
世界は今、どんな教育改革をしているの?
― 各国の取り組みから見える、未来の学び ―
前回の記事では、「これからの教育はどう変わっていくのか?」というテーマで、OECDの提言をご紹介しました。
今回は、もう少し視野を広げて、「世界の国々はどんな教育改革をしているのか?」を見てみたいと思います。
未来に向けて、世界各国が試行錯誤しながら進めている教育改革。
その中には、日本の私たちにもヒントになるような取り組みがたくさんあります。
まずはおさらい:「なぜ教育改革が必要なの?」
社会の変化がとても早くなっている今、20年後にどんな仕事があるのか、どんな課題が起きるのかを正確に予測するのは難しくなっています。
AI、デジタル化、気候変動、多様性の尊重――
これまでの「正解を覚える教育」だけでは対応できない課題が増えてきています。
だからこそ、世界の国々は「一人ひとりの子どもが、自分の力で学び、行動できるようにする」教育へのシフトを進めているのです。
フィンランド:世界の教育モデル
教育が充実している国として有名なフィンランド。
PISAでも上位にランクインしているこの国では、「テストの点数より、学びのプロセス」が大切にされています。
特徴的な取り組み
- 宿題が少ない:家庭でも余裕を持って過ごせるように。
- 総合的な学習(Phenomenon-Based Learning):教科を横断して「現象」や「テーマ」を学ぶスタイル。
- 先生に大きな裁量:教育大学で厳しく選ばれた教師が、自由に授業をデザイン。
例えば、「海洋プラスチック問題」というテーマに対して、
- 理科:海の生態系への影響
- 国語:意見文を書く
- 社会:国際的な取り組み など、教科を横断して探究します。
シンガポール:「考える力」への大転換
かつては詰め込み型といわれたシンガポールの教育ですが、今はまったく違います。
目指しているのは「テストで良い点」ではなく、「考えて、協力して、行動できる人」。
キーワードは「21世紀型スキル」
- クリティカルシンキング(批判的思考)
- コラボレーション(協働)
- ICTリテラシー(デジタル活用)
ICT(デジタル端末)も積極的に導入されており、タブレットやオンライン教材を使って「自分のペースで学ぶ」スタイルが広がっています。
カナダ:多文化共生と探究型学習
多民族国家であるカナダでは、「誰もが安心して学べること」が大前提。
「学び方に正解はひとつではない」と考え、多様な価値観を尊重する教育が進められています。
注目ポイント
- 探究学習(Inquiry-Based Learning):自分の問いから学びを深めていくスタイル。
- SEL(社会性と情動の学習):感情のコントロール、共感、対話力などの育成。
たとえば、
「地域のゴミ問題をどう解決できるか?」
という問いをもとに、自分で調べ、仲間と話し合い、アイデアを形にしていく学習が行われています。
オーストラリア:「ウェルビーイング(幸福)」を中心に
オーストラリアの教育カリキュラムでは、子どもの「学び」と「心の健康」のバランスをとても大切にしています。
実践例
- SELプログラムの導入:クラスで「ありがとうを伝える時間」や「今日の気分を言葉にする」活動。
- 自然とのつながり:屋外学習や体験学習が豊富。
学校が「安心できる場所」であること、子どもが「自分の存在を大切に感じられること」が、学力と同じくらい重視されています。
アメリカ:STEAM教育で創造力を伸ばす
アメリカでは、近年特にSTEAM教育(科学・技術・工学・芸術・数学)が注目されています。
これは、正解を覚えるのではなく、「実際に作って試す」中で学ぶスタイル。
例:ある小学校のSTEAMプロジェクト
「宇宙に行ったら、どうやって水を確保する?」
この問いに対して、子どもたちは
- ロケットの模型を作る
- 雨水ろ過装置を考える
- NASAの情報を調べる など、教科を横断して学んでいきます。
「正解」よりも「試行錯誤する姿勢」が評価されるのが特徴です。
日本のこれから:学びの「個別化」と「協働化」
日本でも、新学習指導要領の中で「主体的・対話的で深い学び」が重視されるようになりました。
特にこれから注目されるのが次の2つです:
① 個別最適な学び
- 子どもの理解度や興味に合わせて学ぶ
- ICT(タブレットやAIドリルなど)を活用
② 協働的な学び
- 仲間と対話しながら、よりよい答えを探る
- 教え合いやグループ学習
また、学校だけでなく「地域」「家庭」「民間の学びの場」との連携も今後のカギになります。
MOANAVIでの取り組み:未来に近づく学びを実践中

私たちMOANAVIでも、こうした世界の教育の流れを取り入れた学びを大切にしています。
- STEAM学習で「テーマから学ぶ」スタイル
- 自分のペースで学べる「自由進度学習」
- 実社会とつながる「お祭りプロジェクト」
- 「STUDY POINT」で努力が見える学び
子どもたちの「好き」や「得意」を大切にしながら、未来に必要な力をじっくり育てています。
まとめ:世界の教育から学べること
世界の教育改革に共通するのは、
- 正解のある問題よりも、問いに向き合う力
- 知識よりも、活かす力
- 一人ではなく、誰かと協力する力
- そして、何よりも自分の幸せをつくる力
日本でも少しずつ、こうした新しい学びが広がってきています。
子どもたちが、変化の時代をたくましく、しなやかに生き抜いていけるように――
私たち大人も、「教育のアップデート」を一緒に考えていきませんか?
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / 株式会社MOANAVI代表取締役
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説