多様性が深い学びの鍵

子どもによって学習の進度や知識量が違うのは当然です。では、そうした多様性をどう授業に生かせばよいのでしょうか? この記事では、学習の個人差にどう対応するか、多様性を活かした学びの方法について考えます。


学習の進度や知識の差にどう対応する?

学校の授業では、子どもたちの学力や経験の差が必ず存在します。
例えば、次のようなケースがあるでしょう。

  • 塾や通信教育で先に学習している子がいる
  • 本やテレビで知識が豊富な子がいる
  • 逆に、学習に苦手意識を持っている子もいる

こうした状況で、先生はどう授業を進めるべきでしょうか?
全員が同じ理解度であることはまずありません。授業の進め方に悩む先生も多いはずです。


多様性のあるクラスでの授業方法

学習の個人差に対応するための方法はいくつか考えられます。

習熟度別のグループ学習

子どもたちを理解度ごとにグループ分けし、それぞれのペースに合った課題に取り組ませる方法です。
メリット:自分のレベルに合った学習ができ、理解しやすい
デメリット:子ども同士の意見交換が減る可能性がある

先に学んでいる子の発言を待つ

新しく学ぶ子どもたちが考える時間を確保するため、先に知っている子の発言を待ってもらう方法です。
メリット:すべての子どもが自分で考える時間を持てる
デメリット:発言を待つ子が退屈してしまう可能性がある

難易度を上げ、より深い思考を促す

知識がある子どもたちにも考えさせるよう、あえて難易度を上げた問題を出す方法です。
メリット:すべての子どもが新しい気づきを得られる
デメリット:難しすぎると、一部の子どもがついていけなくなる

体験を通して学ぶ

知識だけでなく、実際に体験することで理解を深める方法です。
例えば、算数なら実際に物を使って計算をする、社会なら歴史を再現する活動を行うなどが考えられます。
メリット:知識に実感が伴い、興味を持ちやすい
デメリット:準備に時間がかかる

どの方法にもメリット・デメリットがあり、どれが正解というものではありません。
授業の目的や子どもたちの特性に合わせて、適切な方法を選ぶことが大切です。


多様性を活かす学び方とは?

公立学校では、クラスの子どもたちを学力ごとに分けるわけではありません。
そのため、学習経験の差があるのは当たり前です。

こうした環境で、どのように学びを深めることができるのでしょうか?
ポイントは「多様性を活かして学ぶ」という考え方です。

お互いの知識を活かして学ぶ

例えば、クラスには次のような子どもがいます。

  • 知識が豊富な子:すでに学んだことがある
  • 考えるのが得意な子:問題を解決するアイデアを思いつきやすい
  • 伝えるのが得意な子:説明が上手で、人に教えられる

それぞれの得意なことを活かして、お互いに学び合うことができるのです。

協働的な学びの例

  • 知識がある子が、まだ知らない子に説明する
  • 考えるのが得意な子が、新しいアイデアを出す
  • 伝えるのが得意な子が、みんなの意見を整理する

こうして「教える・学ぶ」という関係ではなく、みんなで一緒に考え、学び合うことで、より深い学びが生まれます。


実際の授業で生まれた「学びの瞬間」

先日、小学校の「小数×小数」の授業で、ある疑問が生まれました。

「どうして小数×小数の筆算では、小数点をそろえなくてもいいの?」

この疑問に対して、誰も明確な答えを持っていませんでした。
でも、子どもたちは「知りたい!」「考えたい!」という気持ちになりました。

そして、こんな流れが生まれました。

  • ある子が黒板を使って説明しようとする
  • 別の子が「こういう考え方もあるよ」と発表する
  • 他の子がさらに新しいアイデアを出す

こうした「多様な考えがぶつかり合う場面」こそが、深い学びにつながります。
教師が答えを一方的に教えなくても、子どもたちの間で学びが進んでいくのです。


まとめ

学びの場には、さまざまな個性や学力の違いが存在します。
その違いを「問題」としてとらえるのではなく、「学びの機会」として活かすことが大切です。

  • 一人ひとりに合わせた授業方法を工夫する
  • 子ども同士で学び合う機会をつくる
  • 教師がすべてを教えなくても、子どもたちは考え、成長する

このように、多様性を生かした学び方を取り入れることで、子どもたちはより深く学ぶことができるのではないでしょうか。


MOANAVIでは対話と体験を大切にしています

MOANAVIでは、一人ひとりの個性を尊重し、対話と体験を大切にした学びを提供しています。
子どもたちが自分で考え、学び合うことで、主体的に学ぶ力を育てます。

「もっと深く学びたい」「考える力を伸ばしたい」と感じたら、MOANAVIの学びをぜひ体験してみてください!

記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)

STEAM教育デザイナー / 株式会社MOANAVI代表取締役

理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。

📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説


新着記事

未来の街を子どもたちがデザインする!?MOANAVIのフリーオープンデー開催決定!
私たちは、横浜市を拠点に、子どもたちの「未来を創る力」を育てる学び場として活動しています。日々の学びはもちろんのこと、地域の方々とのつながりを大切にしながら、子どもたちが自分らしく成長できる機会を広げています。その一環として、MOANAVIでは【フリーオープンデー】というイベントを定期的に開催しています。フリーオープンデーは、MOANAVIに通っていないお子さんや保護者の方も自由にご参加いただけるオープンな日。学びの一端に触れていただきながら、地域とつながるひとときを過ごせるようにと企画しています。今回のオープンデーでは、初めてSTEAMのテーマ学習を取り入れたプログラムにチャレンジします!
【外遊びレポート】毎日が冒険!MOANAVI流「宝獲り合戦」で育つチーム力とひらめき力
MOANAVIでは毎日の外遊びを通じて、子どもたちが主体的に動き、仲間と協力しながら学びを深めています。今日は、オリジナルの「宝獲り合戦」というゲームで大盛り上がり!この遊びには、自然と戦略的思考・協働・運動能力といった多くの力が育まれる要素が詰まっています。日々の遊びが、未来を創る力につながるMOANAVIの実践をご紹介します。
手書き vs タイピング:子どもにとって“良い書き方”って?
最近の子どもたちは、スマホやタブレットには慣れていても、紙に「書く」ことを苦手に感じる子が増えています。でも、“書くこと”には学びにとって大きな意味があります。では、手で書くのとタイピングで書くのとでは、学びにどんな違いがあるのでしょうか?今日は、研究結果やMOANAVIでの実践を交えながら、「手書きとタイピングのメリット・デメリット」、そして保護者の方にできる声かけのヒントをお伝えします。
世界は今、どんな教育改革をしているの?
世界の教育はどう変わっている? フィンランド・シンガポール・カナダなど教育先進国の最新施策を、小中学生の保護者向けにわかりやすく解説します。STEAM教育や探究型学習、非認知能力の育成、21世紀型スキルを重視する世界の流れから、日本のこれからの学び方を一緒に考えましょう。
子どもたちの未来のために、教育はどう変わる?
今日は「これからの教育ってどうなるの?」というテーマについて、保護者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。子どもたちが大人になる頃、社会はきっと今とはまったく違う姿になっているはずです。AI、気候変動、国際的な協働…変化が大きく、不確実な時代を生きる子どもたちにとって、どんな学びが本当に必要なのでしょうか?今回は、世界中の教育政策に大きな影響を与えている「OECD(経済協力開発機構)」の提言を中心に、未来の教育のヒントを紹介します。
タイトルとURLをコピーしました