
子どもの集中力は何分?
年齢別データと脳科学が教える勉強法と家庭での工夫
「うちの子、全然集中できない…」「勉強を始めてもすぐに気が散ってしまう」――そんな悩みを抱える保護者の方は多いのではないでしょうか。
実は、子どもの集中力が続かないのは“性格”ではなく“脳の仕組み”によるものです。脳科学の研究によると、集中力の持続時間は年齢ごとに大きく異なり、勉強に最適な時間の目安も存在します。
本記事では、幼児から中高生までの 年齢別の集中力持続時間データ を紹介し、さらに脳科学に基づく「集中できる仕組み」と「家庭でできる工夫」を解説します。保護者が知っておくことで、子どもの学習をより効率的にサポートできるはずです。
子どもの集中力は何分続く?【年齢別の平均持続時間とデータ】
幼児(3〜6歳)の集中力はどれくらい?【平均5〜15分】
アメリカ小児科学会(AAP)の報告によると、幼児の集中力は 約5〜15分程度 が目安とされています。絵本の読み聞かせやパズル遊びをしても、途中で席を立つのは自然なことです。発達段階において前頭前野がまだ未熟であり、長時間の集中は難しいのです。
小学生の集中力は何分?【低学年と高学年の違い】
教育心理学の研究では、小学生の集中力の持続時間は 低学年で15〜20分、高学年で25〜30分 とされています。
授業時間が45分あるのに対し、実際に“全集中”できるのはその半分程度だと考えると、授業中に気が散るのも当然です。
中学生・高校生の集中力はどのくらい続く?【勉強に集中できる時間の目安】
認知心理学者 Johnstone & Percival(1976)の研究によると、中高生や大学生でも集中力のピークは 30〜45分程度。つまり、テスト勉強を2時間ぶっ通しで行うのは非効率であり、40分ごとに区切って休憩を入れる方が学習効率は高まります。
大人の集中力との比較|年齢による差はどこから生まれる?
大人でも90分を超える集中は難しいとされます(Kleitman, 1963)。つまり「子どもが集中できない」のではなく、「人間の脳の仕組みとして長時間の集中には限界がある」ということを理解しておく必要があります。
脳科学が教える集中力の仕組みと限界【子どもの脳はどう働く?】
集中力をコントロールする脳の部位「前頭前野」
集中力をつかさどるのは脳の前頭前野。ここは「実行機能(計画・判断・抑制)」を担いますが、発達が20代前半まで続くとされます(Casey et al., 2005)。子どもに長時間の集中を期待しても難しいのは、この発達段階の違いによるものです。
集中できる時間のピークと勉強のゴールデンタイム【脳科学的根拠】
人間の脳には90分周期の「ウルトラディアンリズム」があり、集中と休息のリズムを繰り返しています(Kleitman, 1963)。つまり、1コマ40〜50分の授業+休憩という学校のシステムは、脳科学的にも理にかなっているのです。
集中力が切れる原因|脳が疲れる仕組みとエネルギー消費
心理学者 Baumeister が提唱する「エゴ消耗理論」によれば、集中はグルコース(脳のエネルギー源)を大量に消費します。そのため、長時間集中しようとすると脳が疲れ、判断力や記憶力も低下してしまいます。
勉強に集中できる時間を伸ばす方法【年齢別おすすめ学習サイクル】
小学生・中学生の勉強に最適な時間配分と休憩サイクル
- 小学生低学年:15〜20分勉強+5分休憩
- 小学生高学年:25分勉強+5〜10分休憩
- 中高生:40分勉強+10分休憩
「集中できる時間を最大限に活かす」ことが、効率的な学習のポイントです。
集中力を回復させる休憩法|運動・水分・深呼吸
脳科学研究によると、軽い運動・水分補給・深呼吸 が脳の回復を助けると示されています。スマホやゲームのように新たな刺激を与える休憩は逆効果になる場合もあるので注意が必要です。
家庭でできる集中力トレーニング【ゲーム感覚で続けられる方法】
- 「タイマー学習法」:時間を区切って取り組む
- 「ポモドーロ・テクニック」:25分作業+5分休憩を繰り返す
- 「小さな目標設定」:1ページだけ、1問だけから始める
こうした工夫は子どもの自己効力感を高め、学習習慣づくりに直結します。
集中力が続かない子どもへの対処法【家庭でできる工夫と支援】
勉強に集中できない原因は?【環境・生活習慣・デジタル機器】
子どもの集中力が続かない背景には、脳科学的にも「環境要因」と「生活習慣要因」が大きく関わっています。
例えば以下のような要因が挙げられます。
- デジタル機器の刺激が強すぎる
スマホやタブレット、ゲームは強い報酬系(ドーパミン刺激)を生み出し、勉強のような「即時的に報われない活動」を相対的に退屈に感じさせます。 - 学習環境が整っていない
部屋の明るさが暗すぎたり、テレビや生活音が入る環境では集中しづらくなります。特に雑音が多いとワーキングメモリの容量が圧迫され、理解や記憶の効率が下がります。 - 睡眠不足や生活リズムの乱れ
スタンフォード大学の研究でも、子どもの睡眠不足は集中力・記憶力の低下と直結することが分かっています。
👉 まずは 「集中を妨げる要因を減らす」ことが第一歩。机の周りからゲーム機を片づける、学習時間帯を決めて家族も協力するなど、小さな調整だけでも効果は大きいです。
発達特性(ADHDなど)による集中力の違いと配慮方法
集中力の続かなさは「努力不足」ではなく、発達特性に由来することもあります。
- ADHD(注意欠如・多動症)傾向
「集中できない」というより「興味があることに過度に集中する(過集中)」が特徴です。好きなゲームには何時間も取り組める一方で、勉強では数分しか持たないこともあります。 - 学習障害(LD)や発達性協調運動障害(DCD)
認知処理の特性により、学習が通常よりエネルギーを要し、集中の持続が難しくなります。
対処のポイント
- 30分座り続けることを求めるよりも、5分の集中を積み重ねる学習法に切り替える。
- 「休憩のタイミング」を親が決めるのではなく、子ども自身に選ばせることで自己調整力を育てる。
- 専門機関や学校の支援コーディネーターに相談するのも有効。
👉 DSM-5でも示されているように、「できない」のではなく「脳の特性に応じた学び方が必要」と捉えることが重要です。
保護者ができる声かけと習慣づくり【集中力を高める家庭環境】
子どもの集中力を支えるのは、日々の親の関わり方です。脳科学や心理学の研究では、適切な声かけと習慣化が子どもの学習行動を大きく変えることが分かっています。
- 短い目標設定
「あと5分頑張ろう」「ここまで終わったら休憩ね」と区切ると達成感が積み重なりやすい。 - 即時のフィードバックと称賛
終わった瞬間に「ここまでやれたね!」と認める。心理学者Carol Dweckの「成長マインドセット」の研究でも、結果より努力や過程を評価することが学習意欲を高めると示されています。 - ルーティン化
毎日同じ時間に学習を始めると、脳が「この時間は勉強するもの」と自動化してくれます。習慣が形成されると、意志の力に頼らずに集中状態に入りやすくなります。 - 親も一緒に取り組む
子どもだけに勉強を求めるのではなく、親も読書や作業を並んで行うと「学びの時間」としての空気が作れます。
👉 家庭で大切なのは「長時間集中させること」よりも、**「短時間でも繰り返すことを習慣にする」**ことです。
💡 まとめると:
- 集中力が続かない背景には「環境要因」「生活習慣」「発達特性」がある
- 対処は「環境調整」「特性理解」「習慣化」の3本柱
- 保護者の声かけ次第で、子どもの集中力は確実に伸ばせる
年齢別:子どもの集中力を支える声かけフレーズ集
幼児(3〜6歳)|遊び感覚で集中を促す
- 「このパズル、あと3ピースで終わるね!やってみよう」
- 「タイマーが鳴るまで一緒に頑張ろう」
- 「できたら一緒にハイタッチしよう!」
👉 幼児期は「ゲーム感覚」と「即時の達成感」を意識。短い時間で終わる課題を区切って提示すると効果的です。
小学生低学年(1〜3年生)|短い区切りと具体的な見通し
- 「10分だけやったら、おやつにしよう」
- 「ここまでできたらシールを貼ろう」
- 「あと3問で今日の目標クリアだよ!」
👉 見える化(シール、カレンダー、チェックリスト)が効果的。脳科学的に達成感の積み重ねがドーパミンを刺激し、次への意欲につながります。
小学生高学年(4〜6年生)|自分でコントロールさせる
- 「次はどこまでやるか、自分で決めてみよう」
- 「25分集中したら5分休憩しよう」
- 「どの教科から始めたい?」
👉 自己決定感を与えることが集中の持続に直結。自分で決めた学習の方が意欲が高まることは心理学的にも実証されています。
中学生(12〜15歳)|目標意識と共感を大切に
- 「40分やったら、好きな音楽を聴こう」
- 「今日はどこまで進めたい?自分で計画してみよう」
- 「疲れたら深呼吸してリフレッシュしよう」
👉 思春期は親の管理よりも「共感」と「サポート」の姿勢が大切。強制感を与えると反発しやすいので、伴走者の立場で声かけすると効果的です。
共通で使えるポジティブ声かけ
- 「ここまで頑張れたね!」(過程の評価)
- 「前よりできるようになったね」(成長の実感)
- 「ちょっと休んだらまたやろう」(休憩の肯定)
👉 Carol Dweck の「成長マインドセット」研究でも、「結果ではなく努力を評価する声かけ」が子どもの集中力と挑戦意欲を高める と示されています。
💡 まとめると:
- 年齢に応じて「遊び感覚 → 見える化 → 自己決定 → 共感サポート」と声かけを変えると効果的。
- 共通するのは「短い達成感を積み重ねる」こと。
- 保護者の言葉一つで、子どもの集中力は“持続できるもの”に変わっていきます。
年齢別|集中力の持続時間とおすすめ学習サイクル
年齢層 | 集中力の持続時間 | おすすめ学習サイクル |
---|---|---|
幼児(3〜6歳) | 5〜15分 | 5〜10分学習+2〜3分休憩 |
小学生低学年(1〜3年生) | 15〜20分 | 15分学習+5分休憩 |
小学生高学年(4〜6年生) | 25〜30分 | 25分学習+5〜10分休憩 |
中学生 | 30〜40分 | 40分学習+10分休憩 |
高校生・大学生 | 40〜50分 | 50分学習+10分休憩 |
まとめ|子どもの集中力を脳科学的に理解し、学びに活かす
子どもの集中力は「低い」のではなく「年齢によって適切な時間が決まっている」というのが脳科学の結論です。
- 幼児は5〜15分
- 小学生は15〜30分
- 中高生は30〜45分
無理に「集中を鍛える」のではなく、「短時間の集中を積み重ねる」ことが学習の成果につながります。
MOANAVIでは、こうした脳科学の知見を取り入れた 自己調整学習 や、学習行動をポイント化する STUDY POINT を導入し、子どもたちが自然に学習習慣を育める仕組みを提供しています。
参考文献
- Johnstone, A. H., & Percival, F. (1976). Attention breaks in lectures. Education in Chemistry.
- Casey, B. J., Tottenham, N., Liston, C., & Durston, S. (2005). Imaging the developing brain: what have we learned about cognitive development? Trends in Cognitive Sciences.
- Kleitman, N. (1963). Sleep and Wakefulness. University of Chicago Press.
- Baumeister, R. F. (2002). Ego depletion and self-control.
記事を書いた人

西田 俊章(Nishida Toshiaki)
STEAM教育デザイナー / MOANAVIスクールディレクター
理科・STEAM教育の専門家として、20年以上にわたり子どもたちの学びに携わる。文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』の著者であり、TVやラジオで教育解説の経験ももつ。「体験×対話」の学びを大切にし、子どもたちが楽しく学べる環境を提供している。
📚 経歴・資格
✅ 文部科学省検定済教科書『みんなと学ぶ 小学校理科』著者
✅ 元公立小学校教員(教員歴20年)
✅ 横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士(教育学)
✅ TVK『テレビでLet’s study』理科講師として出演
✅ Fm yokohama『Lovely Day』でSTEAM教育を解説