
ストローで作るかざり「ヒンメリ」を知っていますか?
ヒンメリは、フィンランドという国で昔から作られてきた、幸せをよぶ飾りです。小麦のわらを細い糸で結んで、ゆれる形を作るのが伝統スタイルですが、今ではストローを使って手作りする方法が世界中で人気になっています。
ヒンメリの形をよく見ると、三角形や四角形、三角すいのような立体など、「数学のかたち」がたくさんかくれていることに気づきます。これらの形は、とても強い骨組みになっていて、建物や橋にも使われる「トラス構造」という考え方ともつながっています。
今回の記事では、ヒンメリのひみつや形の表現のしかたを学びながら、実際に「正四面体」「正八面体」「正二十面体」など、いろいろな立体ヒンメリを作る方法を紹介します。
作り方はむずかしそうに見えるかもしれませんが、大丈夫!コツを知ればだれでも作れます。
さあ、ストローと糸と針金を準備して、
数学とアートがひとつになるヒンメリの世界へ旅に出ましょう!✨
トラス構造とは|三角形が生み出す強さと美しさのひみつ
橋や鉄塔、体育館の屋根などを見上げると、三角形の骨組みがたくさん並んでいるのを見たことがありませんか?
それが「トラス構造(Truss Structure)」です。
トラス構造とは、細い棒や柱を三角形につないで組み合わせることで、大きな力を効率よく支える構造のことをいいます。
一見すると軽そうに見えますが、実はとても丈夫で安定しています。
この「軽くて強い」デザインこそが、トラス構造の魅力です。

🔺 三角形はなぜ強いの?
四角形の枠を作って押したり引いたりすると、形がくずれてしまいます。
しかし、三角形はどこを押しても形が変わりません。
これは、力が3つの辺に分散されて流れるためです。
三角形の頂点を押すと、力は「引っぱられる辺」と「押される辺」に分かれ、
お互いを支え合うようにバランスが取れます。
この性質を使うと、少ない材料で大きなものを支えられるのです。
ヒンメリを作ろう
ヒンメリは三角形や四角形、五角形といった基本的な図形を組み合わせて作ります。
特に、同じ形の図形だけを組み合わせて作ることができる正多面体のヒンメリは、安定した形になるので作りやすく、初めてのヒンメリ作りにおすすめです。材料も同じ大きさのものを揃えれば良いので、準備も楽です。
作り方に慣れたら、材料の長さを工夫して、好きな形のヒンメリ作りを楽しんでみましょう。
ゆらゆら揺れるヒンメリと、ヒンメリが作り出す影はとても美しいです。
正多面体の種類
正多面体とは、同じ形の面だけで構成されている立体のことです。
立体の形はたくさんありますが、正多面体は5種類しかありません。
正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体
このうち、正六面体は正方形、正十二面体は正五角形で作られていますが、その他は正三角形で作られています。
まずは正多面体の中で最もシンプルな正四面体を使ってヒンメリを作りましょう。
正四面体ヒンメリの作り方
正四面体は立体の中で最も少ないパーツで作ることができます。
正四面体ヒンメリの材料
- 10cmに切ったストロー6本
- 120cmくらいの糸
- 糸通しに使う12cmくらいの針金
針金の片方の先は糸を引っ掛けられるように曲げてペンチで潰しておきます。
正四面体ヒンメリの作り方
ストロー3本に糸を通します。
10cmくらいを残して固結びして三角形を作ります。

ストロー2本に糸を通します。
三角形の角に糸を引っ掛けて2個目の三角形を作ります。しっかりと糸を引いてゆるまないようにしましょう。2回引っ掛けると丈夫になります。

ストローの中を通って糸を移動させます。
ストローを1本通したら、三角形の角に糸を引っ掛けて立体に立ち上げます。しっかりと糸を引いてゆるまないようにしましょう。2回引っ掛けると丈夫になります。


ストローの中を通って、最初に残した10cmの糸が出ているところに糸を移動させます。

固結びをしたら完成です。
固結びで三角形を作る→頂点に糸を引っ掛けて三角形を増やす→糸が足りなくなったら結んで伸ばす→ストローの中を移動する→立体にする→最後は固結び
ヒンメリ作りでマスターしなければいけない技術はこれだけです。
完成する形がイメージできていれば、どんな順番で辺を作っても完成させることができます。
正八面体ヒンメリの作り方
ストロー3本に糸を通します。
10cmくらいを残して固結びして三角形を作ります。

ストロー2本に糸を通します。
三角形の角に糸を引っ掛けて2個目の三角形を作ります。しっかりと糸を引いてゆるまないようにしましょう。2回引っ掛けると丈夫になります。

ここまではほとんどのヒンメリ作りで共通する作り方です。
三角形が横に5個つながるように増やします。

ストローを1本通した後、最初の糸が出ている頂点と固結びをして立体にします。

ストローの中を移動して、三角形の頂点同士をつなげるように2回糸を引っ掛けます。

ストローの中を通って最初の糸が出ている頂点まで移動し、固結びをすれば完成です。

正二十面体ヒンメリの作り方
ストロー3本に糸を通します。
10cmくらいを残して固結びして三角形を作ります。

ストロー2本に糸を通します。
三角形の角に糸を引っ掛けて2個目の三角形を作ります。しっかりと糸を引いてゆるまないようにしましょう。2回引っ掛けると丈夫になります。

ここまではほとんどのヒンメリ作りで共通する作り方です。
三角形が横に9個つながるように増やします。

ストローを1本通した後、最初の糸が出ている頂点と固結びをして立体にします。
その後、ストローの中を通って、三角形同士をつなげ、リング状にします。



ストローに糸に通して三角形を作ります。ストローの中を移動しながら、正二十面体の上の部分の5つの三角形を作ります。

ストローの中を通って正二十面体の下の部分に移動し、同じように5つの三角形を作ります。

最初の糸が出ている頂点までストローの中を移動して戻り、固結びをすれば完成です。

✨まとめ✨
ヒンメリは、ただの飾りではなく、美しさと数学がひとつになったアートです。形の中には三角形や四角形、そして強い骨組みを作るトラス構造など、たくさんの学びがかくれていましたね。
今回作った正四面体・正八面体・正二十面体は、その中でもとくに安定した立体で、建物やデザインにも使われる大切な形です。
ヒンメリは、作るたびに形が増え、組み合わせることでさらに大きな作品に成長していきます。形をくみ合わせてモビールにしたり、色のストローを使って模様を作ったり、自分だけのアレンジにも挑戦してみましょう。
作っているときの発見や、「なぜこうなるのだろう?」という気持ちこそが、探究と創造のスタートラインです。
さあ、今日学んだ形と考え方をいかして、
世界にひとつだけのヒンメリアートを作ってみましょう!✨
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。



