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自己決定理論とは何か|デシの動機づけ理論をわかりやすく解説|子どものやる気を生む3つの心理的欲求

子どもが勉強に向かわないとき、
「どうすればやる気が出るのだろう」と悩む保護者は少なくありません。

しかし教育心理学の研究では、やる気は本人の性格や努力だけで決まるものではなく、環境との関係の中で生まれるものだと考えられています。

この記事では、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した**自己決定理論(Self-Determination Theory)**をもとに、子どものやる気を支える「自律性・有能感・関係性」という3つの心理的欲求についてわかりやすく解説します。

また、家庭でできる関わり方や、学習環境の整え方についても整理します。
子どもの「やる気」を考えるときに役立つ、教育心理学の視点を紹介する記事です。


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自己決定理論とは何か|やる気の正体を解き明かす心理学

子どもの勉強について考えるとき、
多くの保護者が次のような悩みを持ちます。

「どうすればやる気が出るのか」
「どうすれば勉強するようになるのか」

そして、その答えとしてよく提示されるのが

・ご褒美を用意する
・ルールを作る
・目標を設定する

といった方法です。

もちろん、こうした方法が役に立つ場面もあります。
しかし教育心理学の研究は、もう少し深い視点を示しています。

それが**自己決定理論(Self-Determination Theory)**です。

自己決定理論は、心理学者 エドワード・デシ(Edward L. Deci) と
リチャード・ライアン(Richard M. Ryan) によって提唱された
人間の動機づけを説明する理論です。

代表的な著作として

Deci, E. L., & Ryan, R. M.
Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior
Plenum, 1985

があります。

この理論が示した最も重要な考え方は、
次のようなものです。

人は「やる気」で行動するのではなく、
環境との関係の中で動機づけが生まれる。

つまり、
子どものやる気を「作ろう」とするよりも、

どのような環境が動機づけを生むのか

を理解することが重要だと考えます。


自己決定理論を提唱したデシとライアン

デシとライアンの研究は、
1970年代から続く動機づけ研究の流れの中で生まれました。

当時の心理学では、

「人は報酬によって動く」

という考え方が強くありました。

たとえば

・お金
・評価
・賞
・ご褒美

といったものが行動を促すという考え方です。

しかしデシの研究は、
この考え方に重要な問いを投げかけました。

それは

報酬は本当にやる気を高めるのか

という問いです。

デシは1970年代に行った実験の中で、
ある興味深い現象を発見しました。

それは

報酬を与えると、
むしろ内発的な興味が低下する場合がある

ということでした。

この研究は後に

Deci, Koestner & Ryan(1999)
A Meta-Analytic Review of Experiments Examining the Effects of Extrinsic Rewards on Intrinsic Motivation
Psychological Bulletin

というメタ分析研究でも確認されています。

つまり

人は単純に報酬で動く存在ではない

ということが、
心理学研究によって示されてきたのです。


やる気には2種類ある|内発的動機づけと外発的動機づけ

自己決定理論では、
人の動機づけを大きく2つに分けて考えます。

内発的動機づけ

外発的動機づけ

です。

内発的動機づけとは

活動そのものが面白いから行う

という動機づけです。

たとえば

・好きなゲームをする
・絵を描く
・好きな本を読む

といった行動です。

一方、外発的動機づけとは

何か別の目的のために行う行動

です。

たとえば

・テストで良い点を取るため
・怒られないため
・ご褒美をもらうため

といった動機づけです。

ここで重要なのは、

外発的動機づけが必ずしも悪いわけではない

ということです。

学校の勉強の多くは、
最初は外発的な理由から始まります。

しかし自己決定理論は、
ここでさらに重要な視点を提示します。

それは

外発的動機づけにも段階がある

という考え方です。

Ryan & Deci(2000)
Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions
Contemporary Educational Psychology

では、

外発的動機づけには
次のような段階があると説明されています。

・外的調整
・取り入れ的調整
・同一化的調整
・統合的調整

つまり、

最初は外から始まった動機でも、
次第に自分の価値として内面化される

ということです。

教育の役割は

外発的動機づけを内面化へ導くこと

とも言えます。


「やる気は作るものではない」という考え方

自己決定理論が示したもう一つの重要な考え方は、

やる気は作るものではない

という視点です。

多くの場合、私たちは

「やる気を出しなさい」
「もっと頑張りなさい」

と子どもに声をかけます。

しかし心理学の研究は、
やる気を直接作ることは難しいことを示しています。

むしろ重要なのは

動機づけが生まれる環境を整えること

です。

自己決定理論では、

人間には

3つの心理的欲求

があると考えます。

それが

・自律性
・有能感
・関係性

です。

この3つが満たされるとき、
人は自然に学びに向かいます。

逆に言えば、

これらが満たされないとき、
人のやる気は弱まっていきます。

つまり

子どものやる気の問題は
子ども個人の問題ではなく
学習環境の問題でもある

ということです。

この視点は、
教育の見方を大きく変えます。

やる気の問題を

「性格」や「根性」

として捉えるのではなく、

環境と関係の中で生まれるもの

として理解することが重要なのです。


次の章では、
自己決定理論の中心となる考え方である

「3つの心理的欲求」

について詳しく見ていきます。

子どものやる気を支える
自律性・有能感・関係性とは
どのようなものなのでしょうか。


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子どものやる気を支える3つの心理的欲求

自己決定理論では、
人の動機づけは偶然生まれるものではなく、
ある条件が整うことで自然に生まれると考えます。

デシとライアンは、人間には共通して

3つの心理的欲求

があると説明しました。

それが

・自律性(Autonomy)
・有能感(Competence)
・関係性(Relatedness)

です。

Ryan, R. M., & Deci, E. L.
Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions
Contemporary Educational Psychology, 2000

この3つの欲求が満たされると、
人は自分から活動に取り組むようになります。

逆に言えば、
この3つが満たされない環境では、
学習意欲は生まれにくくなります。

子どものやる気を理解するためには、
まずこの3つの欲求を知ることが重要です。


自律性|自分で選んでいる感覚

自律性とは

自分で選んでいるという感覚

です。

ここでいう自律性は、
「好き勝手にする」という意味ではありません。

重要なのは

自分で選択しているという感覚

です。

たとえば

・どの課題から取り組むか
・どの方法で解くか
・どこまで挑戦するか

こうした小さな選択があるとき、
子どもは学習を

「やらされているもの」ではなく
「自分の活動」

として捉えるようになります。

逆に

・すべて指示される
・順番が決められている
・間違えると強く指摘される

といった状況では、
自律性は弱まりやすくなります。

すると学習は

「やらされる活動」

になり、
やる気も低下していきます。

教育心理学の研究でも、

自律性を支える教室では
学習の持続性や理解が高まる

ことが確認されています。

Niemiec, C. P., & Ryan, R. M.
Autonomy, competence, and relatedness in the classroom
Theory and Research in Education, 2009

つまり

子どもが自分で選ぶ余地を持てる環境

が、
やる気の重要な条件になります。


有能感|できるようになっている実感

有能感とは

自分はできるようになっている

という実感です。

ここで重要なのは、

成功体験の量ではなく
挑戦の難易度

です。

簡単すぎる課題では、
有能感は生まれにくくなります。

逆に

難しすぎる課題でも、
有能感は育ちません。

教育心理学では

最適な挑戦

が有能感を生むと考えられています。

これは

最近接発達領域(ZPD)

の考え方とも重なります。

最近接発達領域とは

支援があれば到達できる挑戦領域

です。

詳しくはこちらの記事でも解説しています。

最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説
https://moanavi.com/10517

このような挑戦を経験するとき、
子どもは

「できた」
「わかった」

という実感を持つことができます。

そしてその積み重ねが

次の挑戦への意欲

を生みます。

つまり

やる気は成功体験ではなく
適切な挑戦から生まれる

とも言えるのです。


関係性|人とつながっている感覚

3つ目の欲求が

関係性

です。

関係性とは

人とつながっているという感覚

です。

人は本来、

・誰かと学ぶ
・理解を共有する
・挑戦を応援される

といった関係の中で
動機づけが高まります。

逆に

・否定される
・比較される
・孤立する

といった状況では、
学習への意欲は弱まりやすくなります。

教育研究でも

安心できる関係性を持つ教室では
学習参加が高まる

ことが示されています。

つまり

学びは

個人の努力だけで成立するものではなく
関係の中で育つもの

なのです。


3つの欲求が満たされると学びは変わる

ここまで見てきた

・自律性
・有能感
・関係性

の3つは、
互いに独立したものではありません。

たとえば

自分で選んだ課題に挑戦し、
少しずつできるようになり、
その挑戦を周囲が見守る。

このような環境では、
3つの欲求が同時に満たされます。

すると学びは

義務ではなく
自分の活動

になっていきます。

これが自己決定理論の示す

動機づけの構造

です。


しかし、現実の教育環境では
この3つの欲求が満たされにくい場面もあります。

次の章では、

なぜ子どもは勉強のやる気を失ってしまうのか


自己決定理論の視点から整理していきます。


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なぜ子どもは勉強のやる気を失うのか

ここまで見てきたように、
自己決定理論では

・自律性
・有能感
・関係性

という3つの心理的欲求が満たされるとき、
人は自然に活動に向かうと考えます。

逆に言えば、

この3つの欲求が満たされないとき、
やる気は弱まっていく

ということでもあります。

子どもが勉強に向かわなくなるとき、
私たちはつい

「やる気がない」
「努力が足りない」

と考えてしまいがちです。

しかし自己決定理論の視点から見ると、
それは

動機づけが生まれにくい環境

になっている可能性があります。

ここでは、
学習環境の中で起こりやすい3つの状況を整理してみます。


管理される学習は自律性を弱める

子どもの学習を支えようとするとき、
多くの大人は

「きちんと管理しよう」

と考えます。

たとえば

・学習時間を細かく決める
・課題の順番をすべて指示する
・進み方を常にチェックする

こうした方法は、
短期的には学習量を増やすことがあります。

しかし長い目で見ると、
自律性を弱めてしまうことがあります。

自分で選択する余地がないとき、
子どもは学習を

自分の活動ではなく
外から与えられた義務

として感じやすくなります。

すると

「やらされている」

という感覚が強まり、
学習への主体性が弱まっていきます。

自己決定理論の研究でも、

過度にコントロールされた環境は
内発的動機づけを低下させる

ことが報告されています。

Deci, Koestner & Ryan
A Meta-Analytic Review of Experiments Examining the Effects of Extrinsic Rewards on Intrinsic Motivation
Psychological Bulletin, 1999

もちろん、
子どもに何も任せないわけにはいきません。

しかし重要なのは、

どこまでを支え、
どこからを子どもに委ねるのか

というバランスです。


難しすぎる課題は有能感を壊す

もう一つ、
やる気を弱める大きな要因が

課題の難易度

です。

人は

簡単すぎる課題にも、
難しすぎる課題にも、
長く取り組むことができません。

簡単すぎると
退屈になり、

難しすぎると
無力感を感じます。

特に、
繰り返し「できない経験」をすると、

子どもは

「自分には無理だ」

という認識を持つようになります。

すると

挑戦そのものを避ける

ようになってしまいます。

教育心理学では、

適切な難易度の挑戦

が有能感を育てると考えられています。

これは

最近接発達領域(ZPD)

という考え方とも深く関係しています。

最近接発達領域とは、
支援があれば到達できる挑戦領域です。

詳しくはこちらの記事でも解説しています。

最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説
https://moanavi.com/10517

このような挑戦を経験するとき、
子どもは

「できるようになっている」

という実感を持つことができます。

この実感こそが
次の挑戦を生み出します。


安心できない環境は関係性を弱める

3つ目の要因は

関係性

です。

学びは

個人の努力だけで成立するものではありません。

人は

・理解を共有する
・挑戦を応援される
・安心して失敗できる

といった関係の中で、
学びに向かいます。

しかし教育環境の中では、

・強い比較
・失敗への否定
・過度な競争

などが強くなることがあります。

こうした環境では、

「間違えると恥ずかしい」
「できないことを見せたくない」

という気持ちが生まれやすくなります。

すると子どもは

挑戦を避ける

ようになります。

結果として

学習量ではなく

学習行動そのもの

が弱くなっていきます。

教育研究でも、

安心できる関係性を持つ教室では
学習参加が高まる

ことが確認されています。

Niemiec & Ryan
Autonomy, competence, and relatedness in the classroom
Theory and Research in Education, 2009

つまり

子どものやる気は

本人の性格や根性の問題ではなく、
環境と関係の中で変化するもの

なのです。


ここまで見てきたように、
やる気は

・管理
・強制
・競争

によって生まれるものではありません。

むしろ重要なのは、

学びの環境をどのように整えるか

です。

次の章では、

自己決定理論の視点から

やる気はどのような学習環境で生まれるのか

を整理していきます。


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やる気は「教育のデザイン」で生まれる

ここまで見てきたように、
自己決定理論は

やる気は本人の性格ではなく、環境の影響を受ける

と考えます。

つまり、教育において重要なのは

子どもを変えることではなく、
学びの環境をどのようにデザインするか

という視点です。

では、自己決定理論の3つの心理的欲求

・自律性
・有能感
・関係性

は、どのような学習環境の中で育つのでしょうか。

ここでは教育研究から見えてきた
3つのポイントを整理します。


選択できる学びが自律性を育てる

自律性を支える最も重要な要素は

選択

です。

人は、自分で選んだ活動に対して
強い主体性を持ちます。

たとえば

・どの課題から取り組むか
・どの方法で解くか
・どこまで挑戦するか

といった選択があるとき、
学習は

自分の活動

になります。

逆に、

・すべての手順が決められている
・常に指示が出される
・進み方が管理される

といった環境では、
子どもは学習を

やらされるもの

として感じやすくなります。

自己決定理論の研究でも、

選択の余地がある環境では
学習への参加が高まる

ことが確認されています。

もちろん、
すべてを自由にする必要はありません。

大切なのは

小さな選択が存在すること

です。

この小さな選択が
学習への主体性を育てていきます。


最適な挑戦が有能感を育てる

2つ目のポイントは

課題の難易度

です。

学習は

簡単すぎても、
難しすぎても、
長く続きません。

簡単すぎると退屈になり、
難しすぎると無力感を感じます。

教育心理学では、

最適な負荷

が有能感を育てると考えられています。

この考え方は

最近接発達領域(ZPD)

と深く関係しています。

最近接発達領域とは、

支援があれば到達できる挑戦領域

のことです。

詳しくはこちらの記事でも解説しています。

最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説
https://moanavi.com/10517

このような課題に取り組むとき、
子どもは

「難しいけれどできそう」

という感覚を持ちます。

そして挑戦を続ける中で、

「できた」
「わかった」

という経験を積み重ねていきます。

この経験が

自分は学べる存在だ

という感覚を育てます。

これが
有能感の形成です。


学びの共同体が関係性を育てる

3つ目のポイントは

関係性

です。

学びは、
完全に一人で行われるものではありません。

人は

・説明する
・聞く
・共有する
・応援する

といった関係の中で
理解を深めていきます。

教育研究でも、

安心できる関係性を持つ教室では
学習参加が高まる

ことが示されています。

Niemiec, C. P., & Ryan, R. M.
Autonomy, competence, and relatedness in the classroom
Theory and Research in Education, 2009

ここで重要なのは

安心して間違えられる環境

です。

もし

・間違えると否定される
・できないと比較される
・失敗が恥になる

という環境であれば、
子どもは挑戦を避けるようになります。

しかし

・理解の途中を共有できる
・試行錯誤が認められる
・挑戦が応援される

といった環境では、

子どもは

安心して挑戦することができます。

このような関係性の中で、
学びは少しずつ広がっていきます。


ここまで見てきたように、
やる気は

・選択
・挑戦
・関係

という環境の中で生まれます。

これは
教育を

管理の技術

として見るのではなく、

学びのデザイン

として捉える視点です。

次の章では、
この考え方を踏まえて

MOANAVIの学びと自己決定理論

の関係を整理します。


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MOANAVIの学びと自己決定理論

ここまで見てきたように、
自己決定理論は

・自律性
・有能感
・関係性

という3つの心理的欲求が満たされるとき、
人の動機づけが高まると説明しています。

この考え方は、
MOANAVIの学びのデザインとも深く重なっています。

MOANAVIでは、
子どもを学年や成績で一律に捉えるのではなく、

「学びの現在地」

を出発点に学びを組み立てます。

そして

・課題の選択
・挑戦の難易度
・学びの関係性

を調整しながら、
子どもが学びに向かう環境を整えていきます。

ここでは、
自己決定理論の3つの欲求と
MOANAVIの学びの関係を整理してみます。


課題選択と自律性

MOANAVIでは、
子どもが取り組む課題を

自分で選ぶ

ことを大切にしています。

もちろん、
完全に自由にするわけではありません。

子どもの理解の状態や
学習行動を見取りながら、

「今どの挑戦が適切か」

を一緒に考えていきます。

このとき重要なのは、

子ども自身が選択している感覚

です。

自分で選んだ課題は、
やらされる課題とは違います。

たとえ難しい課題でも、

自分で決めた挑戦

であれば、
子どもは粘り強く取り組むことができます。

このような課題選択は、
自己決定理論の

自律性

の欲求と重なっています。


ZPDと有能感

MOANAVIでは、

最近接発達領域(ZPD)

を意識した学びのデザインを行っています。

最近接発達領域とは、

支援があれば到達できる挑戦領域

のことです。

詳しくはこちらの記事でも解説しています。

最近接発達領域とは何か|ヴィゴツキーのZPDをわかりやすく解説
https://moanavi.com/10517

子どもが

「難しいけれどできそう」

と感じる課題に取り組むとき、
挑戦と理解が同時に進みます。

そして

「できた」
「わかった」

という経験が積み重なることで、

自分は学べる存在だ

という感覚が育っていきます。

これが
自己決定理論でいう

有能感

です。


学びの共同体と関係性

MOANAVIの教室では、
子どもたちが

・教え合う
・説明し合う
・考えを共有する

といった場面が自然に生まれます。

学びは
個人の活動であると同時に、

関係の中で広がるもの

でもあります。

たとえば、

ある子どもが解き方を説明すると、
それを聞いた子どもが新しい視点に気づく。

あるいは、

誰かの挑戦を見て
「自分もやってみよう」

と思うこともあります。

こうした関係の中で、
子どもたちは

学びに参加している感覚

を持つようになります。

これは
自己決定理論でいう

関係性

の欲求と深く関係しています。


学びの循環が生まれる

自己決定理論の視点から見ると、

MOANAVIの学びは
次のような循環として整理できます。

自分で課題を選ぶ

挑戦する

理解が深まる

できる実感を持つ

次の挑戦を選ぶ

この循環が続くとき、
学びは

義務ではなく、成長の過程

になります。

そして子どもは、
少しずつ

自分で学びを進める力

を身につけていきます。


自己決定理論は、
教育の中でよく語られる

「やる気」

という言葉を、
心理学の視点から整理した理論です。

しかし、この理論が示しているのは
特別な技術ではありません。

むしろ

子どもが自然に学びに向かう環境とは何か

という、
教育の基本的な問いです。


次の章では、
こうした視点を踏まえて

家庭でできる関わり方

について整理していきます。


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子どものやる気を育てる家庭の関わり方

自己決定理論の研究は、
子どものやる気が

性格や根性ではなく、環境との関係の中で生まれる

ことを示しています。

つまり、家庭でも

・自律性
・有能感
・関係性

という3つの欲求を支える関わり方をすることで、
子どもの学びへの向かい方は大きく変わっていきます。

ここでは、家庭で実践しやすい
3つの視点を整理してみます。


命令より対話

子どもに勉強してほしいとき、
多くの家庭で起こるのが

「早く勉強しなさい」
「宿題やったの?」

という声かけです。

もちろん、
親として気になるのは自然なことです。

しかし、
こうした言葉が続くと、
子どもは学習を

「親に言われてやるもの」

として捉えるようになります。

すると

自分で学ぶという感覚は弱まり、
やる気も生まれにくくなります。

そこで重要なのが

命令より対話

という関わり方です。

たとえば

「今日はどこまで進める予定?」
「どの問題が難しかった?」

といった問いかけです。

このような対話は、

子どもが

自分で考える時間

を生みます。

そして、
学習を

自分の活動

として捉えるきっかけになります。


結果より挑戦

もう一つ重要なのが

結果より挑戦

という視点です。

家庭ではどうしても

・テストの点数
・成績
・順位

に目が向きやすくなります。

しかし、
自己決定理論の研究では

結果中心の評価は
内発的動機づけを弱めることがある

と指摘されています。

Deci, Koestner & Ryan
A Meta-Analytic Review of Experiments Examining the Effects of Extrinsic Rewards on Intrinsic Motivation
Psychological Bulletin, 1999

そのため、家庭では

「点数どうだった?」

だけではなく、

「どこが難しかった?」
「どの問題がわかるようになった?」

といった問いをすることが大切です。

こうした問いは

学習の過程

に目を向けることになります。

そして子どもは、

挑戦そのものに意味を感じるようになります。


比較より成長

子どものやる気を弱めやすい要因の一つが

他者との比較

です。

たとえば

「○○くんはできているのに」
「クラスの平均はもっと高いよ」

といった言葉です。

こうした比較は、
一時的に努力を促すこともあります。

しかし長期的には、

・自信を失う
・挑戦を避ける
・失敗を恐れる

といった影響を生むことがあります。

自己決定理論では、
有能感は

他者との比較ではなく
自分の成長の実感

から生まれると考えます。

そのため家庭では

「前よりできるようになったね」
「この問題は前より早く解けたね」

といった言葉が
大きな意味を持ちます。

このような関わりは、
子どもに

自分は成長している

という感覚をもたらします。


家庭の関わり方は、
子どもの学習環境の大きな一部です。

命令ではなく対話を増やし、
結果より挑戦を見守り、
比較より成長に目を向ける。

こうした関わりの中で、
子どもの学びは少しずつ変化していきます。


次の章では、
この記事の内容を整理しながら

自己決定理論が示す学びの本質

についてまとめていきます。


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まとめ|やる気は環境から生まれる

子どもの勉強について考えるとき、
私たちはつい

「どうすればやる気が出るのか」

という問いを立ててしまいます。

しかし、自己決定理論が示しているのは
少し違う視点です。

それは

やる気は作るものではなく、生まれるもの

という考え方です。

心理学者エドワード・デシと
リチャード・ライアンは、

人間には

・自律性
・有能感
・関係性

という3つの心理的欲求があり、
それらが満たされるとき、
人は自然に活動に向かうと説明しました。

この視点から見ると、
子どものやる気の問題は

子どもの性格や努力の問題ではなく、
学習環境の問題でもある

ことが見えてきます。

自分で選ぶ余地があり、
少し背伸びすれば届く挑戦があり、
安心して学びを共有できる関係がある。

このような環境の中で、
子どもは

「やらされる勉強」

ではなく

自分の学び

として学習に向かうようになります。

教育とは、
子どもを変える技術ではなく

学びの環境を整える営み

とも言えるのかもしれません。

MOANAVIでは、
子ども一人ひとりの

「学びの現在地」

を丁寧に見取りながら、
課題の選択や挑戦の負荷を調整し、
学びに向かう環境を整えています。

学びは、
誰かに強制されて続くものではありません。

小さな挑戦と気づきが積み重なる中で、
理解は少しずつ更新されていきます。

その過程の中で、
子どもは

自分で学びを進める力

を身につけていきます。

もし、

「子どもが勉強に向かわない」
「やる気が見えない」

と感じることがあれば、
その原因を

やる気の問題

として考えるだけではなく、

学びの環境

という視点から見直してみることも
一つのヒントになるかもしれません。


この記事では、
心理学の研究をもとに

自己決定理論(Self-Determination Theory)

について整理しました。

MOANAVI Libraryでは、
学びを理解するための教育理論を
保護者の方にも読みやすい形で紹介しています。

MOANAVI Library
https://moanavi.com/blog

また、
子どもの学びの現在地を丁寧に見取りながら
一人ひとりに合わせた学びの環境を整えているのが

モアナビ協創学園です。

モアナビ協創学園
https://moanavi.com/school

放課後の時間を使って
自分のペースで学びを進めたいご家庭には

ACADEMIAという選択肢もあります。

ACADEMIA
https://moanavi.com/afterschool

学びの形は一つではありません。
子どもに合った環境を探すことが、
学びの第一歩になることもあります。



📚学びの本棚から、次の1冊を
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この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。

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