
太陽は遠いのにどうして暖かい?
富士山が寒い理由と熱の伝わり方を小学生向けに解説
太陽は地球から約1億5000万kmも離れています。🚀 とても遠いのに、太陽の光を浴びるとポカポカとあたたかさを感じますよね。
でも考えてみると、ちょっと不思議です。
もし太陽に近づけばもっとあたたかくなるはずなのに、日本一高い富士山の山頂はとても寒いのです。さらに「太陽の光は空気を直接温めるの?」という疑問もわいてきます。
この記事では、そんな「太陽とあたたかさのふしぎ」に理科の視点で答えていきます。途中にクイズ、最後にはおさらいクイズもあるので、楽しみながら理解を深めてみましょう!
太陽と地球の距離はどれくらい?約1億5000万kmと光が届く時間
地球と太陽の距離は、約1億5000万km。これは地球を約3万7500周するくらいの長さです。
太陽の光は秒速30万kmで進むので、地球までわずか8分20秒ほどで届きます。つまり、今見ている太陽の光は8分前に太陽から出発したものなのです。
これだけ遠くにあるのに、どうして暖かさを感じられるのでしょうか?
太陽は遠いのになぜ暖かい?光と熱の正体を解説
太陽は、まるで巨大な火の玉のような存在です。表面温度は約6000℃、中心部はなんと1500万℃以上もあります。このすさまじいエネルギーが、光や熱として宇宙に放たれています。
この光や熱の正体は「電磁波(でんじは)」と呼ばれるエネルギーの波です。電磁波にはいろいろな種類がありますが、太陽から届くのは主に次の2つです。
- 可視光線(かしこうせん):人間の目に見える光。明るさを感じたり、色を見分けたりできるのはこの光のおかげです。
- 赤外線(せきがいせん):目には見えないけれど、熱のエネルギーをたっぷり運んでいる波。日なたで体がぽかぽかするのは赤外線の力です。
では、この光や熱はどうやって私たちを暖めるのでしょうか?
光が物に当たると「熱」に変わる
太陽の光は空気をほとんど素通りして、地面や建物、私たちの体に直接届きます。
光が当たると、そのエネルギーは物の中で吸収されて「熱」に変わります。だから日なたに立っていると体がじんわりと暖かくなるのです。
逆に、日かげは光が直接届かないため、地面や体があまり熱を吸収せず、ひんやりしています。つまり、太陽の光が「当たるか当たらないか」が暖かさのカギなのです。
身近な例で考えてみよう
- 夏の日、黒いTシャツを着ると暑く感じるのは、黒が光をよく吸収して熱に変えるから。
- 冬でも日なたに出ると意外と暖かいのは、光が体に届いて熱に変わるから。
「遠いのに暖かい」の理由
太陽は確かに1億5000万kmも遠くにありますが、それ以上に とてつもなく大きく強力なエネルギー源 です。太陽から放たれる光と熱は、地球まで届いても十分に私たちを暖められるほど強いのです。
熱の伝わり方は3種類|伝導・対流・放射を小学生向けに説明
理科では、熱の伝わり方を「伝導」「対流」「放射」の3つに分けて学びます。それぞれのしくみと、日常生活で体験できる例を見ていきましょう。
1. 伝導(でんどう)
しくみ
固体の中で分子が振動を伝えていき、熱が隣から隣へと移っていくことです。
身近な例
- 熱いスープに金属のスプーンを入れると、持ち手まで熱くなる。
- フライパンの取っ手を長く火にかけると熱くなる。
- 雪の日に鉄の手すりを握ると冷たく感じる(手の熱が奪われて伝わるため)。
実験アイデア
- アルミ、木、プラスチックの棒を同じ長さにして先端を温める。どれが一番早く熱くなるか比べる。
👉 ポイント:金属は熱を伝えやすい。木やプラスチックは伝えにくい。
2. 対流(たいりゅう)
しくみ
液体や気体は温まると軽くなって上へ動き、冷たい部分が下へ降りてきます。この循環によって熱が全体に広がります。
身近な例
- やかんでお湯をわかすと、下から泡が出て上に流れる。
- ストーブの上の空気が上昇し、部屋全体があたたまる。
- 海や湖で「水温の違い」による流れができる。
実験アイデア
- 水の入ったビーカーに食紅を一滴たらして加熱すると、赤い流れが上昇・下降していく様子が見える。
👉 ポイント:温まった空気や水は「軽く」なって上へ動き、冷たい部分が下がってくる。
3. 放射(ほうしゃ)
しくみ
光や赤外線といった「電磁波」で熱が伝わること。空気や水がなくても真空の宇宙を通って熱を運べます。
身近な例
- 太陽の光が地球に届いて地面を温める。
- 冬でも日なたはぽかぽかする。
- 焚き火のそばで、空気を通さなくても顔や手が熱く感じる。
実験アイデア
- 日なたと日かげに温度計を置いて比べる。
- 黒い紙と白い紙を日なたに置いて温度を測ると、黒の方が熱を多く吸収することがわかる。
👉 ポイント:太陽の熱が宇宙を通って地球に届くのは放射のおかげ。
まとめ
- 伝導=固体の中で熱が伝わる
- 対流=液体や気体が動いて熱を運ぶ
- 放射=光や赤外線で真空でも伝わる
🔎 クイズにチャレンジ!(太陽の熱編)
Q1: 太陽の熱が地球に届くときの伝わり方は?
① 伝導 ② 対流 ③ 放射
答え:③ 放射(宇宙は空気がないので、放射だけが届く)
富士山の山頂は太陽に近いのになぜ寒い?気温が下がる3つの理由
富士山は標高3776m。日本で一番太陽に近い場所ですが、夏でも長袖やジャンパーが必要なくらい寒いのはなぜでしょうか?
1. 空気がうすいから
高いところに行くほど空気の量は減っていきます。空気の分子が少ないと、太陽の光を吸収して「熱」に変える力が弱くなります。
地表付近は空気がたくさんあるので、地面や建物の熱が伝わって空気全体が温まりますが、富士山頂ではその仕組みが働きにくいのです。
👉 身近な例:飛行機に乗ると機内の外はマイナス50℃くらいの世界。これも空気がうすい高い場所だからです。
2. 地面が熱をためにくいから
富士山の山頂は草木が少なく、岩や砂れきばかり。これらは土や草地に比べて、太陽の光を吸収して蓄える力(熱容量)が小さいのです。
そのため昼間に光を浴びても地面があまり温まらず、そこから空気へ伝わる熱も少なくなります。
👉 身近な例:アスファルトの道路は夏に熱くなりますが、砂利道やコンクリートは意外と早く冷めます。
3. 気温減率(きおんげんりつ)のしくみ
理科で学ぶ「気温減率」とは、標高が高くなるほど気温が下がる決まりのことです。
おおよそ標高100m上がるごとに気温は0.6℃下がります。つまり富士山頂はふもとに比べて20℃以上低くなることもあるのです。
👉 数字で確認:ふもとが25℃でも、山頂は25-(0.6×37.7) ≒ 3℃。まるで冬のような寒さです。
太陽は空気を直接温めるの?理科で学ぶ正しい仕組み
「太陽の光が当たると空気が温まるんじゃないの?」と思うかもしれません。実はそれはちょっと違います。
空気は透明で光を通しやすい
太陽から届く可視光線は空気をほとんど素通りします。そのため空気そのものは直接は温まりません。
本当のしくみは「地面が先に温まる」
- 太陽の光が地面や建物、体に当たって吸収され、熱に変わる
- 温まった地面から熱が伝わり、空気が暖められる
この順番で、私たちは空気の暖かさを感じているのです。
👉 身近な例:冬の寒い日に、太陽の光が当たったコンクリートの壁はぽかぽかしています。その近くに立つと、壁の熱で空気までほんのり温まっているのがわかります。
例外もある
大気の中には太陽の光を吸収する部分もあります。たとえば成層圏にある「オゾン層」は紫外線を吸収して温まり、同時に地球の生き物を有害な紫外線から守っています。
自由研究にもおすすめ!太陽と熱を確かめる簡単な実験アイデア
知識だけでなく、自分で実験してみるともっとよく理解できます。ここでは家でできる簡単な実験を3つ紹介します。自由研究にもそのまま使えるので、ぜひ挑戦してみてください。
1. 黒い紙と白い紙を日なたに置いて比べよう
準備するもの
- 黒い画用紙と白い画用紙(同じ大きさ)
- 温度計(できれば2つ)
やり方
- 黒い紙と白い紙を日なたに並べて置く。
- 10分後、20分後に表面の温度を測る。
観察ポイント
- 黒い紙の方が温度が高くなるはず。
- 光の吸収率の違いを実感できる。
考察のヒント
→ なぜ黒いものは熱くなりやすいのか?(光をよく吸収するため)
発展課題
- 青・赤・黄色など他の色の紙でも試して、温度の違いを比べてみよう。
2. ペットボトルの水を日に当てて温度を測ろう
準備するもの
- 同じ大きさのペットボトル2本
- 水(同じ量を入れる)
- 温度計
やり方
- ペットボトルを1本は日なた、もう1本は日かげに置く。
- 30分後、1時間後に水の温度を測る。
観察ポイント
- 日なたの方は温度が上がりやすい。
- 水は空気より熱くなるのに時間がかかる。
考察のヒント
→ 水は熱しにくく冷めにくい「比熱」が大きい性質を持っている。
発展課題
- ペットボトルを黒い布で包んだらどうなる?
- 透明な水とお茶やジュースで比べるとどうなる?
3. 窓際で日なたと日かげの床や机を比べよう
準備するもの
- 温度計
- 手で触って確かめる感覚も大切
やり方
- 晴れた日に、窓から光が当たっている場所(日なた)と、光が当たっていない場所(日かげ)の床や机の温度を測る。
- 触って「暖かい」「冷たい」と感じた違いもメモする。
観察ポイント
- 日なたの方が明らかに暖かい。
- 人の感覚と温度計の数字を比べると理解が深まる。
考察のヒント
→ 光が当たると物が熱を吸収し、当たらない場所は冷たいまま。
発展課題
- 晴れの日と曇りの日で比べてみよう。
- 午前と午後で光の当たり方が変わると温度差はどうなる?
自由研究としてまとめるときの工夫
- 予想を書く:「黒い紙の方が温度が高くなると思う」など、やる前に予想を立てる。
- 記録する:時間ごとの温度を表やグラフにすると見やすい。
- 結果と考察:「なぜそうなったのか」を自分の言葉でまとめる。
まとめ|太陽とあたたかさの不思議を理解しよう
- 太陽の熱は「放射」で届く
- 地面や物が温まり、その熱で空気が暖まる
- 富士山頂は空気がうすくて寒い
- 太陽は空気を直接温めるわけではない
では最後に、おさらいクイズで理解をチェックしましょう!
🔎 クイズにチャレンジ!(おさらい編)
Q1: 太陽の熱が宇宙を通って地球に届くときの伝わり方は?
① 伝導 ② 対流 ③ 放射
答え:③ 放射(光や赤外線などの電磁波として届く)
Q2: 富士山の山頂が寒いのはなぜ?
① 太陽の光が届かないから
② 空気がうすく熱をためにくいから
③ 山の色が黒くないから
答え:② 空気がうすく熱をためにくいから(標高が高いほど気温が下がる)
Q3: 太陽の光がまず温めるのは何?
① 空気 ② 地面や物体 ③ 水蒸気
答え:② 地面や物体(そこから空気へと熱が伝わる)
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。