
昼間なのに太陽が消える「日食(にっしょく)」、
夜の月が赤く染まる「月食(げっしょく)」——。
ニュースやSNSで見たことがある人も多いでしょう。
でも、ちょっと不思議だと思いませんか?
🌑 新月のときに毎回日食になるわけじゃないし、
🌕 満月のときに毎回月食になるわけでもない。
では、いったいどうして「食(しょく)」は特別なときだけ起こるのでしょうか?
その答えは、太陽・地球・月の位置関係と、月の軌道のわずかな傾きにあります。
この記事では、
- 日食と月食のしくみ
- 新月と満月の違い
- なぜ毎回起こらないのかという理由
を、図をイメージしながらやさしく解説します。
最後には自由研究に使える観察アイデアや、おさらいクイズも!
夜空を見上げるのが楽しくなる「宇宙のふしぎ」を一緒に学びましょう。
日食と月食の違い|太陽・地球・月の位置関係を見てみよう
夜空を見上げると、いつも同じように見える太陽と月。
でも、たまにニュースで「日食(にっしょく)」や「月食(げっしょく)」という言葉を聞いたことはありませんか?
どちらも「太陽・地球・月のならび方」によって起こる、とてもふしぎな天体ショー なんです。
☀️ 日食とは?(太陽が月にかくされる現象)
日食は、太陽・月・地球がこの順番で並んだとき に起こります。
太陽の前を月が通過し、地球から見ると「太陽が欠けたように見える」現象です。
🌞 太陽 → 🌑 月 → 🌍 地球
月の影が地球の一部に落ちるため、太陽が全部かくれる「皆既日食(かいきにっしょく)」や、
一部だけ欠ける「部分日食(ぶぶんにっしょく)」などが見られます。
日食が見られるのは地球上でも限られた地域だけで、ほんの数分しか続かないことが多いんです。
🌕 月食とは?(月が地球の影に入る現象)
月食は、太陽・地球・月がこの順番で並んだとき に起こります。
地球が太陽の光をさえぎり、月がその影の中に入って暗くなるのです。
🌞 太陽 → 🌍 地球 → 🌕 月
月全体が地球の影に入ると「皆既月食(かいきげっしょく)」になります。
このとき月が赤っぽく見えるのは、地球の大気を通った太陽の光がまわりこんで月を照らしているからです。
これを「赤い月」「ブラッドムーン」と呼ぶこともあります。
🌍 並び方のちがいがポイント!
つまり、
- 日食は 「月が太陽をかくす」 現象
- 月食は 「地球の影が月をかくす」 現象
同じ「食(しょく)」という言葉がついていても、かくす側と、かくされる側 が逆なんですね。
クイズ①
次のうち、「月が太陽をかくして見えなくなる」現象はどれでしょう?
- 月食(げっしょく)
- 日食(にっしょく)
- 流星群(りゅうせいぐん)
正解は 2 です。
👉 日食は「太陽の前を月が通る」ことで起こります。地球から見ると、太陽が欠けたり消えたりして見える不思議な現象です。
新月と満月の仕組み|月の形が変わる理由を図で理解しよう
夜空に浮かぶ月の形は、毎日少しずつ変わっていきます。
まんまるの「満月(まんげつ)」、三日月、半月、そして見えなくなる「新月(しんげつ)」。
どうして月の形が変わるのでしょう?
それは、太陽・地球・月の位置関係と、月に当たる光の向きが関係しているからです。
🌑 新月(しんげつ)とは?
新月のとき、太陽と月が同じ方向に並んでいます。
太陽の光が月の「地球から見えない面」を照らしているため、地球からは月が見えません。
🌞 太陽 → 🌑 月 → 🌍 地球
つまり、「月はあるけれど、明るい部分が地球からは見えない」状態なのです。
この新月のときに、もし月が太陽の前を完全に通ると……そう、日食が起こることもあります!
🌕 満月(まんげつ)とは?
満月のときは、太陽と月が地球をはさんで反対側にあります。
太陽の光が月の全面を照らしているので、まんまるに見えるのです。
🌞 太陽 → 🌍 地球 → 🌕 月
このときに月が地球の影に入ると、月食が起こることもあります。
🌗 半月・三日月はどうしてできるの?
太陽・地球・月の位置が少しずつ変わることで、
地球から見える月の明るい部分の形も変化していきます。
- 🌒 三日月:新月から少し離れたときに、細い光の部分だけが見える
- 🌓 半月:太陽と月が直角の位置にあるとき、ちょうど半分が光る
- 🌔 十三夜・十四夜:だんだん丸くなって満月へ
月が1か月かけて形を変えていく動きを「月の満ち欠け(みちかけ)」といいます。
🌕 まとめると
- 新月:太陽と月が同じ方向 → 月が見えない
- 満月:太陽と月が反対側 → 月がまんまる
- 月の形が変わるのは、太陽の光が当たる角度が変わるから
この動きは毎月くり返されていて、約29.5日で一周します。
クイズ②
「新月」と「満月」の違いとして正しいものはどれでしょう?
- 新月は太陽と月が同じ方向にあり、満月は反対側にある
- 新月は月が一番明るく光る
- 満月は太陽と月が並んでいる
正解は 1 です。
👉 新月では太陽と月が同じ方向にあり、光る面が見えません。満月では太陽と月が地球をはさんで反対側にあり、まんまるに見えるのです。
なぜ新月のたびに日食が起こらないの?|月の軌道の傾きが関係している
「日食は新月のときに起こる」と聞くと、
「じゃあ、新月のたびに日食になるんじゃないの?」と思うかもしれません。
でも実際には、日食は1年に数回しか起こりません。
どうして毎月の新月では起きないのでしょうか?
🌍 太陽・地球・月が“まっすぐ一直線”に並ぶことはめったにない
日食が起こるためには、
太陽・月・地球がほぼ一直線に並ばなければなりません。
🌞 太陽 → 🌑 月 → 🌍 地球
でも、実はここに大きなポイントがあります。
それは──
🌙 月の軌道(地球のまわりを回る道)が、地球の公転面に対して約5度傾いているということ!
🌙 月の軌道はちょっとだけナナメ
地球は太陽のまわりをまわっています(公転)。
一方、月は地球のまわりをまわっています(これも公転)。
でも、この2つの「まわる道(軌道)」は、ほんの少しだけ傾いているのです。
そのため、ほとんどの新月では月は太陽の“少し上”や“少し下”を通ります。
つまり、太陽と完全に重ならないので、地球から見ると日食にはならないのです。
🌞 ぴったり一直線に並ぶときだけ日食が起きる
年に数回、月が地球の公転面と交わる「交点(こうてん)」の近くを通るとき、
太陽・月・地球が一直線になり、日食が起こります。
そのとき、
- 太陽が完全にかくれると → 皆既日食(かいきにっしょく)
- 一部だけかくれると → 部分日食(ぶぶんにっしょく)
- 月が太陽より遠くにあって少し小さく見えると → 金環日食(きんかんにっしょく)
になります。
🌏 日食がまれな“宇宙のタイミング”
新月は毎月起こりますが、太陽・月・地球の位置がピッタリそろうのはごくわずか。
だから、日食が見られるのは数年に一度の特別な天体ショーなんです。
地域によっては何十年に一度しか見られないこともあります。
クイズ③
なぜ新月のたびに日食が起こらないのでしょうか?
- 月の軌道が地球のまわりに対して少し傾いているから
- 太陽が小さくなったり大きくなったりするから
- 新月のときは太陽が地球の反対側にあるから
正解は 1 です。
👉 月の軌道は地球のまわりの道に対して約5度傾いているため、ほとんどの新月では太陽とぴったり重なりません。そのため日食はまれにしか起きないのです。
なぜ満月のたびに月食が起こらないの?|地球の影と月の位置の関係
月食(げっしょく)は、地球の影に月が入ることで起こる現象です。
では、「満月のときに太陽と地球と月が反対側に並ぶなら、毎回月食になってもいいのでは?」と思いませんか?
実は、ここにも月の軌道の傾きという大切なヒミツがあるんです。
🌕 満月のとき、月は地球の影の「上」や「下」を通っている
満月のとき、太陽・地球・月はほぼ一直線に並びます。
でも、実際には月はいつも地球の影の真ん中を通るわけではありません。
🌞 太陽 → 🌍 地球 → 🌕 月
ほとんどの場合、月は地球の影の 少し上か下を通り抜ける ため、影には入らず、普通の満月として見えるのです。
つまり、「満月」=「月食」ではないということですね。
🌑 月の軌道は5度傾いている
日食と同じように、月の軌道は地球の公転面に対して約5度傾いています。
そのため、月が地球の影にぴったり入るときだけ月食が起こります。
このタイミングがちょうど合うのは、やはり年に数回だけ。
だから、月食も日食と同じように“まれな現象”なんです。
🌔 月食の種類を見てみよう
地球の影の入り方によって、月食にはいくつかの種類があります。
月食の種類 | 起こり方 | 月の見え方 |
---|---|---|
皆既月食(かいきげっしょく) | 月全体が地球の影に入る | 赤い月(ブラッドムーン)になる |
部分月食(ぶぶんげっしょく) | 月の一部だけ影に入る | かけたように見える |
半影月食(はんえいげっしょく) | うすい影に少しだけ入る | ほんのり暗くなる |
皆既月食のときに月が赤く見えるのは、地球の大気を通った太陽の光が、わずかに曲がって月を照らすからです。
まるで宇宙がつくる“夕焼けの光”のようですね。
🌍 地球と月の位置がピッタリ重なる瞬間をねらう!
満月は毎月ありますが、地球の影と月の位置がちょうど重なるのはごくまれです。
だから月食は、「タイミングが奇跡のように合ったとき」にしか見られません。
それが、みんなが夜空を見上げる大きな理由のひとつなんです。
クイズ④
なぜ満月のたびに月食が起こらないのでしょうか?
- 満月のときは太陽が月の光を強く照らすから
- 月の軌道が傾いていて、地球の影を通らないことが多いから
- 月が地球の裏側に行ってしまうから
正解は 2 です。
👉 月の軌道は地球の公転面から約5度傾いているため、ほとんどの満月では地球の影の“上”か“下”を通ります。ぴったり重なったときだけ月食になるのです。
観察と自由研究アイデア|日食・月食・満ち欠けを調べよう
日食や月食、新月や満月は、どれも自分の目で観察できる理科の学びです。
空を見上げたり、模型を作ったりすることで、「教科書ではわからない実感」が得られます。
ここでは、家庭や学校でもできる自由研究のアイデアを紹介します。
🌗 ① 月の満ち欠けを毎日観察して記録しよう
1か月間、毎晩できるだけ同じ時間に空を見上げ、月の形をスケッチします。
下書きノートに「日付・時刻・方角・形」を書いておくと、あとでまとめやすくなります。
📘まとめ方のコツ:
- 見た形を「🌑🌒🌓🌔🌕」のように並べる
- 新月から満月まで何日かかるかを数えてみる
- 「だんだん形が太る」「細くなる」という変化を表にする
👉 これをグラフにまとめると、月の満ち欠けのサイクル(約29.5日)がひと目でわかります。
🌞 ② 太陽・地球・月の模型を作って「食」の仕組みを再現
発泡スチロールの球や紙の玉を使って、太陽・地球・月の模型を作ってみましょう。
用意するもの
- 発泡スチロール球(大・中・小)
- 竹串や割りばし
- 懐中電灯(太陽の光の代わり)
やり方
- 大きな球を地球、中くらいの球を月、小さなライトを太陽に見立てる
- 光を当てながら、月を地球のまわりに回してみる
- 太陽・地球・月が一直線になったとき、日食や月食がどう見えるか観察する
👉 「日食」「月食」「満ち欠け」の関係を一目で理解できる実験になります!
🌕 ③ 実際の月食・日食を観察して記録しよう
ニュースや天文サイトで「次の月食・日食」の日を調べて、観察計画を立てましょう。
観察のポイント
- 方角と時間を事前に調べておく
- カメラで撮る場合はブレないように固定
- 日食のときは、必ず「日食グラス」など専用の保護具を使う(絶対に肉眼で見ないこと!)
📓 観察ノートには、
- 開始時刻・終了時刻
- 月や太陽の色・形の変化
- 天気のようす
などを書いておくと、立派な観察記録になります。
🪐 ④ 自分なりの発見をまとめよう
観察した結果を「どうしてこうなるのか?」という視点でまとめると、研究に深みが出ます。
たとえば:
- 月が赤く見えるのはなぜ?
- 新月のときに日食が起きなかったのはなぜ?
- 月が満ち欠けする周期とカレンダーの関係は?
調べたことを図や模型写真といっしょにまとめれば、発表会や自由研究で注目される内容になります。
✨ まとめ
日食や月食、満ち欠けの観察は、空を見上げるだけで始められる“宇宙の理科実験”です。
毎日少しずつ変わる月の姿を記録することで、太陽や地球、宇宙のつながりが見えてきます。
「今日の月はどんな形かな?」
そんな小さな興味から、未来の科学者が生まれるかもしれませんね。
おさらいクイズ|日食・月食・新月・満月の関係を確認しよう
ここまでで、「日食・月食・新月・満月」がどんなしくみで起こるのかを学んできました。
最後にクイズでふり返って、太陽・地球・月の動きのつながりをしっかり確認しましょう!
クイズ①
日食とは、どんなときに起こる現象でしょう?
- 太陽が地球の影に入るとき
- 月が地球の影に入るとき
- 月が太陽の前を通り、太陽をかくすとき
正解は 3 です。
👉 日食は、太陽・月・地球がこの順に並んだときに、月が太陽をかくす現象です。
クイズ②
満月とは、太陽と月がどんな位置関係にあるときでしょう?
- 太陽と月が同じ方向にある
- 太陽と月が地球をはさんで反対側にある
- 太陽が月の後ろにある
正解は 2 です。
👉 満月は、太陽と月が地球をはさんで反対側にあるときに見られます。太陽の光が月の全面を照らして、まんまるに輝くのです。
クイズ③
新月のたびに日食が起こらないのはなぜでしょう?
- 月の軌道が地球の公転面に対して少し傾いているから
- 太陽の光が弱くなるから
- 月が地球の影に入るから
正解は 1 です。
👉 月の軌道は約5度傾いており、ほとんどの新月では太陽とまっすぐ重ならないため、日食にはなりません。
クイズ④
満月のたびに月食が起こらないのはなぜでしょう?
- 満月のとき、月が地球の影の上や下を通ることが多いから
- 満月のとき、太陽が小さく見えるから
- 月の光が強すぎて影ができないから
正解は 1 です。
👉 月の軌道が少し傾いているため、ほとんどの満月は地球の影に入りません。ぴったり重なったときだけ月食になります。
クイズ⑤
次の中で、正しい組み合わせはどれでしょう?
- 新月 → 月食が起こることがある
- 満月 → 日食が起こることがある
- 新月 → 日食が起こることがある
正解は 3 です。
👉 新月のとき、太陽と月が同じ方向に並ぶため、月が太陽をかくすと日食になります。
これでおさらいはバッチリ!
日食・月食・新月・満月のつながりを理解すれば、夜空を見上げるのがもっと楽しくなりますね。
まとめ|太陽・地球・月の動きがつくる神秘の現象
日食・月食、新月・満月——これらはどれも、太陽・地球・月の見えないチームワークによって生まれる現象です。
毎日のように空で起こっていることなのに、そのしくみを知ると「宇宙ってすごい!」と感じますね。
🌞 太陽・地球・月の位置関係が生み出す「食」
- 日食:太陽・月・地球の順に並び、月が太陽をかくす現象。
- 月食:太陽・地球・月の順に並び、地球の影が月をかくす現象。
どちらも、「まっすぐ一直線に並ぶ」という奇跡のようなタイミングがそろったときだけ見られる、特別な天体ショーです。
🌕 新月と満月のリズム
- 新月:太陽と月が同じ方向に並ぶ → 月が見えない
- 満月:太陽と月が反対側に並ぶ → 月がまんまるに見える
月は約29.5日かけて形を変え、また新しいサイクルをくり返します。
このリズムは昔から人々の生活に深く関わっていて、**潮の満ち引きや暦(こよみ)**にも使われてきました。
🌍 なぜ毎回起こらないの?
新月や満月があっても、日食や月食が毎回起こらないのは、月の軌道が少し傾いているからです。
その傾き(約5度)によって、太陽・地球・月が完全に重なる瞬間はまれになります。
だからこそ、日食や月食が起こる日は“特別な宇宙のタイミング”なのです。
🔭 空を見上げて「宇宙の動き」を感じよう
次に夜空を見上げるとき、ぜひ太陽・地球・月の関係を思い出してみてください。
「今見えている月は、太陽の光をどう反射しているのかな?」
「今はどんな位置にあるんだろう?」
そんな想像をするだけで、空の見え方がまったく変わります。
🌠 まとめのひとこと
太陽・地球・月は、何十億年も前からずっと同じリズムで動き続けています。
日食や月食は、その完璧な動きが生み出す“宇宙からの贈りもの”です。
理科の学びとしてだけでなく、「自然の中で生きている自分たち」を感じるチャンスでもあります。
これからは、空を見上げるたびに——その向こうにある宇宙のつながりを思い出してみてくださいね。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。