子どもたちの未来のために、教育はどう変わる?

― OECDの提言とこれからの学び ―

今日は「これからの教育ってどうなるの?」というテーマについて、保護者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
子どもたちが大人になる頃、社会はきっと今とはまったく違う姿になっているはずです。
AI、気候変動、国際的な協働…変化が大きく、不確実な時代を生きる子どもたちにとって、どんな学びが本当に必要なのでしょうか?

今回は、世界中の教育政策に大きな影響を与えている「OECD(経済協力開発機構)」の提言を中心に、未来の教育のヒントを紹介します。


「学力」だけでは不十分な時代へ

私たちが子どもの頃、学校で求められていたのは「テストでいい点を取ること」や「知識をたくさん覚えること」でしたよね。
でも、今の時代、そしてこれからの時代に求められるのは、「知っていること」以上に「活かせる力」「自分で考えて行動する力」です。

例えば、知らない問題に出会ったときにどう調べるか、友達と意見が違ったときにどう解決するか、自分の意見をどう伝えるか。
そんな「生きる力」がますます大事になっているのです。


OECDって何? 教育とどう関係があるの?

OECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパを中心に日本やアメリカなど38カ国が加盟している国際機関です。
経済や社会の発展に関するデータを集めたり、国同士で協力し合うための話し合いを行ったりしています。

その中でも教育分野の研究はとても活発で、世界中の学校や教育改革に影響を与えています。


教育を測る国際テスト「PISA(ピサ)」

OECDの有名な取り組みの一つに「PISA(ピザ)」という国際調査があります。
これは15歳の生徒を対象に、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーなどを測るものです。

ただし、PISAのテストは、単なる知識の暗記テストではありません。

例えば、

  • 「地球温暖化に関するグラフを読み取って、自分の意見を述べる」
  • 「広告の中から、信頼できる情報を見抜く」

といった、「実生活に近い場面で考える力」を問う問題が出題されます。
これはまさに、「これからの時代に必要な力」を測るための工夫なのです。


『OECDラーニング・コンパス2030』って?

未来の教育を考えるうえで、今もっとも注目されているのが『OECDラーニング・コンパス2030』という教育ビジョンです。
これは「子どもたちが2030年以降を幸せに生きるために、どんな学びが必要か?」を示す、いわば教育の羅針盤(コンパス)のようなもの。

ラーニング・コンパスが大事にしている3つのこと

① エージェンシー(自分で人生を選び取る力)

子どもたちが、自分の未来や周囲の社会に責任を持ち、自分らしく生きる力を育てます。
親や先生が決めるのではなく、「自分で考え、自分で行動する力」を大切にするのです。

② 資質・能力(コンピテンシー)

  • クリエイティブに考える力
  • 人と協力する力
  • 対立を乗り越える力 など、これからの社会で必要な「実践的な力」を育てることを重視しています。

③ ウェルビーイング(幸福)

最終的なゴールは「社会で成功すること」ではなく、「心も身体も満たされて、幸せに生きること」。
個人だけでなく、社会全体、そして地球全体の「持続可能な幸福」をめざします。


「知識+スキル+価値観」をバランスよく

OECDの考え方では、学びには3つの柱があります。

学びの柱内容たとえば…
知識社会や理科などの教科知識月の満ち欠け、歴史上の出来事
スキル思考力・対話力・問題解決力友達と意見を交わす、図を読み取る
態度・価値観自分や他者を大切にする気持ち挑戦する姿勢、思いやり、責任感

この3つを組み合わせて学ぶことが、未来を生きる力につながるとされています。


教育は「問い」に向かう旅

もう一つ、印象的なメッセージがあります。

「未来は予測するものではなく、創るものである」

つまり、正解のある問題を解くよりも、「正解のない問いに向き合う力」こそが大事だということです。

たとえば、

  • 「みんなが安心して住める未来の街って、どんな街?」
  • 「動物園の動物を守るために、自分たちにできることは?」

こんな問いに向き合い、調べたり、考えたり、誰かと話し合ったりする中で、子どもたちは力をつけていきます。


MOANAVIでも実践中! 未来につながる学び

私たちMOANAVIでは、こうしたOECDの考えに共感し、「科学・言語・人間・創造」の4つの領域から未来の力を育てるSTEAM教育を行っています。

  • 「自己調整学習」では、自分のペースで学ぶことができる
  • 「STUDY POINT」で努力や行動が認められる仕組み
  • 「お祭りプロジェクト」では、企画から運営まで子どもたちが主体に
  • 売上を動物園に寄付するなど、社会とつながる体験も

こうした活動を通して、子どもたちは「自分の学びが社会に役立つ」という実感を得ることができます。


保護者の皆さんと一緒にできること

未来の教育は、学校だけに任せるものではありません。
家庭の中でも、子どもの「エージェンシー」を育てる関わり方がとても大切です。

  • 子どもが興味を持ったことを尊重する
  • 正解を教えるより、一緒に考える
  • 「どうしたらよかったかな?」と問い返してみる

こうした声かけの積み重ねが、子どもの中に「自分で考える力」を育んでいきます。


まとめ:教育は、未来をつくる力を育てるもの

これからの教育は、「点数のため」や「受験のため」ではなく、「よりよく生きるため」のものへと変わろうとしています。

子どもたちが、自分らしく、誰かと協力しながら、まだ見ぬ未来をつくっていけるように――
私たち大人も、共に学び、共に悩みながら、伴走していけたらと思います。

記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)

STEAM教育デザイナー / 株式会社MOANAVI代表取締役

理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。

📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説


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