防災・孤立・居場所不足…地域課題を五方よしで解決するTOBASEモデル

地域社会では、子どもの居場所不足や学びの格差、若者の孤立、ミドル世代の負担、シニアの交流減少や防災力の低下など、世代ごとにさまざまな課題が広がっています。これらを放置すると、世代を超えて孤立が深まり、地域全体のつながりが失われてしまいます。

横浜発の「TOBASE(トベース)」は、学びと交流の拠点として生まれました。その特徴は「五方よし」という仕組み。地域・本部・オーナー・講師・生徒のすべてにメリットをもたらし、持続可能な形で地域課題を解決していきます。

本記事では、世代別に整理した地域課題と、それを五方よしでどう解決できるのかを解説。実例としてTOBASE戸部の取り組みも紹介しながら、「学びでつながる 学びがつながる」未来を描きます。


はじめに:地域が直面する複合的な課題

いま、日本の地域社会は大きな転換点にあります。
少子高齢化や共働き世帯の増加、地域行事や自治会の担い手不足、不登校の増加や学びの多様性不足…。これらは一見すると異なる問題に見えますが、根底には「人と人のつながりの希薄化」があります。

子どもからシニアまで、世代を問わず孤立しやすくなり、防災や福祉の面でも地域の力は弱まっています。こうした状況を解決するため、横浜市西区から始まった「TOBASE(トベース)」は、学びと交流を通じて地域課題を解決する新しいモデルです。

MOANAVIが掲げる理念は「学びでつながる 学びがつながる」。TOBASEは、この理念を地域に広げ、世代を超えた人々を結ぶ拠点として生まれました。


世代別に見える地域課題

子ども世代

  • 放課後の安心できる居場所が不足し、子どもたちが家にこもりがち
  • 学習格差や不登校が拡大し、学びの選択肢が限られる
  • スマホやゲーム依存が進み、自己肯定感が低下

本来、子どもは地域で遊びや学びを通じて成長します。しかし、その機会が減ることで孤立や学びの遅れが顕著になっています。

若手世代(20〜30代)

  • 副業や挑戦の場が少なく、働き方の選択肢が限られる
  • 地域との関わりが希薄で「地元に自分の居場所がない」と感じやすい
  • 子育て初期の親が孤立しやすく、育児不安を抱えやすい

若者が新しい挑戦をしたり、地域との関わりを深めたりできる場は限られており、孤立感を強めています。

ミドル世代(40〜60代)

  • 仕事・子育て・介護のトリプル負担
  • PTAや地域活動の担い手不足
  • 忙しさから地域参加が難しく、役割が偏る

地域活動の中心となる世代が疲弊することで、地域全体の基盤が弱まっていきます。

シニア世代(65歳〜)

  • 一人暮らしや閉じこもりによる孤立
  • 健康や生活への不安、役割喪失感
  • 防災時に支援を受けにくく、災害弱者になりやすい

経験や知識を活かせないまま孤立するケースが増え、地域に潜在する力が活かされにくくなっています。


課題を放置した場合のリスク

子ども世代

  • 放課後の居場所がない → 依存傾向が進む
  • 学びの格差が拡大 → 将来の選択肢が狭まる

若手世代

  • 地域との接点不足 → 孤立感・将来不安が強まる
  • 挑戦機会の欠如 → キャリアや地域貢献の機会を喪失

ミドル世代

  • 負担集中 → 心身の疲弊
  • 地域活動の縮小 → コミュニティが停滞

シニア世代

  • 孤立や役割喪失 → 生きがいの低下
  • 防災・福祉の担い手不足 → 地域の安全が脆弱化

地域全体

  • 世代を超えて孤立が広がる
  • 地域行事や交流が減少する
  • 防災力や福祉力が低下する
  • 若者流出で人口減少が加速

「人と人のつながりが弱まること」こそが、教育・福祉・防災の課題を根底で悪化させる要因なのです。


五方よしで課題を解決するTOBASEの仕組み

TOBASEは「五方よし」を掲げています。近江商人の「三方よし」を発展させ、地域・本部・オーナー・講師・生徒 の五者すべてがメリットを得る仕組みです。

地域よし

  • 顔が見える関係が日常的に生まれる
  • 防災ネットワークや助け合いの基盤となる

オーナーよし

  • 空き時間・空きスペースを活用し、小規模投資で始められる
  • 地域貢献と収益を両立できる

講師よし

  • 「先生デビュー講座」で未経験から挑戦できる
  • 教える経験がそのまま地域のつながりになる

生徒よし

  • 子どもから大人まで多様な学びを体験できる
  • 「学びでつながる 学びがつながる」 実感を得られる

本部よし

  • TOBASEの収益はモアナビ協創学園の運営費に循環
  • 教育活動全体を底上げし、持続可能な社会的還元を実現

実例紹介:TOBASE戸部

横浜市西区・戸部で始まったTOBASEは、28㎡の小さなスペース。
しかし、その小ささこそが人と人を近づけ、交流を自然に生み出しています。

  • 未経験の人が「先生デビュー講座」で講師として第一歩を踏み出す
  • 子どもたちが安心して放課後を過ごす居場所になる
  • 保護者やシニアが地域の仲間と交流できる
  • 防災にも役立つ「顔の見える関係」が育まれる

TOBASE戸部は、「学びでつながる 学びがつながる」を具体化したモデルケースです。


まとめ:地域の未来をつくるTOBASE

寄付に頼る社会活動には限界があります。求められているのは、持続可能で誰もが関われる仕組みです。

TOBASEは五方よしを軸に、

  • 子どもに居場所を
  • 若手に挑戦を
  • ミドルに無理のない地域参加を
  • シニアに役割と交流を
  • 本部には教育活動を底上げする循環を

提供しながら、「学びでつながる 学びがつながる」未来を地域から育てています。

あなたもTOBASEに関わってみませんか?

  • 教えたい方へ:先生デビュー講座で第一歩を
  • 運営したい方へ:拠点オーナー制度で地域に拠点を
  • 参加したい方へ:イベントやワークショップで体験を

小さな部屋から始まったTOBASEの挑戦は、世代を超えて地域の未来を育てる新しいモデルです。

記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)

STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター

理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。

📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説


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