
気候変動と教育
子どもに地球温暖化をわかりやすく伝える方法
【年齢別・家庭学習アイデア】
「気候変動」や「地球温暖化」といった言葉を、ニュースや学校で耳にする機会が増えています。
しかし、いざ子どもに説明しようとすると「難しい言葉ばかりで伝えにくい」「どう話せば不安にさせず学びにつなげられるのか」と悩む保護者や先生も多いのではないでしょうか。
本記事では、気候変動と教育の関係を整理し、年齢別の伝え方、家庭学習でできる工夫、教材や自由研究アイデアを紹介します。子どもにとって「地球を守ること」が身近でポジティブな学びになるヒントをまとめました。
気候変動と教育の関係【子どもの未来を守る環境教育とは】
気候変動が子どもの生活と将来に与える影響
猛暑や豪雨といった異常気象は、すでに子どもたちの生活に直結しています。熱中症リスクの増加や登下校の安全、給食の食材不足など、「遠い未来の話」ではなく「身近な問題」として現れています。
教育の場では「気候変動が社会や暮らしにどう影響するのか」を具体例を交えて伝えることが重要です。
家庭学習や学校教育で気候変動を扱う意義
気候変動は理科や社会科だけでなく、生活科や家庭科とも関連する総合的なテーマです。
子どもたちが環境問題を理解することは、単なる知識習得ではなく「どう行動するか」を考える学びにつながります。
環境問題を子どもに伝えるときの保護者・教師の役割
「気候変動は深刻だから頑張ろう」と大人が押し付けても、子どもは不安や無力感を抱きやすくなります。
大切なのは「一緒にできることがある」という前向きな姿勢を示し、安心感のある学びに変えることです。
子どもに気候変動をわかりやすく伝える方法【家庭でできる会話の工夫】
専門用語を使わず「身近な例」で地球温暖化を説明する
「CO₂」や「温室効果ガス」といった言葉は、小学生以下の子どもにとって理解が難しい場合があります。
その代わりに、身近な生活に結びつけて話すと実感がわきます。
- 「今年の夏は暑い日が長かったね。エアコンをよく使ったけど、それは地球の温度が少しずつ上がっているからかもしれないよ」
- 「台風が多くなって、野菜の値段が高くなったよね。これも気候の変化とつながっているんだよ」
- 「冬でも雪が少ない場所が増えてきたんだって。スキー場も困っているらしいよ」
このように、子どもの生活に直結する現象をきっかけにすることで、「温暖化」という抽象的な言葉が自分ごととして理解されやすくなります。
「怖さ」より「未来の希望」を一緒に考える姿勢
「地球温暖化で地球が壊れる」「未来が暗い」といった怖さを強調しすぎると、子どもは不安や無力感を抱いてしまいます。
大切なのは「一緒にできることがある」という前向きな視点を持たせることです。
会話例:
- 「もし電気を少し節約したら、地球は喜んでくれるかな?」
- 「エコバッグを使うと、海の生き物を守れるかもしれないね」
- 「木を植えたら、どんな生き物が集まってくるかな?」
「問題」よりも「解決のためのアクション」にフォーカスすることで、子どもは「自分にもできることがある」と実感できます。心理学的にも、小さな成功体験を伴う環境教育は「自己効力感(self-efficacy)」を高め、行動の継続につながるとされています。
買い物・食事・電気使用など日常生活を教材にする
家庭の中には、気候変動を学べる実践的な教材がたくさんあります。
買い物での工夫
- 「今日は地元で採れた野菜を選んでみよう。遠くから運ぶよりCO₂が少なくて済むんだよ」
- 「袋はいらないって言ったら、お店の人も喜んでくれるかもね」
食事での工夫
- 「食べ残しを減らすこともエコなんだよ。作ったものを最後まで食べると、食材を育てた人や自然も大事にしていることになるね」
- 「ベランダでミニトマトを育てると、食べ物と自然のつながりがわかるよ」
電気や水の使い方での工夫
- 「電気をつけっぱなしにしないように見張り係をしてくれる?」
- 「お風呂のお湯を残して洗濯に使ったら、どれくらい節約できるかな?」
👉 家庭の中のこうした「気づき」を意識的に会話にするだけで、子どもにとって環境問題は「特別な学習」ではなく「毎日の生活に根づく学び」に変わります。
💡 このように 「身近な話題」+「一緒に考える会話」+「家庭での実践」 を組み合わせると、気候変動の学びは子どもにとって前向きで継続的なものになります。
年齢別|子どもに気候変動を伝える実践アイデア
🌱 幼児期(3〜6歳)|自然への親しみから始める
- 伝え方:「地球はみんなのおうち」など擬人化した表現でわかりやすく伝える。
- 実践例
- お散歩しながら「今日はお花に水がいっぱいだね」「太陽がポカポカしてるね」と自然の変化を観察する。
- 絵本「地球をたいせつにするってどういうこと?」系の環境絵本を読み聞かせ。
- ゴミの分別を遊びにして「これはどこに捨てる?」とクイズ形式で実践。
✏️ 小学校低学年(1〜3年生)|遊びを通じて学ぶ
- 伝え方:「エネルギー」や「リサイクル」を体験と結びつける。
- 実践例
- ペットボトルで簡単な水ろ過装置を作り「水をきれいにするのって大変だね」と学ぶ。
- 家の中で「電気を消す見張り隊」を任せて、エコ活動をゲーム化。
- スーパーで「地元産」「外国産」の野菜を比べて「どっちが遠くから来たのかな?」と考える。
📚 小学校高学年(4〜6年生)|「なぜ?」を深める探究学習
- 伝え方:数値やデータを少しずつ導入して、科学的に説明。
- 実践例
- 夏と冬の電気代を比べて「どうしてこんなに違うんだろう?」と考える。
- CO₂排出量の図やグラフを見て「どこからたくさん出ているのか?」を親子で調べる。
- 家庭菜園やベランダ栽培で「食と環境」のつながりを実感。
🔍 中学生|社会とのつながりを意識する
- 伝え方:ニュース記事や環境データを一緒に読み解き、議論する。
- 実践例
- 気候変動に関する新聞記事をスクラップし、家族会議で「どう思う?」と意見交換。
- 「プラスチックごみを減らすにはどうすればいいか?」をテーマに調査→まとめ発表。
- 部活動や学校生活の中で「エコな工夫」を考え、友達に提案する。
🌍 高校生|自分ごととしてアクションする
- 伝え方:地球規模の課題と「自分の進路・将来」を結びつける。
- 実践例
- SDGsや国際ニュースを題材に「自分ならどんな取り組みをするか」ディスカッション。
- SNSや動画で「環境を守るために自分がしていること」を発信。
- 学校の文化祭や地域イベントで「エコ企画」を実施。
👉 こうして 年齢ごとの発達段階に合わせたアプローチ を取ることで、気候変動は「難しい話」ではなく「自分の生活とつながる学び」へと変わります。
気候変動教育を通じて育つ力【環境意識と21世紀型スキル】
エコ習慣で身につく「環境リテラシー」
気候変動の学びは、単なる知識にとどまらず「日常の行動」を変えるきっかけになります。
たとえば、
- 買い物でエコバッグを持参する
- 家の電気を消す役割を子どもに任せる
- 食べ残しを減らす取り組みを一緒に考える
こうした小さな習慣は「環境リテラシー(環境問題を理解し、行動できる力)」を育てます。
学術的にも「行動習慣の積み重ねは環境意識の定着につながる」ことが示されており、家庭での実践が未来の地球を守る力へと直結します。
自由研究・探究学習を通じて育つ「批判的思考力」
気候変動は「一つの答えがある」問題ではありません。だからこそ、子どもはデータを比べたり、複数の意見を検討したりしながら「自分なりの結論」を導く練習ができます。
- 夏と冬の電気代を比べて「なぜこんなに違うのか?」を考える
- 異なるニュース記事を見比べ「どの視点で語られているか?」を検証する
- 地域の天候データを調べて「本当に温暖化が進んでいるのか」を探究する
このような学びは、まさに 批判的思考(Critical Thinking) の実践。
AI時代において「情報を取捨選択し、根拠を持って考える力」は必須であり、気候変動教育がその格好のトレーニングの場となります。
話し合い・発表活動で伸びる「協働力・コミュニケーション力」
気候変動は「正解がひとつに定まらない課題」です。だからこそ、仲間と一緒に考え、意見を交わし、合意を作り上げていくプロセスが欠かせません。
- クラスで「学校のエコ活動」をテーマにディスカッションする
- 家族会議で「節電アイデア」を出し合い実行してみる
- 学んだことをポスターやスピーチで発表する
こうした活動を通じて、子どもは「自分の考えを伝える力」と「相手の考えを聞き入れる力」を同時に育てます。教育学的にも、正解のない問いを議論することは 協働力(Collaboration)とコミュニケーション力(Communication) の育成に直結するとされています。
👉 まとめると、気候変動教育を通じて育つのは 環境リテラシー+批判的思考+協働・コミュニケーション。これはそのまま 21世紀型スキル(4C:Critical Thinking, Creativity, Collaboration, Communication) にもつながり、Society5.0時代を生きる基盤となります。
気候変動教育に役立つ教材・自由研究アイデア【家庭学習と学校教育で活用】
家庭で使える絵本・図鑑・動画教材のおすすめ
- 幼児には絵本「ちきゅうをまもろう」などやさしい言葉で学べる本
- 小学生には図鑑や科学漫画で楽しく知識を習得
- 中高生にはNHK for SchoolやYouTubeの科学チャンネルを活用
夏休みにできる気候変動テーマの自由研究例
- ペットボトル温室を作り温度変化を観察
- 冷蔵庫の電気使用量を調べ、節電効果をグラフ化
- 家庭のゴミを分類してCO₂削減につながる方法を考察
学校や地域のイベント・環境ワークショップの活用法
地域の清掃活動や環境団体のイベントは、子どもにとって「行動で学ぶ」大切な場。家庭と学校以外の学び場を活用することで、気候変動教育がより実践的になります。
まとめ|家庭から始める気候変動教育で未来をつくる学び
気候変動教育は「専門家の知識」ではなく、家庭や学校での小さな実践から始められます。
- 日常の会話で「なぜ?」を考える
- 家庭でできるエコ活動を教材にする
- 夏休みの自由研究で気候変動をテーマにする
👉 子どもが未来を主体的に考えられるようになることこそ、気候変動教育のゴールです。
小さな学びが、地球と子どもの未来を守る大きな一歩につながります。
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説