
学びの多様化学校とは?
注目される新しい教育のかたち
「学校という場所が合わなかった」
そう話す保護者や子どもたちの声は、今や特別なものではなくなっています。
現在、子どもたちが置かれている状況はさまざまで、学校に毎日通うことが困難なケースも増えています。その中で注目されているのが、「学びの多様化学校」という新しい制度です。
これは、学校に通えない子どもが学校外の場所で学ぶことを、正式な「学び」として認めようとするもので、2023年に文部科学省がガイドライン(案)を公表しました。
制度としては始まったばかりですが、これからの教育を大きく変える可能性を秘めています。
制度の背景|不登校の増加と教育の多様化
文部科学省の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年公表)によれば、不登校の小中学生の数は299,048人に達し、過去最多を更新しました。
(出典:文部科学省公式サイト)
かつては「一時的な問題」と見なされていた不登校ですが、今では長期化・慢性化するケースも増え、従来の「学校に通わせる」前提では支援が追いつかなくなっています。
こうした背景から、文部科学省は2023年に「学びの多様化学校ガイドライン(案)」を発表し、「通学によらない学び」を制度として整備する方向に大きく舵を切りました。
(出典:学びの多様化学校ガイドライン案)
学びの多様化学校とは?制度の概要と特徴
「学びの多様化学校」は、通学が難しい子どもに対して、学校外の学びを“出席扱い”とし、正式な教育活動として認めることができる制度です。
具体的には、以下のような仕組みです:
- 学校・教育委員会・保護者が協議し、学習計画を作成する
- フリースクール、オルタナティブスクール、オンライン学習なども対象
- 活動記録や学習報告をもとに、学校外での学びを出席扱い・成績評価の対象にできる
- 学校長や教育委員会の判断に基づき、柔軟な学びの形を制度に組み込む
これは、単に「学校に通わなくていい」という話ではなく、子ども一人ひとりに合った学び方を制度として認めていこうという重要な一歩なのです。
フリースクールやオルタナティブスクールとの違い
「学びの多様化学校」は制度としての枠組みであり、具体的な学びの場として機能するのは、民間のフリースクールやオルタナティブスクールです。
区分 | 法的位置づけ | 出席扱い | 特徴 |
---|---|---|---|
フリースクール | 民間団体・法制度外 | 学校ごとの判断による | 自由な教育方針・少人数制 |
オルタナティブスクール | 民間教育機関・法制度外 | 同上 | 教育哲学に基づく探究学習 |
学びの多様化学校 | 制度上の枠組み | 条件により出席扱い | 多様な学びを制度的に認定 |
「学びの多様化学校」は、これらの場での学びを“制度的に承認する仕組み”として機能します。
現時点での課題|制度の理想と現実のギャップ
理想的な制度である一方で、「学びの多様化学校」はまだ始まったばかりで、いくつかの課題も指摘されています。
実施している自治体や学校が少ない
ガイドラインは公表されましたが、実際に制度を導入している自治体はまだ一部にとどまっています。特に地方では、制度の導入そのものが検討段階というケースも少なくありません。
自宅近くにないケースが多い
制度を利用できる学びの場が、すべての地域にあるわけではありません。特に交通手段の少ない地域では、「行きたくても行けない」状況が発生します。
出席扱いは学校ごとの判断
ガイドラインはあくまで「指針」であり、最終的には学校長や教育委員会の裁量に委ねられます。同じ学び方をしていても、ある学校では出席扱い、別の学校では対象外というケースも起こりえます。
制度の認知度が低い
保護者や教職員に制度そのものが浸透しておらず、「そんな制度があるなら早く知りたかった」と感じる家庭も少なくありません。
MOANAVIの取り組み|制度に縛られない「本質的な学び」
横浜市のMOANAVIでは、こうした制度の枠組みに先んじて、子どもたちにとって本質的に意味のある学びを追求しています。
自己調整学習のサポート
子ども自身が、自分に合った学びの方法や量、ペースを選び、「学び方を学ぶ」ことから始めます。
STUDY POINT制度
学習内容だけではなく、「行動」にポイントを付ける仕組み。挑戦する姿勢、継続する力を評価し、可視化します。
テーマ学習で社会とつながる
「科学・言語・人間・創造」の4領域で、探究型の学習を展開。地域や社会と関わるプロジェクトを通じて、教科学習にとどまらない学びを経験します。
制度の有無に関係なく、MOANAVIはすでに「学びの多様化学校」が目指す姿を実践しています。
まとめ|通う教育から「選ぶ教育」へ
「学校に行かない=学ばない」ではありません。
今、多くの子どもたちが、学校という枠組みを超え、自分に合った学び方を模索しています。
文部科学省の「令和の日本型学校教育」の構築に向けた答申(2021年)では、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な実現」が提言されています。
(出典:中央教育審議会 答申(令和3年))
MOANAVIのような民間の学びの場が、制度の空白を埋める存在として、ますます重要になっていくでしょう。
ご相談・見学のお問い合わせはこちらから
MOANAVIでは、不登校や学びに悩むご家庭を対象に、随時見学・個別相談を行っています。制度に関するご相談もお気軽にどうぞ。
- 📍 教室:横浜市西区 戸部駅徒歩3分
- 🕒 9:00〜14:00 17:00〜19:20
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / 株式会社MOANAVI代表取締役
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説