
記憶の種類を徹底解説
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリーの違いと鍛え方、
勉強に活かす記憶法
「勉強したのにすぐ忘れてしまう」「テストになると頭が真っ白になる」――そんな経験はありませんか?
実は、記憶には種類があり、それぞれの仕組みを理解すると「なぜ忘れるのか」「どうすれば覚えられるのか」が見えてきます。本記事では、短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリーといった記憶の基本をわかりやすく解説し、効率よく学習するための記憶力アップ法まで紹介します。家庭で子どもと一緒に取り入れられる実践方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
記憶の基本|短期記憶と長期記憶の違い
短期記憶とは?保持できるのは数秒から十数秒
短期記憶は、数秒から十数秒程度しか持たない一時的な記憶です。例えば「電話番号を一時的に覚えて入力する」といった場面がこれにあたります。しかし、情報は15秒程度で消えてしまうと言われており(ピーターソンらの研究, 1959)、何もしなければすぐに忘れてしまいます。
長期記憶とは?一生残る知識やスキル
長期記憶は、数分から何年、さらには一生保持される記憶です。自分の名前や自転車の乗り方、学校で習った知識などが該当します。勉強で学んだことを定着させるには、短期記憶を「長期記憶」へ移す必要があり、そのカギとなるのが「リハーサル(復唱・繰り返し)」です。
短期記憶から長期記憶へ移す方法
- 声に出して繰り返す(音読)
- 書いて覚える(ノートまとめ・反復演習)
- 実際に使ってみる(問題を解く・会話で使う)
マジカルナンバー7±2|短期記憶の限界とチャンク化
短期記憶の容量は「7±2」
心理学者ミラー(1956年)の研究によれば、人が一度に覚えられる短期記憶の容量は「7±2」(5〜9個)程度とされています。電話番号が7桁前後で設計されているのもこの理由です。
チャンク化で記憶力を強化
短期記憶の限界を克服する方法が「チャンク化」です。情報を意味のあるまとまり(チャンク)に分けることで、覚えやすくなります。
- 数字例:「0453768123」 → 「045(横浜市外局番)」「3768」「123」
- 言葉例:「こ こ ろ づ か い」 → 「心遣い」
チャンク化のコツ:
- 語呂合わせを作る
- 知っている情報と関連付ける
- 図やマインドマップで整理する
ワーキングメモリー(作業記憶)とは?
ワーキングメモリーの役割
短期記憶は「一時保存」だけでなく、情報を処理しながら考える役割を持ちます。これを「ワーキングメモリー」と呼びます。
- 計算中に数字を保持しながら解く
- 読書中に文脈を理解しながら読み進める
- 会話中に相手の話を覚えつつ返答を考える
ワーキングメモリーを鍛える方法
- 暗算や簡単な計算を繰り返す
- 音読を習慣化する
- メモをとりながら学習する
- パズルや将棋・ナンプレで脳を鍛える
記憶力を高める勉強法|家庭でできる実践ポイント
音読と復唱で記憶を定着させる
声に出して読む「音読」は、視覚と聴覚の両方を使うため、脳に強く刻まれます。例えば、教科書の文章を読むとき、ただ目で追うだけではなく「声に出す+耳で聞く」という二重のプロセスを踏むことで、短期記憶が長期記憶へ移行しやすくなります。
さらに「復唱(リハーサル)」を組み合わせると効果が倍増します。同じ文章を3回読む、覚えたことを声に出して繰り返す、といった方法です。
📌 実践例
- 国語の本文を親子で交互に音読する
- 英単語を見て→声に出して→書くをセットで行う
- 覚えたい公式を声に出して暗唱する(九九や理科用語など)
👉 ポイントは「短時間でいいので毎日続けること」。朝5分の音読習慣だけでも、1か月後には確実に記憶の定着度が変わります。
書いて覚えるアウトプット学習
「書いて整理する」ことは、単なる暗記以上に脳を働かせる学習法です。書く行為そのものが身体運動を伴い、記憶を強化する効果があります。また、頭の中で情報を整理してノートにまとめる過程で、理解が深まり「長期記憶」に残りやすくなります。
📌 実践例
- 語句をただ書き写すのではなく「自分の言葉でまとめる」
- 文章を読んだ後に、要点を3行で書き出す
- 図やイラストで表現してみる(歴史の流れや理科の仕組み)
👉 「見て覚える」だけでなく、「書いて表す」ことが大切です。頭と手を同時に使うことで、理解も記憶も深まります。
実践で使う「体験型学習」
記憶は「使う」ことで定着します。教科書で学んだ知識を実際に使ったり話したりすると、脳が「必要な情報」と判断して長期記憶に残しやすくなるのです。
📌 実践例
- 算数の文章題を音読してから解く(読み飛ばしを防ぎ、理解も深まる)
- 英語の新しいフレーズを日常会話で実際に使ってみる
- 理科で学んだ内容を家庭で実験して再現する(氷の溶け方を観察、植物の成長記録など)
- 読んだ本の感想を家族に伝える(説明力・表現力も同時に育つ)
👉 重要なのは「インプット(読む・聞く)」だけで終わらせず、「アウトプット(話す・使う・試す)」へとつなげること。これにより記憶の定着率は飛躍的に高まります。
✨ まとめると:
- 音読+復唱 → 記憶を定着させる最強タッグ
- 書いて整理 → 理解を深めながら長期記憶へ
- 体験型学習 → 知識を使うことで忘れにくくなる
学年別|家庭でできる「記憶力アップ」音読&実践メニュー
小学1・2年生:楽しく続けることが第一
- 音読習慣づけ
教科書や絵本を毎日5分音読。感情を込めたり、親子で交互に読むと楽しみながら続けられます。 - 漢字練習を声に出しながら書く
「形+音+意味」を結びつけることで記憶に残りやすくなります。 - 生活科の観察日記
植物や天気の記録を絵と一緒に書くことで、エピソード記憶を刺激。
👉 ポイントは「勉強=楽しい」と感じる習慣を作ることです。
小学3・4年生:理解力と表現力を強化
- 説明文の要約練習
音読後に「一文でまとめる」習慣をつけると、要点をつかむ力が育ちます。 - 九九や掛け算の暗唱
歌やリズムをつけて音読すると、リズム記憶と手続き記憶が強化されます。 - 歴史や社会科のストーリー化
「織田信長が〜した」と物語風に音読して覚えると、出来事がつながって記憶に残ります。
👉 この時期は「理解しながら声に出す」ことを意識するのがポイントです。
小学5・6年生:思考力・論理力を鍛える
- 理科の実験手順を音読&再現
実験の流れを声に出しながら書いたり図にしたりすることで、理解と記憶が同時に深まります。 - 社会科の重要用語をディスカッション
「民主主義とは?」「三権分立ってどういう意味?」などを音読後に親子で意見交換。 - 新聞記事の音読と要約練習
読んだ内容を3行でまとめる習慣は、入試の記述問題や作文に直結します。 - 英語のリスニング+音読
教科書の本文をシャドーイング(聞いた音声を即真似て音読)し、発音と記憶を強化。
👉 高学年では「ただ覚える」から「考えて表現する」へシフトさせるのが大切です。
✨ まとめると:
- 低学年 → 楽しさ重視で「声に出すこと」そのものを習慣化
- 中学年 → 理解を深めながら「要約・暗唱・物語化」で知識を整理
- 高学年 → 実践と表現に結びつけ、「論理的に考える力」を伸ばす
まとめ|記憶を理解すれば学びはもっと楽になる
- 記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がある
- 短期記憶の容量は「7±2」、チャンク化で効率化できる
- ワーキングメモリーは「考える力」を支える基盤
- 音読・書く・使うといった学習法で記憶は強化できる
記憶の仕組みを知ることは、勉強を効率化する第一歩です。
MOANAVIの学び
MOANAVIでは、ただ暗記させるのではなく「体験」と「対話」を通して子どもの思考力と記憶力を伸ばす学びを提供しています。記憶の科学を取り入れた指導で、お子さまの「わかる!」「できる!」を積み重ね、自信につなげます。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説