
ニュースで「少数与党」や「連立政権」という言葉を耳にしたことはありますか?
なんだかむずかしそうですが、実はこの言葉の中には、
話し合い・協力・バランス といった民主主義の大切な考え方がつまっています。
この記事では、
「与党」と「野党」のちがいから、「首班指名」「総理大臣の選ばれ方」、
そして「少数与党」が生まれる理由や政治への影響までを、やさしく解説します。
読むうちに、政治のしくみがぐっと身近に感じられるはずです。
自由研究にも使えるテーマやクイズつきで、楽しく学んでいきましょう! 🏛️✨
政治の基本をおさらい|与党と野党ってなに?
ニュースで「与党」「野党」という言葉をよく聞きますよね。
でも、くわしく説明しようとすると、「どっちがどんな仕事をしているの?」と迷う人も多いのではないでしょうか。
まず、「政治(せいじ)」とは、みんなのくらしをよくするためのルールをつくり、社会を動かすことです。
そして日本では、政治の中心となる場所が「国会(こっかい)」。
国会は、国の法律をつくったり、予算(お金の使い方)を決めたりする、まさに「国の会議室」のような場所です。
国会には「与党(よとう)」と「野党(やとう)」があります。
与党とは、内閣(政府)を支え、政治の中心で動かしている政党のこと。
いっぽう野党は、与党のやり方をチェックし、別の意見や案を出して国会で議論する政党のことです。
たとえば、与党が「教育の予算を増やしたい」と言えば、
野党は「ほかの分野とのバランスは?」「もっとよい方法があるのでは?」と意見を出します。
こうして話し合いながら、よりよい法律や制度をつくっていくのです。
つまり、政治は対立ではなく、対話で進める仕組みです。
与党がすべてを決めるのではなく、野党が意見を出すことで、国民の声の幅が広がります。
これが「民主主義(みんしゅしゅぎ)」の大切なポイントです。
また、日本の国会は「衆議院(しゅうぎいん)」と「参議院(さんぎいん)」の二院制。
この2つの院で多数の議席を持つ政党が、政治を進める上で大きな力を持ちます。
その中心に立つのが、与党なのです。
クイズ①
「与党」と「野党」のちがいとして、正しいものはどれでしょう?
- 与党は政府を支える政党、野党は政策をチェックする政党
- 与党は国会で質問するだけの政党
- 野党は法律をつくらない政党
正解は 1 です。👉
与党は政府の中心として政治を進め、野党は意見を出してチェックする役わりを持っています。
おたがいの立場があるからこそ、バランスのとれた政治が行われるのです。
少数与党とは?|議席が少ない与党のしくみをわかりやすく解説
国会で政治を動かすには、「どれくらいの人が賛成しているか」がとても大事です。
これを決めるのが「多数決(たすうけつ)」。
議員が集まる国会では、法律をつくるときに「賛成が半分をこえる」ことが必要です。
この「半分(過半数)」をどの政党が持っているかで、政治の進め方が大きく変わります。
国会で過半数の議席(ぎせき=国会での「いすの数」)を持っている政党を中心に作られるのが「多数与党」。
逆に、過半数に届かない政党が政権を担当している場合を「少数与党(しょうすうよとう)」といいます。
たとえば、衆議院の議員が465人いる中で、ある政党が200議席しか持っていなかったとします。
この政党が内閣を作った場合、それは「少数与党」です。
なぜなら、法案を通すには233人以上(半数+1)の賛成が必要だからです。
このような少数与党では、法案がなかなか通らないという課題があります。
野党が反対すれば、採決で負けてしまうこともあるのです。
そのため、ほかの政党と協力して「連立政権(れんりつせいけん)」を作ることもあります。
つまり、政治を動かすには「数の力」と「話し合いの力」の両方が必要なのです。
一方で、少数与党にも良い点があります。
1つの政党だけで決めてしまうのではなく、いろいろな意見を聞く政治になりやすいからです。
議論や調整は大変ですが、国民の声を幅広く取り入れられる可能性があります。
クイズ②
「少数与党」とは、どんな状態のことを指すでしょう?
- 国会で過半数以上の議席を持っている政党
- 過半数に届かないけれど内閣をつくっている政党
- 国会に議席がまったくない政党
正解は 2 です。👉
少数与党は、国会で議席が半分に満たないのに政権を担当している政党のことです。
そのままでは法案を通せないため、他の政党と協力することが多くなります。
連立政権とは?|少数与党が協力して政治を動かす仕組み
「少数与党」には、ひとりでは法案を通しにくいという大きな課題があります。
では、どうすれば政治をうまく進めることができるのでしょうか?
その答えのひとつが「連立政権(れんりつせいけん)」です。
連立政権とは、2つ以上の政党が協力して1つの内閣をつくることをいいます。
たとえば、ある政党が200議席しか持っていなくても、
別の政党(たとえば50議席の党)と協力すれば、合計で過半数をこえることができます。
こうして政治を安定させるのが、連立政権の目的です。
ただし、連立には“約束”が必要です。
それぞれの政党は意見や考え方(政策)が少しずつ違うため、
「教育に力を入れる」「増税はしない」「安全保障をどうする」などの**共通の方針(政策協定)**を話し合って決めます。
この合意のもとに、連立内閣が誕生するのです。
日本では1990年代以降、連立政権が続いています。
たとえば、「自民党」と「公明党」は長く協力関係を結び、政治を安定させています。
一方で、連立政権にはデメリットもあります。
たとえば、意見が合わなくなると、すぐに対立が起きて内閣が崩れてしまうこともあるのです。
つまり、連立政権は「数の力」で支えられながらも、「話し合いの力」で成り立っています。
1つの政党ではできないことを、複数の政党が協力して進める――。
それは、**「対立より対話で進む政治」**の象徴でもあるのです。
クイズ③
連立政権をつくる一番の目的として、正しいものはどれでしょう?
- 政党が協力して過半数をこえるため
- 政党の数を減らすため
- 選挙をなくすため
正解は 1 です。👉
連立政権は、1つの政党では過半数に足りないときに、他の政党と協力して安定した政治を行うために作られます。
首班指名と総理大臣の選ばれ方|少数与党のときはどうなる?
日本の政治の中心には、「内閣(ないかく)」があります。
内閣は、国の仕事を進めるグループで、そのリーダーが「内閣総理大臣(ないかくそうりだいじん)」、
つまり「総理大臣」です。
では、その総理大臣は、どのように決められているのでしょうか?
実は、国民が直接えらぶわけではありません。
国会(こっかい)で行われる『首班指名(しゅはんしめい)』という選挙によって決まります。
首班指名は、国会の衆議院と参議院の両方で行われ、
それぞれが「この人を総理大臣にしたい」と候補をえらびます。
そして、もし2つの院でちがう人が選ばれた場合には、
衆議院の決定が優先されることになっています。
これは、衆議院のほうが国民により近い存在(選挙の回数が多い)だからです。
ふつうは、国会で一番多くの議席をもつ与党の代表が選ばれます。
しかし、「少数与党」の場合は話が少しちがいます。
議席が足りないために、他の政党の協力を得ないと、首班指名の投票で勝てないのです。
そのため、少数与党のリーダーが総理大臣になるには、
他の政党と合意を結んで支持を集める(連立を組む)必要があるのです。
また、もし衆議院と参議院で多数派がちがうと、政治が進みにくくなることもあります。
これを「ねじれ国会」と呼びます。
法案や予算が通りにくくなり、総理大臣が方針を変えたり、内閣が解散したりすることもあります。
このように、首班指名や少数与党の問題は、「数」だけでなく「信頼関係」も大切にする政治の姿を表しています。
政治は“勝ち負け”ではなく、どう協力して国を動かすかを考える場なのです。
クイズ④
「首班指名(しゅはんしめい)」とは、何を決めるために行われるものでしょう?
- 内閣のメンバー全員を決めるため
- 総理大臣を決めるため
- 国会議員の給料を決めるため
正解は 2 です。👉
首班指名とは、国会で総理大臣を決めるための選挙です。
衆議院と参議院の両方で行われ、ちがう結果になった場合は衆議院の決定が優先されます。
少数与党のメリットと課題|政治のバランスと対話のむずかしさ
「少数与党」と聞くと、「議席が少なくて大変そう」「思いどおりに進まない」といったイメージをもつかもしれません。
たしかに、過半数を持たない政党が政権をになうと、法案が通りにくいという課題があります。
しかし、それだけではありません。少数与党には、政治をよりよくするチャンスもあるのです。
🔹 メリット:多様な意見が国会に届く
多数の議席を持つ政党だけで決めてしまうと、少数の意見が無視されてしまうことがあります。
でも、少数与党の場合は、法案を通すために他の政党や議員と話し合いを重ねる必要があります。
その中で、さまざまな考え方や国民の声を取り入れることができます。
つまり、少数与党は「対話と合意の政治」を生み出すきっかけにもなるのです。
たとえば、「教育の支援をふやしたい」という政策を進めるとき、
野党から「福祉や医療とのバランスも考えよう」という意見が出れば、
より多くの人にとって納得のいく制度になります。
このように、話し合いの中でよりよい形を見つける力が政治には求められています。
🔹 デメリット:スピードが落ちやすい
一方で、少数与党には弱点もあります。
話し合いに時間がかかり、政策の決定や実行が遅れることがあるのです。
また、他の政党が協力をやめてしまえば、内閣が続けられなくなることもあります。
そのため、リーダーには「説明する力」や「調整する力」がとても大切です。
政治は、スピードと合意のバランスがむずかしい世界。
どちらか一方にかたよらず、「話し合いながら前に進める」ことが求められます。
🔹 少数与党が教えてくれること
少数与党の存在は、民主主義の根本にある「少数意見の尊重」を思い出させてくれます。
意見がちがっても、相手を否定せずに考えを聞き、よりよい案を見つける――
それは、政治だけでなく、学校や家庭、社会のあらゆる場面で大切な考え方です。
少数与党は、**「対話の力で進む政治」**の象徴ともいえるのです。
クイズ⑤
少数与党のメリットとして、最も正しいのはどれでしょう?
- ほかの政党と協力して多様な意見を取り入れられる
- 1つの政党だけで好きなように決められる
- 野党の意見を聞かなくてよくなる
正解は 1 です。👉
少数与党は、過半数を持たないからこそ、他の政党と協力して多様な意見を取り入れることができます。
民主主義では「話し合い」と「合意」がとても大切です。
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自由研究に使えるアイデア|少数与党や議会政治をテーマに探究してみよう
「少数与党」という言葉を聞くと、ちょっとむずかしく感じるかもしれません。
でも、その背景には「話し合い」「合意」「バランス」といった、
わたしたちの生活にも身近なテーマがかくれています。
ここでは、政治のしくみを楽しく調べられる自由研究のアイデアを紹介します。
① 国会のしくみを図にしてみよう
国会には衆議院と参議院があり、それぞれの役わりがちがいます。
まずは、**「国会・内閣・裁判所」の三権分立(さんけんぶんりつ)**をわかりやすく図にしてみましょう。
さらに、衆議院・参議院それぞれの議席数を調べて、
「どの政党がどのくらいの数を持っているか」を円グラフや棒グラフにまとめると、
政治のバランスが一目でわかります。
② 与党・野党のちがいを整理してみよう
ニュースや新聞を見て、「与党」と「野党」がそれぞれどんな意見を出しているかをまとめてみましょう。
たとえば、「教育」「防災」「環境」などテーマを決めて比較すると、
政策の考え方のちがいがよく見えてきます。
「どちらの意見も大切」「自分ならこう考える」と意見を書くと、
探究レポートとして完成度が高まります。
③ 少数与党と連立政権の関係を調べよう
実際に、日本や世界で少数与党がどのように政治を行っているのかを調べてみましょう。
インターネットや図書館で「○○内閣 連立政権」などのキーワードを検索すると、
過去の事例(細川内閣、村山内閣など)を見つけられます。
どんな政党が協力していたのか、うまくいった点・むずかしかった点を整理してみるのもおすすめです。
④ 模擬国会(もぎこっかい)をしてみよう
友だちや家族で「与党」「野党」「議長」「国民代表」などの役割を分けて、
ひとつのテーマを話し合う「模擬国会ごっこ」をしてみましょう。
たとえば、「給食を無料にする?」「スマホの使い方のルールを作る?」など、
身近なテーマで多数決を体験すれば、民主主義の仕組みを実感できます。
⑤ ニュースの中の「少数意見」を探してみよう
テレビや新聞、SNSなどで、社会の中で少数派の意見を見つけてみましょう。
それがどのように扱われているかを調べ、
「どうすれば少数の声が社会に届きやすくなるか」を自分の言葉で考えてみます。
政治の世界と同じように、日常の中にも“少数の声を尊重する”テーマがたくさんあります。
どのテーマでも、「調べる → まとめる → 自分の意見を書く」ことが大切です。
少数与党の学びを通して、民主主義=話し合いで未来をつくる力を体験してみましょう。
おさらいクイズ|少数与党と政治のしくみをふりかえろう!
これまでの記事を読んで、どれくらい理解できたかな?
与党・野党・連立政権・首班指名・少数与党について、もう一度確認してみよう! 🏛️✨
クイズ①
「与党」と「野党」のちがいとして正しいのはどれ?
- 与党は政府を支える政党、野党は政策をチェックする政党
- 与党は国会にいない政党
- 野党は法律を作らない政党
正解は 1 です。👉
与党は内閣を支え、野党は政策をチェックして意見を出す立場です。
どちらも民主主義には欠かせません。
クイズ②
「連立政権」とは、どんなしくみでしょう?
- 複数の政党が協力して内閣をつくること
- 一つの政党だけで国会を動かすこと
- 野党が交代で内閣を作ること
正解は 1 です。👉
連立政権は、少数与党が他の政党と協力して安定した政治を行うために作られます。
クイズ③
「首班指名(しゅはんしめい)」は、何を決めるための国会の選挙?
- 総理大臣を決めるため
- 政党の名前を決めるため
- 内閣の予算を決めるため
正解は 1 です。👉
首班指名は、国会で総理大臣をえらぶための重要な選挙です。
衆議院と参議院の両方で行われます。
クイズ④
「少数与党」とは、どんな状態を指すでしょう?
- 国会で過半数に満たない政党が政権をになう状態
- 議席が多い政党が連立を組んでいる状態
- 野党が多数を占めている状態
正解は 1 です。👉
少数与党は、議席が半分に届かないのに政権をになう政党のこと。
他党との協力や合意が欠かせません。
クイズ⑤
少数与党のメリットとして正しいのはどれ?
- 他の政党と協力し、多様な意見を取り入れやすい
- 自分たちだけで政策を自由に決められる
- 法律を作らなくてもよい
正解は 1 です。👉
少数与党では、他党との話し合いを通してさまざまな意見を取り入れられます。
民主主義の大切な特徴です。
💬 ふりかえりポイント
政治は「数」だけでなく、「対話」と「信頼」で動いています。
多数派も少数派も意見を出し合うことで、よりよい社会をつくることができるのです。
まとめ|少数与党が教えてくれる「話し合いで進む政治」
少数与党は、議席が少ないからこそ話し合いと協力が欠かせない政治のかたちです。
多数の意見だけでなく、少数の声にも耳をかたむけること。
それが、民主主義の本当の力です。
政治の世界でも、学校でも、社会でも――
意見がちがう人と向き合い、理解しあうことから未来は生まれます。
「少数与党」というテーマは、数より対話を大切にする社会の姿を教えてくれるのです。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。