
子どもが勉強についていけなくなるとき、
多くの保護者は「努力不足なのではないか」と考えてしまいます。
しかし実際には、勉強が難しくなる理由はそれだけではありません。
子どもの理解の状態と学習の進み方が合わないと、どれだけ努力しても学びはうまく進まないことがあります。
学校の授業は基本的に学年ごとに進みますが、子どもの理解のスピードや学び方には大きな個人差があります。
そのため、学年だけを基準に学習を進めると、どこかで学びのズレが生まれることがあります。
この記事では、子どもの学びを考えるうえで重要な視点である**「学びの現在地」**という考え方を紹介します。
教育心理学の研究や最近接発達領域(ZPD)の理論をもとに、子どもの理解がどのように成長するのか、そしてなぜ「現在地からの学び」が大切なのかをわかりやすく解説します。
勉強が苦手に見える子どもでも、学び方が整うことで理解がつながり始めることがあります。
子どもの学びを支えるヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
子どもが勉強についていけなくなるのはなぜか
「努力不足」では説明できない学びの問題
保護者の方からよく聞く言葉があります。
「うちの子、勉強をやればできると思うのですが…」
「もう少し頑張れば理解できるはずなのに…」
しかし、実際に子どもの学びの様子を丁寧に見ていくと、
そこには単純な努力不足では説明できない問題が見えてきます。
勉強についていけなくなる子どもの多くは、
決して怠けているわけではありません。
むしろ、
・一生懸命ノートを書いている
・宿題も提出している
・授業中も座って話を聞いている
という場合も少なくありません。
それでも理解が深まらないことがあります。
なぜでしょうか。
その理由の一つは、
子どもの理解の状態と授業の進み方が合っていないことにあります。
学びとは、
単に情報を聞けば身につくものではありません。
これまでの理解の上に、
新しい理解が少しずつ積み重なっていくことで成長していきます。
もし土台となる理解が不十分なまま授業が進めば、
子どもは徐々に内容を追いかけられなくなります。
そしてある時点から、
「わからない」
「ついていけない」
という感覚が生まれます。
この状態になると、
努力だけでは解決が難しくなります。
なぜなら、
問題は努力の量ではなく、学びの位置にあるからです。
学校の授業は学年基準で進む
学校の教育は、
基本的に学年ごとに内容が決められています。
小学4年生なら4年生の内容、
中学1年生なら1年生の内容。
この仕組みは、
社会全体で教育を行うために必要なものです。
多くの子どもに同じ学習機会を提供するためには、
ある程度の共通の基準が必要だからです。
しかし同時に、
この仕組みには大きな前提があります。
それは
「同じ年齢の子どもは、ほぼ同じ理解段階にいる」
という前提です。
ところが実際には、
子どもの理解の進み方は大きく異なります。
ある子はすぐに理解できることでも、
別の子はもう少し時間が必要なことがあります。
これは能力の問題というより、
理解の順番や経験の違いによるものです。
それでも授業は、
学年の進度に合わせて進んでいきます。
その結果、
・理解が十分な子ども
・まだ理解が途中の子ども
が同じ授業を受けることになります。
このとき、
まだ理解が途中の子どもにとっては、
授業の内容が少しずつ難しくなっていきます。
理解のスピードには大きな個人差がある
教育心理学の研究でも、
理解のスピードには大きな個人差があることが知られています。
例えば同じ算数の問題でも、
・一度説明を聞けば理解できる子ども
・いくつか例題を解くことで理解する子ども
・少し時間をかけて整理することで理解する子ども
など、理解の仕方はさまざまです。
これは能力の優劣ではありません。
学び方の違いです。
また、理解は直線的に進むものではありません。
ある単元では得意でも、
別の単元では時間がかかることもあります。
たとえば算数では、
・計算は得意
・文章題は苦手
という子どももいます。
また理科では、
・実験は理解できる
・文章説明は難しい
ということもあります。
つまり、
子どもの理解は一人ひとり異なる形をしているのです。
それにもかかわらず、
学年基準で一律に学習が進むと、
どこかでズレが生まれることがあります。
そのズレが積み重なったとき、
・勉強が難しく感じる
・授業が理解できない
・勉強に自信がなくなる
という状態が生まれることがあります。
多くの保護者が感じている
「なぜ急に勉強が難しくなったのだろう」
という疑問の背景には、
この学びのズレがあることが少なくありません。
そして、このズレを理解するために大切なのが、
「学年ではなく現在地を見る」という視点です。
子どもの学びは、
年齢や学年だけで決まるものではありません。
その子が今、
どこまで理解しているのか。
どこでつまずいているのか。
この学びの現在地を丁寧に見ていくことが、
子どもの学びを支える第一歩になります。
学年という仕組みが生む学びのズレ
同じ学年でも理解の状態は大きく違う
学校では、同じ学年の子どもたちが同じ内容を学びます。
これは教育制度としては合理的な仕組みです。多くの子どもに共通の学習機会を提供するためには、ある程度の基準が必要だからです。
しかし実際の教室を見てみると、同じ学年でも理解の状態は大きく違うことがわかります。
たとえば算数の授業であれば、
・計算の仕組みまで理解している子ども
・手順を覚えて解いている子ども
・まだ理解が曖昧なまま問題を解いている子ども
が同じ教室にいることも珍しくありません。
表面的には同じ問題が解けていても、
理解の深さは子どもによって大きく異なるのです。
これは特別なことではありません。
学びは一人ひとり違う道のりで進んでいくものだからです。
ある子はすぐに理解できることでも、
別の子は時間をかけて理解することがあります。
また、ある単元では得意でも、
別の単元ではつまずくこともあります。
このように、子どもの理解は均一ではなく、個別の形を持っています。
ところが学年という仕組みでは、
この違いを細かく調整することが難しくなります。
その結果、学びの中で少しずつズレが生まれていきます。
「わかったつもり」が増える理由
学びのズレが生まれるとき、
よく起こるのが**「わかったつもり」**という状態です。
授業を聞いているときには、
「なんとなく理解できた気がする」
「先生の説明はわかった」
と感じることがあります。
しかし実際に問題を解こうとすると、
「どうやって解けばいいかわからない」
「途中で手が止まってしまう」
ということがあります。
この状態は、決して珍しいものではありません。
理解には段階があるからです。
例えば、
- 説明を聞いてイメージがわかる
- 例題を見ると理解できる
- 自分で問題を解ける
- 応用問題にも対応できる
というように、理解は少しずつ深まっていきます。
ところが授業が学年の進度に合わせて進むと、
理解が十分に深まる前に次の内容へ進むことがあります。
すると子どもは、
「わかった気がするけれど、実は十分理解できていない」
という状態を抱えたまま次の学習へ進むことになります。
この状態が積み重なると、
新しい内容を学ぶときに土台が弱くなります。
そして、あるタイミングで
「急に難しくなった」
「勉強がわからなくなった」
という感覚が生まれることがあります。
実際には急に難しくなったわけではなく、
理解のズレが少しずつ積み重なっていたのです。
勉強が苦手になる構造
こうしたズレが続くと、子どもは次のような経験をすることがあります。
・問題が解けない
・先生の説明が理解できない
・授業についていけない
このような経験が増えると、子どもは徐々に
「自分は勉強が苦手だ」
と感じるようになります。
しかし多くの場合、これは能力の問題ではありません。
学びの順番が合っていないだけなのです。
理解がまだ十分でない状態で新しい内容に進むと、
勉強はどうしても難しく感じられます。
逆に、理解の順番が整うと、
子どもは驚くほど自然に学びを進めることがあります。
これは教育心理学の研究でも指摘されています。
例えば、ソ連の心理学者
Lev Vygotskyは、
子どもの学びは現在の理解の状態に合わせた挑戦の中で成長すると考えました。
この考え方は「最近接発達領域(ZPD)」と呼ばれています。
つまり、子どもの学びを支えるためには
・学年
・年齢
だけを見るのではなく、
「その子が今どこで学んでいるのか」
を見ることが大切になります。
これが、この記事で紹介している
「学びの現在地」という考え方です。
子どもの学びは、
比較や一律の基準で決まるものではありません。
一人ひとりの理解の状態に合わせて、
少しずつ前に進んでいくものです。
その視点に立つことで、
これまで「勉強が苦手」と見えていた子どもの姿も、
違って見えてくることがあります。
子どもの学びは「現在地」から始まる
理解は連続的に成長する
子どもの学びを考えるとき、
とても大切な前提があります。
それは、理解は一度に完成するものではないということです。
勉強をしていると、
「わかった」
「できた」
という瞬間があります。
しかし実際には、その理解は
小さな気づきの積み重ねによって生まれています。
例えば算数でも、
最初は
「なんとなくイメージがわかる」
次に
「例題を見ると理解できる」
その後
「自分で解くことができる」
そして
「応用問題にも対応できる」
というように、理解は少しずつ深まっていきます。
このように、学びは
段階的に積み重なっていくプロセスです。
ところが、学年という基準だけで学習を進めると、
この理解のプロセスが途中のまま次に進んでしまうことがあります。
すると子どもは、
・理解があいまいなまま学び続ける
・問題が解けない経験が増える
・勉強に自信が持てなくなる
という状態になることがあります。
このような状況を避けるために大切なのが、
学びの現在地を見るという視点です。
学びの現在地とは何か
では、学びの現在地とは何でしょうか。
これは単にテストの点数を指す言葉ではありません。
MOANAVIでは、子どもの現在地を
学習行動の中から見えてくるものと考えています。
例えば学びの中では、次のような場面があります。
・どの課題を選ぶか
・どこで手が止まるか
・どのように考え直すか
・どのタイミングで質問するか
・どのようにやり直すか
こうした行動は、
子どもの理解の状態をよく表しています。
例えば、
すぐに答えを聞こうとする場合もあれば、
教科書を読み直して考えようとする場合もあります。
あるいは、
一度間違えた問題をもう一度解き直す子どももいれば、
別の問題に進む子どももいます。
このような行動の違いは、
子どもの学び方や理解の成熟度を映し出しています。
だからこそ、子どもの学びを見るときには、
単に「できたかどうか」だけを見るのではなく、
どのように学んでいるのか
を見ることが大切になります。
それが、子どもの学びの現在地を知る手がかりになります。
今どこでつまずいているのかを見る
学びの現在地が見えてくると、
子どものつまずき方も見えてきます。
例えば算数では、
・計算の仕組みが理解できていない
・問題文の意味を読み取るのが難しい
・途中の式の意味がわからない
といった違いがあります。
表面的には同じ「解けない問題」でも、
原因は子どもによって異なります。
この違いを見ないまま、
「もっと練習しよう」
「もう少し頑張ろう」
とだけ伝えてしまうと、
子どもはますます難しさを感じることがあります。
しかし、つまずきの場所がわかると、
次の学びを整えることができます。
例えば、
・理解を少し前の段階に戻す
・例題を増やして整理する
・考え方を言葉で確認する
といった方法で、
学びを組み立て直すことができます。
このように、子どもの学びは
現在地から少し先へ進む挑戦
の中で育っていきます。
その挑戦が、
簡単すぎても難しすぎても、
学びはうまく進みません。
この考え方を教育理論として整理したのが、
次の章で紹介する**最近接発達領域(ZPD)**です。
最近接発達領域(ZPD)が示す学びの条件
少し頑張ればできる挑戦が成長を生む
子どもの学びを考えるとき、
とても重要な理論があります。
それが、心理学者
Lev Vygotsky
が提唱した**最近接発達領域(ZPD)**という考え方です。
ZPDとは、
「一人ではまだ難しいが、支援があればできる領域」
を指します。
子どもには、次のような三つの領域があります。
① 一人でできること
すでに理解している内容です。
問題なく解くことができるため、安心して取り組めます。
しかし、この領域だけで学習を続けても、
大きな成長は生まれにくくなります。
なぜなら、すでにできることを繰り返すだけだからです。
② まだできないこと
一方で、理解の段階を大きく超えた内容もあります。
この場合、子どもは
・問題の意味がわからない
・どこから考えればよいかわからない
・途中で思考が止まる
といった状態になります。
この領域では、挑戦が
挫折の経験になってしまうことがあります。
③ 支援があればできること(ZPD)
その間にあるのが、
少し頑張ればできる挑戦です。
・ヒントがあれば理解できる
・例題を見れば解き方がわかる
・説明を聞けば次に進める
この領域で学ぶとき、
子どもの理解は最もよく成長します。
ヴィゴツキーは、
子どもの発達はこの領域の中で生まれると考えました。
つまり教育とは、
子どもを単に教えることではなく、
その子のZPDを見つけること
だと言えます。
簡単すぎても難しすぎても学びは止まる
この考え方をもとに学びを見直してみると、
子どもの学習には次のような状態があることがわかります。
簡単すぎる学習
すでにできる問題ばかり続くと、
子どもは安心して取り組めます。
しかし、挑戦がないため、
理解はあまり広がりません。
この状態が続くと、
「勉強がつまらない」
という感覚が生まれることがあります。
難しすぎる学習
一方で、理解を大きく超えた課題が続くと、
子どもは次第に手が止まるようになります。
・考え方がわからない
・途中であきらめてしまう
・勉強が苦手だと感じる
という状態になりやすくなります。
この状態では、
努力しても成果が見えにくくなります。
その結果、
「自分にはできない」
という感覚を持ってしまうことがあります。
ZPDでの学習
これに対して、
少し頑張ればできる課題に取り組むと、
・考える時間が生まれる
・理解がつながる
・できたという経験が積み重なる
という変化が起こります。
この経験の積み重ねが、
子どもの学びを前に進めていきます。
学びは最適な負荷の中で生まれる
ZPDの考え方から見えてくるのは、
学びにとって重要なのは
量よりも負荷のバランス
だということです。
どれだけ多くの問題を解いても、
それが簡単すぎれば成長は限られます。
逆に、難しすぎる問題を続けても、
理解は深まりにくくなります。
子どもの学びは、
現在の理解より少し先
にある課題の中で育ちます。
だからこそ、教育では
・子どもの理解の状態を見取り
・つまずきや理解の深さを確かめ
・次の課題の負荷を調整する
ことが重要になります。
これは単に問題を与えることではなく、
学びをデザインすることと言えるでしょう。
この視点に立つと、
子どもの勉強を見るときの見方も変わってきます。
「どれだけ問題を解いたか」ではなく、
・どの課題を選んでいるか
・どこで手が止まるか
・どのように考え直しているか
といった学習行動が、
子どもの理解を知る大切な手がかりになります。
次の章では、
この学習行動を見るという視点について、
もう少し詳しく考えていきます。
子どもの学習行動を見るという視点
どの課題を選ぶか
子どもの学びを理解するためには、
テストの点数や正答率だけでは見えてこないものがあります。
それが、学習行動です。
学習行動とは、
子どもが学びの中でどのように行動しているかということです。
例えば学習の場面では、次のような選択が行われています。
・どの課題に取り組むか
・どの順番で問題を解くか
・どのタイミングで次に進むか
これらの選択は一見すると小さな行動に見えますが、
実は子どもの理解の状態をよく表しています。
例えば、
すぐに難しい問題に挑戦する子どももいれば、
少し易しい問題から確認する子どももいます。
また、
問題が解けたときに次へ進む子どももいれば、
もう一度解き直す子どももいます。
このような違いは、
子どもがどのように学びを進めているのかを示しています。
MOANAVIでは、こうした行動を通して
子どもの理解の状態を見ていきます。
つまり、
「どれだけできたか」だけではなく、
「どのように学んでいるか」を見るという視点です。
どこで止まり、どうやり直すか
学びの中では、
誰でもつまずく瞬間があります。
しかし、そのときの行動は子どもによって大きく異なります。
例えば問題に行き詰まったとき、
・すぐに答えを聞く
・少し考えてみる
・教科書を読み直す
・ヒントを探す
といった違いがあります。
また、一度間違えたときにも
・すぐに別の問題へ進む
・解き方を確認する
・もう一度解き直す
といった行動の違いがあります。
こうした行動は、
子どもの理解の状態や学び方をよく表しています。
例えば、
教科書を読み直して理解しようとする子どもは、
自分で理解をつくろうとしている状態と言えます。
一方で、
すぐに答えを求める場合は、
理解の手がかりをまだ持てていない可能性があります。
このような違いを見ることで、
子どもが今どこで学んでいるのかが見えてきます。
学習行動は理解の状態を映している
教育心理学の研究でも、
学びの過程を理解するためには
学習行動を観察することが重要だと指摘されています。
例えば、自己調整学習の研究を行った
Barry J. Zimmerman
は、学びの中で
・目標を立てる
・学習方法を選ぶ
・理解を確認する
・学び方を調整する
といった行動が重要だと説明しています。
つまり、学びとは
「問題を解くこと」だけではなく、
学び方を調整していく過程でもあります。
この視点に立つと、
子どもの勉強を見るときの見方も変わります。
例えば、
・どの課題を選んでいるか
・どこで手が止まるか
・どのように考え直しているか
といった行動は、
子どもの理解の状態を映し出しています。
MOANAVIでは、
こうした学習行動を丁寧に見取りながら、
次の学びを整えていきます。
この考え方については、
次の記事でも詳しく紹介しています。
子どもの学習行動を見るとは何か
https://moanavi.com/10532
学びを支えるためには、
結果だけを見るのではなく、
挑戦の過程を見ること
が大切になります。
そして、この視点に立つと、
子どもの学びは少しずつ変わっていきます。
次の章では、
現在地から学ぶと子どもの学びがどのように変わるのかを考えていきます。
現在地から学ぶと子どもの学びはどう変わるのか
理解がつながり始める
子どもの学びを「学年」ではなく「現在地」から見直すと、
まず起こる変化があります。
それは、理解がつながり始めることです。
勉強が難しく感じるとき、多くの場合、
どこかに理解の空白があります。
例えば算数であれば、
・分数の意味が曖昧なまま計算に進んでいる
・割合の概念が整理できていない
・文章題の構造が理解できていない
といった状態があります。
このような場合、
いくら新しい問題を解いても理解は深まりにくくなります。
しかし、学びの現在地を丁寧に見ていくと、
「どこで理解が止まっているのか」
が見えてきます。
その地点から学びを整えると、
これまでバラバラだった理解が少しずつつながっていきます。
すると子どもは、
「そういうことだったのか」
「だからこうなるのか」
という感覚を持つようになります。
この経験は、
子どもにとって大きな意味を持ちます。
なぜなら、
理解がつながる経験は学びの楽しさを生み出すからです。
勉強への抵抗が減る
勉強が苦手だと感じる子どもは、
多くの場合、次のような経験を重ねています。
・問題が解けない
・授業が理解できない
・努力しても結果が出ない
このような経験が続くと、
子どもは徐々に勉強に対して抵抗を感じるようになります。
しかし、現在地から学びを整えると、
課題の難易度が少しずつ調整されます。
すると、
・考えれば解ける問題
・少しのヒントで進める課題
に出会うようになります。
この経験が積み重なると、
「やればできるかもしれない」
という感覚が生まれてきます。
この感覚はとても大切です。
教育心理学では、
このような感覚が学びの継続に大きく影響すると考えられています。
心理学者
Edward L. Deci
らの研究でも、
人は
・自分で選べること
・できる感覚を持てること
・周囲との関係を感じられること
の三つが満たされるとき、
学びに主体的に向かうようになると説明されています。
現在地からの学びは、
この**「できる感覚」**を育てる学びでもあります。
自分で学びを進める力が育つ
現在地から学ぶもう一つの変化は、
子どもが自分で学びを進めるようになることです。
最初は、
どの課題に取り組むべきか
子ども自身では判断できないこともあります。
しかし、学びの経験が増えると、
次第に次のような行動が見られるようになります。
・理解が不十分な部分を確認する
・少し難しい問題に挑戦する
・間違えた問題を解き直す
こうした行動は、
自己調整学習と呼ばれる学び方です。
自己調整学習の研究を行った
Barry J. Zimmerman
は、子どもが学びの中で
・目標を立て
・進み方を調整し
・理解を確認しながら進む
ことが、学びの成長につながると説明しています。
つまり、子どもの学びは
「教えられること」だけではなく、
自分で学びを進める経験の中で育っていきます。
現在地から学ぶ環境では、
この経験が自然に生まれます。
子どもは、
「どこから始めればよいのか」
「どこをもう一度やればよいのか」
を少しずつ理解していきます。
その結果、
学びは外から与えられるものではなく、
自分で進めるもの
へと変わっていきます。
そして、このような学びを支えるために、
MOANAVIでは特別な学習の仕組みを取り入れています。
次の章では、
**MOANAVIが大切にしている「現在地からの学び」**について紹介します。
MOANAVIが大切にしている「現在地からの学び」
学年ではなく理解の状態を見る
これまで見てきたように、子どもの学びは
学年だけで決まるものではありません。
同じ学年でも、
・すでに理解が進んでいる部分
・まだ整理の途中にある部分
・少し支援があれば理解できる部分
など、理解の状態は一人ひとり異なります。
MOANAVIでは、子どもの学びを見るときに
学年ではなく理解の状態を見ることを大切にしています。
例えば、ある単元でつまずきが見られた場合には、
・どこで理解が止まっているのか
・どの段階の理解が必要なのか
・どの程度の支援があれば進めるのか
といったことを丁寧に確認します。
その上で、子どもが
今取り組むのに適した課題を整えていきます。
これは、子どもの理解を細かく測定するというよりも、
子どもの様子を見取り、次の学びにつなげる
という考え方に近いものです。
学びの現在地を丁寧に見ていくことで、
子どもは無理なく挑戦を続けることができます。
挑戦の過程を見取り、次の課題を整える
MOANAVIでは、学びを支えるときに
挑戦の過程を大切にしています。
勉強を見るとき、
どうしても結果だけに目が向きがちです。
・何問正解したか
・テストで何点だったか
といった数字はわかりやすいからです。
しかし、子どもの学びを支えるためには、
結果だけでは十分とは言えません。
むしろ大切なのは、
・どの課題を選んだのか
・どこで手が止まったのか
・どのように考え直したのか
といった学習の過程です。
この過程を見ることで、
・理解がどこまで進んでいるのか
・どこに難しさがあるのか
・次にどのような課題が適切か
が見えてきます。
教育評価の研究でも、
子どもの学びを支えるためには
形成的アセスメントが重要だと説明されています。
教育学者
Caroline Gipps
は、評価とは単に結果を判断するものではなく、
学びを次につなげるための情報だと説明しています。
MOANAVIでも、
子どもの様子を見取りながら
「次にどのような挑戦がよいのか」
を整えていきます。
このようにして、子どもの学びは
少しずつ前に進んでいきます。
スタディポイントによる挑戦の可視化
MOANAVIでは、
子どもの挑戦を支える仕組みとして
スタディポイント制度を取り入れています。
スタディポイントは、
テストの点数や順位を評価するものではありません。
子どもの学びの中で、
・どの課題に挑戦したか
・どの程度の難易度に取り組んだか
・どのように学びを続けたか
といった挑戦の履歴を可視化する仕組みです。
この仕組みによって、
子どもは自分の学びを振り返ることができます。
例えば、
「少し難しい問題に挑戦してみよう」
「この単元をもう一度確認してみよう」
といった選択が生まれます。
このような経験を通して、
子どもは少しずつ
自分で学びを調整する力
を育てていきます。
こうした学びの環境を整えているのが
モアナビ協創学園(https://moanavi.com/school)です。
ここでは、学年の進度だけに合わせるのではなく、
子どもの理解の状態を丁寧に見ながら
学びのデザインを行っています。
子どもの学びは、
比較の中で育つものではありません。
一人ひとりの現在地から始まり、
挑戦と理解の積み重ねの中で成長していきます。
まとめ|子どもの学びは比較ではなく成長のプロセス
子どもが勉強についていけなくなるとき、
多くの保護者は次のように考えることがあります。
「もっと努力すればできるはず」
「勉強の量が足りないのではないか」
しかし実際には、
問題は努力の量ではなく、
学びの位置
にあることがあります。
子どもの学びは、
・理解が積み重なり
・挑戦を通して更新され
・少しずつ広がっていく
プロセスです。
このとき大切なのは、
学年ではなく現在地を見ること
です。
その子が今どこで学んでいるのか。
どこでつまずき、どこまで理解しているのか。
この現在地を丁寧に見ていくことで、
子どもの学びは無理なく前に進みます。
学びとは、
他の子どもと比較するものではなく、
理解がつながっていく経験です。
そして、その経験を積み重ねることで、
子どもは少しずつ
「自分で学ぶ力」
を育てていきます。
MOANAVIでは、
このような学びを支えるために
学びの現在地を起点とした学習デザインを行っています。
📚学びの本棚から、次の1冊を
このテーマに関連する教育・学びのコラムを、本棚を眺めるように探せます。
→ MOANAVI Library をひらく
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。



