お互いに教え合いながら学ぶ
教師の支援のもとで行われる協同的な学習による効果は強力です。
パリンサーとブラウン(Palincsar, A. S., Brown, A. L, 1984) は、このような相互作用によって発達を促す学習を、相互の教授(互恵的教授法) (reciprocal teaching) の場と捉えました。
そして、相互の教授の効果について明らかにしました。
教え合うと学習効果が高まる
パリンサーとブラウンは、学習障害や知的障害に起因しない、読解に困難を抱える 24 人を対象に「理解をモニタリングさせる活動」に取り組ませ、相互の教授の効果を測定しました。
学習後、相互の教授を行ったグループの読解における正答率は、相互の教授を行わなかったグループの正答率よりも高くなりました。
教え合いはメタ認知を促す
相互の教授における教える、教えられるといった子どもの立場は不変なものではなく、常に相互に変わりうるものです。
子どもは自らの考えを教えることによってモニタリングするとともに、教えられることによって修正することを繰り返したのです。
つまり、ピア・アセスメントは、相互に評価の情報を伝え合う活動を通してメタ認知を促しているということなのです。
社会科と理科でも効果あり
この調査は社会科と理科においても行われ、いずれも相互の教授によって明らかに効果があることが分かりました。
つまり、理科学習における科学概念構築の過程において、相互の教授は有効であるということです。
教師は授業デザインの中で、自己調整学習におけるメタ認知を相互の教授によって働かせることが重要です。
協同学習の定義
このように、協同学習は学力の向上に寄与することが明らかとなりましたが、 ここで協同学習の定義を明らかにしておかなければなりません。
杉江(2011)は 「グループ学習が協同学習ではありません。協同学習はグループの活用法というような手法の理論ではないのです。協同学習は教育の基本的な考え方を体系的に示す理論であり、教育の原理なのです」(杉江,2011:17)と述べています。
協同学習の精神
この定義にそって協同学習を考えると、「一斉の協同学習」(杉江,2011:20) という学習形態もありえるということです。
協同学習は学習グループの人数やグループの数によって規定されるものではなく、教師及び学習者全員が共有すべき学習の精神であるということです。
「学級集団のメンバー一人ひとりの成長が互いの喜びであるという目標のもとで学習する場合が協同」(杉江,2011:19)であること、「学級のメンバー全員のさらなる成長を追求することが大事なことだと、全員が心から思って学習すること」(杉江,2011:20)が協同であることから明らかなように、協同学習における教師の役割は、グループのメンバーの編成に腐心することではなく、協同学習の精神を子どもに身に付けさせることなのです。
このような協同学習の精神に基づいて行われる学習においては、子どもは自らの考えを、その正誤にとらわれることなく自由に表現することが可能です。
そのパフォーマンスに基づき、教師は適切な足場作りを通して授業をデザインすることができるのです。