
学習指導要領改訂で注目の
「学びに向かう力・人間性」と「中核的な概念」を
わかりやすく解説
学習指導要領の改訂に向けて、「学びに向かう力・人間性」という言葉が注目されています。これは知識や技能と同じく大切な力ですが、評定(成績)の対象にはせず、子どもの学びや成長を支える視点として位置づけられています。本記事では、その背景や4つの要素、国語・算数・理科・社会・英語の中核的な概念、そしてMOANAVIの理念との関連について、保護者にもわかりやすく解説します。
はじめに
2025年、文部科学省は次期学習指導要領の改訂に向けて議論を進めています。その中で大きなテーマとなっているのが 「学びに向かう力・人間性」 です。
これは、子どもが「やってみよう」と思える気持ちや、失敗しても挑戦する姿勢、人と協力する態度を含む力です。そして注目すべきは、数値で評定しない という方向性が示されている点です。
つまり、成績表の数字で測る対象ではなく、子ども一人ひとりの学びを支え、育てていくための大切な視点として扱われるのです。
学びに向かう力・人間性が必要な理由
国際調査で見えた日本の課題
- 自分で学ぶ自信が低い
OECDのPISA2022では、日本の生徒は「自分で勉強を進められる自信」が世界の平均より大きく下回り、37か国中34位。 - 失敗を恐れる傾向が強い
PISA2018では「失敗すると他人にどう思われるか不安」と答える割合がOECD平均より高く、日本の子どもは挑戦を避けやすい。 - 探究的な学習が定着していない
全国学力・学習状況調査では、自分で課題を立てて調べて発表する活動に取り組んでいる児童生徒は3〜4割にとどまる。 - 社会や未来への意識が低い
内閣府や日本財団の調査でも「社会を変えられる」「将来の夢を持つ」と答える割合が他国より低い。
学びに向かう力・人間性の4つの要素
文部科学省の整理では、次の4つに分けて考えられています。
- 初発の思考や行動を起こす力・好奇心
→ 新しいことに挑戦しようとする意欲。 - 学びの主体的な調整(メタ認知)
→ 自分の考えや行動を振り返り、改善して次につなげる力。 - 他者との対話や協働
→ 友だちや先生、地域の人と関わり合いながら学びを広げる力。 - 学びを方向付ける人間性
→ 自分の学びを豊かな人生やよりよい社会に生かそうとする姿勢。
これらは 点数で測るものではなく、子どもが学びを自分のものにしていく過程そのものです。教師や大人が寄り添って育む力として位置づけられています。
【図解】4つの要素の関係

出典:文部科学省「学習指導要領の構造化を進める に当たっての諸論点」
「学びに向かう力・人間性」は、好奇心・自己調整・協働・人間性の4つが関わり合って育ちます。これは数値で測るのではなく、子どもが自らの学びを豊かにしていくプロセスを支える視点として大切にされます。
評価(評定)との関係
従来、学習指導要領に示される資質・能力は、テストや評定(1〜5段階の成績など)と強く結びついてきました。
しかし今回の議論では、
- 「学びに向かう力・人間性」は感性や態度に関わる部分が多く、数値化にそぐわない
- 一人ひとりの成長を長期的に支える視点であり、競争的な評価ではない
と整理されています。
そのため、評価は 「数値での評定」ではなく、教師や大人が子どもの姿を見取り、支援するための観点 として扱われます。
教科ごとの「中核的な概念」とは?
学習指導要領改訂では、各教科の「中核的な概念」も重視されています。これは 教科を学ぶうえで中心となる考え方や視点 のことです。
- 国語:言葉の意味や使い方に気づき、言葉で自分や社会とつながる。
- 算数:数量や図形の関係をとらえ、数式やグラフで表して問題を解決する。
- 理科:自然の事物・現象を観察・実験し、因果関係や法則を見つける。
- 社会:地理では空間的な広がり、歴史では因果関係、公民では社会の仕組みを理解する。
- 英語(外国語):言葉を使って気持ちや考えを伝え合い、異なる文化や考え方を理解する。
知識の習得だけでなく、こうした「中核的な視点」を持つことで、子どもは学んだことを結びつけ、未知の状況に応用できるようになります。
世界の教育とのつながり
日本の方向性は、国際的な教育改革ともリンクしています。
- OECD「Learning Compass 2030」
「エージェンシー(自分で人生を切り開く力)」と「共同エージェンシー(人と協力して行動する力)」を教育の中心概念として提示。 - グローバル社会の共通課題
気候変動やAIの進展など、不確実性の高い課題に対応するには、知識だけでなく「学び続ける力」「協働して社会を変える力」が必要。
MOANAVIの理念や学習との関連

MOANAVIの理念と重なる視点
MOANAVIは「学びでつながる、学びがつながる」をテーマに、子どもが 自分らしく学び、自分らしく生きることを大切にしています。
これはまさに「学びに向かう力・人間性」の考え方と重なっており、MOANAVIの実践は国の方向性を先取りするものとも言えます。
STUDY POINTシステム
MOANAVI独自の STUDY POINTシステム は、学習の成果や点数ではなく、
- 学び方を自分で選ぶ
- 学習量や難易度を調整して取り組む
- 仲間と学びを共有する
といった 学習のプロセス を評価してポイント化します。
これは「数値で評定しない」という方向性と響き合い、子どもが学びに向かう姿勢そのものを大切にしています。
STEAM教育と「中核的な概念」
MOANAVIのテーマ学習は「科学・言語・人間・創造」の4領域を柱にしています。
これは教科ごとの「中核的な概念」をつなぐ学び方であり、知識を点ではなく 線や面で理解する力 を育みます。
プロジェクト型学習
「お祭りプロジェクト」や「未来の街をデザインしよう」などの活動は、
- 課題を立てる(好奇心)
- 試行錯誤を繰り返す(自己調整)
- 仲間と協力する(協働)
- 社会につなげる(人間性)
という4つの要素を自然に含んでいます。
まとめ
学習指導要領改訂で重視される「学びに向かう力・人間性」は、
- 好奇心
- 自己調整
- 協働
- 人間性
の4つから成り立ち、数値で評定する対象ではない と明確にされています。
MOANAVIの理念や実践は、この考え方と深く響き合っています。
STUDY POINTシステム、STEAM教育、プロジェクト型学習を通して、子どもは 自分の人生を舵取りし、多様な他者と共に生きる力 を育んでいきます。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説