
「レアアース」って聞いたことがありますか?
スマートフォンや電気自動車、風力発電など、
私たちの生活を支えるハイテク製品の中には、
“見えない金属”レアアースがひっそりと使われています。
実はこの金属、地球の未来を左右するほど大切な存在です。
でも、どこにあるの?どうやって使うの?環境への影響は?
この記事では、レアアースの基本から使い道、環境問題、
リサイクルや代替技術、そして日本の最新研究までを
やさしく・わかりやすく解説します。
自由研究や総合学習のテーマにもおすすめ。
“科学・社会・地球”がつながるレアアースの世界を、
一緒に探っていきましょう!
レアアースとは?意味・元素の種類をわかりやすく解説
ニュースなどで「レアアース」という言葉を耳にしたことはありますか?
レアアースとは、スマートフォンや電気自動車など、
私たちの身のまわりの機械に欠かせない“特別な金属”のことです。
「レア(Rare)」は“めずらしい”、「アース(Earth)」は“土・地球”という意味。
つまり「地球にあるけれど、取り出すのが難しい金属」=希土類(きどるい)元素を指します。
全部で17種類あり、周期表の中では「ランタン系元素+スカンジウム+イットリウム」のグループです。
レアアースはなぜ「レア」なの?
実は、レアアースは地球の中に“少ししか存在しない”わけではありません。
じつのところ、地球全体に広く分布しているけれど、濃度が低く、取り出しにくいのです。
金や銀のように“鉱石の中で目に見える形”ではなく、
他の金属とまざって存在しているため、分離・精製に手間とコストがかかります。
だからこそ「レア(希少)」と呼ばれています。
レアアースの代表的な元素と特徴
17種類のレアアースには、それぞれ違った“特技”があります。
たとえば――
- ネオジム(Nd):とても強い磁石をつくる。スマホやEVモーターに使われる。
- ジスプロシウム(Dy):高温でも磁力を保つ。電気自動車や風力発電機に欠かせない。
- ユウロピウム(Eu):テレビやLEDの「赤い光」を出す。
- テルビウム(Tb):緑の光を出す蛍光物質に使われる。
- ランタン(La):カメラのレンズや電池に使用される。
これらをうまく組み合わせることで、現代の電子機器や省エネ技術が成り立っています。
まさに“縁の下の力持ち”といえる存在です。
レアメタルとの違い
「レアアース」とよく似た言葉に「レアメタル」があります。
どちらも“めずらしい金属”ですが、意味は少しちがいます。
- レアアース(希土類元素):周期表の特定17元素
- レアメタル:産出が少ない、または供給が不安定な金属の総称(例:リチウム・コバルトなど)
つまり、レアアースは“レアメタルの中の一部”なのです。
スマホ1台には十数種類のレアメタルが使われていますが、
その中でも「ネオジム」「ジスプロシウム」などは特に重要なレアアースです。
レアアースが注目される理由
私たちの生活がデジタル化・電動化するにつれ、
レアアースの需要はどんどん高まっています。
スマートフォンのスピーカー、パソコンのハードディスク、
電気自動車のモーター、風力発電のタービン――
どれもレアアースなしでは動かない技術です。
しかし、その多くを中国が産出・精製しているため、
世界中の国々が「安定して手に入れる方法」を探しているのです。
これが、ニュースで話題になる“資源争奪”や“経済安全保障”の背景です。
これからのレアアース
今後の科学では、レアアースの「代替素材」や「リサイクル技術」がさらに発展していくでしょう。
すでに日本では、使い終わった家電やスマホからレアアースを回収する**“都市鉱山プロジェクト”**が進んでいます。
レアアースは「未来のエネルギー社会を支えるカギ」。
地球の資源を大切に使うことが、わたしたちの暮らしを守る第一歩なのです。
クイズ①
次のうち、レアアースの特徴として正しいものはどれでしょう?
- 地球の中でごく一部の地域にしか存在しない
- 取り出すのが難しく、精製にコストがかかる
- 鉄や銅のように大量に産出される
正解は 2 です。👉
レアアースは地球の中に広く分布していますが、濃度が低くて取り出しにくいため“レア(希少)”と呼ばれます。
レアアースはどこにある?日本・世界の資源と産出国
「レアアース」という名前を聞くと、どこか遠い国の金属のように感じるかもしれません。
でも、実は地球のあちこちに存在しています。
ただし、その取り出しやすさや量の多さが国によって大きく違うのです。
世界のレアアース産地ランキング
現在、世界のレアアース生産量の約7割以上を中国が占めています。
中国の内モンゴル自治区「包頭(パオトウ)」には世界最大級の鉱山があり、
「白雲鄂博(パイユンオボー)鉱山」から多くのレアアースが採掘されています。
中国の他にも、
- オーストラリア(マウントウェルド鉱山)
- アメリカ(マウンテンパス鉱山)
- ミャンマー
- インド
- ベトナム
などでも採掘が進んでいます。
これらの国々は、**「脱中国依存」**をめざして生産を拡大中です。
オーストラリアの企業「ライナス社」は、日本にレアアースを供給する重要なパートナーとして知られています。
なぜ中国がレアアース大国なの?
中国は「埋蔵量が多い」だけでなく、
採掘・精製の技術を一国でまとめて行える仕組みを持っているのが強みです。
レアアースを取り出すには、化学薬品を使った複雑な精製工程が必要です。
環境への負担も大きいため、多くの国では採掘を制限しています。
しかし中国では国の管理のもとで大規模な採掘と精製が進み、
その結果、世界のレアアース市場をほぼ独占する立場になったのです。
日本のレアアース資源と海底の「宝」
日本にはレアアースの鉱山がほとんどありません。
そのため、長い間ほぼすべてを輸入に頼ってきました。
ところが近年、海の底に“レアアース泥”があることがわかりました。
特に注目されているのが「南鳥島(みなみとりしま)」周辺の海底です。
この海底泥には、電気自動車や風力発電に使うネオジムやジスプロシウムなどが豊富に含まれています。
しかも、陸上資源より環境への影響が少ない可能性もあり、
“海底から未来を掘り出す”研究が進められています。
海底からレアアースを採るには、深海ロボットや特殊な吸引装置などの新技術が必要です。
日本の大学や企業が協力して、実用化に向けた開発を続けています。
地球のどんな場所に多く含まれている?
レアアースは、地球の地殻(表面に近い岩石の層)に広く分布しています。
ただし、
- 火山活動があった地域
- 温泉や鉱山が多い地域
- 海底火山がある場所
など、特定の地質環境で濃度が高くなることが知られています。
また、レアアースは粘土や岩石の中にしみ込むように存在しており、
そのままでは取り出せません。
特殊な溶液で溶かしたり、化学的に分けたりする必要があります。
この「分離・精製」が、コストのかかる大きな工程なのです。
採掘と環境問題
レアアースを採掘するには、広い土地を掘り、薬品で金属を取り出します。
その過程で汚染水や有害物質が出ることがあり、
環境への影響が問題視されています。
中国ではかつて、レアアース鉱山のまわりで土壌や川の汚染が広がりました。
このため、世界では「環境にやさしい採掘技術」や「再利用(リサイクル)」の開発が進んでいます。
レアアースを“持続可能な資源”にするには、
自然を守りながら使う知恵が欠かせないのです。
レアアース資源の未来
レアアースは、これからの脱炭素社会や再生可能エネルギーに欠かせません。
だからこそ、
- 新しい採掘地の開発
- リサイクル技術の強化
- 代替素材の研究
が世界中で急速に進められています。
資源を「掘る時代」から「回す時代」へ――。
レアアースの扱い方は、地球の未来を左右する重要なテーマなのです。
クイズ②
次のうち、日本で注目されているレアアース資源の場所として正しいものはどれでしょう?
- 富士山の山頂
- 南鳥島の海底
- 北海道の森林地帯
正解は 2 です。👉
南鳥島のまわりの海底には、電気自動車や風力発電に使うレアアースを多く含む“レアアース泥”が広がっています。
レアアースの使い道|スマホ・EV・風力発電・家電など身近な例
レアアースは、実験室の中だけにある特別な金属ではありません。
実は、**私たちの毎日の生活を支える“かくれた主役”**なのです。
スマートフォン、パソコン、電気自動車、ゲーム機――。
それらの中には、かならずレアアースが使われています。
スマートフォンに入っているレアアース
スマホの中には、十数種類のレアメタルやレアアースがぎっしりつまっています。
たとえば――
- ネオジム(Nd):スピーカーやバイブレーターの磁石に使われる。
- ジスプロシウム(Dy):高温でも磁力を保つため、スマホの小型化に貢献。
- ユウロピウム(Eu)・テルビウム(Tb):ディスプレイの赤や緑の発光材料。
- イットリウム(Y):カメラレンズやLEDに使用される。
スマートフォンのスピーカーが小さくても大きな音を出せるのは、
レアアース磁石(ネオジム磁石)のおかげ。
これがなければ、今のような軽くて高性能な機器は作れません。
パソコン・テレビ・カメラにも欠かせない
レアアースは、パソコンやテレビの中にも使われています。
特に、ディスプレイの発色には欠かせない存在です。
ユウロピウムは赤、テルビウムは緑の光を出す蛍光体に使われ、
画面の色を鮮やかに見せてくれます。
また、カメラのレンズに使われるランタンは、
光のゆがみを減らしてクリアな映像を実現しています。
つまり、レアアースは「見える色」と「見えない性能」の両方を支えているのです。
電気自動車(EV)とハイブリッド車のモーター
環境にやさしい電気自動車やハイブリッド車にも、レアアースは欠かせません。
モーターの中には、ネオジム磁石が使われています。
これは、同じ大きさでも非常に強い磁力を持つため、
車をパワフルに動かすことができます。
さらに、ジスプロシウムを加えることで、高温でも磁力を失いません。
モーターが長時間回転しても性能が落ちないのは、そのおかげです。
もしレアアースがなくなったら、
電気自動車のモーターは重く、効率の悪いものになってしまうでしょう。
風力発電・産業ロボット・医療機器にも
レアアースは、再生可能エネルギーの世界でも重要です。
たとえば、風力発電のタービンの中には巨大なネオジム磁石が入っています。
風の力を電気に変えるには、磁石の回転で発電を起こす必要があるためです。
また、産業ロボットやMRI(磁気共鳴装置)などの医療機器にも、
レアアース磁石が使われています。
これらの装置が高精度で動くのも、磁力の安定したレアアースのおかげです。
家電・ゲーム機・イヤホン・スピーカーにも
レアアースは、私たちの家の中にも“ひそかに”たくさんあります。
- エアコン:省エネモーターの磁石部分にネオジムを使用
- 冷蔵庫:圧縮機の中にレアアース磁石
- 洗濯機:インバーターモーターに使用
- ゲーム機やスピーカー:ネオジム磁石が高音質を生む
- イヤホン:小型でも力強い音を出す秘密はレアアース
つまり、「電気で動くもののほとんどにレアアースあり」と言っても過言ではありません。
宇宙や未来の技術でも活躍
レアアースは、地球だけでなく宇宙開発にも使われています。
人工衛星のモーター、ロケットの姿勢制御、
さらには量子コンピュータの部品にも利用が始まっています。
これからの時代、
AI・再エネ・宇宙開発など“次世代の産業”を支える金属として、
レアアースの価値はますます高まっていくでしょう。
レアアースが「縁の下の力持ち」と呼ばれる理由
スマホも、EVも、発電所も、
レアアースなしでは動かない――。
それなのに、見た目ではまったく気づかない。
それが、レアアースが「縁の下の力持ち」と呼ばれるゆえんです。
レアアースを知ることは、
“便利な生活”を支える科学のつながりを知ることでもあります。
クイズ③
次のうち、レアアースが「音を出す装置」に使われている例として正しいものはどれでしょう?
- スピーカーやイヤホン
- 冷蔵庫のモーター
- カメラのレンズ
正解は 1 です。👉
ネオジム磁石を使ったスピーカーやイヤホンは、小さくても強力な音を出すことができます。
ネオジム磁石とは?レアアースの中でも特別な存在
スマートフォンや電気自動車のモーター、スピーカーなど、
私たちの生活に欠かせない多くの機械の中に入っている“最強の磁石”。
それが、レアアースの一種である**ネオジム磁石(Nd磁石)**です。
世界で使われる磁石の中でも、もっとも強い磁力を持つ永久磁石として知られています。
では、このネオジム磁石はいったいどんなしくみで作られ、
なぜそこまで強力なのでしょうか?
ネオジム磁石のしくみと特徴
ネオジム磁石は、**ネオジム(Nd)・鉄(Fe)・ホウ素(B)**の3つの元素をまぜ合わせて作られます。
この化合物(Nd₂Fe₁₄B)が、強い磁力を生み出す理由です。
磁石の力は、原子の中の「電子の向き」がどれだけそろっているかで決まります。
ネオジム磁石では、電子の動きがそろいやすい構造をしているため、
小さな体でもとても大きな磁力を発揮できるのです。
同じ大きさの鉄の磁石と比べると、
ネオジム磁石は10倍以上の磁力を持つとも言われます。
なぜ強い磁石が必要なの?
スマートフォンのスピーカーやイヤホン、電気自動車のモーターなど、
現代の機器はどんどん「小型・高性能」になっています。
小さなスペースで大きな力を出すためには、強い磁石が欠かせません。
ネオジム磁石は、まさにこのニーズにぴったり。
たとえば――
- スマホのスピーカー → 小型でも大音量を出せる
- EVモーター → コンパクトでも強力に回転する
- 風力発電機 → 大きな羽根を効率よく動かせる
つまり、**エネルギーをムダなく伝えるための“力の変換装置”**なのです。
高温に弱い?ジスプロシウムで補う工夫
ただし、ネオジム磁石にも弱点があります。
それは「熱に弱い」ということ。
高温になると磁力が下がってしまうため、
電気自動車などの高温環境では性能が落ちることがあります。
そこで使われるのが、同じレアアースの**ジスプロシウム(Dy)**です。
ネオジム磁石に少量加えることで、
**高温でも磁力を保つ“ハイブリッド磁石”**が生まれます。
これにより、モーターや発電機などの耐久性が大きく向上しました。
ネオジム磁石の作り方
ネオジム磁石を作るには、次のような工程を経ます。
- ネオジム、鉄、ホウ素を高温でまぜる
- 微細な粉にして整列させる(磁力の方向をそろえる)
- 圧縮して焼き固める
- 表面をニッケルなどでコーティングして錆びにくくする
このプロセスは非常に繊細で、温度や圧力の管理が難しいため、
高度な製造技術が必要です。
日本はこの分野で世界トップクラスの技術力を持っています。
代替素材の研究も進む
ネオジムやジスプロシウムのようなレアアースは、中国への依存度が高く、
価格が上がったり供給が不安定になったりすることがあります。
そのため、世界では**「レアアースを使わない磁石」**の研究も進んでいます。
- フェライト磁石:安価で環境にやさしいが、磁力は弱い
- 窒化鉄磁石(Fe₁₆N₂):ネオジムに匹敵する磁力を持つと期待される新素材
- コバルト系磁石:強度と耐熱性のバランスを追求中
これらの開発が進めば、「レアアースに頼らない未来」も見えてくるかもしれません。
ネオジム磁石の未来
ネオジム磁石は、エネルギー効率の高い社会をつくるカギです。
脱炭素・再エネ・モビリティ――どれも磁石の力で動いています。
しかし、地球の資源には限りがあります。
これからは、使い終わった製品から磁石を回収し、
リサイクルや再利用で資源を循環させる取り組みがますます重要になるでしょう。
私たちがスマホや家電を大切に使うことも、
“資源を守るリーダーシップ”の一歩なのです。
クイズ④
次のうち、ネオジム磁石を強化するために加えられるレアアース元素はどれでしょう?
- ジスプロシウム(Dy)
- ユウロピウム(Eu)
- ランタン(La)
正解は 1 です。👉
ジスプロシウムを少し加えることで、高温でも磁力が弱まりにくくなり、
電気自動車や風力発電などでも安定して使えるようになります。
レアアースの環境問題とリサイクル技術
便利で高性能な電子機器を支えるレアアース。
しかし、その一方で、**「環境への影響」や「資源の持続可能性」**という課題もかかえています。
ここでは、レアアースの採掘がもたらす環境問題と、
それを解決するためのリサイクル技術についてくわしく見ていきましょう。
レアアース採掘が環境に与える影響
レアアースを取り出すには、広い土地を掘りおこし、
鉱石を薬品で溶かして金属を分離する工程が必要です。
この過程で発生するのが、大量の廃液や汚染水。
とくに中国の鉱山では、かつて採掘地のまわりに汚染された池ができ、
農作物が育たなくなるなど深刻な被害が出ました。
また、レアアース鉱石には放射性物質がふくまれることもあり、
慎重な処理が求められます。
こうした事情から、環境保護の立場から採掘を制限する国も増えています。
つまり、**「便利さの裏にある代償」**をどう減らすかが、世界共通の課題なのです。
採掘から「循環利用」への転換
新しく掘るかわりに、使い終わった製品からレアアースを回収するという考え方が広がっています。
この取り組みは「都市鉱山(としこうざん)」と呼ばれています。
都市の中には、使わなくなったスマートフォン、パソコン、家電など、
レアアースをふくむ製品が大量に眠っています。
それを鉱山に見立てて回収すれば、
環境をこわさずに資源を再利用できるのです。
日本が進める都市鉱山プロジェクト
日本は、リサイクル技術で世界をリードしています。
たとえば、家電リサイクル工場では――
- 使い終わった製品を分解し、磁石や電子部品を取り出す
- 化学薬品で金属を分離・精製する
- 新しい製品の材料として再利用する
という流れで、「資源を回す」仕組みが整いつつあります。
2010年には、東京オリンピック・パラリンピックの金・銀・銅メダルをすべてリサイクル金属で作るプロジェクトが行われ、
その中にもレアアースが再利用されました。
このように、日本の技術は“廃棄物を資源に変える”方向へ進んでいます。
レアアースのリサイクルはなぜ難しい?
しかし、リサイクルには大きな課題もあります。
- レアアースが製品の中に微量しか含まれていない
- いくつもの金属と混ざって使われている
- 回収コストや分離の手間が大きい
これらの理由から、採掘よりもリサイクルのほうがむしろ高くつく場合もあるのです。
そのため、日本の研究機関や企業では、
- 熱や酸を使わず、磁力でレアアースだけを集める
- AIやロボットで自動分別する
などの新しい回収技術を開発中です。
海底資源の利用と環境のバランス
もう一つの注目は、海底に眠るレアアース資源です。
南鳥島周辺の「レアアース泥」には、
電気自動車や風力発電に使われるネオジムやジスプロシウムが豊富にふくまれています。
しかし、深海はまだ未開の世界。
ロボットで採掘する際、海洋生物や生態系に影響が出ないかという慎重な検証が続いています。
地球の未来のためには、
「掘るか」「回すか」――どちらか一方ではなく、
環境に配慮したバランスのとれた利用が必要なのです。
レアアースの未来をつくる研究
日本や世界では、リサイクル以外にもさまざまな研究が進んでいます。
- 使用量を減らす「省レアアース技術」
- 新しい磁石や代替素材の開発
- 廃棄物をエネルギーに変えるプロジェクト
これらの取り組みは、SDGs目標12「つくる責任・つかう責任」や、
目標13「気候変動に具体的な対策を」にもつながっています。
レアアースの問題は、
「科学」と「社会」と「環境」の三つの領域をまたぐテーマ。
だからこそ、未来を担う私たち一人ひとりが考えるべきテーマなのです。
クイズ⑤
次のうち、レアアースのリサイクルが難しい理由として正しいものはどれでしょう?
- 製品に含まれる量がとても少ないから
- レアアースが磁石として使われていないから
- リサイクルには特別な法律が必要だから
正解は 1 です。👉
レアアースは製品の中にごくわずかしか含まれていないため、
分離・回収にコストと手間がかかり、再利用が難しいのです。
レアアースの代替技術|新しい磁石・素材・研究開発の最前線
スマートフォン、電気自動車、風力発電機――
これらを支えるのは、強力な磁石「ネオジム磁石」をはじめとするレアアースです。
しかし、レアアースは採掘コストが高く、供給が限られるため、
世界中で「代わりになる素材を作ろう」という挑戦が始まっています。
ここでは、レアアースを使わずに同じ性能を実現する「代替技術」や、
それを支える最先端の研究について見ていきましょう。
なぜ代替技術が必要なのか
レアアースは、ほとんどを中国が生産しています。
もし輸出が止まったり、価格が高騰したりすれば、
スマホや自動車の製造にも大きな影響が出てしまいます。
また、採掘による環境破壊や汚染の問題もあり、
「使う量を減らす」「他の金属で代わりを作る」ことが求められています。
そこで生まれたのが、**レアアースの“代替技術”**という考え方です。
レアアースを使わない磁石「フェライト磁石」
もっとも身近な代替磁石が「フェライト磁石」です。
これは、鉄と酸素を主成分とした酸化鉄の磁石で、
古くからスピーカーやモーターなどに使われてきました。
ネオジム磁石ほどの強さはありませんが、
- 材料が安い
- 環境への負担が少ない
- さびにくく、加工しやすい
という利点があります。
そのため、家電や自転車のモーター、時計など、
**「小型で高温にならない製品」**ではいまでも広く使われています。
夢の新素材「窒化鉄磁石(Fe₁₆N₂)」
次に注目されているのが、**窒化鉄磁石(ちっかてつじしゃく)**です。
この磁石は、鉄に窒素を加えて作られた新しいタイプの磁石で、
「ネオジム並みの磁力をもつ」として研究が進められています。
もし実用化されれば、
レアアースをまったく使わない強力磁石として革命的な素材になります。
日本やアメリカの大学・企業が共同で研究を進めており、
“ポスト・ネオジム”として期待が高まっています。
「少ない量で同じ性能」をめざす技術
レアアースを完全に使わないのではなく、
使う量を減らす工夫も進められています。
たとえば――
- 磁石の中でレアアースを部分的に入れ替える
- 鉄やコバルトとの合金を作り、磁力を強化する
- モーターの設計を変えて、必要な磁石を小さくする
こうした「省レアアース技術」によって、
レアアースの使用量を半分以下に減らすことも可能になってきました。
これは「量を減らす」というよりも、
**科学で“使い方を進化させる”**取り組みなのです。
AIとナノテクノロジーで進む素材開発
最新の研究では、AI(人工知能)が素材開発をサポートしています。
コンピューターが数千種類の金属の組み合わせをシミュレーションし、
「もっとも強い磁石になる配合」を探し出すのです。
さらに、ナノテクノロジーによって、
原子レベルで金属の配列をコントロールすることで、
これまでにない性質を持つ新素材が誕生しています。
これらの技術は、
「より強く、より軽く、より環境にやさしい」磁石をつくるための道を切り開いています。
日本企業の挑戦
日本の企業や大学も、代替技術の分野で世界をリードしています。
- 日立金属:レアアースを使わない「新型モーター磁石」を開発
- 住友電工:ネオジム磁石の使用量を50%削減する技術
- 東北大学:AIを使ったレアアース代替材料の探索
- 東京大学:海底資源やリサイクル技術の研究
これらの研究は、単なる技術革新にとどまらず、
資源をめぐる国際問題の解決にもつながっています。
未来のモーターは「脱レアアース化」できるのか
将来の電気自動車では、
レアアースを使わないモーターの実用化がめざされています。
たとえば、トヨタは「磁石を使わないモーター(誘導モーター)」を研究中。
また、アメリカの企業は超電導技術を利用した新しいモーターを開発しています。
これらの技術が実用化されれば、
レアアースへの依存を減らしながら、
環境にもやさしいエネルギー社会が実現するでしょう。
「掘る」から「つくる」時代へ
これまでの資源開発は「地球から掘り出す」ものでした。
しかしこれからは、「科学の力でつくり出す」時代です。
資源をめぐる問題を解決するのは、
鉱山ではなく、研究室と教室から生まれるのかもしれません。
クイズ⑥
次のうち、レアアースを使わない磁石として研究が進められている新素材はどれでしょう?
- 窒化鉄磁石(Fe₁₆N₂)
- ネオジム磁石(Nd₂Fe₁₄B)
- ジスプロシウム磁石(DyFeB)
正解は 1 です。👉
窒化鉄磁石は、鉄と窒素から作られる新素材で、レアアースを使わずに強い磁力を出せる“夢の磁石”として研究が進んでいます。
レアアースをめぐる世界の動きと日本の取り組み
レアアースは、スマートフォンや電気自動車、再生可能エネルギーを支える“現代の生命線”ともいえる資源です。
そのため、「どの国がどれだけ持っているか」ということが、単なる経済問題ではなく国際的な安全保障のテーマにもなっています。
ここでは、世界の動きと日本の挑戦を見ていきましょう。
世界のレアアース市場は「中国中心」
現在、世界のレアアース生産量の約70%以上を中国が占めています。
なぜここまで集中しているのかというと、
中国には豊富な埋蔵量だけでなく、採掘から精製までを一国で完結できる技術と体制があるからです。
中国の内モンゴル自治区・白雲鄂博(パイユンオボー)鉱山は世界最大級で、
「地球のレアアースの心臓部」と呼ばれるほど。
さらに、南部の江西省や福建省にもイオン吸着型の鉱床があり、
これらが世界中に輸出されています。
しかし、中国による供給の独占は、他国にとってリスクにもなります。
過去には輸出制限が行われ、世界の製造業が混乱したこともありました。
この経験から、各国は「中国に頼らない資源ルート」を築こうと動き始めています。
「脱中国依存」に向けた国際連携
アメリカ、オーストラリア、日本、EUなどの国々は、
**「レアアース連携」**と呼ばれる協力体制を強化しています。
- アメリカはカリフォルニア州の「マウンテンパス鉱山」を再開し、自国生産を拡大。
- オーストラリアは「ライナス社」が日本にレアアースを輸出し、中国以外の供給源を確保。
- インド・ベトナム・アフリカ諸国でも、新たな鉱床の開発が進行中。
このように、世界では「分散型供給」の仕組みが動き出しています。
資源の安定確保は、エネルギーや軍事産業にも関わるため、
まさに“現代の資源戦略”といえるでしょう。
経済安全保障としてのレアアース
レアアースは単なる鉱物ではありません。
国家にとっては、**「技術と経済の安全を守るカギ」**です。
たとえば、スマートフォンやEV、ミサイルや通信衛星にも使われるため、
供給が止まれば社会全体のインフラが影響を受けます。
そのため、多くの国で「経済安全保障法」が整備され、
重要資源を安定的に確保するための仕組みづくりが始まっています。
日本でも2022年に「経済安全保障推進法」が成立し、
レアアースなどの重要鉱物が重点項目に指定されました。
日本の取り組み①:海底資源の開発
日本は、陸地に鉱山がほとんどないかわりに、海の底に宝を持つ国です。
特に注目されているのが、南鳥島周辺の海底にある「レアアース泥」。
この泥には、電気自動車のモーターに使われるネオジムやジスプロシウムが豊富にふくまれています。
深さ約6000メートルの深海に眠るため、採掘は簡単ではありませんが、
海洋研究開発機構(JAMSTEC)や東京大学などが、
深海ロボットで採取する技術を開発しています。
これが実用化すれば、日本は**“海のレアアース大国”**になる可能性もあります。
日本の取り組み②:リサイクルと都市鉱山
日本のもう一つの強みは、「リサイクルの技術力」です。
使い終わったスマートフォンや家電には、まだレアアースがたくさん眠っています。
それを都市の鉱山に見立てて回収する「都市鉱山プロジェクト」が進んでおり、
全国の工場でレアアースの再利用が行われています。
特に、磁石やバッテリーからの回収は難しいとされていましたが、
日本企業は化学薬品を使わずに磁力で分離する技術を開発中です。
これにより、環境にやさしく資源を取り出せる未来が見えてきました。
日本の取り組み③:代替素材と省レアアース研究
日本の大学や企業は、「代替素材」の研究でも世界をリードしています。
- 東北大学:AIで新素材を発見する“マテリアルズ・インフォマティクス”研究
- 東京大学:海底レアアースやリサイクル素材の特性分析
- 日立金属・住友電工:レアアース使用量を半減する磁石の開発
こうした技術は、資源問題だけでなく、
環境・経済・教育の未来にも関わる総合テーマとなっています。
国際協力と持続可能な未来へ
資源の取り合いではなく、共有と協力の方向に進むこと。
それが、これからの地球社会に必要な姿勢です。
日本は「科学技術立国」として、
- 再利用(Recycle)
- 代替(Replace)
- 減量(Reduce)
の3Rを軸に、持続可能な資源利用をめざしています。
レアアースを“掘る”時代から、“つなぐ”時代へ。
資源を守り、環境を守り、未来をつくる。
そのための知恵と努力が、いま世界中で積み重ねられているのです。
レアアースとSDGs・環境保全の関係
スマートフォン、電気自動車、風力発電機。
こうした現代のテクノロジーを支えるレアアースは、
「未来のエネルギーを生む金属」として注目されています。
しかし同時に、環境への影響や資源の偏りといった課題もあります。
だからこそ、レアアースをどう使うかは、
国際社会がめざす「SDGs(持続可能な開発目標)」の考え方と深く結びついているのです。
レアアースとSDGsのつながり
SDGsには17の目標がありますが、
レアアースに関わるのはそのうち特に次の5つです。
- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
→ 再生可能エネルギー(風力・太陽光・電気自動車など)に欠かせない。 - 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
→ 高性能モーターや省エネ家電など、技術革新を支える。 - 目標12「つくる責任 つかう責任」
→ リサイクルや代替素材の開発で資源の無駄を減らす。 - 目標13「気候変動に具体的な対策を」
→ CO₂を減らす電気自動車や再エネ発電を支える。 - 目標14・15「海と陸の豊かさを守ろう」
→ 採掘や廃棄による環境破壊を防ぐことが大切。
つまり、レアアースの扱い方は、
**「人と地球の両方を守るテクノロジー」**としての未来を左右するテーマなのです。
再生可能エネルギーを支える金属
風力発電のタービン、電気自動車のモーター、
これらの中には、ネオジムやジスプロシウムといったレアアースが使われています。
これらは「再生可能エネルギー」を実現するための重要な部品。
つまり、レアアースは**地球温暖化を防ぐための“味方”**でもあるのです。
ただし、再生可能エネルギーを支えるには、
安定した資源供給と環境に配慮した採掘が必要です。
再エネが広がるほどレアアースの需要も増えるため、
「環境を守るために環境を壊す」ような矛盾が起きないように注意が求められます。
レアアース採掘と環境リスク
レアアースは希少ではなく、**“取り出しにくい”**金属です。
そのため、採掘や精製の過程で大量の薬品を使うことがあり、
土壌や川を汚す危険性があります。
特に中国や東南アジアでは、
採掘地周辺の水質汚染や放射性物質による被害が報告されています。
便利な製品の裏で、自然や地域社会が犠牲になっている現実もあるのです。
この問題を解決するには、
- 採掘工程の改善
- 廃液の処理技術の向上
- 代替素材やリサイクルの推進
など、「技術と倫理」の両立が欠かせません。
「リサイクル=未来への投資」
レアアースを再利用する技術は、SDGsの中でも最も重要なテーマの一つです。
日本では、使い終わったスマホや家電からレアアースを回収する
「都市鉱山プロジェクト」が広がっています。
例えば――
- スマートフォン1台には約30mgのレアアースが含まれる
- 廃棄された家電を再利用すれば、新たな採掘を減らせる
- 省エネ型のリサイクル技術により、CO₂排出も抑えられる
こうした技術は、「限りある資源を循環させる」取り組みそのもの。
**“ごみを資源に変える”**という発想が、地球の未来を守るカギになります。
海のレアアースと環境バランス
南鳥島などの海底資源も注目されていますが、
深海には多くの生き物がすんでおり、採掘が生態系に影響を与えるおそれもあります。
そこで研究者たちは、
- ロボットによる低負荷採掘
- 泥を巻き上げない吸引装置
- 海洋環境のモニタリング技術
などを開発し、自然と共存する採掘をめざしています。
つまり、「掘る」ことと「守る」ことを同時に進めるのが、
これからの時代の科学の使命なのです。
子どもたちが考える“未来の資源の使い方”
レアアースの問題は、遠い国の話ではありません。
私たちが使うスマホ、ゲーム機、家電――
それらの中に、地球の資源が詰まっています。
使いすぎない、捨てずに再利用する、リサイクルを意識する。
その小さな行動が、SDGsの実現につながります。
もし自由研究でレアアースを扱うなら、
「身の回りにどんな資源が使われているか」を調べてみるのも面白いでしょう。
科学の探究は、地球へのやさしさとつながっているのです。
未来へ向けて
レアアースは、環境破壊の原因にもなりうるし、
環境を救う力にもなりうる。
そのどちらになるかは、人の知恵と選択しだいです。
科学技術を進めることと、地球を守ること。
この2つをどう両立させるか――
それこそが、次の時代のSDGsの中心テーマなのかもしれません。
自由研究に使えるアイデア集(レアアース編)
レアアースは、聞きなれない言葉かもしれませんが、
実はスマホやゲーム機、電気自動車など、
みんなの身のまわりにたくさん使われている金属です。
このテーマは「理科」「社会」「技術・家庭」など、
いろいろな教科とつながる自由研究にぴったりです。
ここでは、学年別・タイプ別におすすめのアイデアを紹介します。
🔬 実験・観察で探るタイプ
① 磁石の強さをくらべよう
- 【テーマ例】「ネオジム磁石と普通の磁石のちがい」
- 【方法】100円ショップなどで買える磁石を使って、どれくらいの重さのクリップを持ち上げられるか調べる。
- 【ポイント】磁石の材質(ネオジム・フェライトなど)と強さの関係をまとめる。
- 【発展】磁石を熱したり冷やしたりして、磁力の変化を調べてみよう。
② スマホの中の金属を調べよう(観察+調べ学習)
- 【テーマ例】「スマートフォンにはどんな金属が入っているの?」
- 【方法】分解の代わりに、ネットやメーカー資料を使って内部構造を調べ、
スピーカー・カメラ・モーターなどにどんなレアアースが使われているかをまとめる。 - 【ポイント】“見えない資源”を調べることで、環境問題やリサイクルにもつながる。
③ リサイクル金属の実験(安全対策をして)
- 【テーマ例】「使わなくなった家電を資源にできるかな?」
- 【方法】家庭で不要になったイヤホンや古いリモコンなどを分解(大人と一緒に)。
どんな部品に磁石や金属が使われているかを観察。 - 【注意】ケガや感電を防ぐため、必ず保護者・先生と一緒に行うこと。
🌏 調べ学習・まとめ型
④ 世界のレアアース産地を地図でまとめよう
- 【テーマ例】「レアアースはどこでとれる?世界の資源マップ」
- 【方法】中国・アメリカ・オーストラリア・日本など、主要産地を地図に色分け。
- 【ポイント】「なぜこの国で多くとれるのか?」を地質や政策と結びつけて説明すると◎。
⑤ 日本の“海の資源”を調べよう
- 【テーマ例】「南鳥島の海底には何がある?」
- 【方法】海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの公式サイトを調べて、
海底レアアースの研究内容や深海ロボットのしくみをまとめる。 - 【発展】海底採掘と環境保護のバランスについて、自分の意見を書く。
⑥ SDGsとのつながりをまとめよう
- 【テーマ例】「レアアースとSDGsの関係を調べよう」
- 【方法】SDGsの17目標のうち、どれに関係しているかを表にまとめる。
- 【発展】“環境にやさしい資源利用”のために、自分ができることを提案してみよう。
💡 ものづくり・提案型
⑦ 家でできる“資源を大切にする”アイデアノート
- 【テーマ例】「レアアースをむだにしない暮らし」
- 【方法】家の中で使われている電子機器をリストアップし、
長く使う工夫やリサイクルの仕組みを調べて、自分なりのアイデアノートを作る。
⑧ レアアースリサイクルのポスターづくり
- 【テーマ例】「レアアースをリサイクルして地球を守ろう!」
- 【方法】再利用やリサイクルの流れをイラストや図でわかりやすくまとめる。
- 【ポイント】ポスターコンクールや学校展示にも活用できる。
⑨ “未来の磁石”をデザインしてみよう
- 【テーマ例】「レアアースを使わない磁石のアイデア」
- 【方法】科学ニュースを参考にして、自分なりの新素材や仕組みを考え、スケッチや図解でまとめる。
- 【発展】「もし実現したら、どんな機械に使えるか」を想像してみよう。
📘 まとめ方のポイント
- 難しい言葉(ネオジム、ジスプロシウムなど)は簡単な説明を添える。
- 表・グラフ・図解を入れて「見やすく・楽しく」。
- 最後に「わかったこと」「考えたこと」を自分の言葉で書く。
研究の目的は、「答えを出すこと」よりも、
調べながら自分の考えを深めることです。
レアアースをきっかけに、科学・環境・社会のつながりを見つけていきましょう。
おさらいクイズ
クイズ①
レアアースとは何のことを指すでしょう?
- 貴重な石油のこと
- 特殊な性質をもつ金属のグループ
- 火山のマグマのこと
正解は 2 です。👉
レアアースとは、ネオジムやランタンなど30種類近い金属のグループで、
スマホや電気自動車などに使われています。
クイズ②
日本で注目されているレアアース資源の場所として正しいものはどれ?
- 北海道の森林地帯
- 南鳥島の海底
- 富士山の山頂
正解は 2 です。👉
南鳥島の海底には「レアアース泥」と呼ばれる資源があり、
電気自動車や風力発電に使われる金属が多く含まれています。
クイズ③
次のうち、レアアースが「音を出す装置」に使われている例として正しいものは?
- 冷蔵庫の圧縮機
- スピーカーやイヤホン
- カメラのレンズ
正解は 2 です。👉
スピーカーやイヤホンの中にはネオジム磁石が入っており、
小さくても大きな音を出すことができます。
クイズ④
ネオジム磁石を強化するために加えられるレアアース元素はどれ?
- ジスプロシウム(Dy)
- ユウロピウム(Eu)
- ランタン(La)
正解は 1 です。👉
ジスプロシウムを加えることで、ネオジム磁石は高温でも磁力を保ち、
電気自動車や風力発電でも安定して使えます。
クイズ⑤
レアアースのリサイクルが難しい理由として正しいものはどれ?
- 製品に含まれる量がとても少ないから
- リサイクルには特別な資格が必要だから
- レアアースが溶けにくいから
正解は 1 です。👉
レアアースは電子機器の中にごくわずかしか含まれていないため、
分離や回収に手間とコストがかかります。
クイズ⑥
レアアースを使わない磁石として研究が進められている新素材はどれ?
- ネオジム磁石(Nd₂Fe₁₄B)
- 窒化鉄磁石(Fe₁₆N₂)
- ジスプロシウム磁石(DyFeB)
正解は 2 です。👉
窒化鉄磁石は鉄と窒素からできた新素材で、
レアアースを使わずに強い磁力を出せる“夢の磁石”として研究されています。
まとめ|未来を動かす“希少な金属”レアアース
私たちの手の中にあるスマートフォン、教室にあるパソコン、
街を走る電気自動車や、海辺で回る風力発電のタービン――。
そのどれにも、「レアアース」と呼ばれる特別な金属資源が使われています。
レアアースは少ない量でも大きな力を発揮し、
エネルギーを効率よく使う技術を支える重要な存在です。
ネオジム磁石などの発明によって、
私たちの暮らしはより便利で、環境にもやさしく進化してきました。
しかしその一方で、採掘による自然破壊や資源の偏り、リサイクルの難しさなど、
解決すべき課題も少なくありません。
だからこそ、科学者たちは代替素材や再利用の研究を進め、
“掘る時代から、資源を回す時代へ”と大きな転換を進めています。
この動きはSDGs(持続可能な開発目標)にもつながります。
エネルギーをクリーンにし、資源を循環させ、地球を守る。
レアアースは、環境とテクノロジーの未来を結ぶカギなのです。
これからの時代、科学や社会の仕組みを深く理解し、
地球の資源とどう向き合うかを考える力がますます大切になります。
身のまわりの技術の中にも地球の恵みが生きている――。
そんな視点で世界を見つめることが、未来の科学者への第一歩です。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。