
ニュースなどで耳にする「ノーベル賞」。
毎年、世界の人々をおどろかせるような発見や研究が紹介されます。
でも、そもそもノーベル賞ってどんな賞? どうやって選ばれるの?
そして、受賞した人たちにはどんな共通点があるのでしょうか。
2025年には、日本の**北川進さん(化学賞)と坂口志門さん(医学賞)**が受賞し、
「分子の世界」と「体の中の免疫」という、目に見えないテーマで世界を変えました。
この記事では、ノーベル賞の仕組みや種類、
日本人のすばらしい研究、受賞者に共通する“学びの力”をやさしく紹介します。
さらに、自由研究にも使えるアイデア付き!
「学びは人のためになる」――そのことを、ノーベル賞から一緒に考えてみましょう。
ノーベル賞とは?どんな人に贈られるの?【意味としくみをやさしく解説】
「ノーベル賞(Nobel Prize)」という名前を聞いたことがありますか?
毎年、秋になるとニュースで「〇〇さんがノーベル賞を受賞しました!」と話題になりますよね。
でも、そもそもノーベル賞って、どんな賞なのでしょうか?
ノーベル賞は、“人類のためになる発見や活動をした人”に贈られる、世界でいちばん有名な賞です。
科学者や作家、平和活動家など、さまざまな分野の人が受賞します。
「世界をよりよくする学び」へのごほうび
ノーベル賞がほかの賞とちがうのは、
「自分のため」ではなく、**“世界のために何かをした人”**をたたえる点です。
たとえば、
・病気の治療法を見つけて多くの人を救った人
・地球環境を守る技術を発明した人
・戦争をなくすために努力した人
・人の心を動かす文学作品を書いた人
――このように、人類の幸せや未来に貢献した人がえらばれます。
つまり、ノーベル賞は「世界をよくするための学び」のごほうびなのです。
だれが決めているの?
ノーベル賞は、スウェーデンという国で生まれた賞です。
アルフレッド・ノーベルという発明家の「遺言(ゆいごん)」にもとづいて作られました。
受賞者は、世界中の大学や研究者からの推薦を受け、専門家による審査を経て決まります。
「えらい先生だけが選ばれるの?」と思うかもしれませんが、
じつは、最初は小さな発見や“なぜ?”という疑問から始まった研究が多いのです。
ノーベル賞には6つの分野がある
現在、ノーベル賞には次の6つの部門があります。
- 物理学賞:宇宙・エネルギーなど自然のしくみを解き明かす研究
- 化学賞:物質の性質や反応を利用して社会に役立てる研究
- 生理学・医学賞:体のしくみや病気を理解し、人を救う研究
- 文学賞:ことばの力で人の心を動かす作品を生み出した人に
- 平和賞:戦争をなくし、人と人をつなぐ活動をした人や団体に
- 経済学賞:社会やお金のしくみをより良くする考えを生み出した人に
どの賞も、“学びを通じて人の役に立つこと”を大切にしています。
ノーベル賞は「学びの先にある希望」
ノーベル賞は、単に「頭のいい人がもらう賞」ではありません。
むしろ、**「あきらめずに学び続けた人」**が受賞しています。
どんなに小さな気づきでも、コツコツと積み重ねることで、世界を変える力になるのです。
たとえば、最近では日本の研究者・北川進さん(化学賞)や坂口志門さん(医学賞)も、
「地球環境を守る」「体を守る」研究で世界中から評価されました。
このように、ノーベル賞は“未来をよりよくする学び”の象徴といえるでしょう。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- ノーベル賞は「人類のためになる発見・発明・活動」をした人に贈られる賞。
- アルフレッド・ノーベルの「人を幸せにする学び」という思いから生まれた。
- 科学・文学・平和など6つの部門がある。
- 小さな「なぜ?」が世界を変える大きな発見につながる。
クイズ①
ノーベル賞は、もともとだれの思いから始まった賞でしょう?
- 有名な科学者たちが集まって決めた
- 発明家アルフレッド・ノーベルの遺言から生まれた
- 政治家が国の代表として作った
正解は 2 です。👉
ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言により、
「人類のために役立つことをした人に贈られる賞」として作られました。
アルフレッド・ノーベルってどんな人?【発明王が残した“学びの遺言”】
ノーベル賞の名前のもとになった人、アルフレッド・ノーベル(Alfred Nobel)。
彼は1800年代のスウェーデンで生まれた科学者であり発明家でした。
発明の天才で、「発明王」と呼ばれることもあります。
でも、ノーベルという人の人生には、もうひとつの顔がありました。
それは、「科学の力を、人の幸せのために使いたい」と強く願った人――。
ノーベル賞の始まりには、そんな彼の深い思いがあるのです。
ダイナマイトを発明した科学者
ノーベルは若いころから化学が大好きで、特に「爆発のしくみ」に興味を持っていました。
その研究の中で、岩や地面を安全に爆破できる**「ダイナマイト」**を発明します。
ダイナマイトは、トンネルや鉄道、道路を作るときに大活躍しました。
この発明によってノーベルは世界的に有名になり、大金持ちになります。
けれども、その一方で、ノーベルは大きな悩みを抱えるようになりました。
「自分の発明が人を傷つけるかもしれない」という悲しみ
ノーベルが作ったダイナマイトは、もともと工事や開発のための道具でした。
ところが、戦争の時代になると、兵器(へいき)として人を傷つけるためにも使われてしまったのです。
あるとき、新聞がまちがって「“死の商人”ノーベル、死す」という見出しの記事を出しました。
自分が死んだと勘ちがいされ、
「人々は私のことを“死の商人”と思っているのか…」
とノーベルは深くショックを受けたといわれています。
そのとき彼は考えました。
「自分の発明を“人のための学び”として残すにはどうすればいいのか?」
世界を変えた“遺言(ゆいごん)”
ノーベルは亡くなる前に、ひとつの遺言書を書きました。
そこにはこう書かれていました。
「私の財産を使って、人類に最大の利益をもたらした人々に賞を与える基金をつくること。」
つまり、「人のために努力した人に、ごほうびを贈ってほしい」という願いです。
こうして、1901年から「ノーベル賞」が始まりました。
ノーベルの遺言は、ただお金を残すものではありません。
それは、“科学と学びの力を信じる心”を未来に伝える手紙のようなものだったのです。
ノーベルが伝えたかったこと
アルフレッド・ノーベルは、次のようなことを伝えたかったのではないでしょうか。
- 学びは人を幸せにするためにある
- 科学は戦いの道具ではなく、平和をつくる力
- 発明は人を助けるアイデアから生まれる
だからこそ、ノーベル賞は「人類のために貢献した人」に贈られます。
それは、ノーベル自身が自分の人生でたどりついた“学びの意味”そのものだったのです。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- アルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトを発明した科学者。
- でも、自分の発明が人を傷つけることに悩み、「平和のための賞」を作ることを決意。
- ノーベル賞は「学びを人の幸せに生かす」という彼の遺言から始まった。
ノーベル賞の種類と選ばれ方【6つの分野と受賞のしくみ】
ノーベル賞は、「人類のために役立つことをした人」に贈られる賞です。
でも、その中にもいくつかの分野(ジャンル)があることを知っていますか?
どんな学びが評価されるのか、そしてどうやって決まるのかを見てみましょう。
6つの分野のノーベル賞
ノーベル賞は、次の6つの分野に分かれています。
それぞれが、人類の幸せや発展に欠かせないテーマです。
1️⃣ 物理学賞
──「宇宙・光・エネルギー」など、自然の基本的なしくみを発見した人に贈られる賞。
🌌 たとえば、宇宙のはじまりやブラックホールの研究などが選ばれます。
2️⃣ 化学賞
── 物質の性質や反応を研究し、新しい材料や技術を作り出した人に。
🧪 たとえば、電池や薬、環境を守る技術などに関する研究が多く受賞しています。
3️⃣ 生理学・医学賞
── 体のしくみや病気の原因を発見し、人を健康にする研究をした人に。
🧬 ワクチン、免疫、細胞など、「命の仕組み」を理解するための研究が中心です。
4️⃣ 文学賞
── すぐれた物語や詩など、言葉の力で人の心を動かす作品を書いた人に贈られます。
📚 「人の生き方や考え方に光を当てた文学」が高く評価されます。
5️⃣ 平和賞
── 戦争をなくす努力や、人と人が理解しあうための活動をした人・団体に。
🕊️ 教育、環境、平等など、平和をつくるための行動が対象になります。
6️⃣ 経済学賞
── お金の流れや社会のしくみを研究し、より良い社会をつくる考えを示した人に。
💡 生活の安定や地球規模の問題解決にもつながる研究が評価されます。
どうやって決まるの?
ノーベル賞は、毎年10月ごろに発表されます。
「えらい人が急に選ぶ」のではなく、1年がかりの慎重なプロセスを経て決まるのです。
1️⃣ 推薦(すいせん)
世界中の大学や研究者が「この人はすばらしい発見をした」と推薦します。
2️⃣ 審査(しんさ)
各分野の専門家が、数千もの論文や研究成果を調べます。
「ほんとうに人類に役立つのか?」「新しい発見なのか?」を何度も話し合います。
3️⃣ 決定・発表
最終的に、スウェーデン王立科学アカデミーや医学研究所、ノルウェーの委員会などが決定します。
🏆 発表の日は世界中で大ニュース!
受賞者は12月10日(ノーベルの命日)に開かれる授賞式でメダルと賞金を受け取ります。
ノーベル賞の「ごほうび」はお金じゃない?
ノーベル賞には賞金がありますが、受賞者たちは口をそろえてこう言います。
「お金よりもうれしいのは、自分の研究が人の役に立ったことです。」
つまり、ノーベル賞の本当の価値は“名誉”でも“お金”でもなく、
**「学びが世界を良くした」という証(あかし)**なのです。
🌟豆知識
・平和賞だけは「ノルウェー」で決まります。これはノーベルの生前の希望でした。
・経済学賞はノーベルが作ったものではなく、あとからスウェーデン国立銀行が設けた賞です。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- ノーベル賞は6つの分野があり、それぞれ「人のためになる学び」を表している。
- 候補者は世界中から推薦され、専門家が1年かけて審査する。
- 賞金よりも「人類に貢献した」という意味が大きい。
クイズ②
次のうち、ノーベル賞の分野に“ふくまれない”ものはどれでしょう?
- 化学賞
- 平和賞
- スポーツ賞
正解は 3 です。👉
ノーベル賞は「物理学賞・化学賞・生理学・医学賞・文学賞・平和賞・経済学賞」の6分野です。
スポーツに関する賞はありませんが、「人をつなぐ力」という意味では近いかもしれませんね。
日本人のノーベル賞受賞者|世界を変えた発見とその意味
ノーベル賞は、世界中の人があこがれる「学びの最高の賞」です。
日本からも、これまでに多くの科学者や文学者が受賞してきました。
それぞれの発見には、「人の役に立ちたい」「世界をより良くしたい」という思いが込められています。
日本から生まれた数々の“発見”
日本人のノーベル賞受賞は、1957年の**湯川秀樹さん(物理学賞)**から始まりました。
湯川さんは、見えない力「中間子(ちゅうかんし)」を発見し、
「なぜ物質はくっついて形を作るのか?」という大きな謎に挑みました。
それ以来、
- 江崎玲於奈(えさきれおな)さん:電子の流れをコントロールする技術(エサキダイオード)
- 白川英樹(しらかわひでき)さん:電気を通すプラスチックの発見
- 山中伸弥(やまなかしんや)さん:体の細胞を変化させるiPS細胞の研究
- 本庶佑(ほんじょたすく)さん:免疫のブレーキを解除する治療法(がん免疫療法)
など、世界を変える発見が次々と生まれてきました。
北川進さん(化学賞)──空気をつかまえる「分子の家」MOF
2025年に化学賞を受賞した北川進(きたがわ すすむ)さんは、
京都大学の研究者です。
彼の研究テーマは、「金属有機構造体(MOF:モフ)」とよばれる不思議な物質。
MOFは、分子の中にたくさんの“穴(あな)”や“部屋”がある構造をしています。
この“分子の家”のような空間は、
二酸化炭素や水分などの分子を「入れたり出したり」できるという特徴があります。
たとえば、
- 空気中の二酸化炭素を集めて地球温暖化を防ぐ
- 水が少ない地域で、空気から水を取り出す
- 有害なガスを吸着して安全にする
──そんな、地球を守る研究につながっています。
北川さんは30年以上もこの研究を続け、
「見えない分子の中にも、未来を変える空間がある」
という信念を持ち続けたそうです。
坂口志門さん(医学賞)──体を守る「免疫のブレーキ」を発見
同じく2025年、坂口志門(さかぐち しもん)さんもノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
大阪大学の研究者で、**体を守る免疫(めんえき)**のしくみを研究しています。
私たちの体には、病気の原因となるウイルスや細菌を攻撃する「免疫」という仕組みがあります。
でも、この免疫が強すぎると、自分の体まで攻撃してしまうことがあります。
坂口さんは、そのような暴走を防ぐ「制御性T細胞(せいぎょせいTさいぼう)」を発見しました。
この細胞は、まるで車のブレーキのように、
免疫の働きをコントロールして体を守っています。
この発見によって、自己免疫疾患やがん治療の研究が大きく進みました。
坂口さんは言います。
「体の中には、攻める力だけでなく、ゆるす力もある。」
この言葉には、「バランスを大切にする科学」という深いメッセージが込められています。
北川さんと坂口さんに共通すること
一見まったく違う分野の研究ですが、
北川さんと坂口さんの学びには共通点があります。
それは、どちらも**「目に見えない世界を通して、人と地球を守る研究」**だということ。
- 北川さん:空気や分子のレベルで“地球を守る”
- 坂口さん:免疫や細胞のレベルで“人の体を守る”
そしてもうひとつの共通点は、
「学びを人のために使う」という姿勢です。
どんなに時間がかかっても、
「この研究はきっと、だれかの役に立つ」と信じて続ける力。
その信念こそが、ノーベル賞につながったのです。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- 日本からも多くのノーベル賞受賞者が生まれている。
- 北川進さん(化学賞)は“空気をつかまえる分子の家”を発見。
- 坂口志門さん(医学賞)は“免疫のブレーキ”を見つけた。
- どちらも「人や地球を守る」という思いで研究を続けた。
ノーベル賞受賞者に共通すること|世界を変える6つの学びの力
ノーベル賞を受け取る人たちは、みんな特別な天才…と思うかもしれません。
でも、実はどの受賞者にも共通する6つの力があります。
それは「生まれつきの才能」ではなく、学びの中で育ててきた力なのです。
① 「なぜ?」と思う力 ― 疑問が発見のはじまり
ノーベル賞をとるような研究は、最初は小さな「なぜ?」から生まれます。
- 「なぜ空気は重いのだろう?」
- 「なぜ病気になる人とならない人がいるのだろう?」
たとえば北川進さんも、
「見えない分子の世界には、まだ誰も気づいていない空間があるのでは?」
という疑問から研究を始めました。
“なぜ?”と思うことは、新しい発見の入口なのです。
② あきらめずに続ける力 ― 30年かかっても挑戦する
研究には、失敗がつきものです。
ノーベル賞を受賞するような発見でも、完成までに何十年もかかります。
北川さんは30年以上も同じテーマを続け、
坂口さんも20年かけて「免疫のブレーキ」の仕組みを明らかにしました。
すぐに結果が出なくても、
「きっと、いつか答えが見える」
と信じて続ける――それが本当の“学びの強さ”です。
③ 常識をうたがう力 ― 「本当にそうなのかな?」と考える
科学は「当たり前」をくつがえすことで進歩してきました。
「みんながそう言っているから」ではなく、
「本当にそうなのか?」「別の考え方はないか?」
と問い直す勇気が大切です。
たとえば坂口さんは、
「免疫は“戦う力”だけでできている」という常識をくつがえしました。
「いや、きっと“ゆるす力”もあるはずだ」と信じて研究を続けたのです。
④ 学びをつなぐ力 ― 分野をこえて考える「STEAMの力」
ノーベル賞を受賞する人たちは、1つの分野にとらわれません。
化学と物理、生物と医学、科学と社会など、
いろんな学びをつなげて考える力を持っています。
北川さんの研究(MOF)は、
「化学+環境+エネルギー」のように複数の分野を組み合わせて生まれました。
坂口さんの免疫研究も、「医学+生物+心理学」に広がっています。
このように、教科の“壁”をこえて考えることが、未来の発見につながるのです。
⑤ 仲間と協力する力 ― 学びはチームで進化する
ノーベル賞の発見は、1人だけの力でできるものではありません。
研究室の仲間、学生、世界中の共同研究者たち――
多くの人と意見を交わし、助け合う力が大切です。
坂口さんはインタビューでこう話しています。
「若い研究者たちと一緒に考える時間が、いちばん楽しい。」
学びは競争ではなく、協力の中で深まるものなのです。
⑥ 人のために学ぶ心 ― “誰かを幸せにしたい”が原動力
ノーベル賞の根っこにあるのは、「人のために学ぶ」という気持ちです。
アルフレッド・ノーベルの遺言も、まさにこの思いから始まりました。
北川さんは「地球環境を守るために」研究を続け、
坂口さんは「病気で苦しむ人を助けたい」という思いで免疫の研究を進めました。
学ぶことの本当の目的は、テストの点ではなく、“誰かを助ける力”を育てること。
この気持ちこそが、ノーベル賞受賞者に共通する最大の力です。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- ノーベル賞受賞者に共通するのは、6つの学びの力。
① なぜ?と思う力
② あきらめない力
③ 常識をうたがう力
④ 学びをつなぐ力(STEAM)
⑤ 仲間と協力する力
⑥ 人のために学ぶ心 - これらの力は、学校の勉強や自由研究の中でも育てることができる。
- 小さな「なぜ?」から世界は変わる。
ノーベル賞から学ぶ科学と社会のつながり【理科・社会・国語の横断学習】
ノーベル賞は、理科の世界のことだけではありません。
よく見ると、社会の問題・人の心・平和のしくみなど、
たくさんの学びがつながっていることが分かります。
科学の発見も文学の表現も、
すべては「よりよい世界にするための知恵(ちえ)」なのです。
理科 × 社会 ― 科学は社会を変える力になる
たとえば、北川進さんの研究「金属有機構造体(MOF)」は、
化学の発見でありながら、環境問題という社会の課題にも関係しています。
二酸化炭素を集める技術は、地球温暖化を防ぐための大切な手がかり。
つまり、理科の学びがそのまま社会の未来を支える力になっているのです。
このように、ノーベル賞の研究には
「科学」と「社会」が手を取り合う姿が見られます。
科学は、社会のためにこそ輝く。
理科 × 国語 ― 言葉の力が科学を広げる
科学者は、ただ研究をするだけではなく、
その成果を**人に伝える力(ことばの力)**も大切にしています。
たとえば、研究の内容を論文にまとめたり、講演で説明したりするとき、
「どう言えば伝わるか?」という工夫が必要です。
また、文学賞を受けた作家たちは、物語や詩を通して、
人が「生きるとは何か」「幸せとは何か」を考えさせてくれます。
つまり、科学も文学も、“伝える”という力があってこそ意味を持つのです。
社会 × 国語 ― 平和賞が教えてくれる「人と人をつなぐ力」
ノーベル賞の中でも「平和賞」は、社会科と国語の両方に関係があります。
戦争や差別をなくそうと努力する人々は、
相手の言葉に耳をかたむけ、理解しようとすることから始めます。
教育、福祉、環境活動など――
それぞれの行動の根っこには「人を思う心」と「伝える力」があります。
ノーベル平和賞は、人と人の学びのつながりを表す賞なのです。
STEAM(スティーム)で考えるノーベル賞
ノーベル賞をテーマにすると、
理科(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Arts)・数学(Mathematics)――
この5つの分野が自然に関わってくることがわかります。
- 理科:発見や観察の力
- 技術・工学:応用やしくみを作る力
- 芸術・文学:人に伝える力
- 数学:法則やデータを整理する力
これらが合わさることで、世界を変える発見が生まれます。
まさに、ノーベル賞そのものがSTEAM教育のモデルなのです。
MOANAVIの学びとのつながり
MOANAVIでは、「科学・言語・人間・創造」というテーマで学びをつなげています。
ノーベル賞も同じように、“つながりのある学び”の先に生まれた成果といえます。
北川さんの「環境を守る科学」も、
坂口さんの「命をまもる医学」も、
どちらも“学びでつながる”考え方の実例です。
💬 まとめ(この見出しのポイント)
- ノーベル賞は理科だけでなく、社会・国語・芸術などすべての学びと関係がある。
- 科学の発見は社会を変える力、文学や平和の活動は心をつなぐ力。
- ノーベル賞そのものが「STEAM的な学びの形」を示している。
- 学びは教科で分けるものではなく、「世界をよくするために使う力」。
自由研究アイデア|未来のノーベル賞をテーマに調べてみよう
ノーベル賞をもらった人たちは、みんな特別な人に見えるかもしれません。
でも、最初の一歩は、あなたと同じように「なぜ?」と思ったことから始まっています。
「これを調べてみたい!」
「もっと便利にできるかも!」
そんな気持ちが、未来の発見へのスタートラインです。
🌱 自由研究テーマ①:空気や環境をテーマにした実験(化学・理科)
北川進さんのように、「地球を守る科学」をテーマにしてみましょう。
たとえばこんな研究ができます:
- 空気をきれいにする植物の力を調べる(観葉植物や苔など)
- 二酸化炭素の出る量を比べてみる(ろうそく・炭酸飲料など)
- ペットボトルを使って「空気を集める装置」を作ってみる
- 冷やした空気や温めた空気で“体積の変化”を観察する
💡 ポイント:
実験のあとに「どうすれば環境を守れるかな?」と自分の考えをまとめると、より探究的な自由研究になります。
🧬 自由研究テーマ②:体のしくみと免疫を調べてみよう(生物・保健)
坂口志門さんの研究のテーマは、「体を守る免疫の仕組み」。
あなたの体の中にも、ウイルスから身を守る“ヒーロー”がたくさんいます。
調べてみたいことの例:
- 手洗いやうがいでどんなばい菌が減るかを観察
- 傷が治るときにどんな変化が起こるか
- 体温・睡眠・食べ物と免疫の関係を記録してみる
💡 ポイント:
「どうすれば自分や家族を守れるか?」を考えると、医学や健康の学びにつながります。
💡 自由研究テーマ③:言葉や平和をテーマにした探究(国語・社会)
ノーベル文学賞や平和賞のテーマも、とても自由研究に向いています。
こんなテーマもおすすめです:
- 世界のノーベル平和賞を調べて、共通点をまとめる
- 伝えたい言葉をポスターにして「自分の平和賞」を作る
- 小説や詩で「人を元気づける言葉」を考えてみる
💡 ポイント:
ノーベル賞は科学だけでなく、「言葉の力」も大切にしています。
あなたの言葉も、きっと誰かを笑顔にできます。
🌍 自由研究テーマ④:未来のノーベル賞を考えてみよう(総合・創造)
最後に、自分で「未来のノーベル賞」を考えてみましょう。
考えてみたい質問:
- 10年後、どんな問題があると思う?
- それを解決するために、どんな発明ができるかな?
- もし自分がノーベル賞を作るとしたら、どんな人にあげたい?
💡 ポイント:
想像をふくらませることも立派な研究です。
“今はできないこと”でも、「こうなったらいいな」という思いが、未来の科学を生み出します。
🧭 まとめ(この見出しのポイント)
- ノーベル賞は「なぜ?」という気づきから始まる。
- 環境・体・言葉・未来――どんなテーマも学びの出発点になる。
- 自由研究は「発見」よりも「問い」から始めよう。
- 今日の「やってみよう」が、明日の発見につながる。
おさらいクイズ|ノーベル賞のこと、どれだけ覚えている?
ここまで読んで、ノーベル賞についてずいぶん詳しくなりましたね!
最後に、クイズで楽しくふりかえってみましょう。
正しいと思う番号を選んでください。
クイズ①
ノーベル賞は、どんな人に贈られる賞でしょう?
- 世界でいちばんお金持ちの人
- 人類のためになる発見や活動をした人
- テストで100点をとった人
正解は 2 です。👉
ノーベル賞は「人の幸せや未来に役立つことをした人」に贈られます。
アルフレッド・ノーベルの「人のために学びを使ってほしい」という思いが原点です。
クイズ②
北川進さん(化学賞)の研究「MOF(モフ)」は、どんな性質を持っているでしょう?
- 光を出す魔法の液体
- 空気中の分子をとらえる“分子の家”
- 地球の外にある未知の金属
正解は 2 です。👉
MOFは、分子の中にたくさんの“穴”があり、二酸化炭素や水などを吸収できます。
地球温暖化や環境保全に役立つすばらしい発見です。
クイズ③
坂口志門さん(医学賞)の研究テーマ「制御性T細胞」は、体の中でどんな働きをしているでしょう?
- 体を大きくする
- 免疫のブレーキ役として、自分の体を守る
- 食べた物を消化する
正解は 2 です。👉
制御性T細胞(Tレグ)は、免疫が暴走して自分の体を攻撃しないようにブレーキをかける細胞です。
この発見は、病気の治療法を変える大きな一歩になりました。
クイズ④
ノーベル賞受賞者に共通する“学びの力”として、正しくないものはどれ?
- あきらめない力
- なぜ?と思う力
- テストで点を取るコツ
正解は 3 です。👉
ノーベル賞に共通するのは「なぜ?」と考える力や「続ける力」。
テストの点よりも、“学ぶ目的”が大切なんです。
クイズ⑤
ノーベル賞を学ぶことで、どんなことがわかる?
- 学ぶことは人の幸せにつながる
- 勉強は1人でやるものだ
- 科学は生活と関係ない
正解は 1 です。👉
ノーベル賞は、学びが人や社会をより良くする力であることを教えてくれます。
「誰かのために学ぶ」――それが未来を変える最初の一歩です。
まとめ|ノーベル賞が教えてくれる“学びは人を幸せにする力”
ノーベル賞の歴史を見ていくと、たった一つの共通点があります。
それは、**「学ぶことを、人のために使ってきた」**ということ。
受賞者たちはみんな、
最初から「ノーベル賞をとろう」と思って研究を始めたわけではありません。
「なぜだろう?」「どうすれば人の役に立てるだろう?」という小さな問いから、
何十年もあきらめずに学び続けてきたのです。
世界を変えるのは、ひとつの“問い”
北川進さんは、
見えない分子の中に「地球を守るヒント」があると信じて研究を続けました。
坂口志門さんは、
体の中の免疫の仕組みから「人を救う道」を探し続けました。
ふたりに共通するのは、
「人と地球を守る」というやさしさのある学びです。
小さな問いが、やがて世界を変える発見になる――
それがノーベル賞が伝えてくれるいちばん大切なことです。
学びは“点数”ではなく“つながり”
ノーベル賞の発見や作品を見てみると、
理科も国語も社会も芸術も、ぜんぶがつながっています。
学びには、「これは理科」「これは国語」といった境界は本当はありません。
学びはつながり、つながりは世界を広げていきます。
誰かの笑顔のために、社会をよくするために――
そんな思いで学ぶことが、未来のノーベル賞につながる学び方なのです。
未来の受賞者は、あなたかもしれない
ノーベル賞の受賞者も、子どものころはみんな「なぜ?」と考える一人の学び手でした。
あなたの中にも、世界を変えるアイデアの“たね”がきっとあります。
それを大切に育てていけば、未来のノーベル賞は、あなたの手の中にあるかもしれません。
小さな学びが、世界を動かす大きな力になる。
この記事を書いた人
西田 俊章(MOANAVIスクールディレクター/STEAM教育デザイナー)
公立小学校で20年以上、先生として子どもたちを指導し、教科書の執筆も担当しました。
現在はMOANAVIを運営し、子どもたちが「科学・言語・人間・創造」をテーマに学ぶ場をデザインしています。