
「うちの子は勉強しているのに、なかなか伸びない。」
「何をどう勉強すればいいのかわからないようです。」
このような悩みを感じたことはないでしょうか。
子どもが勉強につまずくとき、問題は「能力」ではなく、学び方にある場合も少なくありません。
教育研究では、子どもが自分で学べるようになるためには、学習の内容だけでなく「学び方」を身につけることが重要だと考えられています。
本記事では、教育心理学の研究をもとに、子どもが学び方を身につけていく仕組みを整理します。
自己調整学習や最近接発達領域などの理論をもとに、子どもがどのようにして「自分で学ぶ力」を育てていくのかをわかりやすく解説していきます。
学び方を学ぶとは何か
勉強の内容ではなく「学習の進め方」を身につけること
子どもが勉強について悩むとき、多くの場合、問題は「内容」ではありません。
算数の計算や、漢字の暗記、英語の文法など、学校ではさまざまな知識を学びます。しかし、実際には多くの子どもが次のような状態に直面します。
・勉強しているのに理解できない
・問題を解いているだけで身についている感じがしない
・何をどう勉強すればいいのかわからない
こうした状況は、決して珍しいことではありません。
その理由の一つは、学校教育の中で「勉強の内容」は教えられても、「勉強の進め方」そのものを学ぶ機会が意外と少ないことにあります。
つまり、多くの子どもは
「何を学ぶか」は知っていても
「どう学ぶか」を十分に理解していないのです。
この「どう学ぶか」を身につけていくことを、教育学では
「学び方を学ぶ」
と呼びます。
これは単なる勉強のテクニックではありません。
ノートの取り方や暗記のコツといった表面的な方法だけではなく、
・どの課題に取り組むか
・どの順番で学ぶか
・どこで立ち止まるか
・どのように理解を確かめるか
といった、学習行動そのものを調整する力のことを指します。
勉強の量ではなく学習行動が成長をつくる
保護者の方からよく聞く言葉に、次のようなものがあります。
「うちの子は、勉強しているのに成績が上がらないんです。」
確かに、子どもが机に向かう時間は増えているのに、思ったほど成果が見えないことはあります。
しかし、教育研究では、単純に「勉強時間」が長いことが、必ずしも学習の成長につながるわけではないことがわかっています。
重要なのは、どのように学んでいるかです。
例えば、同じ1時間の勉強でも、次のような違いが生まれます。
ある子は、問題を解いて丸付けをし、間違えた問題をそのままにして次に進みます。
別の子は、間違えた問題をもう一度考え、教科書を読み直し、理解できるまでやり直します。
勉強時間は同じでも、後者の子どものほうが理解は深くなります。
ここで生まれている違いは、能力の差というよりも、学習行動の違いです。
どのように課題に向き合い、どのように理解を確かめ、どのようにやり直すのか。
こうした行動の積み重ねが、長い目で見ると学力の差につながっていきます。
そのため教育研究では、学習の結果だけでなく、学習の過程そのものに注目することが重要だと考えられています。
MOANAVIでも、子どもの学びを見るとき、単に
「何点取ったか」
という結果だけではなく、
・どの課題を選んだのか
・どこで止まったのか
・どのようにやり直したのか
といった学習行動を丁寧に見ていきます。
その行動の中に、子どもの理解の状態や、次の学びの方向が表れているからです。
学び方は教えられるものではなく育つもの
ここで重要なのは、「学び方」は単純に説明すれば身につくものではないということです。
「こうやって勉強するといいよ」と大人がアドバイスしても、子どもがすぐにその通りにできるとは限りません。
それは、学び方というものが、知識として覚えるものではなく、経験の中で育っていく力だからです。
教育心理学では、子どもが自分の学習を調整していく力を
自己調整学習
と呼びます。
この概念を研究した教育心理学者の
Barry J. Zimmerman は、学習を次のような循環として説明しています。
目標を立てる
↓
課題に取り組む
↓
理解を確かめる
↓
振り返る
↓
次の学習を調整する
この循環を繰り返すことで、子どもは少しずつ「自分の学び方」を身につけていきます。
つまり、学び方を学ぶとは、特別なテクニックを覚えることではありません。
挑戦し、つまずき、理解を確かめ、もう一度やり直す。
そのような経験を通して、子どもが自分の学習を自分で整えていく力を育てていくことなのです。
そして、この力が育つと、子どもは次第に「勉強させられる存在」から、「自分で学ぶ存在」へと変わっていきます。
それは単に学校の成績を上げるためだけの力ではありません。
将来にわたって、新しいことを学び続けていくための基盤となる力でもあります。
なぜ子どもは勉強のやり方がわからなくなるのか
「うちの子は勉強のやり方がわからないようなんです。」
保護者の方とお話していると、このような相談を受けることは少なくありません。
子ども自身も
・何から勉強すればいいのかわからない
・問題を解いているだけになっている
・勉強しているのに身についている感じがしない
と感じていることがあります。
しかし、こうした状況は決して特別なものではありません。むしろ多くの子どもが一度は経験するものです。
その理由は、子どもが努力していないからではなく、学習の仕組みそのものにあります。
勉強=問題を解くことになってしまう
学校の勉強は、多くの場合
授業
↓
宿題
↓
テスト
という流れで進みます。
この構造の中では、子どもはどうしても
「問題を解くことが勉強」
だと考えやすくなります。
もちろん問題演習は学習にとって重要です。しかし、問題を解くことだけが勉強になってしまうと、子どもは次のような状態に陥ることがあります。
・解ける問題だけを解く
・間違えても理由を考えない
・答え合わせをして終わりになる
すると、勉強は
理解を深める活動ではなく、作業の繰り返し
になってしまいます。
その結果、勉強時間は増えているのに理解が深まらないという状況が生まれます。
「理解する学び」と「作業としての勉強」
本来、学びとは
・考える
・確かめる
・やり直す
・理解を組み立てる
というプロセスの中で進んでいきます。
しかし、勉強が単なる作業になると、このプロセスがほとんど起こらなくなります。
例えば、算数の問題を解いて間違えたとき、本来であれば
「なぜ間違えたのか」
「どこまで理解できていたのか」
を確かめることが大切です。
ところが、作業としての勉強では
「次の問題を解く」
という行動が優先されてしまいます。
すると、理解の構造は更新されないまま、同じような間違いが繰り返されることになります。
教育研究では、こうした違いを学習行動の違いとして捉えます。
同じ教材を使っていても、子どもがどのように学習に向き合うかによって、理解の深さは大きく変わるのです。
勉強のやり方が教えられていない学校教育
もう一つの理由は、学校教育の中で「勉強の内容」は教えられても、「勉強の進め方」そのものを体系的に学ぶ機会が多くないことです。
学校では
・算数の解き方
・漢字の書き方
・英語の文法
といった知識や技能を学びます。
しかし、
・どのように理解を確かめるか
・どのタイミングでやり直すか
・どの課題に挑戦するか
といった学習の進め方そのものについては、子どもが自分で見つけていく部分が大きいのが現実です。
そのため、勉強がうまく進まない子どもは
「自分は勉強が苦手なんだ」
と感じてしまうことがあります。
しかし実際には、能力の問題というよりも、学習行動の経験がまだ十分に育っていないだけという場合も少なくありません。
子どもが
・どこでつまずくのか
・どのようにやり直すのか
・どのように理解を確かめるのか
こうした経験を積み重ねていくことで、少しずつ「自分の学び方」が見えてきます。
そして、その経験を支えるために重要になるのが、教育研究でも長く議論されてきた
自己調整学習
という考え方です。
自己調整学習とは、子どもが自分の学習を振り返り、次の行動を調整していく力のことを指します。
この概念を研究した教育心理学者
Barry J. Zimmerman は、学習を「調整のプロセス」として捉えています。
つまり、勉強がうまくいかないときに必要なのは、勉強時間を増やすことだけではありません。
子どもが
・どのように学ぶか
・どのように理解を確かめるか
という学び方そのものを少しずつ身につけていくことなのです。
そして、この学び方を支える重要な力が、次の章で紹介する
学習を調整する力
です。
これは教育研究の中で
・メタ認知
・自己調整学習
・最近接発達領域
といった概念と深く関係しています。
学び方を学ぶために必要な3つの力
子どもが「自分で学べるようになる」とき、そこにはいくつかの共通した力が見られます。
それは特別な才能ではなく、学習の経験の中で少しずつ育っていくものです。
教育研究では、学び方を支える力としてさまざまな概念が提案されていますが、ここでは特に重要なものを3つに整理します。
・自分の学習を振り返る力
・学習を調整する力
・挑戦する力
これらの力が組み合わさることで、子どもは少しずつ自分の学び方を見つけていきます。
自分の学習を振り返る力(メタ認知)
学び方を身につけるうえで、まず大切になるのが
自分の理解の状態を確かめる力
です。
例えば、問題を解いたときに
「できた」
「できなかった」
という結果だけを見るのではなく、
・どこまで理解できていたのか
・どこでつまずいたのか
を振り返ることができると、次の学習の方向が見えてきます。
このように、自分の思考や理解の状態を意識しながら学ぶことを、教育心理学では
メタ認知
と呼びます。
メタ認知が働くと、子どもは次のような行動を取るようになります。
・教科書を読み直す
・別の方法で考えてみる
・もう一度問題を解いてみる
つまり、単に問題を解くだけではなく、理解を確かめながら学ぶ行動が生まれるのです。
この力は、一度に身につくものではありません。
しかし、振り返る経験を重ねていくことで、少しずつ育っていきます。
学習を調整する力(自己調整学習)
次に重要になるのが、学習を調整する力です。
子どもが自分で学べるようになるとき、多くの場合、次のような行動が見られます。
・目標を決める
・課題に取り組む
・理解を確かめる
・次の学習を調整する
このように、自分の学習を振り返りながら次の行動を選んでいく学び方を
自己調整学習
と呼びます。
この概念を体系的に研究した教育心理学者
Barry J. Zimmerman は、学習を次のような循環として説明しています。
目標設定
↓
学習行動
↓
モニタリング
↓
振り返り
↓
次の調整
この循環が回り始めると、子どもは次第に
「どうすれば理解できるのか」
を自分で考えるようになります。
その結果、勉強は「やらされるもの」から、自分で進めるものへと変わっていきます。
挑戦する力(最近接発達領域)
そして、もう一つ重要なのが
適切な挑戦を経験すること
です。
簡単すぎる課題ばかりでは、学び方は育ちません。
一方で、難しすぎる課題に取り組み続けると、子どもは自信を失ってしまいます。
教育心理学者
Lev Vygotsky は、このような学びの領域を
最近接発達領域(ZPD)
と呼びました。
ZPDとは
「支援があれば到達可能な領域」
のことです。
この領域で学習が行われると、子どもは
・試行錯誤する
・理解を確かめる
・やり直す
といった経験を繰り返します。
そして、この試行錯誤の中で、少しずつ自分の学び方を見つけていきます。
つまり、学び方は「説明されて覚えるもの」ではなく、挑戦の経験の中で育つものなのです。
そのため、子どもが学び方を身につけるためには、
・適切な難易度の課題
・振り返る機会
・理解を確かめる時間
といった学習環境が重要になります。
教育研究では、このような環境を整えることを
学習環境のデザイン
と呼びます。
次の章では、この学習環境の考え方について、教育研究の視点から整理していきます。
自己調整学習とは何か
子どもが自分で学べるようになる仕組み
子どもが「自分で勉強できるようになる」とき、そこには共通した特徴があります。
それは、勉強の内容を覚えていることだけではありません。
むしろ重要なのは、
・どの課題に取り組むか
・どこで立ち止まるか
・どのように理解を確かめるか
といった、学習の進め方そのものを調整できることです。
教育心理学では、このような学び方を
自己調整学習
と呼びます。
この概念を体系的に研究した教育心理学者
Barry J. Zimmerman は、学習を次のような循環として説明しています。
目標を立てる
↓
課題に取り組む
↓
理解を確かめる
↓
振り返る
↓
次の学習を調整する
この循環が回り始めると、子どもは次第に
「どうすれば理解できるのか」
を自分で考えるようになります。
自己調整学習については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
自己調整学習とは何か|ジマーマンの理論をわかりやすく解説|自分で学ぶ子どもはどのように育つのか
https://moanavi.com/10523
学習は「循環」で進む
勉強というと、多くの人は
「問題を解く」
という行動をイメージします。
しかし教育研究では、学習は単純な直線ではなく、循環として進むと考えられています。
例えば、子どもが算数の問題を解いているとき、次のような行動が起こります。
・問題を読む
・解き方を考える
・答えを出す
・間違いを見つける
・もう一度考える
このような試行錯誤の中で、理解は少しずつ更新されていきます。
つまり、学習は
「一度理解すれば終わる」
というものではなく、
挑戦と修正を繰り返すプロセス
なのです。
理解は挑戦の中で更新される
ここで重要になるのが、適切な挑戦です。
教育心理学者
Lev Vygotsky は、子どもの成長が起こる領域を
最近接発達領域(ZPD)
と呼びました。
ZPDとは
「支援があれば到達可能な領域」
のことです。
簡単すぎる課題では新しい理解は生まれません。
一方で、難しすぎる課題では学習が止まってしまいます。
そのため、子どもが学び方を身につけていくためには、
適切な挑戦
が必要になります。
最近接発達領域については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説|子どもの成長が生まれる学びの条件
https://moanavi.com/10517
学習行動を見ることが学び方を育てる
自己調整学習が育つとき、子どもには次のような行動が見られるようになります。
・自分で課題を選ぶ
・間違いをやり直す
・理解できるまで考える
これらは単なる努力ではありません。
学習行動そのものが変化している状態です。
そのため、子どもの学びを支えるときには、
「どのくらいできたか」
という結果だけではなく、
「どのように学んでいるか」
を見ることが重要になります。
MOANAVIでも、子どもの学びを見るときには、テストの点数だけでなく、学習行動を丁寧に見取ることを大切にしています。
学習行動の考え方については、こちらの記事でも紹介しています。
子どもの学習行動を見るとは何か|勉強の結果ではなく「学び方」を見る理由
https://moanavi.com/10532
こうした視点で子どもの学びを見ていくと、勉強は単なる作業ではなく、理解を更新していく活動として捉えることができます。
そして、このような学びを支えるために重要になるのが、
学習環境のデザイン
です。
教育研究では、学習環境の設計が子どもの学び方に大きく影響すると考えられています。
次の章では、この学習環境の考え方について整理していきます。
学び方を育てる学習環境とは
ブランスフォードの学習環境モデル
ここまで見てきたように、子どもが「学び方」を身につけていくためには、
・自分の理解を振り返る経験
・学習を調整する経験
・適切な挑戦
が必要になります。
しかし、これらの力は子どもの努力だけで自然に育つものではありません。
どのような環境で学ぶのかによって、学び方の成長は大きく変わります。
この点について整理した研究としてよく知られているのが、教育研究者
John D. Bransford
らによる学習環境モデルです。
ブランスフォードは、学びが深まる環境には次の4つの要素が必要だと説明しています。
・学習者中心
・知識中心
・評価中心
・共同体中心
この4つがバランスよく組み合わさることで、子どもは理解を深めながら学ぶことができるようになります。
学習環境モデルについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
学習環境のデザインとは何か|ブランスフォードの学習環境モデルをわかりやすく解説
https://moanavi.com/10514
学習者中心
子どもの現在地から学びを始める
学習者中心とは、子ども一人ひとりの理解の状態や経験を出発点にすることです。
同じ学年であっても、子どもが理解している内容やつまずいている部分はそれぞれ異なります。
そのため、
「学年だからこの内容を学ぶ」
という考え方だけでは、学習がうまく進まないことがあります。
子どもの理解の状態を丁寧に見ながら学びを進めることは、MOANAVIでも大切にしている考え方です。
学年ではなく理解の状態を基準にする学びについては、こちらの記事でも紹介しています。
学年ではなく現在地で学ぶ理由|子どもが勉強についていけなくなる本当の原因
https://moanavi.com/10535
知識中心
理解を組み立てる学び
知識中心とは、単に問題を解くことではなく、理解を組み立てることを重視する学びです。
例えば、問題を解いて間違えたとき、
・なぜ間違えたのか
・どこまで理解できていたのか
を確かめることで、子どもは理解の構造を少しずつ組み立てていきます。
このような学びは、作業としての勉強ではなく、理解をつくる活動として進んでいきます。
評価中心
学びを次につなげる見取り
ここでいう評価とは、テストで成績をつけることではありません。
教育研究では、子どもの理解の状態を見取り、次の学びにつなげる取り組みを
形成的アセスメント
と呼びます。
形成的アセスメントについては、こちらの記事でも解説しています。
形成的アセスメントとは何か|ギップスの教育評価論をわかりやすく解説|テストだけでは見えない子どもの学び
https://moanavi.com/10520
子どもの理解の状態を見ながら、
・次の課題の難易度を調整する
・つまずきを確認する
・理解の深さを確かめる
こうした見取りがあることで、子どもの学びは次につながっていきます。
共同体中心
学び合う環境
ブランスフォードは、学習は個人の活動だけでなく、共同体の中で深まるものだと説明しています。
子ども同士が考えを共有したり、解き方を説明したりすることで、理解はより深くなります。
また、学習の中で
・挑戦する姿
・やり直す姿
・理解を確かめる姿
を見ることは、他の子どもにとっても学びになります。
このような環境では、学びは孤立した活動ではなく、互いの経験がつながる活動になります。
学び方は環境の中で育つ
ここまで見てきたように、子どもが学び方を身につけていくためには、
・挑戦できる課題
・理解を振り返る機会
・学習行動を見取る視点
・学び合う環境
が必要になります。
こうした環境が整うことで、子どもは少しずつ
「どのように学べば理解できるのか」
を経験の中で見つけていきます。
そして、この経験が積み重なると、子どもは次第に
自分で学びを進める存在
へと変わっていきます。
次の章では、こうした考え方を踏まえて、MOANAVIが大切にしている「学び方」について整理していきます。
MOANAVIが大切にしている「学び方」
ここまで見てきたように、子どもが「学び方」を身につけていくためには、
・自分の理解を振り返る経験
・学習を調整する経験
・適切な挑戦
が重要になります。
そして、こうした経験を支えるためには、子どもがどのように学んでいるのかを丁寧に見ていく視点が必要になります。
MOANAVIでは、子どもの学びを見るとき、テストの点数や結果だけで判断するのではなく、
学習行動そのもの
を大切にしています。
子どもが
・どの課題を選ぶのか
・どこで止まるのか
・どのようにやり直すのか
こうした行動の中に、理解の状態や次の学びの方向が表れているからです。
学年ではなく学びの現在地を見る
学校では多くの場合、学年ごとに学習内容が決められています。
しかし、同じ学年であっても、子ども一人ひとりの理解の状態は大きく異なります。
ある子はすでに理解できている内容でつまずいているように見えることもありますし、別の子はまだ基礎が十分に身についていない場合もあります。
そのため、MOANAVIでは
学年ではなく「学びの現在地」
を出発点にして学びを考えます。
学びの現在地という考え方については、こちらの記事でも紹介しています。
学年ではなく現在地で学ぶ理由|子どもが勉強についていけなくなる本当の原因
https://moanavi.com/10535
子どもが今どのように理解しているのかを見ながら課題を調整することで、無理なく挑戦できる学びをつくることができます。
学習行動を丁寧に見ていく
もう一つ大切にしているのが、学習行動を見ることです。
子どもの学びを支えるとき、私たちは次のような行動を丁寧に見ています。
・どの課題を選んだのか
・どのように取り組んでいるのか
・どこで止まっているのか
・どのようにやり直しているのか
こうした行動を見ることで、子どもの理解の状態や学び方の変化が見えてきます。
学習行動を見る視点については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
子どもの学習行動を見るとは何か|勉強の結果ではなく「学び方」を見る理由
https://moanavi.com/10532
挑戦を支える学習デザイン
子どもが学び方を身につけていくためには、適切な挑戦が必要になります。
教育心理学者
Lev Vygotsky が説明したように、成長は
最近接発達領域(ZPD)
と呼ばれる領域で起こります。
最近接発達領域とは、
「支援があれば到達可能な領域」
のことです。
簡単すぎる課題では新しい理解は生まれません。
一方で、難しすぎる課題では学習が止まってしまいます。
そのため、MOANAVIでは子どもの理解の状態を見ながら、少し頑張ればできる挑戦をデザインしていきます。
最近接発達領域については、こちらの記事でも解説しています。
最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説|子どもの成長が生まれる学びの条件
https://moanavi.com/10517
学び方を育てる仕組み
こうした学びを支えるために、MOANAVIでは挑戦の過程を可視化する仕組みとして
スタディポイント
という取り組みを行っています。
スタディポイントでは、
・課題の難易度を選ぶ
・挑戦を続ける
・学習を調整する
といった行動を大切にしています。
ここで重視しているのは、テストの点数ではなく、
挑戦の過程
です。
子どもが自分の挑戦を振り返りながら次の課題を選ぶことで、少しずつ自分の学び方を見つけていきます。
このように、学び方は「教えられるもの」ではなく、経験の中で育っていくものです。
子どもが
・挑戦し
・つまずき
・理解を確かめ
・もう一度やり直す
そうした経験を積み重ねていくことで、少しずつ「自分で学ぶ力」が育っていきます。
そして、この力が育つと、子どもは次第に
「勉強させられる存在」
から
「自分で学ぶ存在」
へと変わっていきます。
子どもが自分で学べるようになると何が変わるのか
ここまで見てきたように、「学び方」を身につけることは、単に勉強ができるようになることとは少し意味が違います。
もちろん、学び方が身につくと結果として成績が伸びることもあります。
しかし、それ以上に大きいのは、子どもが学びに向かう姿勢そのものが変わることです。
勉強を続けられるようになる
子どもが勉強を続けられなくなる理由の一つは、
「どうすれば理解できるのか」
がわからないことです。
理解できない経験が続くと、子どもは次第に
「自分は勉強が苦手だ」
と感じるようになります。
しかし、学び方が少しずつ見えてくると、子どもは次のような行動を取るようになります。
・もう一度考えてみる
・教科書を読み直す
・違う方法で解いてみる
つまり、理解できないことがあっても、そこで学習が止まらなくなるのです。
これは、教育心理学でいう自己調整学習の特徴でもあります。
自己調整学習については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
自己調整学習とは何か|ジマーマンの理論をわかりやすく解説|自分で学ぶ子どもはどのように育つのか
https://moanavi.com/10523
このような学習行動が育つと、子どもは勉強を「こなすもの」ではなく、理解をつくる活動として捉えられるようになります。
学校の成績だけに左右されなくなる
もう一つの変化は、学びの見方が広がることです。
学校ではテストの点数や成績が目に見えやすいため、どうしてもそれが学びのすべてのように感じられることがあります。
しかし、学び方が育つと、子どもは
・どこまで理解できているのか
・どこをもう一度考えればいいのか
といった視点で自分の学習を見ることができるようになります。
つまり、勉強は
「点数を取る活動」
ではなく、
理解を深めていく活動
として捉えられるようになるのです。
このような学びは、短期的な結果だけに左右されにくくなります。
学ぶことそのものが成長につながる
そして、最も大きな変化は、子どもが
学ぶことそのものに意味を見いだせるようになること
です。
教育心理学では、人が自分で学び続けるためには、
・自分で選べること
・できるようになる感覚
・周囲とのつながり
が重要だと考えられています。
この考え方は、動機づけ研究で知られる心理学者
Edward L. Deci
の自己決定理論でも説明されています。
自己決定理論では、人のやる気は
・自律性
・有能感
・関係性
という3つの心理的欲求によって支えられるとされています。
子どもが自分の学び方を見つけていくと、
・自分で学習を進められる
・理解できる経験が増える
・周囲と学びを共有できる
といった経験が生まれます。
その結果、学びは単なる義務ではなく、自分の成長を感じられる活動へと変わっていきます。
そして、このような経験の積み重ねが、子どもが長く学び続けていく力につながっていきます。
まとめ
学び方を学ぶことが、子どもの未来をつくる
子どもが勉強につまずくとき、多くの場合、問題は「能力」ではありません。
むしろ、
・何をすればいいのか
・どのように理解を確かめればいいのか
・どこでやり直せばいいのか
といった学び方がまだ十分に見えていないことが原因になっている場合も少なくありません。
学び方は、ノートの取り方や暗記のコツといったテクニックだけではありません。
・自分の理解を振り返る
・学習を調整する
・適切な挑戦を続ける
こうした経験の中で、子どもは少しずつ自分の学び方を見つけていきます。
教育研究でも、
・自己調整学習
・最近接発達領域
・学習環境デザイン
といった理論を通して、子どもの学び方がどのように育つのかが研究されてきました。
こうした視点で子どもの学びを見ていくと、勉強は単なる作業ではなく、理解を更新していく活動として捉えることができます。
MOANAVIでも、子どもがどのように学んでいるのかを丁寧に見ながら、学びの現在地に合わせた挑戦をデザインしています。
子どもが
・挑戦し
・つまずき
・理解を確かめ
・もう一度やり直す
その経験の中で、少しずつ自分の学び方を見つけていきます。
そして、この力が育つと、子どもは次第に
「勉強させられる存在」
から
「自分で学ぶ存在」
へと変わっていきます。
学び方を学ぶことは、単に学校の成績を上げるためだけのものではありません。
子どもがこれから出会うさまざまな学びの場面で、自分で理解を深めていくための基盤となる力でもあります。
その意味で、「学び方を学ぶ」ということは、子どもの未来の学びを支える大切な土台なのです。
📚学びの本棚から、次の1冊を
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→ MOANAVI Library をひらく
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。



