足場作り

学習のための足場を作る

社会構成主義に立脚し、発達の最近接領域から子どもの発達を引き上げようと考えるとき、教師が行うべきことは子どもの発達の水準に合わせて適切な支援を行うことです。

つまり、子どもが一段高く昇れるような足場を作るということです。

この足場作りの概念は、発達の最近接領域の理論に基づき、ブルーナーらが提唱した概念です。
 (Wood, D. J., Bruner, J. S. and Ross, G., 1976) 

授業における足場作り

授業デザインの基本の考え方は、足場作りであす。

足場作りは授業の前・中・後いずれにも行われるものです。

例えば授業前には子どもの発達を引き上げるために適切な学習問題を設定したり、教材を選んだりすることが挙げられます。

授業中には、子どもとの対話の中で子どもに気付きを促したり、困難さを感じている子どもに対して具体的な指示を与えたりすることが挙げられます。

授業後には、子どもの表現から学習の成果を評価し、必要に応じて授業デザインに修正を加えたり、個別に指導をしたりすることが挙げられます。

足場作りの分類

教師が行うことのできる足場作りは無数にあり、その時々に適切な足場作りは子ども一人ひとり異なります。

その中から教師が足場作りを選択しなければならないのです。

教師が足場作りを選択する際、足場作りがどのように分類されているかを知っていることは有用です。

ハナフィンらは教授・学習の視点から足場作りを 次の四つのタイプに分類しました。
(Hannafin, M. J., Land, S. M., and Oliver, K., 1999)
  1. 学習すべき概念を明示していく
  2. 常に学習においてメタ認知させる
  3. 学習を進める上において必要な情報源やツールを示す
  4. 学習の進め方を示す

  • 学習すべき概念を明示していく
  • どのような科学概念の構築をめざすのかということを学習者自身が認知することの重要性を示しており、それに必要な教師の支援が足場作りとなるのです。
    
    例えば、子ども自らの問題意識から学習が行われるように授業前にデザインを行うことが挙げられます。
    
    学習中に学習問題を板書し明示することも重要な足場作りとなります。

  • 常に学習においてメタ認知させる
  • 学習者自身が自らの学習成果や学習進度についてメタ認知を行えることが重要であり、それに必要な教師の支援が足場作りとなるのです。
    
    例えば、学習状況をモニタリングできるように、子どもに表現(パフォーマンス) させること等が挙げられます。
    
    教師は子どもの表現に対して評価を行い、その評価情報を子どもに対してフィードバックすることによって、学習のコントロールを促すのです。

  • 学習を進める上において必要な情報源やツールを示す
  • 概念が様々な情報の連関によって構築されるものであるため、概念構築に必要な情報のありかについて子どもに示したり、情報を読むとるために必要なツールを示したりすることが重要であり、それに必要な教師の支援が足場作りとなるのです。
    
    例えば、教師と子どもや子ども同士による対話の中から概念構築に必要な情報を目立たせて強調したり、不足している情報を補えるような資料を提示したりすること等が挙げられます。 

  • 学習の進め方を示す
  • どのように学習を行えば科学概念を構築することができるのかを学習者自身が認識することが重要であり、それに必要な教師の支援が足場作りとなるのです。
    
    つまり、概念構築に必要な問題解決のプロセスを子どもに示すということです。
    
    例えば、理科授業において問題に対する見通しを立て、観察・実験によって情報を収集し、対話を通して考察することによって問題が解決できるという、学習プロセスに対する有用感を子どもがもてるように繰り返し指導することなどが挙げられます。

    理科は自然というテキストから学ぶ教科

    科学概念構築において決定的に重要なことは、情報をいかに読み取るか、いかに関連付けるかということです。
    
    これらの情報は様々なテキストから読み取ることができるものです。
    
    ここでいうテキストは「教科書」や「資料」といった言語情報だけを表すものではありません。
    
    また、「写真」等といった紙ベースの情報を表すものでもありません。
     
    テキストとなるものは、科学概念構築に必要となる情報を有するものすべてであると捉えなければなりません。
    
    この視点によると、理科授業における「観察・実験」や、体験的な活動もまたテキストとなります。
    
    つまり「自然」そのものがテキストであり、理科は自然というテキストから学ぶ教科であるということがいえるのです。