
「まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物」のことを フードロス(食品ロス) といいます。
たとえば、給食で食べきれなかったパンや牛乳、冷蔵庫で眠って賞味期限が切れたヨーグルト、コンビニで売れ残ったお弁当…。
みんなの身近なところでも起きているフードロス。実はこれが 環境・お金・世界の食料問題 に大きく関わっているのです。
この記事では、フードロスの意味や原因、影響、そして日本や世界の取り組みをわかりやすく紹介します。途中にクイズもあるので、ぜひ「フードロス博士」になってくださいね。
フードロスとは?【意味と定義を小学生向けに解説】
みんなは「フードロス」という言葉を聞いたことがありますか?
フードロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物 のことをいいます。日本語では「食品ロス」とも呼ばれます。
たとえばこんなときに起こります。
- 冷蔵庫に入れっぱなしで賞味期限が切れたプリンを捨てたとき
- お腹いっぱいで残した給食のパンが捨てられたとき
- スーパーやコンビニで売れ残ったおにぎりやお弁当が捨てられたとき
👉 「腐って食べられなくなったもの」ではなく、本当なら食べられたのに捨てられてしまうもの がポイントです。
どれくらいの食べ物が捨てられているの?
日本の場合
- 1年間に 約523万トン もの食べ物が捨てられています(農林水産省 2022年度推計)。
- これは 日本人1人あたり、おにぎり約1個分を毎日捨てている のと同じ計算になります。
👉 イメージすると、東京ドーム約5杯分の食べ物が毎年ゴミになっているのです。
世界の場合
- 世界全体では 13億トン以上 の食べ物が捨てられているといわれています(国連の報告)。
- これは世界で作られる食べ物の 約3分の1 にあたります。
👉 つまり、世界中で作られた食べ物のうち、トラック3台分のうち1台分は捨てられているのです。
どうして問題なの?
フードロスは「もったいない」だけではありません。
- 食べ物を捨てる → ゴミを燃やすと二酸化炭素(CO₂)が出て、地球温暖化に影響。
- 食べられる物を捨てる → その分のお金もムダになる。
- 世界には食べ物が足りなくて困っている人がいる → 不公平。
👉 フードロスをなくすことは、地球と人の未来を守ること につながるのです。
フードロスはどこで起きているの?【家庭・お店・工場など】
フードロスは、私たちが思っている以上にいろいろな場所で起きています。
「家だけの問題じゃないの?」と思うかもしれませんが、実は 家庭・お店・レストラン・工場 など社会のあちこちで発生しているのです。
① 家庭でのフードロス
- 日本のフードロスの約半分は家庭から 出ています。
- たとえば…
- 冷蔵庫に入れっぱなしで賞味期限が切れてしまう
- 作りすぎて食べきれずに残してしまう
- 野菜の皮を厚くむきすぎて、食べられる部分まで捨ててしまう
- 家庭で出るフードロスは 年間約244万トン(2022年度推計)。
👉 つまり「家での工夫」がすごく大事なんです。
② スーパーやコンビニなどのお店
- おにぎりやパン、弁当などは「賞味期限が近いと売れない」ために、売れ残ったものが廃棄されます。
- 商品をきれいに並べて「いっぱいありますよ!」と見せるために、多めに仕入れて余らせることもあります。
- 小学生のみんなも、コンビニで「新しいのを奥から取る」ことを見たことがあるかもしれませんね。
👉 お店では 見た目のよさや新鮮さを大事にするあまり、食べ物が捨てられている のです。
③ レストラン・食堂
- 食べきれずに残された料理(食べ残し)
- 「お店の都合」で出されずに捨てられる食材(仕込みすぎた具材など)
- ホテルのバイキングでは、最後まで料理を並べるために多く作って余らせることもあります。
👉 「もったいないな」と思うけれど、サービスを良く見せるためにフードロスが出ているのです。
④ 工場や生産の現場
- 工場でパンやお菓子を作るときに「形がちょっと悪い」ものは捨てられることがあります。
- スーパーに並ぶ野菜や果物も、形が曲がっているだけで出荷されない ことがあります。
- これを「規格外品」といいます。味は同じでも、見た目の理由で廃棄されてしまうのです。
⑤ 日本のフードロスの割合(イメージ)
- 家庭:約 46%
- 事業者(お店・レストラン・工場など):約 54%
👉 「家庭だけじゃなく、社会全体でフードロスを減らす必要がある」ということがわかりますね。
クイズ①
日本のフードロスの約半分はどこから出ているでしょう?
- 家庭(家庭の食べ残しや冷蔵庫の中)
- 工場だけ
- 海外からの輸入食品
正解は 1. 家庭(家庭の食べ残しや冷蔵庫の中) です。
日本のフードロスの約46%は家庭から。みんなの家でも工夫すれば、大きく減らせるんです。
なぜフードロスが問題なの?【環境・お金・世界の食料問題】
フードロスは「もったいない」だけではありません。
実は 地球環境・お金・世界の食料問題 に大きな影響を与えています。
① 環境への悪影響
- 食べ物を捨てるとき、ただゴミ箱に入れて終わりではありません。
- 生ごみは焼却場で燃やされることが多く、その時に 二酸化炭素(CO₂) が出て地球温暖化を進めてしまいます。
- また、ゴミを燃やすためにはたくさんのエネルギー(電気や燃料)が必要。つまり「捨てるだけで地球に負担をかけている」んです。
- 日本のフードロスは年間約523万トン(2022年度推計)。これは 東京ドーム約5杯分 の食べ物が毎年捨てられているのと同じ!
👉 「食べ物を捨てること」=「地球を汚すこと」にもつながっているのです。
② お金のムダ
- 捨てられる食べ物は、もともと 農家が育てて・運んで・加工して・売られて きたものです。
- つまり、その裏にはたくさんのお金と労力がかかっています。
- 家庭で捨てる食べ物の金額は、1世帯あたり年間約6万円分 にのぼるとも言われています。
- 6万円あれば、家族で旅行に行けたり、新しい自転車を買えたりしますよね。
👉 食べ物をムダにすることは「お金をゴミ箱に捨てている」のと同じことなのです。
③ 世界の食料問題との関係
- 世界には、今も 8億人以上 の人が十分な食べ物を得られず苦しんでいます。
- ところが日本をふくむ先進国では、大量の食べ物が廃棄されているのです。
- 「あまって捨てる国」と「足りなくて困っている国」が同時に存在する…これは大きな矛盾です。
- 日本がフードロスを減らせば、世界の食料資源を有効に使うことにつながります。
④ 道徳と経済のつながり
- フードロスの問題は、渋沢栄一が言った「道徳経済合一」にもつながります。
- 「お金もうけや便利さだけでなく、みんなの幸せや未来を考える」ことが大切。
- フードロスを減らすことは、私たち一人ひとりの生活の質を上げ、世界の人を助け、地球を守ることにつながります。
クイズ②
フードロスが環境に悪い理由はどれでしょう?
- 生ごみを燃やすと二酸化炭素が出て温暖化につながるから
- 食べ物を捨てると冷蔵庫が空っぽになるから
- 食べ物を捨てるとテレビが見られなくなるから
正解は 1. 生ごみを燃やすと二酸化炭素が出て温暖化につながるから です。
食べ物を捨てることは、地球にも大きな影響を与えてしまうのです。
フードロスを減らすためにできること【家庭・学校・社会】
フードロスは「大きな社会問題」ですが、解決のカギは私たち一人ひとりの行動にもあります。
ここでは 家庭・学校・社会 それぞれでできることを具体的に見ていきましょう。
① 家庭でできること
- 買いすぎない・作りすぎない
スーパーで「安いから」とまとめ買いして、食べきれずに捨ててしまったことはありませんか?
必要な分だけ買う「適量購入」が大切です。 - 冷蔵庫の中をチェックする
奥にしまったまま、気づいたら賞味期限切れ…というのもよくある失敗。
冷蔵庫を整理して「見える収納」にすると、ムダなく使えます。 - 残りものをアレンジする
夕飯のカレーが残ったら翌日はカレーうどんにする、野菜の切れ端でスープを作る、など「リメイク料理」が役立ちます。
👉 家庭では「ちょっとした工夫」で食べ物のムダを大きく減らせるのです。
② 学校でできること
- 給食の残りを減らす工夫
食べきれる量を自分で選んだり、苦手な食材を少量にしたりする取り組みがあります。
みんなが「残さず食べる」意識をもつことが大切です。 - 食育の授業で学ぶ
フードロスの問題を授業で知ることで、自分ごととして考えられるようになります。 - 調べ学習や自由研究
学校で「フードロス調査」をして、どんな食べ物がよく残るのかを調べるのも面白いですね。
③ 社会でできること
- コンビニ・スーパーの取り組み
賞味期限が近い食品を割引販売する「見切り商品コーナー」や、期限ラベルを工夫する仕組みがあります。 - フードバンク活動
まだ食べられるのに販売できない食品を集め、食べ物に困っている人に届ける活動です。
日本でも多くのフードバンク団体が活動しています。 - 企業や自治体の取り組み
学校や会社に啓発ポスターを掲示したり、地域イベントで「食べきり運動」を広げたりしています。
④ 子どもでもできる身近なこと
- 今日のおやつを食べ残さない
- 苦手なものは「少なめ」でお願いする
- 家の人と一緒に冷蔵庫チェックをする
👉 小さなことでも、みんなでやれば大きな力になります。
クイズ③
フードロスを減らすために家庭でできる工夫はどれでしょう?
- 必要な分だけ買い、残りはアレンジして使う
- 好きなものだけを大量に買う
- 賞味期限が切れたものは必ずすぐに捨てる
正解は 1. 必要な分だけ買い、残りはアレンジして使う です。
冷蔵庫を整理したり、残りものを工夫したりすることが、フードロス削減につながります。
自由研究におすすめ!フードロスを調べてまとめよう
フードロスは、身近な生活と世界の課題がつながるテーマなので、自由研究や調べ学習にとてもおすすめです。ここでは小学生・中学生でも取り組みやすい研究アイデアを紹介します。
① 家庭のフードロス調査
- 1週間分の食事で どんな食べ物が残ったか、捨てたか を記録する。
- ノートに「食べたもの・残したもの・理由(食べきれなかった、忘れていたなど)」を書き出す。
- 最後にグラフにまとめれば「わが家のフードロスレポート」になります。
👉 例えば「野菜をよく残してしまう」「冷蔵庫の奥に入れたヨーグルトを忘れていた」などの気づきが出てきます。
② 学校給食の残食調査
- クラスや学年で どのメニューが残りやすいか を調べる。
- 先生に協力してもらい、給食の残量を簡単に記録して表にする。
- 「人気のあるメニューは残りが少ない」「苦手な食材が入っていると残りやすい」などの傾向がわかります。
👉 改善策をみんなで考えるのも自由研究のポイントです。
③ スーパー・コンビニの取り組みを調べる
- スーパーの「見切り商品コーナー」を観察して、何が多いかを調べる。
- コンビニで「消費期限の短いパンやおにぎりはどうしているのか?」を調査する。
- お店の人にインタビューできれば、さらに深いレポートになります。
👉 研究テーマを「お店の工夫とフードロス削減」にすれば、社会科的な学習にもつながります。
④ 世界と日本の比較
- 日本のフードロス量(年間約500万トン)と、世界のデータを調べて比較する。
- 食料自給率やSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」と関連づける。
- ポスターや新聞形式にまとめると発表しやすいです。
⑤ 自分なりの「解決アイデア」を提案する
- もし「フードロスを減らすアプリ」を作るならどんな機能?
- 家庭でできる「食べきりカレンダー」を考える。
- 学校でできる「フードロス削減キャンペーン」をデザインする。
👉 単なる調査で終わらず「自分の考え」を加えると、自由研究がぐっと面白くなります。
おさらいクイズ|フードロス博士になろう!
ここまで学んだことをふり返ってみましょう。クイズ形式で整理すれば、しっかり覚えられます。
クイズ① フードロスってどんな意味?
- 食べ物をおいしく食べきること
- まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のこと
- 食べ物がなくなる自然現象
正解は 2. まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のこと です。
フードロスは「食品ロス」とも呼ばれ、社会全体で大きな問題になっています。
クイズ② 日本のフードロス量は年間どのくらい?
- 約50万トン
- 約500万トン
- 約5億トン
正解は 2. 約500万トン です。
これは世界中で食べ物を支援している量に匹敵し、日本の食料問題を考えるうえで大きな課題です。
クイズ③ 家庭でできるフードロス対策として正しいのは?
- 必要な分だけ買い、残りはアレンジして使う
- 安いときにたくさん買って冷蔵庫にため込む
- 賞味期限が近いものは必ず捨てる
正解は 1. 必要な分だけ買い、残りはアレンジして使う です。
冷蔵庫を整理して見える化したり、残り物をリメイク料理にしたりすることも立派な対策です。
クイズ④ 学校でできるフードロス削減の工夫はどれ?
- 好きなメニューだけ残す
- 食べられる量を自分で調整して盛りつける
- 食べ残しをこっそり捨てる
正解は 2. 食べられる量を自分で調整して盛りつける です。
給食では「適量をとる」「残さない工夫」がとても大切です。
まとめ|フードロスを減らすのは私たちみんなの役目
フードロスは「社会問題」であると同時に、私たち一人ひとりの行動で変えられるテーマです。
- フードロスとは? → まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のこと。
- 日本の現状は? → 年間約500万トンのフードロスがあり、世界でも大きな課題。
- なぜ問題? → 食べ物のムダだけでなく、地球環境・エネルギー・お金にも悪影響。
- どうすればいい? → 家庭・学校・社会それぞれで小さな工夫を積み重ねることが大切。
👉 例えば「冷蔵庫をチェックする」「食べ残さない」「見切り品を買う」など、今日からできることがたくさんあります。
また、フードロスは SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」 とも直結しています。
「食べ物を大切にすること」が、地球や未来の世代を守ることにつながるのです。
🌱 まとめのひとこと
フードロスをなくすのは難しいことではありません。
小さな一歩が集まれば、大きな力になります。みんなで食べ物を大切にして、未来の地球を守りましょう!
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。