学習心理学とセルフティーチングで
定期テスト・受験に強くなる！
効率的な勉強法を科学的に解説
【中学生・高校生・家庭学習】
「定期テストの勉強をしているのに覚えられない」「一夜漬けではすぐに忘れてしまう」──こんな悩みは多くの中高生や保護者に共通しています。
実は、効率的な勉強法には学習心理学や脳科学の裏づけがあり、その中でも「セルフティーチング（自分に教える勉強法）」は特に効果的だと証明されています。
本記事では、学習心理学に基づいた科学的な勉強法を整理し、定期テスト・受験・家庭学習に役立つ実践法を紹介します。さらに「学び合い」の効果を家庭でも再現する方法として、録音・動画を活用したセルフティーチングの具体的なやり方も解説します。
学び合いの効果とは？【教育心理学が示す勉強法のメリット】
学習心理学では「学び合い」が効果的だと多くの研究で示されています。
プロテジェ効果（教えることで理解が深まる）
誰かに教えるつもりで学習すると、理解の深さや記憶の定着率が格段に上がります。これをプロテジェ効果と呼びます。
仲間と学ぶことで得られる多様な視点
友達同士で学び合うと、自分とは違う考え方や解法に触れられます。これにより理解が広がり、応用力が育ちます。
学習意欲を高める社会的相互作用
「仲間と一緒に勉強している」という感覚そのものがモチベーションを引き上げる効果を持っています。
学習心理学に基づく効率的な勉強法【6つの科学的エビデンス】
効率的な勉強法は経験則ではなく、科学的に裏づけがあります。
エビングハウスの忘却曲線と復習サイクル
人は学んだ内容の大部分を1日で忘れます。しかし、短時間×複数回の復習で忘却を防げます。
テスト効果（想起練習）が暗記よりも強い理由
読むだけより「思い出す練習（想起）」の方が記憶が強化される。小テストや自作問題は最強の勉強法です。
分散学習（Spacing Effect）で一夜漬けを避ける
一気に勉強するより、間隔をあけて学習した方が定着率は高まります。
交互練習（Interleaving）で応用力を育てる勉強法
数学で同じパターンを繰り返すより、違う問題を混ぜて解く方が応用力が伸びることがわかっています。
生成効果（Generation Effect）で記憶を深める習慣
答えを見る前に「まず自分で考える」だけで記憶の定着率が上がります。
メタ認知を使った「自分の理解度を確認する方法」
「本当に理解できているか？」を自問し、人に説明できるかどうかを確認することで学びが深まります。
対象別｜心理学的に効果的な勉強法
中学生向け｜定期テストに強くなる学習習慣
- 提出物を計画的に仕上げる
- 小テストを自作して繰り返す
- 友達や家族に「今日学んだこと」を説明
高校生向け｜定期テストと受験勉強を両立させる方法
- 定期テストは「基礎固め」、受験勉強は「応用」
- 両者をリンクさせることで効率的に進められる
保護者向け｜家庭でできるサポート
- 学習時間を見張るのではなく、生活リズムや学習環境を整える
- 「今日はどんなことを覚えたの？」と軽く聞き、説明させることで理解を深めさせる
目的別｜勉強の悩みを解決する心理学的アプローチ
記憶に残る勉強法
エピソード記憶＋二重符号化（言葉＋イメージ）を組み合わせると記憶が強化されます。
集中力を高める学習環境
25分集中＋5分休憩の「ポモドーロ法」や、スマホを手元から離すなどシンプルな環境調整が有効です。
勉強嫌いを克服するモチベーション戦略
小さな達成を可視化（✅チェックリストやポイント制）し、自己効力感を高めることが習慣化のカギです。
状況別｜定期テスト・受験勉強に役立つ効率的な方法
定期テスト1週間前にやるべきこと
- 暗記科目の復習を分散して繰り返す
- 過去の小テストやワークを活用する
テスト前日の勉強法
- 新しい内容は手を出さず「想起練習」で総仕上げ
- 睡眠を削らず、寝る直前に重要事項を確認する
長期休みの学習サイクル
- 毎日少しずつ「計画的な復習」を組み込む
- 夏休みは「苦手克服」、冬休みは「総復習」と目的を分ける
自宅で学び合いを再現する方法【家族・セルフ・デジタル】
学校のように仲間と学び合う環境がなくても、自宅で「学び合いの効果」を再現することは可能です。ポイントは、説明する機会を意図的につくること。家族、セルフ、デジタルの3つの方法が有効です。
家族を相手に説明する学び合い勉強法
親や兄弟に「今日覚えたこと」を説明するだけで、理解の深さが一気に変わります。
- 効果：家族からの「それってどういう意味？」という問いが、自分の理解度を試すテストになります。
- 実践法：夕食のときに「今日はこんなことを学んだよ」と1分話す習慣をつける。短時間でも毎日続けることで、記憶が定着しやすくなります。
- 注意点：保護者は「正解・不正解」をジャッジする必要はなく、聞き役になるだけで十分。子どもが「説明する経験」を積むこと自体が大切です。
セルフティーチング（自分に教える勉強法）の効果
「先生になったつもりで自分に説明する」──これだけで脳の働きが変わります。
- 心理学的根拠：説明する過程で「論理の抜け」が明らかになり、理解を再構築することができます。これをセルフティーチング効果と呼びます。
- 実践法：声に出して解法を説明する、ノートに「自分なりの授業ノート」を書く、鏡の前で先生役になって話す。
- ポイント：説明できる＝理解できている、という指標になるため「テスト前の最終確認」に最適です。
アプリ不要のデジタル活用
アプリや特別なサービスを使わなくても、スマホ1台あれば「デジタル学び合い」ができます。
- 録音：英単語や歴史年号を自分の声で録音し、通学時間や寝る前に聞き返す。
- 動画：ホワイトボードやノートを使って解説動画を撮影。自分の説明を見返すと理解の浅い部分が一目でわかります。
- 写真・メモ：解いた問題やまとめノートを写真に残し、復習アプリのように活用。
- 利点：自分の声や姿が「エピソード記憶」として脳に残りやすく、記憶の引き出しが増えます。
セルフティーチングを強化する実践法【録音と解説動画】
学び合いを自宅でさらに効果的にするには、**「記録すること」**が重要です。
自分の声を録音して聞き返すセルフチェック
- 声に出す → 録音する → 聞き返す、というプロセスで「理解度の客観視」が可能になります。
- 自分の声を聞き返すことで「あれ？説明が途切れている」「ここは不自然だな」と気づき、修正するきっかけになります。
- 語学学習（英単語・リスニング）や社会科の暗記と相性抜群です。
解説動画を撮って説明力と理解を確認
- スマホを立てて「自分の授業」を撮影してみましょう。ホワイトボードや紙に書きながら解説するとより効果的です。
- 見返すと、自分の説明が「飛んでいる部分」「根拠が弱い部分」が一目でわかります。
- 動画を家族に見せてフィードバックをもらえば「自分以外の視点」も得られ、学び合いに近い体験ができます。
👉 こうした「記録して振り返る勉強法」は、セルフティーチング＋心理学的効果（エピソード記憶・二重符号化理論） を同時に得られるため、従来の学習よりも効率が大幅に高まります。
勉強シーン別セルフティーチング活用例【英語・数学・理科・社会・国語】
英語：録音とリピートで単語と表現を定着させる
- 実践法：
- 単語カードや教科書の例文を声に出して読み、スマホで録音。
- 翌日・1週間後に聞き返し、自分の発音や意味理解を確認。
- 間違えた単語だけをまとめ直して、再度録音。
- 効果：
- 「発音＋意味」を同時に確認でき、二重符号化理論に合致。
- 自分の声を聞くことで「エピソード記憶」が強化される。
- リスニング力とスピーキング力を同時に伸ばせる。
数学：解法を動画で説明して論理のつながりを可視化
- 実践法：
- ノートやホワイトボードに解法を書きながら、スマホで撮影。
- 「なぜこの公式を使うのか？」を言葉で説明する。
- 撮った動画を見返し、「説明が飛んでいる部分」を修正。
- 効果：
- 問題解決のプロセスを「視覚＋言語」で整理できる。
- 論理の穴に気づく → 理解の再構築が進む。
- 定期テストや入試で必要な「途中式の正確さ」が自然に鍛えられる。
理科：実験や現象を「自分で先生役」になって解説
- 実践法：
- 実験の手順や観察結果をまとめノートに書き出す。
- 「なぜそうなるのか？」を家族や自分に説明する。
- 写真や図を添えて「実験レポート風」に仕上げる。
- 効果：
- 因果関係を説明することで、暗記ではなく理解が深まる。
- 写真や図解を使うことで二重符号化が働き記憶が強固になる。
- レポート形式にすると、そのまま復習教材になる。
社会：先生ノートで「物語」として歴史・地理を整理
- 実践法：
- 教科書の要点を「自分が授業するつもり」でまとめる。
- 歴史なら「人物インタビュー形式」、地理なら「旅のレポート形式」にしてみる。
- 友達や家族に「今日の授業」として発表する。
- 効果：
- 物語化することで記憶が残りやすい（ナラティブ効果）。
- インタビュー形式や旅形式は、ただの暗記を「体験的な学び」に変える。
- 定期テストだけでなく、入試の記述問題対策にも有効。
国語：音読・要約・解説で理解と表現力を深める
- 実践法：
- 教科書の文章を声に出して音読し、スマホで録音。
- 読んだ文章の要点を自分の言葉で要約し、家族や自分に説明。
- 「登場人物の気持ち」「筆者の主張」を問いかけ形式で解説してみる。
- 効果：
- 音読で理解が深まり、リズムや言葉の感覚も養える。
- 要約はメタ認知を高め、文章を「構造」で捉える力がつく。
- 解説する過程で「なぜそう感じたか？」を言語化でき、国語力の核心である読解力・表現力が強化される。
📌 まとめ
- 英語＝録音で「発音＋意味」を二重符号化
- 数学＝動画で「論理の抜け」を発見
- 理科＝説明＋図解で「因果関係」を理解
- 社会＝物語化で「知識を自分の言葉」に変換
- 国語＝音読＋要約＋解説で「読解力・表現力」を伸ばす
👉 すべてに共通するのは、「説明する＝理解を可視化する」 というセルフティーチングの本質です。
学年別セルフティーチング活用法【中学生・高校生・受験生】
中学生｜定期テスト対策に強くなるセルフティーチング
- 英語：新出単語や本文を音読 → 録音して翌日チェック。
- 数学：ワーク問題の解法を「途中式を含めて」説明動画に撮影。
- 社会：歴史人物を「先生になって授業」形式でノートにまとめる。
- 効果：
- 「説明できる＝理解している」かどうかを自分で確認できる。
- 定期テストの直前でも、録音や動画を見返すだけで効率的に復習可能。
- 家族に発表すれば「学び合い」の効果を家庭でも再現できる。
高校生｜応用力と記述力を鍛えるセルフティーチング
- 英語：英文を読んで要約 → 自分の言葉で説明して録音。
- 数学：解答の方針（なぜこの公式を使うか）を解説動画で整理。
- 理科：実験の目的や結果を「レポート形式」で説明し、論理的にまとめる。
- 効果：
- 入試問題で求められる「説明力」「論理性」を実践的に養える。
- セルフティーチングを通して、暗記から理解へ、理解から表現へと学びを深められる。
- 授業内容をただ復習するのではなく「自分の授業」として再構成する習慣がつく。
受験生｜合格に直結するセルフティーチング
- 英語：過去問長文を解いたら、内容を「日本語で解説」＋「英語で要約」して二重チェック。
- 数学：難問を解いたら、途中の思考過程をホワイトボードに書いて動画化し、解法の筋道を固める。
- 理社：過去問の記述問題を「模擬授業形式」で解説し、自分で添削する。
- 国語：評論文を要約し、筆者の主張を「自分ならどう反論するか」まで解説。
- 効果：
- 過去問演習を「説明する」ことで、答案に表れる論理性を強化。
- 受験で必要な「アウトプット型の学力」が鍛えられる。
- 記憶の定着だけでなく、本番の「表現力」「思考力」まで磨かれる。
📌 まとめ
- 中学生：定期テストに強い基礎力を「説明」で確認
- 高校生：論理性と記述力をセルフ授業で伸ばす
- 受験生：過去問演習を「模擬授業化」して本番力を高める
👉 セルフティーチングは、学年に応じて使い方を変えることで、「暗記中心の勉強」から「表現と応用の勉強」へと進化 させることができます。
まとめ｜セルフティーチングと学習心理学で家庭学習を進化させる
勉強は「暗記すること」ではなく、説明できるまで理解することが大きな成果です。
学習心理学や脳科学も、セルフティーチングが記憶定着や理解深化に効果的であることを示しています。
- 中学生：定期テスト対策で「説明」を習慣化
- 高校生：論理性・記述力を鍛えるセルフ授業
- 受験生：過去問演習を模擬授業に変えて本番力を養成
さらに、英語・数学・理科・社会・国語の主要教科すべてで、録音・動画・要約を活用すれば「自宅が教室」に変わります。
👉 セルフティーチングの本質は、「学びを自分の言葉で再構築すること」。
これを繰り返すことで、テストや受験に強くなるだけでなく、「学びの楽しさ」も体験できます。
ただし、ここで学びは終わりではありません。
説明できる理解はスタートラインであり、その先には「なぜそうなるのかを分析する」「複数の解法を比較して評価する」「自分なりの学び方を創造する」といった発展の余地があります。テスト前にはそこまで余裕はなくても、学期の振り返りや受験後に少しずつ取り入れることで、知識が本当の力になります。
家庭でも、学校でも、未来につながる学び
セルフティーチングは特別な道具や塾がなくても、家庭で今すぐ実践できる方法です。
「説明する学び」を習慣化すれば、勉強嫌いを防ぎ、テストや受験勉強の成果も大きく変わります。
そして、MOANAVIはこのような学習心理学に基づく教育実践を通じて、子どもたちの「楽しく学ぶ力」と「理解のその先に広がる学び」を育んでいます。
👉 これからの学びは「暗記する勉強」から「説明して広がる学び」へ。
家庭でも取り入れられるセルフティーチングを、ぜひ今日から始めてみてください。
記事を書いた人
西田 俊章（Nishida Toshiaki）
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員（教員歴20年）
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士（教育学）
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説
