケートという形で言葉にしてくださいました。

だからこそ、このアンケートには単なる研修評価ではなく、先生方の気付きや学びの過程が表れているように感じています。

次章では、その中でも特に多く見られた「子どもの見方が変わった」という先生方の声をご紹介します。

「子どもの見方が変わった」――先生方の声から見えてきたこと

今回のアンケートで最も多く見られたのは、「子どもの見方が変わった」という内容の感想でした。

実際に寄せられたご感想の一部をご紹介します。

「子どもの背景を考えながら接していきたいと思いました。」

「『なぜできない』ではなく、『どんな景色が見えているのだろう』という視点を大切にしたいです。」

「子どもの困り感に目を向けることの大切さを改めて感じました。」

「安心して挑戦できる環境をつくることが、学びにつながると感じました。」

これらの感想を読んでいて感じたのは、先生方が「新しい支援方法」を持ち帰ったのではなく、「子どもを見る視点」を持ち帰ってくださったということです。

研修の中で私は、「なぜやらないのだろう」「なぜできないのだろう」という問いを、「この子には、どんな景色が見えているのだろう」という問いに置き換えてみませんか、とお話ししました。

学校生活の中では、私たちはどうしても子どもの行動に目が向きます。

授業中に立ち歩く。

宿題をやってこない。

すぐに諦めてしまう。

「分からない」と言えない。

そうした姿だけを見ると、「やる気がない」と受け止めてしまうこともあります。

しかし、その背景には、

  • 問題文を最後まで読むことが難しい
  • 何をすればよいのか分からない
  • 助けを求める方法が分からない
  • 失敗することへの強い不安がある

など、外からは見えにくい困り感が隠れていることがあります。

もちろん、学校という環境では、一人の子どもだけに時間をかけ続けることはできません。

私自身、公立小学校で20年間勤務してきたからこそ、その難しさはよく分かっています。

だから今回の研修では、「明日から全部を変えてください」という話はしませんでした。

たった一人でいい。

今、頭に浮かんでいるあの子を、少し違う視点で見てみる。

その小さな変化から教育は始まるのではないか。

そんな思いでお話をさせていただきました。

アンケートを読み返していると、その思いが先生方それぞれの言葉として返ってきていることが、とても印象的でした。

「子どもを変える」のではなく、「まず自分の見方を変えてみる」。

今回の研修で先生方が受け取ってくださった最も大きな学びは、そこにあったように感じています。

「安心して学べる環境」とは何かを改めて考える

今回の研修では、「安心して学べる学校」というテーマを掲げました。

安心という言葉はよく耳にしますが、その正体は何でしょうか。

教室が静かなことでしょうか。

ルールが守られていることでしょうか。

もちろん、それらも大切です。

しかし、私が研修でお伝えしたかったのは、「安心」とは子どもが挑戦できる環境であるということです。

MOANAVIで子どもたちと関わっていると、教科書を開けなかった子が開けるようになったり、「分からない」と言えなかった子が助けを求められるようになったりする場面を数多く見てきました。

その変化は、「もっと頑張ろう」と励ましたからではありません。

子どもが安心して挑戦できるように、学習環境を少しずつ変えてきた結果でした。

例えば、

  • 問題数を調整する
  • 一緒に問題文を読む
  • 書く前に口で説明してみる
  • 「分からない」と言えたことを認める
  • 小さな挑戦そのものを価値づける

こうした工夫は、一見すると特別な支援には見えないかもしれません。

しかし、一つ一つの積み重ねが、「挑戦しても大丈夫」という安心感につながっていきます。

アンケートの自由記述にも、「安心して挑戦できる環境づくり」という言葉が何度も登場しました。

先生方は、教室環境や人間関係だけでなく、

  • 子どもが安心して失敗できること
  • 助けを求められること
  • 一人一人の背景を理解しようとすること

など、多様な視点から「安心」を捉えてくださいました。

私自身も、公立小学校で教員をしていた頃は、「子どもを変えること」に意識が向いていた時期がありました。

でも今は、まず変えられるのは子どもではなく、私たち大人がつくる学習環境なのだと考えています。

どんな課題を出すのか。

どんな順番で提示するのか。

誰に相談できるのか。

どんな言葉をかけるのか。

何を成長として認めるのか。

その一つ一つが、子どもにとっての「安心して学べる環境」を形づくっています。

教育には万能な正解はありません。

だからこそ、目の前の子どもをよく見て、よく考え、小さく試していく。

今回の研修を通して、先生方と「安心して学べる環境とは何か」を一緒に考える時間を持てたことを、とても嬉しく感じています。

「明日からやってみたい」――行動につながる学び

私は研修の最後に、先生方へこんなお話をしました。

「明日から全部を変える必要はありません。」

学校には学校の制約があります。

限られた時間の中で授業を行い、多くの子どもたちを見守り、一人一人に寄り添いながら学級を運営することは決して簡単なことではありません。

だから私は、「理想の教育」をお願いしたいわけではありません。

たった一人でいい。

今日の研修を聞きながら思い浮かんだ「あの子」を、明日もう一度見つめ直してみてほしい。

そんな思いでお話を締めくくりました。

アンケートには、その思いを受け止めてくださった先生方の声が数多く寄せられていました。

「まずは子どもの背景を考えてみたい。」

「明日から子どもへの声かけを少し変えてみようと思った。」

「『できない』ではなく、『何に困っているのか』を考えてみたい。」

「子どもが安心して挑戦できる環境を意識していきたい。」

どれも大きな改革ではありません。

しかし、教育はこうした小さな実践の積み重ねによって変わっていくものだと私は考えています。

私自身、公立小学校で教員をしていた頃、「正しい答え」を探そうとしていた時期がありました。

しかし、大学院で教育評価を学び、学校現場で研究を続け、そしてMOANAVIで子どもたちと向き合う中で、一つの考え方にたどり着きました。

それが、

Observe(よく見る)

Consider(よく考える)

Try(やってみる)

というOCTループです。

教育には、すべての子どもに当てはまる万能な方法はありません。

だからこそ、目の前の子どもをよく見て、その子に合った支援を考え、小さく試してみる。

うまくいかなければ、また見直してみる。

この繰り返しこそが、教育を少しずつ前へ進めていくのだと思っています。

今回のアンケートを読んでいて感じたのは、多くの先生方が「明日から自分にもできること」を見つけてくださったということでした。

90分の研修で学校が劇的に変わることはありません。

しかし、一人の先生の見方が変われば、一人の子どもとの関わりが変わります。

そして、その小さな変化が積み重なって、学校全体の学びの環境を少しずつ変えていく。

私は、その可能性を今回の研修を通して改めて感じることができました。

先生方から寄せられた質問が教えてくれたこと

研修の最後には、先生方からたくさんのご質問をいただきました。

「こんな場合はどう考えればよいですか。」

「この子にはどんな支援が考えられますか。」

「学校では時間も人手も限られていますが、どこから始めればよいでしょうか。」

質問の内容はそれぞれ異なりましたが、どの質問にも共通していたのは、「目の前の子どものために、もっとよい方法はないだろうか」という思いでした。

私は講師として研修に伺っていますが、「こうすれば必ずうまくいく」という答えを持っているわけではありません。

子ども一人ひとりが違えば、置かれている環境も違います。

同じ支援が、すべての子どもに合うことはありません。

だからこそ、今回の研修でもお伝えしたのは、「答え」ではなく「考え方」でした。

まずは子どもをよく見ること。

背景を考えること。

そして、小さく試してみること。

その積み重ねが、一人ひとりに合った支援につながっていきます。

先生方とのやり取りを通して改めて感じたのは、教育は一人で答えを見つける仕事ではないということです。

同じ学校の先生方と話し合うこと。

管理職や支援員の先生と情報を共有すること。

外部の専門機関や地域と連携すること。

そして、研修という場で他校の実践や考え方に触れること。

そうした対話の積み重ねが、新しい視点や実践を生み出していくのだと思います。

今回いただいた質問の一つひとつにも、先生方が日々子どもたちと真剣に向き合っている姿勢が表れていました。

私自身も、その問いに答えながら、多くのことを学ばせていただきました。

研修とは、一方的に知識を伝える場ではありません。

講師も参加者も、それぞれの経験を持ち寄り、一緒に考える時間です。

今回の南小学校での研修も、私にとって改めて教育について考え直す貴重な機会となりました。

おわりに──目の前のその子の専門家になるために

今回、横浜市立南小学校の先生方と90分間ご一緒させていただき、改めて感じたことがあります。

それは、多くの先生方が本気で子どもたちのことを考え、よりよい教育を目指して日々実践されているということです。

教育には、「これが正解」という一つの答えはありません。

同じ方法でも、うまくいく子もいれば、うまくいかない子もいます。

だからこそ大切なのは、目の前の子どもをよく見て、その子に合った関わり方を考え続けることなのだと思います。

講演の最後に、私は先生方へこんなメッセージをお伝えしました。

「目の前のその子の専門家になってください。」

診断名の専門家になる必要はありません。

不登校支援の専門家になる必要もありません。

一番大切なのは、毎日関わっている先生だからこそ気付ける、その子らしさを知ることです。

「今日は少し表情が違うな。」

「今日は自分から話しかけてくれた。」

「昨日はできなかったことが、今日は少しできた。」

そんな小さな変化に気付き、その子に合った支援を考え続けられる存在こそ、その子にとっての「専門家」なのではないでしょうか。

今回の研修が、先生方にとって明日からの実践を少しだけ見つめ直すきっかけになっていれば、これ以上嬉しいことはありません。

最後になりましたが、このような貴重な機会をいただいた横浜市立南小学校の校長先生をはじめ、研修担当の先生方、ご参加くださった先生方に心より感謝申し上げます。

私自身も、先生方との対話やアンケートから多くの学びをいただきました。

これからも学校現場での実践を大切にしながら、一人でも多くの子どもたちが「安心して学べる学校」を実現できるよう、教育実践と発信を続けてまいります。


MOANAVIでは、子ども一人ひとりに寄り添う教育実践や、学校現場で役立つ考え方について、今後も実践を交えながら発信していきます。

講演・校内研修・教育相談等のご相談も受け付けていますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

タイトルとURLをコピーしました