西前小学校での取り組み

STEAM教育を取り入れた授業

西前小学校ではSTEAM教育を教育課程に取り入れているということで、先日西前小学校の6年生の五味先生の授業を拝見させていただきました。

教科は社会科とのことで、STEAM教育はSTEM教育という理数系教育の重点化から発展してきた教育ですから、社会科の中でどのようにSTEAM教育が進められていくのか大変楽しみにしていました。

STEM教育とSTEAM教育の違いは文字からもわかるようにAの有無になります。

AはArts(アート)です。

ここでいうArtsには、芸術、デザインといった意味だけでなく、リベラルアーツ(教養)も含まれます。

社会科の授業をリベラルアーツとして行うのかな??と思っていたのですが・・・

いい意味で期待を裏切られた

授業を参観すると、まず朝の会でプレゼン発表が行われていました。

一人一台配布されているiPadを使って、慣れた手つきでスライドを使った発表を行う子どもたち。

すばらしかったのは、発表者と聞き手との関係性でした。

プレゼン発表では、発表者が伝えたい内容というものがあります。

発表経験が少ないと、自分の考えをまとめて伝えることに終始しがちです。

聞き手も、発表者の言いたいことを聞いてあげる時間になりがちです。

ですが、西前小学校の6年生が行うプレゼン発表は、相互のコミュニケーションが行われている発表会でした。

発表者は常に聞き手の反応を確かめながら、自分の伝えたいことを聞き手に合わせてアレンジしていました。

iPadというテクノロジーを使うことが目的になってしまう授業もある中で、コミュニケーションのためのツールとして使いこなしている姿から、子どもたちの力と五味先生の指導力の高さに驚かされました。

社会科でのSTEAM

この時期の6年生の社会は公民分野の学習が行われます。

一昔前なら、縄文時代から始まって、ようやく鎌倉時代あたりの学習を行なっていました。

学年末の卒業シーズンが近づいてきて、大慌てで近代史や公民分野の学習が行われていたものでした。

私たちが受けていた教育とは時代が違います。

いい国(1192)つくろう鎌倉幕府とか、もう言わないですからね。

さて、本題に戻すと、当日は日本国憲法の学習が行われる予定でした。

「予定」は当日起きた時事ニュースによって急遽変更されたのです。

この日は沖縄に台風が接近していたり、ミサイル発射によってJアラートが発令されていたりした日でした。

「今朝、何があったか知っている?」という五味先生の発問を受けて、子どもたちがニュースで知ったミサイルのことを発表し始めました。

「知らない人もいるだろうから、調べる時間をとるよ。」という五味先生の説明を聞いた子どもたちは、慣れた手つきでさまざまなネットニュースを調べ始め、情報を収集していきました。

調べたことが子どもたちによって報告される中で、五味先生は「情報の出どころは?」と発問しました。

誰もが簡単にたくさんの情報を集めることができる時代だからこそ、情報の受け手のリテラシーが求められます。

「NHKのニュースでした。」

「他の新聞社でも同じことが書かれている。」

「この情報は信用してもいいと考えられます。」

子どもたちの批判的思考力(Critical thinking)が高まっていることがわかりました。

その後の授業の展開の中で、国防の話になり、自衛権の話になり、日本国憲法の話になっていきました。

気づけば、当初予定されていた「日本国憲法」の授業になっていました。

日本国憲法前文を暗記したり、何条に何が書かれているかの講義を受けたりする授業とは、学びのレベルが違います。

子どもたちは今朝のニュースという体験をもとに、手分けをして情報を集め、報告し、自分の考えを述べて、協働しながら自分たちで学びを作り上げていったのです。

この活動の中で五味先生が常に意識付けていたのは「自分はどう考えるの?」ということでした。

事実があり、様々な解釈がある中で、自分はどう考えるか。

そしてどのように行動していくのか。

これはまさにSTEAM教育で育成しようとしている力です。

Aはリベラルアーツだから社会科でもOKというレベルの実践ではなく、子どもたちにSTEAM教育を通して身に付けさせたい力に基づいて構成された社会科の授業でした。

STEAM教育で育てたい力

4Cすきるとは、現代社会に不可欠な
Communicationコミュニケーション力、Collaboration協働力、Critical thinking批判的思考力、Creativity創造性

STEAM教育は4Cスキルを身に付けることで、私たち一人ひとりが人間を大切にし、自ら行動できる人間になることを目指す教育です。

4Cスキルとは、

Communicationコミュニケーション力、

Collaboration協働力、

Critical thinking批判的思考力、

Creativity創造性

の頭文字の4つのCをとった力になります。

西前小学校6年生の五味先生の社会科の授業では、これら4Cスキルが発揮され、高められ、洗練されていく様子を参観させていただきました。

7月にはSTEAM教育デザイナーとして西前小学校で教職員向けのSTEAM研修会を行わせていただくことになりました。

「STEAM教育?」というモヤモヤしたものが、「みんなでもっと推進しよう!」と思えるような楽しい研修会にしたいと考えています。