
パンを作る前に、なぜイーストについて学ぶのでしょうか。
完成した椅子を、なぜさらに時間をかけて磨き続けるのでしょうか。
MOANAVIのサマースクールでは、「作ること」がゴールではありません。もっと良いものを作りたいという気持ちから疑問が生まれ、試し、考え、学びが自然につながっていきます。スツール作りとパン作りを通して見えてきた、子どもたちの試行錯誤と成長の一日をご紹介します。
スツールは完成した。でも、子どもたちはそこで終わりませんでした。
前日に自分たちの手で切った木材を組み立て、いよいよスツールが完成しました。
ねじを一本一本締め、少しずつ形になっていく椅子を見て、子どもたちからは自然と笑顔がこぼれます。
しかし、完成したから終わりではありません。
最後の工程は、紙やすりによる仕上げです。
角を少し丸くしたり、表面を滑らかにしたりしながら、「もっと気持ちよく座れる椅子にしたい」という思いで、一人ひとりが丁寧に磨き始めました。
「もっとツルツルにできる!」一人の発見が、みんなの挑戦になりました。
最初は240番や400番の紙やすりを使って表面を整えていました。
その途中、一人の子どもが1000番、さらに3200番という目の細かい紙やすりを使ってみました。
「先生、これすごい!」
触ってみると、木の表面は驚くほど滑らかになっています。
その様子を見た周りの子どもたちも、自分の椅子を触り比べながら違いを確かめます。
「本当だ。」
「私もやってみたい!」
すると、次々と細かい番手の紙やすりを手に取り、自分のスツールをさらに磨き始めました。
誰かに指示されたわけではありません。
一人の発見が周りへ広がり、「もっと良いものを作りたい」という気持ちが自然と生まれていったのです。
完成させることだけが目的ではなく、より良い仕上がりを目指して試し、比べ、工夫していく。
ものづくりの本当の面白さが表れた場面でした。

パン作りは、「レシピ」ではなく「理科」から始まりました。
午後は、小麦粉からパン作りに挑戦しました。
しかし、最初に説明したのは作り方ではありません。
「イーストとは何か。」
パンがふくらむ仕組みについて考える時間から始めました。
イーストは化学反応でパンをふくらませているのではなく、生きている微生物です。
そのため、活動しやすい温度があり、温度が低すぎても高すぎても十分に働くことができません。
パン作りは、生き物の力を借りて行う「発酵」の仕組みを利用しています。
さらに、納豆やみそ、しょうゆなど、私たちが普段口にしている食品も、同じように微生物の働きを利用した発酵食品であることを紹介しました。
目には見えない小さな生き物が、私たちの食生活を支えていることを知り、子どもたちは興味深そうに話を聞いていました。
レシピには、算数も隠れていました。
理科の話が終わると、今度は算数です。
今回のレシピは4人分。
一人ずつパンを作るためには、一人分の分量を自分たちで計算しなければなりません。
「小麦粉は何グラム?」
「砂糖は?」
「イーストはどれくらい?」
材料を一つずつ確認しながら、4人分を1人分へと計算していきます。
学校で学んでいる計算が、目の前のパン作りへとそのままつながる時間になりました。
「勉強は生活の中で使うものなんだ。」
そんな実感を持てた子どもも多かったのではないでしょうか。
「もっと良くしたい」という気持ちが、学びをつないでいく。
今日一日を振り返ると、子どもたちは自然とさまざまな教科に触れていました。
スツール作りでは、ものづくりの技術。
紙やすりでは、より良い仕上がりを目指して試行錯誤する探究心。
パン作りでは、微生物の働きを学ぶ理科。
レシピを計算する算数。
けれど、子どもたちは「今は算数」「今は理科」と考えながら活動していたわけではありません。
「もっとツルツルにしたい。」
「もっとおいしいパンを作りたい。」
そんな思いがあるからこそ、必要な知識を自然に使い、学びが教科の枠を越えてつながっていきます。
MOANAVIのサマースクールで大切にしているのは、教科を教えることではありません。
体験の中で疑問が生まれ、知識を使い、試し、さらに工夫する。
その繰り返しの中で、子どもたちは「学ぶことは面白い」と感じ始めます。
今日完成したのはスツールだけではありません。
「もっと良くしたい」と考え、自分で試し、工夫する力もまた、一日を通して少しずつ育っていました。

