
不登校支援と家庭でできる学び直し
安心できる環境と小さな一歩で未来を切り拓く
不登校が続いて、このままで大丈夫だろうか?」
「学校に行けない子どもに、家庭でできる支援はあるのだろうか?」
こうした悩みを抱える保護者は年々増えています。文部科学省の調査でも、不登校の小中学生は過去最多を更新し続けています。大切なのは「無理やり学校に戻すこと」ではなく、子どもが安心できる環境で「小さな一歩」を積み重ねることです。
本記事では、不登校支援の基本的な考え方、家庭でできる学び直しの方法、学校以外の学び方、そしてMOANAVIでの実践例を紹介します。子どもの未来につながる「学び直し」のヒントを見つけてください。
不登校支援とは?【定義・現状と家庭が知るべき基本】
不登校の現状と文部科学省の最新データ
文部科学省の最新調査では、不登校の小中学生は約30万人に達しており、年々増加傾向にあります。特に小学校高学年から中学校にかけて、不登校が長期化するケースが目立っています。
なぜ子どもは「学校に行けない理由」を言えないのか
不登校の子どもに「どうして学校に行けないの?」と聞いても、答えられない場合が多いのが実情です。本人にとっても理由は明確ではなく、「ただ行きたくない」「わからない」という感覚であることが少なくありません。問い詰めることは逆効果になり、さらに不安や孤立感を深めてしまいます。
不登校支援で最も大切な「安心できる環境づくり」
支援の第一歩は「安心」です。家庭や学びの場が「受け止めてもらえる場所」であることが、不登校から回復する土台になります。安心感がなければ、学び直しや社会復帰への意欲も育ちません。
家庭でできる不登校支援の方法【学び直しの第一歩】
子どもの気持ちを受け止める「傾聴と共感」
不登校の子どもは「学校に行けない理由」を言葉にできないことが多いです。保護者にとっては「何が原因か知りたい」「どうすれば行けるのか知りたい」と焦る気持ちが自然ですが、問い詰めることは逆効果になります。
効果的なのは「問いかけ」ではなく「傾聴と共感」です。
- 「学校に行きたくないんだね」
- 「今日は疲れたんだね」
- 「そう感じることもあるよね」
このように感情を受け止め、否定せずに寄り添うことで、子どもは安心して心を開くようになります。心理学的にも、共感的な応答は自己肯定感を回復させ、次の行動への意欲を高める効果があるとされています。
生活リズムの安定が学び直しの土台になる
不登校が続くと、生活リズムが乱れるのはよくあることです。夜更かし、昼まで寝る、食事が不規則になる――これらは体力の低下や気力の喪失を招き、さらに学習意欲を削いでしまいます。
家庭でできる工夫としては:
- 朝はカーテンを開けて日光を浴びる
- 一緒に朝食をとる習慣を作る
- 夕方以降は強い光や刺激的なゲーム・動画を控える
- 就寝前に親子で読書や会話の時間を持つ
生活リズムの改善は一朝一夕ではできません。まずは「起床時間だけ30分早める」など、小さな工夫から始めることが大切です。
小さな役割や遊びから始める「成功体験の積み重ね」
勉強や登校をいきなり目標にするのではなく、日常の中で「できた!」を積み重ねることが、学び直しのスタートになります。
具体的な取り組み例:
- 料理の手伝い:「サラダを盛り付ける」「卵を割る」など、成功が見える作業から。
- ペットや植物の世話:「今日のお水はお願いね」と任せることで責任感と達成感を育む。
- 簡単なゲームやパズル:楽しみながら「集中力」「思考力」を取り戻すきっかけになる。
- お出かけの小さな役割:「スーパーで牛乳を探す係」「レジでお金を払う係」など、家庭外でも役立つ成功体験を増やす。
こうした小さな経験は、心理学でいう「自己効力感(self-efficacy)」を高めます。つまり「自分にもできる」という感覚が育つことで、次の挑戦――勉強や登校――に向かう意欲が生まれていくのです。
👉 ポイントは「勉強を再開させること」よりも「心を回復させること」。
安心感・生活リズム・小さな成功体験、この3つが揃って初めて「学び直し」の準備が整うといえます。
不登校からの学び直しに役立つ選択肢【学校以外の学び方】
フリースクール・オルタナティブスクールの特徴と活用方法
全国には不登校の子どもを受け入れるフリースクールやオルタナティブスクールがあります。自由なカリキュラムや少人数制の環境が整っており、子どもが安心して学び直しを始められる場になります。
オンライン学習やICT教材で広がる学び直しの可能性
近年はタブレットやPCを使ったオンライン教材が充実しています。家庭にいながら、自分のペースで学びを進められる点が魅力です。不登校の子どもにとって「一人でもできた」という自信を育むきっかけになります。
地域の居場所・コミュニティ活動が子どもに与える安心感
児童館や地域のボランティア活動なども、学び直しの一歩となります。学校以外の大人や仲間との関わりが、子どもの心を支えることがあります。
MOANAVIの不登校支援と学び直し実践例【子どもの声と教師の視点】
子どもの声「不登校から小さな一歩を踏み出した瞬間」
小学校4年生の冬から学校に行けなくなった男の子。
毎日ゲームとYouTubeに没頭し、机に向かうことすら拒む日々が続きました。
「どうして行きたくないの?」と聞かれても、自分でも理由がわからず答えられない。問い詰められることが苦しくて、「行きたくない」という気持ちだけが大きくなっていきました。
そんな彼がMOANAVIに来た当初も、最初は机に座ることを嫌がり、学習プリントを見るのも拒否していました。しかし、おやつ作りやボードゲームなど「学びとは直接関係ない活動」の中で、少しずつ変化が現れます。
たこ焼き作りのときに「僕がリーダーやる!」と自然に言葉が出て、仲間がついてきてくれた経験は大きな一歩でした。彼はそのとき「自分にも役割がある」と実感できたのです。
学びの見える化「STUDY POINT」で自信を取り戻す仕組み
MOANAVIが導入している「STUDY POINT」は、勉強の結果ではなく「行動そのもの」を評価する仕組みです。
彼も最初は「問題を解く」ことに抵抗を示していましたが、ちょっとした学習をするだけでポイントがたまっていくのを見て「もう少しやってみよう」と前向きになりました。
初めて100ポイントに到達した日、本人は「やればできた!」と笑顔で話しました。その瞬間から「明日もやってみたい」と思えるようになったのです。
この仕組みの特徴は、点数や順位といった他人との比較ではなく、本人の積み重ねを可視化すること。
教育心理学でも「行動の見える化」は自己効力感を高め、次の行動を引き出す効果があるとされています。
遊びやプロジェクトから始まるMOANAVIの学び直し体験
MOANAVIでは、学びを「遊び」や「プロジェクト活動」から自然に広げていきます。
- たこ焼き作り → リーダーシップや協力の経験
- 紙コップタワー → バランスや構造の科学的探究
- ボードゲーム → 戦略的思考やコミュニケーション力
こうした活動は一見「遊び」に見えますが、実はSTEAM教育につながる要素を多く含んでいます。彼も、遊びを通じて「もっとやってみたい」「知りたい」という気持ちを取り戻し、勉強に自然と向かえるようになりました。
教師の視点から見ると、「遊びと学びの境界をなくす」ことが不登校からの学び直しを後押しするポイントになっています。
保護者の安心につながる「伴走型サポート」
不登校は、子ども本人だけでなく保護者の心にも大きな負担をかけます。
「どうすればいいのか」「このまま取り残されるのでは」と不安を抱える保護者は少なくありません。
MOANAVIでは、子どもへの支援だけでなく 家庭全体を伴走型で支える ことを大切にしています。
- 定期的な面談で子どもの小さな変化を共有
- 家庭でできる声かけや関わり方のアドバイス
- 保護者同士が情報交換できるコミュニティ
こうしたサポートは、保護者にとっても「一人で抱え込まなくていい」という安心感につながります。結果として家庭の雰囲気が落ち着き、子どもが次の一歩を踏み出しやすい環境が整うのです。
👉 MOANAVIの実践例は、「不登校の子どもがどうやって小さな一歩を踏み出せるか」を具体的に示しています。
安心できる環境と、行動を認めてもらえる仕組み、そして遊びから始まる学び――この3つが、子どもの未来を切り拓く力になっています。
不登校からの学び直しで育つ力【学力+非認知能力】
自己効力感「できる!」という気持ちの回復
不登校の子どもが一度失いやすいのは、「やればできる」という感覚です。学校に行けない経験は、自分を「できない人間」と捉えてしまう大きな要因になります。
しかし、学び直しのプロセスで 小さな成功体験を積み重ねること によって、この自己効力感は再び育ちます。心理学者バンデューラも「人の行動は自己効力感によって大きく左右される」と指摘しており、自分の力を信じられるかどうかが挑戦意欲や継続力に直結します。
例えば:
- 「今日は10分机に座れた」
- 「プリントを1枚やりきれた」
- 「友達に声をかけられた」
こうした小さな一歩を「できた」と認めることが、学び直しの土台を築きます。
コミュニケーション力・協働力の向上
不登校の期間が長いと、人との関わりに不安を感じやすくなります。そこで大切なのが、学び直しの過程で「仲間と関わる場」を持つことです。
- ボードゲームや調理活動を通じて、自然に会話や役割分担が生まれる
- 小さな協力体験の中で「相手に頼られる」「ありがとうと言われる」経験を積む
- グループ活動で意見を出し合い、相手の考えを尊重する練習を重ねる
こうした積み重ねによって、徐々に「人と関わるのは怖くない」「自分の意見を言ってもいいんだ」という安心感が芽生えます。これは将来の学校生活や社会生活で欠かせない基盤になります。
学力以外に育つ「生きる力」とは?
学び直しの価値は、学力の回復や成績アップにとどまりません。むしろ、もっと根本的な「生きる力」が育まれることが大きな意味を持ちます。
具体的には:
- 挑戦する力:新しい活動に一歩踏み出す勇気
- 感情のコントロール:イライラや不安をうまく扱う方法を学ぶ
- 仲間と協働する力:自分だけでなく、他者と協力して目標を達成する経験
- 自己調整力:自分で計画を立て、振り返り、次につなげる力
OECDが提唱する「キー・コンピテンシー」や、日本の新学習指導要領が重視する「生きる力」も、この非認知能力の育成を重要な目標としています。
👉 不登校からの学び直しは、単なる「勉強のやり直し」ではなく、子どもの将来を支える総合的な力を育てるプロセスなのです。
保護者ができる「子どもの力を引き出す関わり方」
不登校から学び直していく過程では、家庭での保護者の関わりがとても大きな役割を果たします。学校やフリースクールに通う時間よりも、家庭で過ごす時間の方が圧倒的に長いからです。
1. 小さな変化を見逃さずに「認める」
子どもがたとえ短時間でも机に向かった、家事を手伝った、笑顔を見せた――こうした小さな変化を見逃さず、「できたね」「ありがとう」と言葉にして伝えることが大切です。これが自己効力感を高め、次の行動につながります。
2. 比較より「その子自身のペース」を尊重する
兄弟や友達と比べることは、子どもにとってプレッシャーになります。「昨日の自分より少しできたこと」を大切にする視点を持ちましょう。
3. 家庭内で安心できる「役割」を作る
勉強に戻る前に、家庭内での役割を持つことは大きな自信につながります。
- 食卓を整える係
- 洗濯物をたたむ係
- ペットの世話係
こうした小さな役割でも「自分は家族に必要とされている」と感じられます。
4. 「結果」より「プロセス」に注目する
勉強の点数や宿題の完成度よりも、「今日は10分集中できた」「最後までやろうと頑張った」といったプロセスを評価することが重要です。心理学的にも、プロセス重視のフィードバックは学びへの意欲を高める効果があるとされています。
👉 保護者ができるのは、子どもを急かすことではなく 「小さな一歩を認め、寄り添い、安心できる家庭環境をつくること」。これが、学び直しの力を支える最も大きなサポートになります。
まとめ|不登校支援と学び直しは小さな一歩から始まる
- 不登校支援に即効薬はなく、安心できる環境と小さな成功体験が鍵になる
- 学び直しは「自分のペース」で進めることが大切
- MOANAVIは子どもと家庭を支える居場所であり、学び直しの場を提供している
👉 子どもが「やればできる」を取り戻すきっかけは、ほんの小さな一歩から始まります。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説



