
プニプニ、ドロドロ、びよーん!――みんなが大好きなスライム。遊んで楽しいだけじゃなく、じつは「科学のふしぎ」がつまった実験教材でもあるんです。
スライムの正体は 高分子ゲル(こうぶんしゲル) と呼ばれる特別な物質。ゼリーや寒天と似ているけれど、性質はちょっとちがいます。この記事では、スライムの仕組みを小学生・中学生にもわかりやすく解説。
- スライムが固まる理由
- 高分子ゲルのひみつ
- 食べ物や身近なものとのつながり
- 自由研究におすすめの調べ方
などを紹介します。クイズも入っているので、遊びながら科学博士気分で読んでみてくださいね!
スライムとは?小学生にもわかるゲルの性質と特徴
スライムは、ただの「おもちゃ」ではありません。科学の視点から見ると、とてもユニークな性質をもつ物質です。
まず大きなポイントは、液体のようでもあり、固体のようでもある ということ。
普通の液体(ジュースや水など)は流れてしまって形を保てません。逆に固体(石や木)は形が変わらず、そのまま存在しています。
でもスライムは…
- 液体みたいに コップに入れると形が変わって広がる
- 固体みたいに 手でまとめると1つのかたまりになる
- ゴムみたいに ゆっくり引っぱるとビヨーンと伸びる
- ゼリーみたいに 指で押すとプニッとへこんで、また元に戻る
この「液体でも固体でもない」性質をもつものを、科学の言葉で ゲル(gel) と呼びます。
👉 実は、ゼリーや寒天、こんにゃくなどの食べ物も「ゲル」の仲間なんです。
スライムとゼリーを並べてみると、感触はちがっても「プルプルして形を保つ」という共通点があるのがわかりますね。
つまり、スライムは「遊んでいるだけで科学に触れられる実験材料」。
不思議な手ざわりを楽しみながら、自然と “ゲルってなんだろう?” と考えることができるんです。
クイズ①
液体と固体の中間の性質をもつ物質を何と呼ぶでしょう?
- プラスチック
- ゲル
- メタル
正解は 2. ゲル です。
ゲルは水をたっぷり含んでやわらかくまとまった状態で、スライムやゼリーの仲間です。
ゲルと高分子とは?スライムの科学を深掘り
スライムの不思議な性質をもっとくわしく知るには、高分子(こうぶんし) という言葉を覚えておくことが大切です。
高分子ってなに?
高分子とは、たくさんの分子(とても小さな粒のようなもの)が手をつないで、長~いひも状になったものです。
イメージすると「ビーズをたくさんつなげて作ったネックレス」や「レゴブロックを延々とつなげて作った長い棒」のようなもの。
この「長いひも分子」がたくさんあると、からまったり結びついたりして、やわらかくてのびる性質をつくり出します。
ゲルはどうしてプルプルなの?
スライムやゼリーのようなゲルは、水分をたっぷり吸いこんだ高分子の網 のような構造をしています。
- 高分子の網 → 水をしっかり抱え込む
- 抱え込んだ水 → プルプルの感触をつくる
- 網のつながり → やわらかいけれど、すぐにはバラバラにならない
そのため、触ると液体のようにやわらかいのに、手をはなすと形を保つことができるのです。
スライムは身近な高分子実験
実際にスライム作りで使われる材料(ホウ砂や洗濯のり)には、高分子が含まれています。
- 洗濯のり → PVA(ポリビニルアルコール) という高分子
- ホウ砂水 → 高分子どうしをつなげて「網目構造」にする役割
この2つを混ぜると、高分子が網のようにつながり、水をとじこめて「ゲル=スライム」になるのです。
👉 つまりスライムは、高分子とゲルの科学実験 を身近に楽しめる、とても面白い教材なんですね。
クイズ②
高分子をイメージすると、どんなものに近いでしょう?
- ビーズを一つだけ
- ネックレスのように長くつながったもの
- 石ころのように固まったもの
正解は 2. ネックレスのように長くつながったもの です。
高分子は「小さな分子がたくさんつながった長いひも」で、スライムのプルプル感を生み出す正体なのです。
スライムの作り方と実験の注意点
スライムは「自由研究の定番」と言われるくらい人気のある実験です。
でも、ただの遊びではなく、科学のしくみを体感できる実験 でもあるのです。
基本のスライムの作り方
スライム作りに必要な材料は、身近なお店で手に入るものばかり。
- 洗濯のり(PVA入り) … 100円ショップやスーパーでも買える
- ホウ砂(ほうしゃ) … 薬局で入手できる(ホウ砂水として溶かして使う)
- 水 … 洗濯のりを薄めるために使う
- 色をつけるもの(絵の具・食紅など) … カラフルなスライムにするため
作り方の流れ(基本レシピ)
- コップに洗濯のりと水を入れて混ぜる(のり:水=1:1くらい)
- 色をつけたい場合は、ここで絵の具や食紅を加える
- もう一つのコップで、ホウ砂を少量の水に溶かす(ホウ砂水を作る)
- ホウ砂水を少しずつ加えながら混ぜると、だんだん固まってくる
- 手でまとめれば、プルプルのスライムが完成!
👉 このとき「ホウ砂水を入れる量」を調整すると、やわらかめ・かためのスライムを作り分けることができます。
実験で気をつけたい安全ポイント
スライムは楽しい実験ですが、いくつかの注意点もあります。
- 口に入れない!
スライムは食べ物ではないので、誤って口に入れないようにする。特に小さな子どもは要注意。 - 作業後は手をよく洗う
ホウ砂は安全に扱えるけれど、肌が弱い人はかゆくなることもあるので石けんで手を洗う。 - 遊んだあとの処理
スライムを流しに捨てると、排水管がつまる原因に。遊んだ後は新聞紙や袋に包んでゴミとして処分する。 - 机や床を汚さないように
シートや新聞紙を敷いて実験するのがおすすめ。
👉 こうしたルールを守れば、スライム実験は安全で楽しい「科学あそび」になります。
発展実験アイデア
スライムは作って遊ぶだけでなく、工夫次第で「自由研究」になります。
- 水の量を変えてみる → かたさやのび方がどう変わる?
- ホウ砂水の量を変えてみる → 固まるスピードや感触のちがいを調べる
- 温めたり冷やしたりする → 冷蔵庫に入れたスライムと常温のスライムのちがいは?
こうして条件を変えて比べることで、「どんなときにどう変化するか」をまとめることができます。
クイズ③
スライムを作るときに必要な「のり」はどんな種類でしょう?
- デンプンのり(小学校でよく使うのり)
- PVA入りの洗濯のり
- 木工用ボンド
正解は 2. PVA入りの洗濯のり です。
PVAという高分子が入っていないと、ホウ砂と結びついてゲルを作ることができません。
スライムの性質を調べてみよう
スライムはただ「やわらかいおもちゃ」ではありません。
じつは 液体と固体の中間のような不思議な性質 を持っていて、科学的にとても面白い実験材料なのです。
1. スライムは液体?固体?
- ゆっくり伸ばすと… 液体みたいにトロ〜ンと流れる
- 急に引っ張ると… プチッとちぎれて固体みたいに割れる
👉 このように、力のかけ方で性質が変わるものを 非ニュートン流体(ひニュートンりゅうたい) と呼びます。
スライムはその代表例で、学校の理科でも取り上げられることがあります。
2. 高分子のしくみ
スライムは「PVA(ポリビニルアルコール)」という 高分子(こうぶんし) のつながりでできています。
高分子は、細い糸のような分子が長くつながったもので、まるで「分子のスパゲッティ」。
そこにホウ砂が入ると、分子どうしが「手をつないだ」ようにつながり、ゲル状になるのです。
👉 この「分子のつながり」があるから、スライムはただの水とはちがう性質を見せます。
3. 実験で確かめよう
スライムの性質は、ちょっとした工夫で観察できます。
- ボールを落としてみる → スライムの上にピンポン玉を落とすと、液体のように沈む?固体のように跳ねる?
- 傾けた板に置く → ゆっくりと流れるのは液体の性質。
- 力をかけて引っ張る → ゆっくりなら伸び、早くならちぎれるのは非ニュートン流体の特徴。
👉 観察した結果をノートに記録して、「液体っぽいとき」「固体っぽいとき」を比べると立派な自由研究になります。
4. 発展テーマ
さらに発展させたい場合はこんな調べ方もおすすめです。
- 温度を変える → 冷蔵庫に入れたスライムはどう変わる?
- 塩を混ぜる → 性質が変化する?
- 色をつけて観察 → 動きが見やすくなり、レポートにも活用できる。
クイズ④
スライムが「液体のように伸びたり、固体のようにちぎれたりする」理由は何でしょう?
- 魔法の力が入っているから
- 高分子どうしがつながった非ニュートン流体だから
- 水と同じだから
正解は 2. 高分子どうしがつながった非ニュートン流体だから です。
スライムとゲルのちがいを知ろう
スライムを科学の言葉で説明すると「ゲル」の仲間です。
でも、「スライム=ゲル」ではなく、もう少し細かい違いがあります。ここを理解すると、スライムが特別な存在であることがよくわかります。
1. ゲルとはなに?
「ゲル」とは、液体をたっぷり含んでいるのに、全体としては形を保っている物質 のことです。
たとえば…
- ゼリー
- 寒天
- 蒟蒻(こんにゃく)
- 化粧品のジェル
これらは全部「ゲル」です。触るとプルプルしてやわらかいですが、水のように流れ出したりはしません。
👉 ゲルの大事なポイントは、「水」と「固体の分子の網目」が一緒になっているところ。
この網目構造が、ゲルの独特な手ざわりを生み出しているのです。
2. スライムは特別なゲル
スライムも「ゲル」の仲間ですが、普通のゼリーや寒天とはちがう性質を持っています。
- 形が一定ではない → 手で持つとだらーんと伸びる
- 力のかけ方で変化する → ゆっくり伸ばせば液体みたい、急に引っ張ると固体みたいに切れる
- 分子のつながり方 → ホウ砂とPVAが「分子の橋」をつくることで、独特のやわらかさを実現
つまり、スライムは 「動きのあるゲル」「実験できるゲル」 と言えるのです。
3. ゲルとスライムのちがいを整理すると?
特徴 | ゲル(ゼリー・寒天など) | スライム |
---|---|---|
見た目 | 形が安定している | 形がどんどん変わる |
感触 | プルプル・弾力がある | やわらかく伸びる・ちぎれる |
科学的性質 | 水と固体の網目構造 | 高分子のネットワーク+非ニュートン流体 |
身近な例 | 食べ物・化粧品 | 実験教材・遊び |
👉 こうして比べると、「ゲル=静かなプルプル」「スライム=動きのある不思議プルプル」とイメージできますね。
4. 身近な「ゲル」と比べてみよう
実際にゼリーやこんにゃくと並べて観察すると、違いがもっとよくわかります。
- スプーンですくうとゼリーはプルンと切れるが、スライムはビヨーンと伸びる
- ゼリーは形が崩れにくいが、スライムはすぐ広がる
- ゲル食品は食べられるけど、スライムは食べられない(ここも大きな違い!)
こうした比較をノートにまとめれば、自由研究や授業発表にぴったりです。
クイズ⑤
次のうち、スライムと同じ「ゲルの仲間」ではないものはどれでしょう?
- ゼリー
- 蒟蒻
- プラスチックの定規
正解は 3. プラスチックの定規 です。
ゼリーや蒟蒻はゲルですが、定規は固体で水を含んでいません。
スライム作りで学べる科学【実験から学ぶ高分子の世界】
スライムはただのおもちゃではありません。実は、高分子(こうぶんし)化学 の世界を楽しく体験できる教材なのです。実験を通して、身近な科学の原理を学べます。
1. スライムは「高分子」がつくる
スライムの材料になるのは、主に 洗濯のり(ポリビニルアルコール=PVA) と ホウ砂。
- ポリビニルアルコール(PVA)
分子が長くつながった「高分子」という仲間。水に溶けると、バラバラのひも状の分子が浮かんでいるイメージ。 - ホウ砂(ホウ酸ナトリウム)
洗剤や殺菌剤にも使われる物質。水に溶けると、PVAの分子と「橋(架橋)」をかける働きをする。
👉 つまり、ホウ砂が PVAのひもをつなぎ合わせて網目構造をつくる → これがスライムの正体です。
2. なぜスライムは伸びたり切れたりするの?
スライムの面白さは「液体みたい」「固体みたい」と両方の性質を持っていること。
- ゆっくり力を加えると → 分子のつながりがのびのび動いて、液体のように伸びる
- 急に力を加えると → 分子のつながりが壊れて、固体のように切れる
これは 非ニュートン流体 と呼ばれる現象の一つです。
ケチャップや片栗粉のダマも似た性質を持っています。
3. 実験を通してわかること
スライム作りをすると、以下の科学的な学びが得られます。
- 化学変化を体験:液体が混ざると、性質のちがう「ゲル」に変わる
- 分子のイメージをつかむ:目には見えない分子が「網目のネットワーク」をつくると想像できる
- 条件のちがいを実験できる:ホウ砂の量を変えると、かたさが変わる → 実験の「変数」の考え方を学べる
👉 これは理科の授業や自由研究にぴったりのポイントです。
クイズ⑥
スライムを作るときに必要な「分子をつなぐ役割」をするのはどれでしょう?
- 水
- ホウ砂
- 食塩
正解は 2. ホウ砂 です。
ホウ砂がポリビニルアルコール(PVA)の分子をつなぎ合わせて、スライム特有のネットワークをつくります。
自由研究におすすめ!スライム実験の発展テーマ
スライムは「作って遊ぶ」だけで終わりではなく、工夫次第で立派な自由研究のテーマになります。ここでは小中学生にも取り組みやすく、先生や保護者にも評価されやすい発展テーマを紹介します。
1. 「エコスライム」をつくってみる【環境にやさしい実験】
スライムは通常、ホウ砂や洗濯のりなどを使いますが、環境に配慮した材料を工夫すると「エコスライム」になります。
- 実験アイデア
- 食用色素やゼラチン、片栗粉などの自然素材を混ぜて作る。
- 通常のスライムと「触感」「保存のしやすさ」「乾燥の早さ」を比較。
- 自由研究のまとめ方
- 「環境にやさしいスライムとは?」という問いを立てる。
- 写真や触った感想を表に整理するとわかりやすい。
👉 これはSDGsの「つくる責任・つかう責任」や「陸や海の豊かさを守ろう」ともつながります。
2. スライムを利用した身近な科学実験【物性の研究】
スライムは「柔らかいけれど伸びる」という不思議な性質をもつため、物理や化学の実験に発展させることができます。
- 実験アイデア
- 弾力性のテスト:「丸めてボールにしたらどれくらい弾むか」を高さごとに測定。
- 温度の影響:「冷凍庫に入れると硬さはどう変わるか」「温めると伸びやすくなるか」を調べる。
- 重さの影響:「同じ大きさのスライムにおもりを乗せて、どれだけ広がるか」を比較。
- 自由研究のまとめ方
- 実験結果をグラフにまとめる。
- 「液体と固体の性質をあわせもつ物質」であることを説明すると理科的に深まる。
👉 これは理科の「物質の性質」と直結し、教科書の学びを超えた発展研究になります。
3. スライムとゲル食品を比較する【科学+社会科の融合】
スライムは「高分子ゲル」という性質を持っていますが、これは食品にも共通します。
- 比較対象の例
- スライム(PVAゲル)
- ゼリー(ゼラチンゲル)
- 寒天(多糖類ゲル)
- 実験アイデア
- 触感や硬さを比べる(指で押したときの感触)。
- 保存性を比べる(常温で何日もつか)。
- 廃棄のしやすさを比べる(食品は食べられるがスライムは廃棄が必要)。
- 自由研究のまとめ方
- 表や図で「食べられるゲルと遊ぶゲルのちがい」を整理。
- SDGsの「食品ロス」や「資源循環」と結びつけると社会科的な視点も入る。
👉 「理科+家庭科+社会」のクロス学習になり、学びの幅がぐっと広がります。
こうしたテーマは、単なる実験で終わらずに 科学・環境・社会 を結びつけることで、「総合的な学び」や「探究学習」に発展させられます。
おさらいクイズ|スライムとゲルについて学ぼう!
クイズ① スライムはどんな物質に分類される?
- 液体
- 固体
- 液体と固体の性質をあわせもつゲル
正解は 3. 液体と固体の性質をあわせもつゲル です。
スライムは「高分子ゲル」と呼ばれ、形はあるけれど流れるように動く、不思議な性質を持っています。
クイズ② スライムを冷凍庫に入れるとどうなる?
- やわらかくなる
- かたくなる
- なくなってしまう
正解は 2. かたくなる です。
低温になると分子の動きがにぶくなり、スライムは硬くなります。逆に温めるとやわらかく、のびやすくなるのです。
クイズ③ スライムと比べられる食品のゲルとして正しいものは?
- ゼリーや寒天
- おせんべい
- パン
正解は 1. ゼリーや寒天 です。
どちらも「ゲル」という点では同じ。ただし、ゼリーや寒天は食べられる自然素材からできていて、スライムは遊び用の合成ゲルです。
まとめ|スライムは遊びから科学を学べるゲル実験
スライムはただの「おもちゃ」ではなく、高分子ゲルという特別な物質を身近に感じられる、立派な科学教材です。液体のように流れるのに形もある、不思議な性質は、実は「分子のつながり方」や「温度による変化」など、化学や物理の法則が関わっています。
また、スライムは遊んで楽しいだけでなく、
- ゼリーや寒天など食べ物との共通点
- 洗剤や保冷剤との化学的なつながり
- 温めたり冷やしたりするとどう変わるかという観察
といった切り口からも深く調べることができます。
夏休みの自由研究や授業の発表では、「スライムはなぜ固まるのか?」「食品のゲルとの違いは?」などを自分の言葉でまとめれば、ただの実験報告ではなく、科学的な探究心を示すレポートになります。
👉 スライム作りは安全に楽しめる科学実験の入口。
遊びながら学べる「科学のワクワク体験」として、ぜひ家庭や学校で挑戦してみてください。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。