
「農業をする人がどんどん減っている」って聞いたことがありますか?
実は日本の農業人口は、この40年で 4分の1以下 にまで減少し、農家の平均年齢は 67歳以上。このままでは、日本の食卓や食の安全に大きな影響が出てしまいます。
この記事では、
- 農業人口が減少している理由
- 高齢化と食料自給率の関係
- 農業の未来を守る取り組み(スマート農業・若者の就農支援・6次産業化)
について、小中学生にもわかりやすく解説します。
さらに、途中にはクイズや自由研究のアイデアもあるので、楽しみながら「日本の農業の未来」について考えることができますよ。
農業の担い手が減っているのはなぜ?【日本の農業人口の現状】
日本の農業に関わる人の数は、年々少なくなっています。
1960年ごろには1,000万人以上いた農業就業人口は、2020年には約170万人にまで減少しました。特に大きな理由は 高齢化 です。農家さんの平均年齢はすでに67歳を超えていて、若い世代がほとんどいません。
若い人が農業を仕事に選びにくい背景には、
- 「収入が安定しにくい」
- 「体力的にきつそう」
- 「後継ぎがいない」
といった課題があります。
こうした理由から、農業人口は急激に減り続けているのです。
日本の農業就業人口の推移(参考データ)
年代 | 農業就業人口(万人) | 備考 |
---|---|---|
1980年 | 約670万人 | 農業がまだ大きな産業だった時代 |
1990年 | 約460万人 | 高度経済成長期を経て減少が進む |
2000年 | 約340万人 | 若者の就農離れが顕著に |
2010年 | 約260万人 | 高齢化が深刻化 |
2020年 | 約170万人 | 平均年齢は約67歳に |
※出典:農林水産省「農業就業人口等に関する統計」より作成
👉 ポイント
- 農業人口は40年間で 約4分の1以下 に減少。
- 特に若い世代(20〜40代)の割合がとても低くなっている。
- 高齢化と担い手不足が、食料自給率や地域農業の持続に直結する課題となっている。
👉 クイズ①
農業をする人の平均年齢はおよそ何歳でしょう?
- 約40歳
- 約50歳
- 約67歳
正解は 3. 約67歳 です。
日本の農業の高齢化が進んでいることが、担い手不足の大きな理由になっています。
農業人口の高齢化が進む理由とは?【後継者不足と就農の課題】
日本の農業人口が減るだけでなく、高齢化も深刻な問題です。現在、農業に従事する人の 約7割が65歳以上 というデータもあります。なぜここまで高齢化が進んでいるのでしょうか?
1. 後継者不足
昔は農業といえば「家業」として子どもが受け継ぐのが当たり前でした。ところが今は、農家の子どもたちが都会に進学・就職して戻らないケースが増えています。結果として「親は高齢でも農業を続けているが、後を継ぐ人がいない」という状態になっているのです。
2. 就農のハードルの高さ
「農業をやってみたい」と思う若者がいても、始めるのは簡単ではありません。
- 農地を確保するのが難しい
- 機械や施設をそろえるのに初期費用が高い
- 天候や市場価格に左右されやすく、収入が安定しにくい
こうしたハードルが「農業を仕事にするのはリスクが大きい」と思わせ、若い世代が参入しにくい原因になっています。
3. 体力的なきつさ
農業は屋外での作業が中心。真夏の炎天下での収穫や、重い機械を扱うことも多く、体力が必要です。そのため若い人には「きつそう」というイメージを持たれやすく、敬遠されがちです。
👉 クイズ②
農業人口の高齢化が進んでいる主な理由はどれでしょう?
- 後継者が少なく、若い世代が農業を継がないから
- 農業の人気が高まりすぎて、逆に高齢者しかできなくなったから
- 外国の農家が増えたから
正解は 1. 後継者が少なく、若い世代が農業を継がないから です。
農地や設備の確保が難しいことも、高齢化を加速させる原因になっています。
👉 ポイントまとめ
- 農業人口の高齢化は「後継者不足」と「就農のハードルの高さ」が大きな原因。
- 高齢化が進むと、農業の持続性が危うくなる。
- 「若い人が農業を選びやすい環境」を整えることが課題。
食料自給率の低下と農業人口の関係【日本の食の安全に直結】
農業人口の減少と高齢化は、単に「農家が減って困る」というだけの問題ではありません。実は 日本の食料自給率 にも大きく影響しており、私たちの食生活そのものを揺るがす課題なのです。
1. 日本の食料自給率の現状
日本の食料自給率(カロリーベース)は、1960年代には70%以上ありましたが、近年は 37〜38%前後 まで落ち込んでいます。つまり、食べている食料の半分以上を外国からの輸入に頼っているということです。
2. 農業人口と自給率の関係
農業人口が減れば、耕作できる農地も減ります。農家の高齢化で畑や田んぼを続けられなくなると「耕作放棄地」が増え、食料の国内生産量はさらに下がります。これがそのまま自給率の低下につながっているのです。
3. 食料安全保障のリスク
外国からの輸入に頼りすぎると、
- 輸送トラブル(戦争や災害、国際的な対立)
- 為替レートの変動(円安で輸入が高くなる)
- 気候変動(世界的な不作で輸出制限がかかる)
といった要因で、私たちの食卓が大きく影響を受けます。たとえば輸入小麦が不足すれば、パンやうどんの値段が急に上がることもあるのです。
👉 クイズ③
日本の食料自給率(カロリーベース)は現在どれくらいでしょう?
- 約80%
- 約50%
- 約37%
正解は 3. 約37% です。
日本は世界的にも食料自給率が低い国のひとつで、農業人口の減少と高齢化がその大きな要因になっています。
4. 食の安全を守るために必要なこと
- 若い世代の就農を支援して「農業を続けられる人」を増やす
- 耕作放棄地を減らし、農地を有効活用する
- 国内産の農作物を積極的に消費して、農業を支える
こうした取り組みが広がれば、日本の食料自給率を少しでも改善し、食の安全を守ることにつながります。
👉 ポイントまとめ
- 農業人口の減少=食料自給率の低下に直結する。
- 日本はすでに輸入に大きく依存しており、リスクが高い。
- 国内の農業をどう支えるかが、未来の食の安全を守るカギになる。
農業の未来を守るための取り組み【若者の就農支援とテクノロジー活用】
農業人口の減少や高齢化という課題に対して、日本ではさまざまな取り組みが始まっています。
ここでは「どうすれば農業の未来を守れるのか」という視点から、主な取り組みを見ていきましょう。
1. 若者の就農を支援する仕組み
農業を始めたい若者が直面するのは「資金」「土地」「技術」という3つのハードルです。これを取り除くために、国や自治体は以下のような支援を行っています。
- 新規就農者への補助金 … 研修や農業を始めるための費用を補助。
- 農地バンク制度 … 農地を借りやすくする仕組み。耕作放棄地を若者に貸し出すケースもある。
- 農業研修プログラム … ベテラン農家のもとで研修し、技術を学びながら収入も得られる制度。
これにより、都市部から地方へ移住して農業を始める若者も少しずつ増えています。
2. スマート農業の普及
テクノロジーを活用した「スマート農業」は、高齢化や労働力不足を解決する大きなカギです。
- ドローン … 農薬散布や作物の成長チェックを効率化。
- ロボットトラクター … 自動運転で畑を耕す。
- センサー農業 … 土壌や気温のデータを集めて最適な栽培をする。
これらの技術は、少ない人数でも大きな農地を管理できるようにし、農業の負担を大幅に減らします。
3. 消費者とつながる仕組み
農業を続けやすくするためには、消費者の協力も欠かせません。
- 地産地消の推進 … 地元で採れた野菜や米を地元で食べる。
- CSA(コミュニティ支援型農業) … 消費者が農家を直接支援し、定期的に農産物を購入する仕組み。
- 学校給食への地元食材導入 … 子どもたちが地域の農業を体験・理解できる。
「買う人が応援する」ことで、農業はより持続可能なものになります。
👉 クイズ④
農業の未来を守るための取り組みとして正しいのはどれでしょう?
- 農家を減らし、すべて輸入に頼ること
- ドローンやロボットなどテクノロジーを活用すること
- 農業を禁止して工場で食べ物を作ること
正解は 2. ドローンやロボットなどテクノロジーを活用すること です。
スマート農業は、高齢化や担い手不足を補いながら未来の農業を支える大事な取り組みになっています。
4. 国際的な視点からの農業
日本だけでなく、世界でも農業人口の減少や気候変動の影響が問題になっています。
- FAO(国際連合食糧農業機関)も「持続可能な農業」をテーマに掲げている。
- SDGs(持続可能な開発目標)の中にも「飢餓をゼロに」「つくる責任・つかう責任」が盛り込まれている。
つまり農業の未来を守ることは、日本だけの課題ではなく「世界全体の共通テーマ」でもあるのです。
5. 6次産業化による新しい農業の形
農業の未来を守るための取り組みとして、近年注目されているのが 「6次産業化」 です。
✅ 6次産業とは?
「1次産業(農業) × 2次産業(加工) × 3次産業(販売・サービス)」を組み合わせることで、
1 × 2 × 3 = 6 になることから「6次産業」と呼ばれます。
👉 簡単にいうと、農家が「作るだけ」ではなく、
- 育てる(生産:1次産業)
- 加工する(例:トマトをジュースにする:2次産業)
- 売る(直売所やネットで販売:3次産業)
という流れを一体的に行うことです。
✅ 6次産業化のメリット
- 収入が安定する … 農産物の価格変動に左右されにくくなる。
- 付加価値が高まる … 加工品やブランド化で高く売れる。
- 消費者とつながる … 農家が直接販売することで顔の見える関係ができる。
たとえば、いちご農家がジャムやスイーツをつくって観光客に販売したり、米農家が自分のブランド米をネットで販売したりするのも6次産業化の一例です。
✅ 若者や地域活性化との相性
6次産業は 新しい発想やデザイン を取り入れやすく、若い人が参入しやすいのも特徴です。観光と組み合わせた「農業体験」「農家レストラン」などは、地域おこしや観光資源としても注目されています。
👉 まとめると
6次産業化は、農業を「作って出荷するだけ」から「地域の魅力を生かした総合ビジネス」へ変える仕組みです。
若者や新規就農者にとっても「やりがいのある農業の形」として広がっており、農業の未来を守る大事な取り組みのひとつになっています。
👉 ポイントまとめ
- 若者の就農支援で「農業を始めやすい仕組み」を整えることが重要。
- スマート農業で少人数でも効率的に生産できる環境をつくる。
- 消費者や地域社会も農業を応援することで、持続可能な農業につながる。
- 国際的な視点で農業を考えると、SDGsや世界の食料問題ともつながる。
自由研究におすすめ!農業人口の減少と食の未来を考えよう
農業人口の減少や食料自給率の低下は、実は私たちの生活と直結しています。これをテーマにすると、夏休みの自由研究や社会科の調べ学習にもぴったりです。
研究アイデア① 農業人口の変化を調べてグラフや表にまとめる
総務省や農林水産省のデータを調べて、農業人口がどのくらい減っているのかを年ごとにグラフにしてみましょう。
👉 「1980年には約670万人 → 2020年には約170万人」という変化が一目でわかります。
研究アイデア② 若者が農業を始めにくい理由を考える
アンケートやインタビューをして、「もし農業を仕事にするなら不安に思うことは?」を友達や家族に聞いてみましょう。
👉 「収入が安定しない」「体力的にきつそう」といった答えが集まるかもしれません。
研究アイデア③ スマート農業の事例を調べる
ドローンやロボットを使った最新の農業を調べて、昔ながらの農業とどうちがうのかを比較。図やイラストを入れるとわかりやすくなります。
研究アイデア④ 食料自給率を他の国と比べてみる
日本の食料自給率は約37%ですが、フランスやアメリカは100%を超える国もあります。なぜ国によってこんなに差があるのかを調べてまとめると、世界的な視点も身につきます。
おさらいクイズ|農業と食の未来についてチェック!
記事を読んで理解できたかどうか、クイズで確認してみましょう。
クイズ①
日本の農業人口はこの40年間でどう変化したでしょう?
- ほとんど変わらず安定している
- 少しだけ減っている
- 約4分の1以下に減少している
👉 正解は 3. 約4分の1以下に減少している です。
1980年には約670万人いた農業人口が、2020年には170万人ほどまで減少しました。
クイズ②
農業人口の高齢化が進む大きな理由はどれでしょう?
- 農業が人気になりすぎて高齢者ばかり残ったから
- 後継者不足と若者の就農の難しさ
- 外国人に農業を任せるようになったから
👉 正解は 2. 後継者不足と若者の就農の難しさ です。
農地や資金の確保が難しく、収入が不安定なため、若い人が農業に入ってきにくい現状があります。
クイズ③
日本の食料自給率(カロリーベース)は現在どのくらいでしょう?
- 約80%
- 約50%
- 約37%
👉 正解は 3. 約37% です。
日本は世界でも自給率が低い国のひとつで、農業人口の減少がその大きな要因となっています。
クイズ④
農業の未来を守るための取り組みとして正しいのはどれでしょう?
- 農業を減らして全部輸入に頼る
- スマート農業や就農支援で持続可能な仕組みをつくる
- 農業を禁止して工場で食べ物を作る
👉 正解は 2. スマート農業や就農支援で持続可能な仕組みをつくる です。
ドローンやロボットを使ったスマート農業や、新規就農者への支援がカギになっています。
まとめ|農業の未来は「私たちの食の未来」
ここまで見てきたように、農業人口の減少と高齢化は単なる農業の問題ではなく、 私たちの毎日の食卓や食の安全に直結する大問題 です。
- 農業人口は40年で4分の1以下に減少し、平均年齢は67歳を超えている。
- 農業人口の減少はそのまま 食料自給率の低下 に直結する。
- 自給率が下がれば、輸入に頼るリスクが増え、世界の出来事が私たちの食生活に影響する。
- 若者の就農支援やスマート農業の導入、消費者の応援が農業を支えるカギになる。
👉 小学生のみなさんも、毎日の給食や食卓に並ぶお米・野菜・肉や魚が「誰がどう育ててくれたものか」を考えることは、とても大切です。
夏休みの自由研究でも、農業人口や食料自給率をテーマにすれば、自分の食生活と社会の未来がつながっていることを実感できるでしょう。
🌱 まとめのひとこと
農業を守ることは「食べ物を確保する」だけでなく、 未来の社会を守ること につながります。
だからこそ、農業を支える人・仕組み・技術をどう育てていくかを、これからもみんなで考えていく必要があるのです。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。